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ジョブ「お兄ちゃん」ってなんですか? 謎のジョブを与えられて困惑していると妹が最強になりました  作者: にとろ


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妹の理想のデートと都市伝説

 今日はお兄ちゃんが私を買い物に誘ってくれました! こんな嬉しいことがあるでしょうか? いやない!


 というわけでウキウキでお洒落をしてお兄ちゃんの待つ玄関へと駆けていったわけですが……


「お兄ちゃん……買い物って……」


「ああ、バフだけでも傷一つつかないにしてもやっぱりお前用の装備は要ると思ってな」


 まったく、お兄ちゃんはロマンがない人ですね、普通こういったときはデートで服を買ったり演劇をみたり、もっと楽しいことがあるでしょう。何が悲しくてお兄ちゃんとの久しぶりのデートで行き先が武器防具屋になるんでしょうか?


 私は前世で何か悪いことをしたんでしょうか? 前世のカルマってやつかなと疑ってしまうくらいお兄ちゃんの私への扱いが悪いです。


「お兄ちゃん! もっとドレスとかこう私に似合うものがあるとは思いませんか?」


 辺り一帯無骨な装備品がならんでいる中で私はお兄ちゃんに訊きます。


「安全が第一だろう? お前は俺のバフに任せて突撃するからヒヤヒヤするんだよ。頼むからまともな装備を付けてくれ。お? このガントレットはいいんじゃないか?」


 お兄ちゃんに何を言っても無駄なようですね……私は適当にぶらつきます、ここには女の子の心が躍るようなものは一切置いていません、むさ苦しい武器と防具がならぶのみです。


「おにーちゃん! どうせバフで体力上げれば怪我なんてしないんだから防具は要らなくないですか?」


 お兄ちゃんは肩をすくめて言います。


「そういう姿勢が心配だからまともな装備が要るって言ってるんだよ……そんなことを続けてたら取り返しがつかなくなるぞ」


 お兄ちゃんの言うことはきっと正しいです、でも私は正論を求めていないのです、きっと議論を続けてもずっと平行線で終わるでしょう、ならばさっさと装備を選んで少しでもお兄ちゃんと遊べる時間を増やすべきですね。


「お兄ちゃん、この辺で良いんじゃないですか?」


 私は適当に選んだ革鎧と金属の盾を見せながら言います、武器は素手で、時々ナイフで充分大抵の敵には対処ができますから必要ありません。


「へえ……動きやすそうだな……値段も、手頃か……」


「なんで値段が手頃なのに残念そうなんですか?」


「こういうのは大抵スペックと値段が比例するからな、お前にはもっと高いモノを使って安全を守って欲しいんだが……」


「あーもう! これがいいです! いいですからさっさと買ってしまいましょう!」


 お兄ちゃんをグイグイと押して会計を済ませました、これらはデートの邪魔なので即ストレージに放り込みました。


「じゃあお兄ちゃん! デートをしましょう!」


 お兄ちゃんも、しょうがないなあと言って私の手を握ってくれた。そうそう、これですよ! あんなむさ苦しい場所ではなくキラキラした場所で男女二人が逢い引きをする、これが正しい休日の過ごし方です!


 私たちは服を買うためにお店に入って私の服を見繕ってもらいます。


 お兄ちゃんはあまりファッションに頓着しないようですが、お兄ちゃんのファッションを気にするのが私だけとすれば、私が問題ないと思えば一切の問題がないので気にしないことにします、むしろファッションに気を使って交友関係が広がる方が問題でしょう。


 私は赤いワンピースと白いワンピースのどちらが似合うかお兄ちゃんに聞いてみます。


 お兄ちゃんはどっちも似合うと言ってくれましたが、赤いワンピースの方を見ていた時間がわずかに長かったのでこちらを買うことに決めました。


 お兄ちゃんのファッション基準が私だけであるように、私もお兄ちゃんに受けが良ければ世間の流行などと言うのは些細な問題なのです。


 その場で着替えて劇場へと向かいました。ドレスコードは幸いにも存在しなかったのでお兄ちゃんも入場できます。


 そこで上演された演劇は、決して結ばれる運命にない二人が禁断の愛に手を出すという物語でした。何がとは言いませんが素晴らしいメッセージ性を感じますね!


劇場から出てお兄ちゃんの顔を見ます。


 「お兄ちゃん、楽しいですか?」


 お兄ちゃんは少し物憂げな顔をしていたので聞いてみました、デートというのは二人で楽しむモノですからね。


「俺には恋愛というものはよく分かんないなって思ってな……」


 なるほど、知らないテーマとなると心が動かされないのかもしれませんね。


「大丈夫ですよ! 私がしっかりと時間をかけて教えてあげます!」


 何も知らないお兄ちゃんに恋愛の基礎をたたき込む、そこには多少の快感も覚えます、無知なお兄ちゃんにつけ込む、悪いことをしているみたいでゾクゾクします。


「まあ、今日はこんなところでしょうか……後は家に帰って……」


「よう姉ちゃん! 俺たちと遊ばねえか? そっちは……彼氏か? そんな冴えない男は無視し……」


「おい! やめろ!」

「死ぬ気か!」


 ――

 妹バフを強制適用します

 力「A]

 ――


 ドゴッ……メキメキ……


 腹に一発ぶち込み首を掴んで持ち上げます。


 お兄ちゃんとのデートを邪魔するクソは死ぬべきですね……生かしておく価値も無い。


 おっといけない、ついつい殺意に目覚めてしまいました、お兄ちゃんの前で残虐ショーをする気は無いのです、殺しはいけません、半殺しくらいで勘弁しておきましょう。


 ボトッと落とすとその男は恐怖にまみれながら逃げていきました、腹に一発決める前の悲鳴は男を心配しての声でしたがその声が届くことは無かったようです。


「お前なあ……人のスキルを強制発動させるなよ……」


 お兄ちゃんが呆れ顔で私にそう言います。


「お兄ちゃんのものは私のもの、私のものはお兄ちゃんのもの、つまりスキル発動には何の問題もありません!」


 そう言って家路を進んでいくのでした。


 なお、その後数日で『ツインテールの美少女をナンパすると地獄に落ちる』という謎の噂が流れることになりました。ちなみに少女が着ていた服は返り血で真っ赤に染まっているという根も葉もない都市伝説がしばらく流れたのでした。

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