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ジョブ「お兄ちゃん」ってなんですか? 謎のジョブを与えられて困惑していると妹が最強になりました  作者: にとろ


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妹と違和感

 ――

「おい! それは直うちするんじゃ……!」

 ――


 その声と共に目が覚めました、なんでしょう? なにかひどく大きなものを失った気がするのですが……


「おはよう! ミント、朝ご飯だぞ」


「ええ、おはようございます、今行きますね」


 お兄ちゃんの声に言い知れない違和感を感じながらキッチンへと向かいます、なんでしょう? なにかとても大きなものを失っているような気がするんですが、それがなんであるかはさっぱり見当もつきません。


「おはよう! 朝ご飯できてるぞ?」


「え、ええ……」


 この違和感の正体が分かりませんが朝食を食べることにします。


 「お兄ちゃんが作ってくれた」サラダとサンドイッチが朝食です。美味しいのですが……なんでしょう、この釈然としない気持ちは……


「どうかしたか?」


「え!?」


 お兄ちゃんの声に驚いてしまいます、私はいつもお兄ちゃんと……もやがかかったように記憶が出てきません、これがいつものことであろう事は理解できるのですが……


「いえ、朝ご飯が美味しいなあと思いまして」


 私は当たり障りのないことを言ってごまかします、いえ、以前とは決定的になにかが違うはずなのに……


「そういえば今日はコーヒーをいれてないんですね?」


 お兄ちゃんはなにか奇妙なものを見る目で私を見ます。


「本当にどうしたんだ? 俺はコーヒーいれたりできないぞ? 父さんがいれてるじゃないか? 今日はギルドへ行っているからいないけどさ」


 カタン


 思わずスプーンを落としてしまいました……父さんがいる? 当たり前のことになぜこんな違和感を覚えなくてはならないのでしょう?


 落ち着きなさい私! 父さんも母さんもその辺で小動物を狩って生計を立てているごく一般的な家庭のどこに違和感があるというのでしょう? 何もかもが正常でよどみなく私とお兄ちゃんの生活は成り立っているじゃないですか……


「ええっと……二人とも魔王を無視していいんですかね? ここを守るには二人ともオーバースペックな気がするのですが?」


 するとお兄ちゃんは本当に奇妙なものを見る目で私を眺めてきます。


「まおう? そんなものいないだろ? 今日は本当にどうかしたのか?」


 違います! 頭の中でそう叫んでいるのに言葉を継ぐことができませんでした。このどうしようもないズレの正体がモヤモヤしてつかむことをさせてくれません。


「いえ、私とお兄ちゃんはギルドで冒険者をやっていて……」


 するとお兄ちゃんが明らかにおかしいことを言います。


「何を言ってるんだ? 俺もお前も普通に家の手伝いをして暮らしてるじゃないか? 冒険者なんて危険な仕事やりたいのか?」


 !?!?!?


 この……なんですか一体!?


「お兄ちゃん! 私のことどう思っていますか?」


 お兄ちゃんはいつも困った顔でその質問に答えていたような気がします。


 しかし今目の前にいるお兄ちゃんは迷うことなくすらすらと答えを言います。


「可愛い妹だろう? 他になんだって言うんだ?」


 ちがう……! お兄ちゃんと私はもっと複雑な関係で……!


「まあミントも可愛いし、彼氏の一人でも作ってくれたらあんし……」


 私はその言葉に激高してしまいます。


「お兄ちゃん! 今日は本当におかしいですよ! お兄ちゃんはそんな言葉を絶対に言わないはず……えぐっ……ぐすっ……」


 言葉にならないことをお兄ちゃんにぶつけます、私たちは普通の兄妹ではなかったはず、心の奥底からその感情がどんどんとあふれ出してきます。


「おい……大丈夫か? 本当に今日は……」


 ――ぐにゃり


 なにかがその時起こりました、それがなんだったのかは記憶していませんが、なにかが起きたのは確かです。


 ――


「まったく……コマンドを叩くときにチェックもせずに……」


「申し訳ありません! 大丈夫かと……その……」


「もういい……ロールバックできる程度の整合性はあるようだからな、始末書を書きなさい」


 ――


 はっ!


 私はなにかひどく悪い夢を見ていたことをなんとなく覚えながら意識がはっきりとしてきます。


 窓から朝日が差し込み、今日もいつも通りの朝であることを感じさせてくれます。


「ああ……朝ご飯を作らなくっちゃ!」


 その時なぜか「お兄ちゃんが作ってるんじゃないか」という不吉な予感がしました、あのお兄ちゃんですよ? コーヒーをいれるだけしかできない、ただ野菜を切っただけのサラダがなぜか七色に光るようなお兄ちゃんがです!


 なぜそう感じたのかはさっぱり分かりませんがキッチンには誰もいませんでした。


 私は朝食をつくってお兄ちゃんを起こしに行きます。


 部屋をコンコンとノックして「朝ご飯ですよ!」と言うと、「おはよ……今行く」と寝ぼけた声が帰ってきました。


 そうです! 「お兄ちゃんが私のお世話をする」のではなく「私がお兄ちゃんのお世話をしている」のです! 今までそうでしたしこれからだってそのはずです!


 キッチンで待っているとお兄ちゃんが寝ぼけ眼できたので、目を覚まして貰うようにコーヒーをいれるようにお願いします。


 お兄ちゃんはミルをひきながら少しは眠気がとれたようでした。


「お兄ちゃん? お兄ちゃんにとって私ってなんですか?」


「なんだよいつものか? そうだな、妹だよ」


 お兄ちゃんは笑顔ではなくぶっきらぼうにそう答えます、きっと照れ隠しなのでしょうね、それがひどく私を安心させてくれました。


「ねえお兄ちゃん? 今日の夕食を作ってもらえませんか?」


「別に構わないが……珍しいな? 俺が作った料理を科学の失敗作って言ってたのに……」


「たまにはそう言ったものが食べたくなるのですよ」


 そう言って何気ない質問をお兄ちゃんにします。


「お兄ちゃん、今日はギルドで大物を狙いましょうね? それこそ例えば……「魔王」級のね?」


「俺はまだ死にたくないぞ!? 魔王は討伐軍に任せようぜ」


「私たちもその一員なのですがね……」


 そう言っていつも通りの会話を楽しむのでした、そうですね、コレが私とお兄ちゃんのいつもの会話です! 何もおかしいところはありません!


 そうして今日はのんびりと何気ない会話を楽しむのでした。


 なお、夕食がなぜか紫色に発光しており、大変おいしくない物だったことを付記しておきます。

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