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妹とスライムと禁断のスキル

 俺たちは日常を謳歌している……はずだった……


「どうなってんだよクソ!」


「私に言わないでくださいよ! お兄ちゃんだって楽な依頼だって言ったじゃないですか!」


 俺たちの現状を簡単に説明すると、スライムの群れに追われている。


 始まりは今日の朝、ミントが討伐依頼を掲示板から剥がして持ってきた。


「お兄ちゃん! この依頼楽勝っぽいですよ?」


 ミントが自信満々に持ってきたのは……


「スライム討伐? 確かに受けられるが……珍しく楽そうなのにしたな?」


「でしょう? 私たちが受けられる依頼で一番敵が強そうなのがこれだったんですよ」


 なんだか言葉が引っかかるが依頼内容を眺めても問題になりそうな項目はない、じゃあ受けるか。


 俺たちは討伐依頼書を持って受付に行った。


 受付にいるセシリーさんは依頼書を眺めて少し考えている様子を見せてから俺たち二人を見た。


「大丈夫でしょうね……はい、確かに受領しました」


 そうしてたどり着いた郊外の牧場、スライムの群れが現れて時々家畜が襲われるという話だった。


 まあ家畜程度しか倒せないスライムならバフを使えば楽勝だと思っていた。


 そうしてしばらく見張りをしていたところスライムがたくさん出てきた、俺たちはスライムの討伐へと向かう。


「お兄ちゃん! バフを!」


「任せろ」


 ――バフを使用します

 ――――

力「A]

体力「A]

魔力「B」

精神力「B]

素早さ「A」

スキル「なし」

――――


 スライムごときこの程度でいいと思っていた……そしてミントがナイフをスライムに突き立てる、ポンと音がしてスライムは二つに分かれた。


 そしていくらでも増えていくスライム……そして現在に至る。


「スライム増えすぎですよ! お兄ちゃん! 爆発させましょう!」


 バタバタ走りながらミントが提案する。


「無理だろ! ここ放牧地だぞ! 焼き払ったら絶対怒られる!」


「じゃあどうしろって言うんですか? あの数相手に爆発無しで勝てるんですか?」


「そうだ! とりあえず試してみろ」


 そう言って「炎魔法」を付与する


「フレイムウォール!」


 ミントもヤケクソになりながら炎の壁を出す、細かなスライムはいくつか蒸発したものの、平気で身体を蒸発させながらこちらに向かってくる。


「ダメです! 平気で突っ込んできます!」


「じゃあこっち!」


 そう言って冷却魔法を付与した。


「フリージング!」


 冷却魔法を打ち込むとスライム達はカチコチになってようやく動きを止めた。


 俺たちはようやく足を止めてこれをどうするか話し合う。


 見たところ百匹ほど大きめの果物サイズ程度のスライムの群れがカチコチ凍っている。


 もちろん凍っているからと解決したわけではない、こいつらは溶けたらもう一度襲いかかってくるだろう。現在はミントが冷却を続けていて動く気配はない。


「割って回りますか?」


 ミントの提案に対し問題を上げる。


「溶けたら合体してまた襲いかかってくるだろうな、この数を完全に殺しきるのは難しいな」


「そもそもスライムってなんで人間や家畜を襲うんですかね?」


「何でもいいから生物を食べ続けないと生きていけない存在らしいな」


 つまるところ雑魚だからといって放置していた結果が今の大量発生だ。


 一体二体くらいなら焼却するのは簡単だ、だからこそ、「今日やる必要がないから」と放置された結果がこれだ。


 ピコーン

 ――

 スキル「ガンマ線照射」を付与できるようになりました

 ――


「あー、うん……これで片付けるか」


「またなんか覚えたんですか……お兄ちゃんも大変ですねえ」


 妹は俺を気の毒そうな目で見るが、俺だってこんな物騒な効果は要らないんだよなあ……


 ――

 「ガンマ線照射」を付与しました

 ――


「なんか新しいスキル来ましたね? これでいけるんですか?」


「多分な、これだけの量を片付けられるんだからそれなりに物騒だと思うから人のいない方に向けて打ってくれ」


「了解」


「パルス・レーザー!」


 妹が新しく付与したスキルを使うが何も起きない、おかしいな?


「あれ? 付与できてなかったか?」


「いえ、ちゃんと付与できてますよ? しっかりそのスキル使いましたし、なんで効き目がないんでしょう?」


 うーん……たまにはこんな事もあるかな?


「非殺傷性のスキルだったかな? 次の手を考え……あれ?」


「どうかしましたかお兄ちゃん?」


 俺の方を振り返っているミントには見えていないのだろう。


「うしろ、見てみろ」


「うしろ? は?」


 振り返ってミントもビックリする。


 のんきに話し合っていたのでスライム達が解凍されたのだが……なんと全部形を保てず崩れて地面にしみこんでいった。


「どうやら生き物に対応した効果みたいですね?」


「そう……だな……しかもそう問うヤバイ奴みたいだ」


 呆れるほど強力で恐ろしいスキルだった、危険にもほどがあるだろう。


 しかし、全てのスライムが溶けて消えたので一応依頼は完遂となる。


「まあ……? 成功? って事でいいのかな?」


「ですね! スライム全討伐です!」


 こうして俺たちは意気揚々とギルドに帰っていった。


「はい、ご苦労様です。残存スライムがいないかチェックしてから討伐成功の認定をしてくれるそうですよ」


「やりましたねお兄ちゃん! 私たちパーティーのすっごい成果ですよ!」


「そうだな……」


 しかし俺は一つ気になることがあった、それを口に出すことが出来ないほどにミントは喜んでいたが……


 数日後


「ちょっと依頼が無かったことになるってどういうことですか!?」


 ミントがセシリーさんに食ってかかっていた。


 俺が危険視したとおり、放牧地であのスキルを使ったため、生えていた牧草が広範囲にわたって枯れてしまったらしい。


 一応、依頼はスライムを倒すことなので失敗とは言わないが報酬は勘弁して欲しいと言うことでこうなっていた。


「ですから! 依頼者に迷惑をかけることはですね……」


「知ったことですか! 私たちはちゃんと苦労してスライムを全討伐したんですよ!」


「牧草ごとですよね?」


「うっ……」


 俺もそろそろ止めに入った方がいいだろうか?


「その辺にしておけ、俺たちがその場で思いつきのスキルを使ったのが悪い、今回は分が悪いぞ」


 ミントにそう言うと渋々引き下がってくれた、セシリーさんは頭を下げていた、全くもって迷惑なゴネ方をしたと思う。


「うぅ……せっかく苦労したのに……」


「あれだけスライムに効果があった時点で察するべきだったな」


「はぁ……前金だけはせしめたのでいいとしましょうか」


 しっかり前金を返さなかったミントに呆れながら俺たちは家路につくのだった。

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