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ジョブ「お兄ちゃん」ってなんですか? 謎のジョブを与えられて困惑していると妹が最強になりました  作者: にとろ


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妹の私は言葉尻を捉えます!

 お兄ちゃんは少々甘いです!


 私はそう思うのですが、お兄ちゃんはそれを悪いことだとは思っていないようです。いえ、確かに私に甘いのはいいのです、しかしお兄ちゃんといったら敵やライバルもできるだけ戦わないにこしたことはない、などと考えているようです!


「お兄ちゃんは私にだけダダ甘だったらいいんですよ! なんで私以外にも情を向けるのでしょう?」


 そう愚痴ったところで返答があるわけでもありません、それはそうなのですが、やはりお兄ちゃんに文句を言うべきでしょうか?


 もしそれをやったとして、「私への」甘さまでなくしてしまったら本末転倒極まりません、どうしたものでしょうねえ……


 お兄ちゃんを手に入れるための力が欲しい、でも私に力はありません、全てはお兄ちゃんからの借り物なのです。お兄ちゃんは気前よく利子も取らずすごい量の力を与えてくれますが見返りを求めることはありません。


 個人的にはもっとこう……私への命令とかを頼んだっていいはずです、やはり私の魅力が足りないのでしょうか? いえ! そんなことはないはずです! 私は可愛い! お兄ちゃんは私の虜! よし!


 ふう……お兄ちゃんが私を好きでないなどというデマをついつい考えてしまったので真相を自分に言い聞かせて心を落ち着けます。


 私はお兄ちゃんの部屋へ飛び込むために自分の部屋を出ます、そうです! もっとお兄ちゃんと触れあえばきっとお兄ちゃんも私を好きになってくれるはずです!


 バタン!


 ドアを開けると目の前にお兄ちゃんが居ました! あああ!? どうしましょう! まさか飛び込む予定の対象がその場に居るなんて!?


 私がアワアワとしていると、お兄ちゃんは私に話しかけます。どうしましょう!?


「何を焦っているのか知らないがコーヒーでも飲むか?」

「ははははい!」


 噛んでしまった、お兄ちゃんの突然の問いかけに条件反射で返答してしまいました。


「何か悩みでもあるのか?」


 お兄ちゃんはコーヒーミルで豆を挽きながら私に訊いてきます。まさかお兄ちゃんにもっと甘くして欲しいなどと甘えられないので微笑みながら「何も」と答えてしまいます……


 もう! めっちゃありますよ悩み! でも言えるわけないじゃないですか! 悩みの本人がそう言うなんて反則ですよ!


 お兄ちゃんは少し考えてから私に言います。


「お湯を沸かしてくれるか?」


 ――

 スキル「火属性魔法」が付与されました

 ――


 私はお兄ちゃんが会話のきっかけを作ってくれたことに感謝しながらお兄ちゃんにならびます。


「リトルフレイム」


 小さな炎がヤカンの下にでき、入っている水をあっという間に沸かしていきます。


「ねえお兄ちゃん? 私ってどうだと思います?」


「どうって何が?」


 お兄ちゃんは肝心なところで気が付いてくれないんですねえ……


「私って可愛いですよね? 魅力的ですよね?」


 もうじれったいので直球の質問をします。お兄ちゃんはお湯をドリッパーに注ぎながら少し悩んだように考えてから答えます。


「少なくとも可愛いのは確かだと思うぞ? 少なくとも俺はそう思う」


 よっっしゃあああああああああああああ!!!!


 それですよそれ!!!!


 別に有象無象に好かれようと全く関係ないのです! お兄ちゃんが私をどう思っているか? それが全てなのです!


「そうですか! やっぱり私は最高に可愛いですね! どうですか? 付き合っちゃおうとか思いませんか?」


 お兄ちゃんは困った顔でコーヒーを私に差し出して答えます。


「そうだな、妹じゃなかったら好きになってたかもな、もっとも、その時はお前に相手にされない自信はあるぞ?」


「そうですか」


 いけますね! お兄ちゃんと私とのあいだに存在するのは血縁という壁のみ! 倫理観を投げ捨てれば私とお兄ちゃんは愛し合えるはずです!


「お……お兄ちゃん、私はお兄ちゃんのこと好きですよ」


 お兄ちゃんは温かいコーヒーを一口飲んで答えます。


「そうだな、俺もお前を大事な家族だと知ってるし、お前のためなら多少のことはできる覚悟はあるぞ?」


 うおっっっっっっしゃあああああああああああああ!!!!


 え!? お兄ちゃんは私のことが好き! いいですねえ……何度聞いても素晴らしい声です。蓄音機に記録して毎晩寝る前にリピートさせたいレベルですよ!


 私は大興奮をしながら冷静を装ってコーヒーを口にします、なんだか幸せなのでいつもと味が違う気がしますね。


「あれ? お前ブラックで飲めるんだっけ?」


 あああ! ついついお兄ちゃんに愛をささやかれたのでついつい砂糖を入れるのを忘れていました!


 私はシュガーポットを受け取り砂糖を入れます、ああ……お兄ちゃんの告白……


「おい……もう五杯も入れてるぞ?」


 おっといけない、ついついお砂糖を大量に注いでしまいました。


 コクリと飲み込むとやたらと甘く、飲み物なのにかえって喉が渇きそうな味がしました。


「お兄ちゃん……よろしければさっきの言葉をこの紙に書いて貰えますか?」


 私は手元にある一枚のメモ用紙をとりだし、羽ペンをお兄ちゃんに渡します。


「別にいいけど……なんでだ?」


「私の満足のためです!」


 堂々と言い切ってお兄ちゃんに執筆を求めます、お兄ちゃんも私のワガママにも慣れたもので書けば済むのならとスラスラ書いてくれました。


 ――

 俺もお前を大事な家族だと知ってるし、お前のためなら多少のことはできる覚悟はある

 ――


その一文を書いてもらって私はそれを宝物にしようと決めました。


 だからお兄ちゃんが好きなのです!


 私はその紙をそっと懐にしまいました、なんだかお兄ちゃんが守ってくれているようで安心します。


「で、結局悩みってなんだったんだ?」


 お兄ちゃんの察しの悪さはしょうがないですね……


「安心してください! たった今解決しました!

 

 ――


 その日の夜、私は先ほどの紙を寝る前に枕の下に置いて眠りにつきました。そこまでは良かったのです……


 しかし翌朝、私は猛烈に後悔するのでした。


 ああ……お兄ちゃんの書簡が……


 私の寝相の悪さで枕の下から出てきた紙に私がお兄ちゃんの出てくる幸せな夢を見たせいでついつい流れてしまったよだれで紙が濡れ、何が書いてあるか読めなくなってしまったのでした……


 しかし! 私はお兄ちゃんを諦めないのです! いつか思いは通じるはず!


 そんなわけでお兄ちゃんの部屋に朝ご飯ができたことをお知らせに行くのでした。


「お兄ちゃん! 朝ですよ!」


 そんなことを言う私の心の中にはお兄ちゃんの言葉が刻みつけられているので、何気ない出来事も覚えているかぎり、きっといつまでも一緒だろうと確信をしているのでした!

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