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ジョブ「お兄ちゃん」ってなんですか? 謎のジョブを与えられて困惑していると妹が最強になりました  作者: にとろ


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妹と複製

 ピコーン

 ――

 妹との絆レベルの上昇により「デュプリケートLv.1」を付与することができるようになりました

 当スキルは「妹の持ち物」に限られる点に注意してください

 ――


 そういや最近絆レベルが上がってたもんなあ……ある意味では最近スキルが増えなかったことが不思議なくらいだ。


 デュプリケート、複製魔法か……使いようによっては強力な魔法だが、複製できるのが妹の持ち物限定というのは微妙な制限だ。


「あー……どうすっかなあ……」


 俺は朝食後のテーブルに突っ伏してさえない頭で使い道を考える。


「お兄ちゃん、また何かスキルを覚えたんですか?」


「あー……そうだな、なんとも使い方に困るようなやつだけどな」


 複製にしたってできるんだろうけど金貨を複製したら経済システムが破綻してしまう。


 そこまでして複製の必要なものがあるだろうか?


「ちなみになんですか? めっちゃ気になるんですけど!」


 コイツに言うとろくでもない考えを思いつくんだろうなあ……


「なんですか? 言いたくないようなスキルならなおさら気になりますね!」


 興味津々だよコイツ、何を考えているのやら……


「そうだな、デュプリケートってスキルだ。お前に複製能力を付与できる」


「ふむ……」


 考え込む妹、一体何を考えているのだろうか。


「お兄ちゃん、金貨……」


「それやると経済が破綻するんだよ、できるんだろうけど金貨の価値がもの凄く下がるからそんなにいいもんじゃないぞ?」


「むぅ……」


「ちなみにお前の持ち物しか複製できない制限付きだ」


 はぁとため息をつく妹。


「お兄ちゃんのスキルはいつも私限定ですね」


 とても嬉しそうにいうが、妹限定スキルってなんなんだろうな?


「ねえねえお兄ちゃん! 私のものなら複製できるんですよね?」


「多分な」


「じゃあ高級品を一個買ってそれを増やせば儲かるのでは!」


「金貨と一緒だよ、それがだぶついて価格破壊が起きてお金にはならないよ」


 希少価値と金額の比例関係について思いを馳せる。


「それと一応言っておくが著作権って知ってるよな?」


「無視しちゃ駄目なんですか?」


「裁判沙汰をいとわないなら無視もできるがな……少なくともここは法治国家の一部だ」


 ルールブレイカーをやる人は大勢いるが大抵ろくな結末をたどることがない、自業自得ではあるのだが今回ばかりは使い道がないかなあ……


 それにLv.1というなんとも当てになりそうにないスキルレベルだ。


「じゃあどんなものか試してみるか?」


「試す?」


 俺は水に塩を大量に溶かし食塩水を作る。溶けきらなくなるまでコップの水に塩を混ぜておく。


「じゃあコレを自分のものとしてデュプリケートしてみてくれる?」


 ――

 妹にスキル「デュプリケート」を付与しました

 ――


「じゃあやってみますね……」


「デュプリケート!」


 二つ目のコップが妹の手の中に現れる、こういう発現の仕方をするんだな。


 そうして二つ目のコップをテーブルに置いて俺に聞いてくる。


「で? コレで何が分かるんですか?」


「ああ、ちょっと飲んでみる」


 飲むと言ってもなめる程度に口に含んでなんとか飲み下す。


 しょっぱさだけではなく、酸味や苦みも結構混じっている。先に作った食塩水の方をなめてみるとただしょっぱいだけだ。


「体験する方が早いな、同じ事をやってみるといい」


 妹もコピーとオリジナルの味比べをしている。


「完璧な複製というわけにもいかないようですね……」


「だろ? 武器とかを複製していざ使ったら折れるとかいう笑えないことも起きかねないんだぞ?」


「確かに、命を預けるには少し危なっかしいですね」


 安全はただではない、それなりのコストを払って得られるものだ。


 そうして俺達は片っ端から複製をしてみた、どれも精度が悪いものばかりで、使い物になりそうなレベルの複製は全くなかった。


 意外な発見としては、複製前のオリジナルより価値のある物になることがときどきあることだった。


 例えば塩を複製したら火薬ができたことがあった、それはさすがに危険なので破棄しておいた。


 そして二つ目に気づいたことは、それなりに見た目が似たものになることが多いと言うことだった。


 コレを使えばぱっと見分からない贋作を作ることは可能になるがそんな危ない橋を渡ることはできない。


 そうして片っ端から複製していきあらかた終わったところで二人でコーヒーを飲むことにした。


 妹は多少不満そうだが諦めもあるようだ、あれもこれも試したいとは言わなくなった。


 二人がコーヒーを飲み終わった後でカップを洗おうと思ったところで妹のカップが手から滑り落ちて、地面に衝突して砕け散った。


「あーやっちゃったな……また買っとくよ」


 それほど高い物ではないのが助かるところだ、工業製品の製造に魔法を使うことで量産ができるようになり、こういう職人芸的な物は圧倒的に値段が下がった。だからもう一つ買うくらいなんの問題もない。


 しかし妹は少し考えてから俺のカップを引き寄せた。


「デュプリケート」


 俺のカップが妹の手の中に複製される。


「ほら、役に立ったでしょう?」


 なんともしょぼい使い道だが俺達には少しの節約になった。


 ちなみにその複製カップは多少形がゆがんでいたが、水を入れてみても漏れるようなことはなく、一応使える物になっていた。


「へへ……お兄ちゃんのカップ……」


 何やら口走っている妹を置いておいて、俺は二杯目のコーヒーを煎れるのだった。


 そこでふと気になったことについて妹に単純な疑問をぶつける。


「なあ……? なんでこのうちの物が片っ端から複製できたんだ? 俺が持ってる物までできたよな?」


 それについて疑問に思わなかったのが不思議だった、スキル説明には「妹の物」縛りがあったはずだ。


「それは採っても簡単な話ですよ!」


 なるほど、この時点で超理論が返ってくることを俺は簡単に予測できていた。


「お兄ちゃんの物は私の物、私の物はお兄ちゃんの物。だからここにある物はなんだって複製できるんですよ!」


 どうやらスキルというのは人の視点によって効果が変わるらしい、理不尽極まりないスキルについて考えながらコーヒーを飲み干した。

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