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ジョブ「お兄ちゃん」ってなんですか? 謎のジョブを与えられて困惑していると妹が最強になりました  作者: にとろ


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妹は軍部のエース

「お願いします! 魔王軍討伐に協力してください!」


 俺とミントの前でジャンピング土下座を決めたのは王国の魔王討伐軍の偉い人だそうだ、ちなみに出会って早々の上記の出来事である、突然の土下座に俺もミントも戸惑う。ついでに突然リーダーが土下座をしてしまったので仲間の皆さんも非常に困惑していらっしゃる……


「ひとまず落ち着いてください! 頭を下げられても事情が分からないことにはどうにもなりません!」


 そう言って頭を上げてもらう、人の家の前でいい年の大人が子供相手に土下座をしている様は非常に世間体が悪い。


「そうか、取り乱してすまない」そう言って深呼吸をして落ち着こうとする偉いであろう人。どーせまた厄介事をこなすんだろうなと思いながら天を仰ぐ。


 ――

 …………

 ――


 って! なんのスキルも与えてくれないのかよ!? 今がとっても必要なときだと思うんですけどねえ!?


 とまあ、ご都合主義の神の存在に怒りをぶつけてもしょうがないのでひとまず玄関を空けて入ってもらう、このままだと部下であろう人達まで頭を下げそうな雰囲気だったからだ。


 そうして客間で落ち着いてもらうためにコーヒーをいれている、本人はミントがなだめすかしてなんとか話をできる状態に使用と頑張っている。


 ポタポタとたれるコーヒーをドリップしながら聞き耳を立てるがなんの話をしているかは不明だ。ただまあ焦りと不安でいっぱいだったであろうさっきに比べれば大分落ち着いて話ができているようだ。


 申し訳ないが豆の都合でコーヒーは三人分だ、俺と、ミントと、あのおっさん。全員分入れていると十人くらいの分隊なので手間も時間も豆も必要になってくる、しかもあのおっさんにはそんな悠長な時間がないであろう事はさっきの様子を見て明らかだった。


 コトリ、コトリ、コトリ


 俺は三つのカップを置いて話を聞こうとする。


「それで今日は何のご用ですか?」


 しかしそれに返ってきた反応はもはや手遅れなものだった。


「ああ! お気遣い感謝する! こちらの妹様が引き受けてくれるそうで言葉もない! 謝礼は必ずするのでついてきて欲しい」


 ああ! 引き受けちゃってるよ! 絶対面倒な奴じゃん! 聞かなくても分かっちゃうよ!?


 そうして俺達は隊の先導を受けながら町の入り口にたどり着く、どうやら相手は思っているより大物だったらしく、立派な馬車が隊列をなして待機していた。


 俺はとなりのミントをこづいて聞く。


「なあ……なんの頼みを引き受けたんだ……?」


 それにささやき声で返答が来る。


「それは……このおじさんから聞けばいいんじゃないですか……話してくれると思いますよ?」


 その言葉通りにおっさんは馬車に乗り込んで落ち着いたのか地図を広げながら今回の頼みの事情を話してくれた。


「本来は予備隊員である君たちに頼むには少々重い任務なのだが……今回は事情が事情なので大量の戦力が必要になった、君たちは大層な実力者だそうなのでお願いに来たのだ」


 俺はこれから面倒な任務を押しつけられるのを覚悟しながら、予備隊であっても入隊してしまった自分を恨んだ。


「今回は前線に向かっている、私の故郷の村が魔王軍との戦線と近くにあってな、現在前線が我々の側に後退しつつある……要するに……」


「負けそうなんですね?」


 ミントの言葉を一切くるまない発言に場が凍ったがミントは涼しい顔をしている。


「身も蓋もない言い方をすればそうなる、実はこの村には私の両親と妹がいてな……村を離れることも決断すべきなのだろうが皆生まれ育った村を離れる気はないようなんだ。このままでは私の家族が……」


「別に助けるのは一向に構わないんですけど、思い切り私情ですよねソレ」


 ミントは一切言葉を選ぶ気がないようでさっきからおっさんの精神力がゴリゴリ削られているのが数字で見えなくてもよく分かった。


「そーいうことですよお兄ちゃん? この人、いえ、この分隊はその村の出身者だそうで、戦線の後退をさせたくないそうです、なので私が引き受けました」


 もう引き受けちゃっているものに文句を言っても生産的ではないがつい愚痴の一つもこぼしてしまう」


「まったく、せめて相談するべきだろう?」


「そーですけどね……でも……」


 少しじらしてからミントはこの任務を引き受けた理由を言った。


「妹の危機に馳せ参じるお兄ちゃんってロマンを感じるんですよねえ……私のピンチにお兄ちゃんが駆けつけたら私、最高に感動しますし」


 こちらもろくでもない理由のようで、いつも通りの無茶ぶりを平然と引き受けただけのようだった。


 ガタガタと馬車は勢いづいている、まるでものが落ちるときに加速するように勢いをどんどんと上げている。

「もしかして、結構ピンチだったりします?」


 俺のその言葉に、隊長は静かに頷いたのだった。


 いやだよ! 死にたくないし! でも隊員であることには代わりはないしなあ……


 軍も王の勅命で発足しているから、軍の指令に反することは王、というか国に対する反逆である。


 担当範囲ではないと言ってゴネる事も出来るが、俺達の慰霊金は国から出ている、心証を悪くすると生活に直結することになる。


「お兄ちゃん? 大丈夫! 絶対勝てますよ!」


 そう言ってドヤ顔をするミントだったが俺には不安しかない。


 俺はどんどん過ぎ去っていく景色を眺めながら非常に面倒な事態になっていることが理解できていた。


 どうすっかなあ……というかこんな時こそスキルを与えてくれるべきじゃないか? いっつもくだらないことに対してぴったりのスキルをくれるくせにこういったときにはだんまりを決め込む天の声を恨むのだった……

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