表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ジョブ「お兄ちゃん」ってなんですか? 謎のジョブを与えられて困惑していると妹が最強になりました  作者: にとろ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

55/129

妹の武器を新調しよう!

 ピコーン

 ――

 妹に対して「物理完全無効」を付与できるようになりました

 ――


 俺は虚空に対して問いかけを投げてみる。


「なあ、なんで妹専用なんだ? もうちょい誰でも使えれば便利じゃないか?」


 返答は期待していなかったが、あまりにも雑なスキル付与に対して疑問が湧いた、湧いたものは答えが返ってこないにしても問いかけてみる。


 普段はこんな事をしても無駄だとわかりきっているのに今日に限ってそんなことをしてしまったのは俺も疲れが出たのだろうか? しかし今日はなぜか返答が帰ってきた。


 ――

 妹様は何もスキルを保有しておらず、スキル付与に対するリスク計算が容易です

 ――


 なるほど、珍しく回答が来たと思ったら案外まともな理由だった。


 しかし……別にスキルを持たない人は他にもいると思うのだが?


「なあ、スキル持ちじゃなければいいならジョブを授かる前の奴から適当に選べばいいんじゃね?」


 スキルはジョブに付いてくるもので、確かに習得に時間はかかるが基本的に一つや二つはジョブを与えられるときに習得するものだ、逆に言えば基本的にジョブを持たない幼い子供は大体スキルを持ってない。


 ――

 あなたが適正な制御役として問題ないと判断されたため妹様にあなた経由という形でスキルが付与されます

 ――


 なるほど、確かに突然強大すぎる力を持つと身を滅ぼすというのはよく言われていることだ。しかしなあ……


「責任……重くね?」


 その愚痴に対しては一切の返答は返ってこなかった、どうやら与えられる情報は全て与えたぞと言う意味らしい。


「物理完全無効ねえ……ロクな使い道が思いつかないな……」


「へー、また面白いスキルを私にくれるんですね?」


 俺は突然の聞き慣れた声に焦って振り返るとミントがしれっと立っていた。


「えーっと……いつ頃からそこにいたの?」


「今の独り言からですけど?」


 よかった、謎の存在との会話は聞かれていない、もっともあの謎の声は俺以外には聞こえないようなので、なんにせよ独り言にはなるのだろうけど。


「それで、そのスキルをなんに使うんですか? ドラゴン討伐には……魔力も使ってくるから不向きですね。オーガとか手頃そうじゃないですか? まあゴブリンの群れに飛び込んで無傷で帰ってくるとかもベタですけどありですね」


 なるほど、確かに制御役が必要だな。いちいち暴れることしか考えてないもんなコイツ。


「その頭の中が闘争で一杯なところほんとなんとかした方がいいからな? バーサーカーでももうちょっと考えて敵と戦うと思うぞ!?」


 バーサーカーは本能のままに戦うが、本能に忠実に実力差のある相手からは逃げてしまう、コイツは実力差無視で即突っ込んでいくからなおたちが悪いといえる。


「お兄ちゃんは失礼ですねえ……私が負けるはずないでしょう?」


 その自信はどこから来るのか問い詰めたいところだが、理由のないことの理由を求めても無いものは無いのだろう。コイツは生まれながらに闘争本能のみを持って生まれたんじゃないだろうか?


「お前マジでほどほどにしろよ!? 俺はただの人間なんだからな?」


 コイツがいくら強くなろうとその強さの元になる俺が死んだらどうしようもなくなる、そのことをちゃんと分かっているのだろうか……


 しかしそんなことはまるで考えていないようで、すっかり「オーガ……オーク……ゴブリン……コボルト……ゴーレム……悩みますねえ……」と、もうすでに勝ち確で戦う敵をなんにするかを考えているようだった。


「よし! 今日は依頼を受けずにお前とデートしよう!」


 俺の苦肉の策の話題そらしに勢いよくミントは食いついてきた。


「デート!? いいですね! ついにお兄ちゃんが私を誘ってくれますか!? これはもう夫婦と言っても差し支えないのでは?」


 あるに決まってるだろうが……


「まあ一緒に買い物でも行こうってだけだよ、最近戦いばかりだったからな」


 ――


 まあそんなわけで俺達は町の中でのんびりとしていた、最近の依頼報酬と父さんと母さんの慰霊金でしばらくは遊んで暮らせるのだからそもそも無理して戦う必要は無い。


そうして町の一角の噴水前で俺達はアイスクリームを食べていた。


「お兄ちゃん! たまにはいいですね? 私としてはもっとこういうことが起きても良い気はするんですが! もっと積極的になってもいいとは思うんですがね?」


「はいはい、食べ終わったら法化済銀の剣を買いに行くぞ」


 最近この町で噂になっている剣だ、ただの銀の剣は装備として使うには弱いが教会で祝福済の銀の剣はデーモンやアンデッドにとても有効だ。


「ヴェ……お兄ちゃん、それはデートで買うものじゃないと思いますよ……?」


「なんとでも言え、厄介な的にはそれなりの対策が必要なんだよ」


 ――


 そうして武器屋にて、一本の剣を二人の人間が同時に買いに来るというあまりにも間の悪い偶然が起きてしまった。


「嬢ちゃん! 俺みたいな力のある人間が強力な武器を使う方が武器にとってもふさわしいってものだぜ? 分かったらここは譲りな」


 とまあ筋肉質の逆毛の若者が豪語するのだが、俺は妹の額に何本青筋が浮かんでいるか不安でその今にも爆発しそうなイライラの方がこの自称力ある人さんよりよほど怖かった。


 イライラッ


 ミントの顔は笑みを浮かべているが、まったく笑っているようには見えない。ツインテールがピクピクしながら怒りの感情を表していた。


 ところがそんな判断の付かない若者さん、さらにたたみかけてくる。


「大体武器ってのは使うからこそ意味があるんだぜ? 嬢ちゃんみたいに飾って眺めるのなら素直に指輪でもネックレスでも買ってもらいな」


 ビキビキ


 だめ! もうミントが今にも切れそう! それ以上はやめて!


「お兄ちゃん……さっきの物理無効をお願いします、後バフも」


「ここは抑えよう! マジで死人が出るから!」


「駄目です、この人は一線を越えました、叩き潰さなければなりません!」


「二人して何をこそこそやってるんだ! お前らは好き勝手遊んでろよ、俺はコイツがあれば魔族とも渡り合えるくらいの実力者だぞ?」


 ちなみに武器屋のオヤジは心底俺達を心配しているのか、すっかりおびえきっている。俺達に危害が加わるかではなく俺達がコイツを屠るんじゃないだろうかという心配だ。


「お兄ちゃん、お・ね・が・い・し・ま・す」


 もうすっかり切れているミントを止めようがなかった、コイツは緊急時にはこちらのスキルを無理矢理発動させられるので限界まで止めると切れたときに歯止めがきかなくなってしまう。しょうがないな……


 妹バフを使用します

――――

力「C]

体力「B]

魔力「C」

精神力「B]

素早さ「B」

スキル「物理完全無効」

――――


 俺はできるだけ控えめにバフをかけておいた、全力を出すとこの冒険者さんマジで死んじゃうからね。


「よし、ではこの店の試用場で決着をつけましょう、あ! こちらは木剣ですけどそちらは真剣を使ってまったく問題ないですよ?」


 相手もなめきられていることを感じ取ったのか切れそうな顔をするが、年端もいかない少女から逃げるわけにも行かないのでこの決闘を受けることにした。


「なあ兄ちゃん……お相手大丈夫かね? 店の裏で死人が出たなんて事にはならないだろうね?」


 武器屋のおっちゃんも心底心配そうに俺に聞いてくる、どちらを心配しているかは言うまでもないだろう。


 ――


 そうして武器屋の裏にある、本来なら武器の使い勝手を試すやや狭い場所で二人が向き合っていた。


「おやおや? そのしょっぼい木剣で私と戦う気ですか? 私の格が下がるのでまともな武器を持って欲しいんですが?」


 さすがに少女に真剣はマズいと思った相手も、この煽りにはぶち切れて真剣を持ち出すのだった。


「そう来なくては、では正義とは何かを教えてあげましょう」


 武器屋のオヤジの「開始!」の合図で始まる。そしてミントはすぐに木剣を「投げ捨てた」


「なあああああめええええるなああああああああ!!!」


 冒険者もすっかり頭にきて真剣を振り下ろすがそれをミントは「物理無効」の「手のひら」で受け止める。


「は!?」


 それに驚いた相手にミントはグーのパンチをたたき込んだ。お気の毒様です……


 そうしてミントが銀の剣の購入権を勝ち取ったように見えたのだが……


「その……ミントちゃんには悪いんだがこの若いのに売っちゃ駄目かね……? 君はそもそも武器が必要ない気もするんだが?」


 身も蓋もない一言と「この若造にまともな武器を持たせないと死んでしまうこともあるかもしれない」という懇願で俺達はその剣を買うことをやめたのだった。


「珍しいな? おとなしく引き下がるなんて」


 その質問にミントは優越感に浸った笑みを浮かべて答えるのだった。


「持つものが持たざるものに与えるのは常識でしょう?」


 こうして、やはり俺というリミッターが必要なのは確かに理解した一日だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ