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ジョブ「お兄ちゃん」ってなんですか? 謎のジョブを与えられて困惑していると妹が最強になりました  作者: にとろ


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妹にとって兄のあるべき姿

 俺達を運ぶ馬車は魔族領との境までやってきた、大地や木々に傷跡が見られる、それが魔族によるものなのか、あるいは人間によるものなのかは分からなかった。


「この辺は結構荒れてますね?」


 俺がそう問うと隊長は痛いところを突かれたというふうに答えた。


「ああ……本来なら我々が守っている必要のある地域なのだが、やはりお偉方も辺境に大量の人材は避けないようでな、今回は本格的にまずくなってきたのでようやく重い腰を上げたようだ」


 魔族がどうであるのかは知らないが、人間というのはとかくこういうものらしい。結局自分のところまで火が回らないと消火活動をしないようなのんきな種族だ、ましてや貴族なら自分たちの領民以外に人員を割くなど論外なのだろう。


 魔族領が近づくにつれ、気温はだんだんと下がっていった、魔族は人間が住むのに適さない土地に追いやったので人間もそこを手に入れようとはせず、追い出しただけで満足していた、そのツケがこの有様というわけだ。


「魔族の戦力は?」


 何事も予測を立ててから行動に移すべきだろう、考えなしに突っ込むミントを基準にしてはいけない。


「中規模の群れと言ったところだ、魔族とそれに従う魔物が一個隊ほどいる、討伐軍が本気を出せば倒せるのだろうが……上もここいらがあまりいい環境ではないのを知っていてな、魔族から逃げての移住を推奨している」


 なるほど、討伐軍が本気を出せば問題ない程度ではあるのか、本気を出してもどうにもならない物量だったら困るところだが、その程度ならギリギリなんとかなるだろう。


「任せてください! その程度私が一匹残らず叩き潰してあげますよ!」


 安請け合いをするミントに「さすがは噂の兄妹ですね!」と持ち上げる取り巻き達を見ながら俺は戦略を立てていくのだった。


 気楽なものだな……そのやりとりを眺めながら、そう思った。


 ――


 そうして数刻後に、俺達は村へと着いた、任務は魔族討伐だができることならここの住民を避難させる方がありがたいとのことだった。まあそうだろうな、今、一回撃退してもまた襲いに来るリスクを考えたらこの辺境の村を放棄した方が合理的ではある。


 しかしその村はどの家も鍵をがっちりと閉めていて、話を聞くのでさえ一苦労だった。


 一応話はついていた村長の家へと皆で向かう。


 その家は村で一番偉い人が住んでいるとは思えないほどに普通だった、他の家が標準以下であることを考えれば確かに村の長としては立派な家ではあるのだろう。


「それで……どうしても避難してはいただけないと?」


「くどいのう……村の皆も逃げたい連中はとうに逃げ出しておる、未だにすんでいるのはこの村に骨を埋める気で居る者のみじゃ。じゃからわしらはこの村を離れないし、魔族なんぞ知ったことではない」


 村長の態度はかたくなだった。やはりこの村につくし、この村を運営していた誇りもあるのだろう、ここを離れるという選択肢は無いようだ。


「兄さん!」


 村長宅のドアが開いて俺より少し年上の少女と言ってもいいくらいの年の女の子が入ってきた。


「お前も……逃げる気はないようだな?」


 多分この隊長の妹なのだろう、抱きついてから涙目で隊長にお願いをしている


「兄さん! 私はこの村を離れたくない! 思い出もあるもの……なんとかしてくれるって信じてます!」


 俺達の方をチラリと見る「なんとかする」のが俺達の任務なのだろうな。


 横を見るとミントが感動をしていた「いやあ、兄弟愛って言うのはこうでなくちゃ!」などと言っているのを聞かない振りをして現状を村長に聞く。


「で、魔王軍の侵攻状況はどうなっているんですか?」


 村長も兄妹については放っておき俺達の質問に答える。


「あまりよくはないですな……現在この村のとなりの丘で戦局が硬直しています、村の弓兵隊が丘の上から必死に矢を撃っているので魔族もこちらの消耗を待っている状況ですな。矢の備蓄手にもそれほど長くは持ちますまい」


「でも魔王軍ですよ? まともに戦って勝てるとでも?」


 ミントの率直な問いに村長ははっきり答える。


「ここが私の生まれた場所であり死ぬべき場所です、他にはどこもありません」


 かたくなな結論を抱えているようだ、これはどうするか……


「よし! ご意見は分かりました、妹さん! あなたはどうですか?」


 多分村長の答えに興味はなかったのだろう、本命である隊長の妹の答えを訊く。


「私は……お兄ちゃんと生まれ育ったここを離れたくはないです……」


 その答えにうんうんと頷きミントは堂々と宣言する。


「よろしい! 兄妹愛に免じて私が魔王軍を叩き潰してあげましょう!」


 そのたくましい答えに俺はこの後起きることに魔王軍への同情を感じつつ、付与するべきスキルを考えるのだった。


 ――そうして俺達は村長の家を出た


「で、魔王軍はどの辺まで来てるんですか?」


 そう聞くと苦虫を噛み潰したような顔で隊長は答える。


「最近斥候が入り込んでいるんじゃないかと噂だ、そのくらいには近くにいるのだろう、情けない話だがそれを潰せないでいる」


「ではあぶり出しましょう!」


 そう宣言したミントのやり方は至ってシンプルだった。


 ――


「はっはっは! 兄妹の中を邪魔する魔族どもは滅ぶがいいのです!」


 ミントは爆発魔法を大量に使用して村の周囲を削り取っていた、魔力等にもバフをしている。


――――

力「S]

体力「S]

魔力「S+」

精神力「S]

素早さ「A」

スキル「火属性魔法、爆発系魔法、冷気耐性」

――――


 ありったけのバフをつんで破壊の限りを尽くす妹についに我慢できなくなってしまったのか、魔族が尻尾を出してきた。


 その肌の青い魔族の男は俺達に対して憎しみたっぷりに叫びを上げた。


「貴様ら! 場末の村ごときが我々に刃向かうとはいい度胸だな! 素直に逃げていれば見逃したものを、いいだろう! たたきつぶウボァ!」


 最後まで言い終わる前にプラズマ化した炎がその魔族のいた一体を焼き尽くした。周囲からどんどん魔族の群れが出てくる、出てくるそばからミントが焼いたり冷やしたり爆発させたりしていく。


 次第に魔族も集団でミントに襲いかかってきた、大半は焼き尽くされたものの運良く鋭い爪を突き立てようとした魔族が……


 ガキン


 と「なんの装備もない、ただの人間の皮膚」に止められ傷一つつかなかった、その魔族は顔に恐怖の色を浮かべながら「えい」の一言でぶん投げられて、落っこちたところに爆発が起きて消し飛んだ。


 しばらくして、残党も出てこないほど破壊の限りを尽くしてから残党が出てこなくなって笑顔になり言った。


「ま、こんなものですね!」


「た、たのもしいな……」


 ここを担当していた部隊は一切戦闘に参加していなかった、ミントが「魔法ぶっ放すのに邪魔だから」という理由で村に隊長以外をとどめておいた。


 そして隊長もミントの横でビクビクしながらミントを称えていた。


 そして俺は……空が青いなあ……と爆発で雲が吹き飛んで光がのぞいた空を見上げながらため息をついた。


「さて、隊長さん、あなたに来てもらったのには一つ理由があります」


「は、はい!」


 十歳以上年下の少女に敬語の隊長に対してミントはシンプルな「命令」をした。


 ――


 そうして村に帰ってきた。


 村長の家に報告に行く。


「おお……さすがじゃの! 我が村を救ってくださるとは」


 村長は感謝をしている。


「さすがですね! 『お兄ちゃんは』本当にすごいです!」


 こうして褒められているのは隊長だ、ミントの言った「命令」はシンプルなもので、「全てはあなたがやったことです」という事実を決めるものだった。


 珍しく自分の手柄を主張しないんだなと質問してみるとミントは微笑んで答えた。


「兄は妹の期待に応えるべきなんですよ、家族というのはそういうものです」と柔らかな声が返ってきた。


 ああ、コイツはどこまでも「妹」であろうとするんだな……と気づいたのだった。


 そうして俺達はたいした戦果も貢献もなく、報酬は隊長のポケットマネーから少々もらっただけで俺達は町に帰ってきたのだった。


 今回は討伐軍の任務であり、ギルドの依頼ではないのでギルドを通らず家に帰ってきて、ミントは即ソファに飛び込んでしまった。


「ああ、疲れましたねえ……お兄ちゃん、褒めてください」


「ミントはすごいな、あれだけやったら結構な報酬ももらえたろうに、それを捨てても期待に応えるんだな」


 ミントはフフッと笑って言うのだった。


「ええ、妹ですからね!」


 その声に迷いは一切なく、幸せな兄妹を見たので満足したらしくそのまま眠りについてしまった。


 俺も甘いなと思いながらミントを抱えて部屋のベッドに寝かせて布団を掛けておいた。


 なぜかその時ミントがニヤニヤしていたのは言い夢でも見ていたからだろうか? 起きてたとか?


 まさか……な……


 その考えを捨ててから俺は自分の部屋へと帰っていった、その日は非常に気持ちよく眠ることができたのだった。

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