妹とテレパス
その日は朝から面倒なことになってしまった
ピコーン
――
妹との「念話疎通」が可能になりました
――
うえぇ……マジですかい……寝起きでこのスキル付与はキツすぎやしませんかね誰かさん?
その面倒なスキルを抱えて妹と話をするのか……俺には荷が重いぞ……
愚痴っててもしょうがないか……部屋を出よう。
部屋を出てキッチンに向かう、『そろそろミントが朝ご飯作ってるだろう』と考えながら行った。
「あ! お兄ちゃん! 朝ご飯できてますよ!」
「ああ、いただきます」
「お兄ちゃん……ううん、いえなんでもないです。この方が都合……すし……」
「どうかしたか?」
「いいえなんでも!」
そう言ってにこやかな顔で俺に微笑むミントだが、裏になにか抱えているような一言だった。
『さて……今日は平和な一日を過ごしたいものだ……』と考えているとミントがドヤ顔で言ってきた。
「お兄ちゃん! 今日はヤバい依頼を受けましょうか?」
「死ぬから……やめて……」
『コイツにあわせていると命がいくつあっても足りないんだよなあ』
「お兄ちゃん、もっと人生リスクを楽しむべきだと思いますよ?」
「えぇ……」
俺はどうしたものかと考えながら、なんとか平和的な生活を謳歌しようと考えを巡らせる。
そうだ! 『今日は一緒にイチャイチャしたい』と言えばコロッと引っかかりそうな……
「お兄ちゃん? 私にごまかしはききませんよ?」
「マジか……あのさあ……」
俺は心の中で言葉を続ける、『心の声、漏れてる?』
ミントは無慈悲な一言を告げる。
「ええ、ダダ漏れですよ」
いい笑顔で残酷な事実を言い放つのだった。
「ところで俺はお前の心がまったく読めないんだが……」
「一方通行なのでしょうね」
ひでえ……このスキルで俺にどうしろというんだ。
「とはいえ、分かるかわかんないかはランダムみたいですけどね」
はぁ……この念話とやらがどう役に立つというのやら……
「さあお兄ちゃん! ギルドに行きますよ!」
「はいはい」
そう言ってさっさと支度を始めた、このスキルが使いこなせるようになるまでしばらく不用意なことは考えないようにしなきゃな……
しばらく支度をしてからギルドに向かうために家を出た。
「お兄ちゃん、このスキルなにかに使えませんかね?」
「さあなあ……」
こんなピンポイントなスキルが使えるとは思えないんだが。
――
ギルドに着くと一つのテーブルに人だかりができていた。
「クソが! ああもう! 俺の負けだよ!」
「はい、勝負ありがとうございました」
俺達はセシリーさんに何をやっているのか訊く。
「実は……流れ者の賭博師が来てましてね、一応ギャンブルは違法ではないのですが……あの方、法外なレートで勝負して負けてないんですよね……皆さん熱くなっているんです」
なるほど、まあ俺達には関係ない……
「あなた、レートいくらでカードをしているの?」
ミントが思い切り絡んでいた。コイツは誰かに喧嘩を売らないと生きていけないのだろうか?
「お嬢さんも勝負しますか? あなたが勝ったら金貨十枚ですね、対戦料は金貨一枚です」
そう聞くと俺の方へ走り寄ってきてささやいた。
「……お兄ちゃん、カンニングよろしく……」
小声でそう言ってギャンブラーの方へ歩いて行く、あいつには良心の呵責というものがないのだろうか?
俺は対戦相手の後ろに立って観戦している振りをする。そして残酷なゲームが始まった。
ルールは相手のカードに対して自分のカードの数字が上か下かを選ぶシンプルな勝負、これは……
哀れな賭博師は50枚一セットのカードをシャッフルして勝負が始まる。
『40』
心の中でそうミントに伝える。
「上で」
ミントのカードは43、一試合目は勝つ。
『32』
「上です」
……そうしてしばらく無敗が続いて来た頃、対戦相手が変な動きをしだした。
何やら片手をテーブルの下に回している、それ自体はおかしくはないのだが……
『12』
「下です」
そうして開かれたミントのカードは9,相手の出したカードは……「2」だった。
ピクリとミントの眉が動いた、動揺ではなく怒りを湛えているようだ。
「おやおや、調子がよかったようですが今度は私に運が向いたようですね」
「あらあら、どうでしょうね?」
そうして次の勝負が始まったが……
『39』
俺がそう伝えると……
「上です」
「なるほど……ぶほぇ!」
テーブルの下に回した手を思い切りミントが蹴り飛ばした、バサバサと袖の下に隠していたカードが出てくる、そこからはお祭り騒ぎだった。
「野郎! イカサマじゃねえか!」
「掛け金返せこのクズ!」
「どう落とし前つけてくれるんだよ! アァ!」
「ひえっ……たすけ……ふべぇ!」
種が割れた後の賭博師は悲惨なもので、多少殴られはしたが身体的な負傷よりも厳しかったのが……
「よっしゃ俺の勝ち! 金貨十枚な」
「楽勝楽勝、支払いよろしく」
そうして元々のレートのまま正々堂々と勝負をする羽目になったようだ。法外なレートだったのであっという間に資金が尽きてしまったようだ。
「悪は滅びた……って感じですかね?」
「そうだな……」
そうして哀れなイカサマギャンブラーのお金はショートして、受付に依頼を受けに行く羽目になっていたのだった。
そんなとき頭の中に声が響いた。
ピコーン
――
念話の送信を任意で行うことができるようになりました
――
はじめっからその機能つけておくべきじゃないかなあ!?
「お兄ちゃんお兄ちゃん?」
クイクイとそでを引っ張るミントがいた。
「どうした?」
「なんかお兄ちゃんから流れてくる心の声やノイズが聞こえなくなった気がするのですが?」
「ああ、自由に送るも送らないも選べるようになった」
「ええー……」
そうしてなぜかふてくされているミントを後に、俺達はギルドの冒険者があの賭博師から巻き上げた金でごちそうしてくれたので依頼も何もない日だった。
ちなみにセシリーさんは「うざったかったので追い払ってくれて助かりました!」とお礼を言われた。
ギャンブルとは怖いものだなあ……
そんなことを考えながら、それをぶち壊したミントはもっと怖いんじゃないかなどと考えるのだった。




