妹による魔王軍掃討戦
「お待ちしておりました! ユニさん! ミントさん!」
俺達はお待ちかねされていたわけだが、理由は数刻前にさかのぼる。
――
「ふぁ……眠いなあ、今日は何も起きそうだし二度寝しようかな?」
俺がそう独り言を言っているとミントも起き出してきた。
「おはようございますお兄ちゃん」
「眠そうだな、俺も眠い」
「最近人使いの荒い依頼多かったですからね、どうしても疲れが残るんです……」
俺も人のことは言えないくらいには疲れ切っていた。
「今日は何事も無いみたいだし二度寝してもいいんじゃないか?」
「そうしましょうかねえ……」
その時、テーブルに置いてあったギルドカードに文字が浮き出た。
『魔族の接近を観測しました、至急戦闘能力のあるものは集合してください』
さてどうしたものだろう? 無視しておいて「寝ていました」としらばっくれるのもありだな。
少し目を離した隙にミントは装備を調えていた。
「さあ行きます夜お兄ちゃん! 戦いが私たちを待っています!」
「うえ……行きたくないなあ」
そうは言ってもギルドにミント一人で生かせるわけにも行かないので俺も部屋に戻って装備を調えてギルドに向かった。
――そうして今にいたる。
「はあ……また魔族ですか? あいつら以外と義理に厚いんですかね? この前ボッコボコにした連中の仇討ちですか?」
セシリーさんは困り顔で言った。
「それならお二人だけを呼べばすむのですがね……魔族領の環境が悪くなったとかで人間の領地にちょくちょく奪い取ろうと攻めてくるんですよ、今回もそれでしょうね」
さすがの魔族もあれだけ完膚なきまでに倒していれば仇討ちなど考えることも無いのだろう、しかし今回来ている連中は仇討ちを考えるほどの理性を持ち合わせていないらしい。
「じゃあお兄ちゃん! ちゃちゃっと片付けますよ!」
ギルド内では総員招集がかかったため多少ピリピリとした空気が流れていた。
俺とミントが来たので露骨に安心した奴も見えたが、どうやらやっぱり俺達にお任せする腹づもりのようだな。
「みなさーん! 私たちに続いてください! 殲滅戦ですよ!」
「「「「「「「おーー!!!!!」」」」」」
コイツはナチュラルに指導者の器ではないのだろうか? 一声で士気は目に見えて上がっていた。
町を出て南、観測拠点の先に魔族は集まっていた。いや、正確に言うと町の方へと突撃していた。
――
俺達が観測点についた頃にはわずかに遠くの方に魔族……いや、大きなトカゲ程度の魔物が大挙して押し寄せていた。
「あと少しで届くでしょう、ここが最終防衛ラインです」
観測点の担当はそう言った。
さて、と。
――
妹バフを使用します
――――
力「S]
体力「S]
魔力「A」
精神力「S]
素早さ「S」
スキル「爆発系魔法、冷気耐性」
――――
今回はこの程度で十分だろう。スキルの効果も順当に上がっているのであの程度の群れなら勝てるはずだ。
「お兄ちゃん! 今回は武器があるのでもうちょっと力の強化できませんか?」
ミントは大きな剣を装備しているので力が必要なのだろう。その剣はギルドのレンタル品だ。
――
力「S+」
――
ミントはぶんぶんとバスターソードを振り回してから満足そうに言った。
「いい仕事ですね、さすがはお兄ちゃん!」
そう言って自信満々だった。
「油断はするなよ?」
「私が負けるわけないでしょう?」
そういうところが駄目だというのに……でもまあ……勝つんだろうなあ……
「じゃ、ひと狩り行ってきますね」
言うが早いかミントはダッシュで魔物の群れに突っ込んでいった。
吹き上がる緑色の体液や、は虫類特有のひれ付きの手足、頭部などがぐっちゃぐちゃに飛び散っていた。
なお、現時点で俺達兄妹以外の冒険者はまだ魔物のところに向かっている最中だ。ミントが高速移動で敵に先制攻撃をかけたので大分先の方で戦線が止まって、そこまで皆ダッシュで向かっている。
俺は観測所のてっぺんに登らせてもらいミントに適切なバフやヒールをかけていく。
そうして日が傾いた頃、キリングフィールドでは魔族の死体が山盛りになっていた。
「ほらお兄ちゃん、楽勝でしょう?」
なんでもないことのように言うミントだったが、その魔物の返り血で染まった姿は他の冒険者達をドン引きさせていた。
「なあ妹ちゃん、あの死体の山を焼却できないか? あれだけの数の死体を詰んでいると疫病の原因になりそうだ」
「任せておいてください!」
そう言って魔物の死体へ向けて全てを焼き尽くす炎を放った。
「フレイムトルネード!」
死体の山は炎の渦に入り、徐々に焼かれていって最終的にはわずかばかりの骨を残すのみとなった。
「やっぱりすごいなあ……」
「ミントちゃんがちょっと怖いな」
「どんだけ魔力があるんだよ」
等々の温かい言葉をかけていただきながらギルドへ向かって帰るのだった。
しかし、ミントは町に入ってからギルドに向かう前に体を洗ってくると言うことで少し遅くなった。
さすがにあの魔物の体液まみれで人混みに入らないだけの配慮はあるらしい。
そうして気を取り直してギルドへ向かうと……
「はあああ!!!!?????? 報酬がたったこれだけ?」
俺達への報酬は少ないものだった、当然不平をこぼすミントだった。
「ごめんなさい! 本当にごめんなさい! 今回は依頼主がいないので報酬はギルドの持ち出しなんです、これだけの人を集めるとえこひいき無しで報酬を配ったらそうなるんです……」
今回の討伐はほとんどミントの成果だったが、頭数として集められた全員に同額の報酬が配られていた。
どうやら全員が等しく危険な依頼を受けてくれたのだから成果で差はつけられないとのことだった。
「うぅ……世知辛いですねえ……」
帰り道でそうつぶやくミントだったが、俺達がもらったのはFランクにしては破格の報酬だったのでそう悪いものでも無いのだろうと思っていた。
「お兄ちゃん! 次は単独で受けましょうね!」
そういうミントだったが、なんだかんだで少し満足そうにはしていたので俺はそれ以上の口出しはしなかった。




