妹と何も無い特別な日
「ギルマス……あの二人が来ない日は荒れた依頼が無いですねえ……」
そうギルマスに言うセシリーさん。
「まあ、あの二人も両親がいなくなって生きるのが大変なんだろう。少しはいたわってやれ」
「ギルマスって案外優しいですよね?」
「あぁ……!」
ギロリとにらみつけられて萎縮するセシリーさん、なんだかんだと言っても皆悪意が有るわけではないのだから、こうして優しさを見えないところで披露している。
「まあ……特に嬢ちゃんの方はつけあがることが目に見えてるからな、そこは少し考えてるんだよ」
「ミントちゃんはねえ……やる気があるのはいいと思いますけど……」
そうして二人のあずかり知らぬところで優しさを見せつける二人だった。
――
「お兄ちゃん、たまのまったりは良いですねえ……」
「そうだな、平和ってすごく大事だろう?」
「刺激も欲しいですけどね、スキルとか習得してませんか?」
「してない」
本当の話だ、最近は新しいスキルを習得する期間が空いている、その間にスキル同士の組み合わせ方などを考えていることも多いが、基本的には薬草採集だ。
まあそれすらも今日はしないと決めたのだが……
「あったかいなあ……」
俺たちは暖炉を囲んで温まっている、炎魔法で暖めるには役不足なので普通に薪を放り込んで着火にのみファイアーボールを使っている。
「しかし、ここまで何も無いと少し悪い気もしますね? きっとギルドの皆さんも寂しがってますよ?」
「そうかなあ……」
――一方ギルド内
「いやあ、今日は平和だな!」
「そうだな! あの二人がキツい依頼受けまくってくれたおかげで後は楽なのばっかりだし!」
「居なきゃいないでなんとかなるんじゃないか?」
「しーっ! ドラゴンスレイヤーを相手にあんまりな陰口をたたくんじゃない! 消し飛ばされても文句は言えんぞ!」
ギルド内が静まりかえった。
――
「それにしても、のんびり飲めるコーヒーは美味しいな!」
「それはきっと『のんびり飲める』からだと思いますよ? 私的にはいつものお兄ちゃんの味ですけど」
「どんな味だよ……」
ミントのわけの分からない表現に苦笑いしながらカップをすする。
落ち着いた場面というものが最近あまりなかったので非常に貴重な時間だ。
「お兄ちゃん? 何か起きて欲しいって思いませんか?」
「思わねえよ!?」
平和が一番、本当にね。
――
「所長は休暇か?」
白衣の男が同じく白衣の中年に訊く。
「そうですよ、何も負荷テストもかけられないのでただ稼働させるだけの無駄な時間ですね」
男は笑いながら言う。
「何言ってるんだ、休暇なんてここ以外地獄みたいな場所だぞ? 真っ白な部屋から灰色の地獄へ追い出されただけだろうに」
「「ハハハ……」
なんだかいけないことを言っているようだが詳しいことは分からない。
――
「……ちゃん」
「ん?」
「お兄ちゃん!」
「わっ! 驚かすなよ!」
「人との話の途中で寝る方がよほど失礼だと思いますがね?」
「え……ああ、寝てたか?」
意識が飛んでいた、どこに飛んでいたのかは見当もつかないが、きっと夢の国だろう。
「お兄ちゃん、寝ぼけないでくださいよ?」
「悪かったってば……」
「しかし……なんで時々何も起きない日があるんでしょうね?」
俺は根本的な質問をする。
「何も起きないのが普通の日じゃないか? 何かが毎日起きてたらそれが日常になるだけだろう?」
「それもそうですね」
俺たちは日常を与えてくれる神的な存在に感謝をしながら何も起きない日を過ごすのだった。




