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ジョブ「お兄ちゃん」ってなんですか? 謎のジョブを与えられて困惑していると妹が最強になりました  作者: にとろ


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妹は静かに暮らしたい

「お兄ちゃん、今日は何も起きませんねえ」


「良いことだと思うがな、そうそう厄介ごとが起きてたまるかっていうんだよ」


 私たちは昼食を食べ終わっています。朝、ギルドに行ってみましたがこれといってめぼしい依頼もなく、しょうがないのでこの前の報酬を使ってお昼ご飯を食べていたのでした。


「このクソ寒いのにギルドまでわざわざ出向いて結果が収穫無しですよ? イラッとするでしょうに」


「口が悪いぞ」


「「はぁ……」」


 二人してため息をつく、父母の遺族へのお給金は生きていくのに困らないほど貰えていますが、贅沢はできません。私はお兄ちゃんと成り上がって贅沢の限りを尽くしたいのです!


 何もない、特別な日も確かに良いものです、しかし、最近何も起きなさすぎじゃあないでしょうか?


 などと考えていると家のドアが叩かれました。


「はーい」


 私は玄関に行くと男の人が立っていました。


「なんでしょうか……?」


 不信感もあらわに問うと男の人は自己紹介を始めました。


「初めまして、私は魔王軍とうば……ちょっと閉めないでくれないか?」


 私は全部聞く前に玄関を閉めました、こういう特別は別に求めていないのです。


「誰だったんだ?」


「なんか怪しい商品の勧誘でしたね、追い返しておきました」


 しれっと言って、私とお兄ちゃんの甘い日々を過ごすことにしましょう。


 ゴンゴン


 しつこいですね……


「なあ……」


「しつこい勧誘なのでしょう、ノルマがあるんじゃないですか?」


 ゴンゴン


「ちょっと俺が断っとくよ」


「え!? あ! ちょっとお兄ちゃん!」


 言う前にお兄ちゃんは玄関を開けていました。


「ありがとう、話は聞いてくれるということだね? 私は魔王討伐軍の者だ」


 お兄ちゃんも察したのかドアを閉めようとするがもうすでに男の人は身体をドアの中に滑り込ませていました。


 しょうがないのでキッチンに案内して白湯を出します。 コーヒー? お兄ちゃんと私の飲み物であってどこの誰だか知らない人間に出すコーヒーはないんですよ!


「これはどうもご丁寧に……」


 軍から来た人は白湯を平然とすすっていた。結構度胸のあるやつですね。


「で、今日は何の用ですか? 討伐軍になら入らないですよ」


 その人はため息を一つついて私たちにいいます。


「それは分かっているんだがね……私も人材集めを命令されているんだよ、ハハ……宮仕えの辛いところだねえ……」


 この人は情に訴えかけてくるタイプのようだ、命令なら無理矢理追い返すのですが『お願い』をする人間は強硬手段を取りづらいので面倒くさいことこの上ないです。


 ため息をつきながらお兄ちゃんの方を見ます、お兄ちゃんは少し同情しているようです、だからこういう事情持ちはたちが悪いんですよね……


「とにかく、私たちは軍に入る気はないですし、そもそも単なる一般人の兄妹なのでお役に立てないと思います。知ってますか? 私たちはギルドでFランクなんですよ?」


 驚いた顔を見せる男の人、どうやら実力に尾ひれがついてさぞや実力者だと伝わってしまったのでしょう。


「しかし……君たちが実力者だと町の噂で伝わっていました。皆が嘘をついているようには私には思えなかったのですが……」


 まったくもう……有名になるというのも面倒なモノですね。


 私はギルドカードを差し出します。


「ほら、Fランクでしょう? お兄ちゃんも一緒ですよ?」


 私のギルドカードをためつすがめつじっくり見た後で偽造ではないと納得したようでした。


「魔王軍だかなんだか知りませんがね、私たちは平和に暮らしたいんですよ、何が悲しくて鉄火場にツッコむ必要があるんですか? 即死んじゃいますよ?」


 勧誘の人もFランクを軍に入れるのも不味いと判断したのか、諦めモードになりました。


「なるほど、しかし何故あなた方の噂があんなに多かったんでしょうな?」


「誰だって刺激的な話が好きだからでしょう? Sランクパーティがドラゴンを討伐したという話よりもFランクパーティが討伐したという話の方が皆好きなんですよ。当たり前の話だと噂にもならないんです、そこの尾ひれがドンドンついていっただけでしょうね」


「はぁ……また人材探しか……その辺に優秀な冒険者でも落ちてないかなあ……」


 そうして勧誘の人は失意の中に我が家を後にしました。有能な人がその辺にフリーでいるわけがないでしょうに……


「なあミント……」


「おっとお兄ちゃん、同情はしない方が良いですよ? 軍部は理不尽な命令やずさんな補給体制でロクな暮らしができないらしいですからね、別に魔王軍も大したことがないらしいですしほっといた方が今後のためですよ?」


 私はすっぱりとお兄ちゃんの同情を切り捨てる、ギルドの依頼は安全なのを選ぶのにこういうときだけ大胆な選択を仕様とするのはどうかと思うのですがね。


「人材不足って大変なんだな?」


「高望みしすぎなんですよ、あの人達に必要なのは優秀な現場の魔道士ではなく、優秀な指揮形態ですよ。何でもまだ倒してもいない魔王軍の討伐の功績でどこがもらうか揉めてるらしいですし、自業自得でしょうね」


 あの人達は下の人間を大量に集めて人海戦術で何とかしようとしている、聞いたところによると突撃戦法しかとらないという怖い噂さえ聞く。魔王軍も楽な仕事でしょうね。


「しかし、Fランクから上がっていないのがこんな説得力になるとはなあ……」


「実力があれば皆さんドンドンランクを上げていきますからね、私たちみたいに『偶然』出てきた敵の討伐報酬をもらっているのは記録には残りませんから」


 まぐれが実力と混同されてはならないということで、依頼以外の討伐は討伐記録に残さないようになっています、さっきの人がギルドにいってもせいぜいゴブリンやコボルトの討伐記録くらいしか見つからないでしょう。


「魔王討伐軍の労働環境は悪そうだったな、勧誘の人までものすごく残念そう……というか別の実力者探すのが嫌そうだったな?」


「そんなものでしょう、実力があっても環境が悪いのでやめる、人材が足りないから質が悪い人間を雇う、ますます環境が悪くなる……負のスパイラルっていうやつでしょうね」


 お兄ちゃんはさっきの人を少し気の毒に思っているようですが、あの人も自分で志願したのでしょう、辞めないのが悪いのです。


「さて、夕食にしましょうか。まったくもう……さっきお昼ご飯を食べたばかりだというのに昼いっぱい粘るとは迷惑も考えてほしいものですね」


 私は夕食の準備に取りかかりました。

 しばらくは派手な討伐は控えた方が良いかもしれませんね、人の口に戸は立てられぬといいますし……


 私は目立つことにも善し悪しがあるのだとその日、認識したのでした。

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