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妹は眠りにつきたい

 お兄ちゃんのことを愛していたせいでしょうか? 現在朝目を覚ました私の目の前にお兄ちゃんの寝顔が見えます。


 じー…………


 冷静になりましょう、目を閉じて精神統一して再び目を覚ますと私のベッドに戻っているはず…………


 ぱちり


 うん、お兄ちゃんがいますね? 私の目の前です。


 さて……何故でしょうか? そういえば昨日は夜遅くまで私が本を読んでいました。ランプを消して部屋に戻って……?


 あー!? ヤバイです! 夜が明けそうだったのでついお兄ちゃんを起こしに行こうとしてしまいました! いつもの習性って怖いですね……


 おーけー。落ち着きましょう、現在お兄ちゃんはよく寝ているようです、今のうちに部屋に逃げ帰ればここに居たことは誰も知らない秘密になります。


 ごそごそと慎重に布団を動かさないよう、音を出さないようにベッドから這い出ます。よし! バレてない!


 慎重に……慎重に……ギィとドアを開けて部屋の外に出ます、よし、ミッションコンプリートです! 無事失態を見せないことに成功しました。


 ふぁぁ……眠気が安心したらまたやってきました、部屋に帰って寝ましょう。


 そうして私は部屋に帰ってベッドに倒れ込みました、そうして眠りにつく前にはたと気づきます、あれ? さっきのはチャンスだったのでは?


 ――


 ふぅ……行ったか、ビックリしたー、朝起きたら隣に妹が寝ているってどんなドッキリだよ!


 どうやら昨日寝るときに部屋を間違えたらしい、夜這いではなかったのでセーフ……なのかな?


 安心したら眠くなってきた、寝よう。


 こうして俺たちは朝の時間をゆうゆうと使って二度寝した。


 ――


「おはようございますお兄ちゃん……」


 私は眠い目をこすって挨拶をします、結局心が騒いで余り眠ることができませんでした。


「おはよう、ミント、眠いのか?」


「いえ、全く問題ないです」


 問題ありまくりなのですが正直なことを言うわけにも行きません、というかお兄ちゃんの顔が少し赤い気がするのは何故でしょうか?


 私は朝食の目玉焼きとトーストを焼きながらお兄ちゃんに聞きます。


「ところで何か変わったことでもありましたか?」


「いや、何もない」


 セーフ! セーフです! バレてません! 今度は寝込みに忍び込むのもアリみたいですね。なかなかスリリングで心が昂ぶりますね。


 そんなことを考えながら朝食ができていきます。


 食卓に一式を並べてお兄ちゃんと食事をします。背徳感というのは調味料でもあるのでしょうか? ご飯がとても美味しく感じます。


「今日はギルドで依頼を受けるか?」


「ん……今日はゆっくり眠りたいですね……」


「やっぱり眠いんじゃないか。後片付けはしとくからもう一度寝てこい」


 お兄ちゃん言葉に甘えて二度寝という贅沢を楽しむことにします。いえ、三度目なので三度寝でしょうか?


 部屋に戻ってさすがに精神が限界に来たのか眠気に負けて意識が落ちていきました。


 そして夢の中で声が聞こえました……

 

 ――


プロセスXXXXのリソースが酷くリークしているな?


 プロセスYYYYとリソースの競合を起こしていました、影響の少ない方をいったん落とすことにします。


 はい……いったん落としてリソースを解放しました、システム再起動に数分かかります


 問題ない、私たちの計画は何の問題も無く進んでいる


 ――


 なんでしょう? 酷く曖昧な夢でした、聞いたことのない言葉がならんでいました。私が一度も聞いたことのない言葉で白い服を着た人たちが何かを語っていました。


 …………


 あれ? 何かを考えていたような気がしたのですが……全てが曖昧に溶けていきます……私は妹でお兄ちゃんが居て……?


 夢でしょうか? 気分が澄み切っているのできっと澱んだ気分と精神の疲労のせいでちょっと白昼夢を見たのでしょう。


 窓の外に目をやると太陽は大分頂点から傾きがついていて、正午から時間が経ったことを表しています。


 部屋を出てキッチンに向かいます。


「あ、お兄ちゃんおはよーございます!」


「おはようと言うには遅いかな……」


 お兄ちゃんは苦笑交じりに答えてくれました。そうですね、お昼を過ぎてからおはようというのは少し遅すぎますね。


「お兄ちゃん、お昼ご飯はどうしましたか?」


 太陽の具合からするにそこそこお昼からは時間が経っているでしょう、お兄ちゃんの絶望的な料理能力から考えるとウチで食べたわけではないでしょう。とはいえお兄ちゃんは自分の作った料理を顔色一つ変えずに食べられるようですが……


「食べてきたよ、ギルドの食堂を使ってきた」


「そうですか……」


「どうした? なにか変な顔してるぞ?」


「え!? 私は元気ですよ?」


 お兄ちゃんは私を怪訝に眺めた後で言葉を取り消します。


「いや、気のせいだろうな、悪い、忘れてくれ」


 私の中の記憶がチリチリと意識に訴えかけますが、お兄ちゃんの声で全てがかき消えていきました。


 何かすごく大事な夢を見ていたような気がするのですが、全ては目の前のお兄ちゃんを見ているとかすかに残っていた記憶は霧散していきました。


「お兄ちゃん! 夕ご飯は私に期待しておいてくださいね? 今日の私は気分が良いのです!」


 そうでした……今日はお兄ちゃんと一緒に寝ていたのでした、それだけ覚えておけば後のことは忘れてしまっていいでしょう。


 そうして私は夕食の買い物に出て行きました、今日は何故か頭を酷く使ったような気がします。頭がスッキリした代わりに記憶が所々抜け落ちています。


 そこに一体何があったのかは知りませんが私にはお兄ちゃんが確かにいます。だったらそれでいいのでしょう。多くを望む必要はありません、当たり前の幸せだけを大事に生きていくべきでしょう。


 そうして野菜とお肉を買って家に帰ってきました。


「お兄ちゃん! 晩ご飯作りますよ!」


「ぷっ!」


「お兄ちゃん! 何がおかしいんですか!」


「いやいや、悪い悪い、なんか酷く深刻な顔して起きてきたかと思ったら何も覚えてなさそうな顔してるからさ」


「もう! お兄ちゃん、ちゃんと晩ご飯作って欲しいならおとなしくしておいてくださいね!」


 そう言って私は夕食を作るのでした。これが私の日常であり、何も変わったことのない一日でした。


 そうして一日眠りについて翌朝目が覚めたときには、昨日大事な記憶があったような気がするのですが一昨日と今日のあいだの記憶がすっかり抜け落ちていました。


 別に大層な記憶を覚えている必要はないのですが、何故かお兄ちゃんと美味しいイベントがあったような気がするのにそれを忘れた気がするのは酷く残念なものでした。


 しかしまた、今日も一日私とお兄ちゃんの日々は当たり前のように過ぎていくのでした。

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