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妹と始める! クラフト依頼

ピコーン

 ――

 空調魔法を付与できるようになりました

 ――

 空調魔法? 寒さを和らげてくれるのだろうか?


 ――ギルドにて


「この依頼をミントさんに任せるのはちょっと問題が……」


「何故私じゃダメなんですか!? ちゃんとランク的にも問題ない依頼じゃないですか!」


 妹は例によってギルドの受付と紛糾していた。


 ホーンラビットの討伐依頼だが、曰く「あなたに任せたら全部消し飛ばすと噂になっていまして……」とやんわり断られたのでゴネているのだった。


 俺は依頼票の貼られたボードを見ながら妹でも問題なさそうな依頼を探す、どうせあの依頼は受けられないだろうしな。


 しばらくクラフト系依頼を眺めながら、簡単そうなものを探していると妹から声がかかった。


「お兄ちゃん……ダメでした……依頼者はクソですね」


「まあしょうがないさ、受けられそうなのを探そうぜ」


「はぁ……しょうがないですねえ……クラフト系依頼ですか?」


「そうだな、これなら大抵断られることはないだろう?」


「そうですね」


 妹も渋々といった感じで依頼票を眺めて回る。


 一枚の依頼を眺めながらそれを取って俺の方へと持ってきた。


「お兄ちゃん、これいけそうじゃないですか?」


「なになに……鉄製品のリフレッシュ?」


 依頼内容は、農機具が古くなってきたので金属のさび取りということだった。


「これはなんとかなりそうだな」


 俺たちはその依頼票を受付に差し出して今度はちゃんと受領された。


 ギルドを出て依頼人の元へ向かう。


 ――


 そこは結構なお屋敷だった、所謂豪農というやつだろう。


「おお! 依頼を受けてくれたんですね! いやあ、量が量なのでなかなか受けてもらえなくて困ってたんだよ!」


 いかにも農夫といった依頼人は俺たちを農機具の場所へ案内された。


 そこには結構な量のボロボロになった農機具があった。


「鉄の部分のさび取りをお願いしたい、木製の部分は買い換えれば済むのだが、鉄は少々この量だと高くついてね」


 なるほど、鉄の精錬か。冒険者に頼むことではないかもしれないが便利屋としては時々こういう依頼が来ていたりする、厄介なので誰も受けない依頼だ。


 俺は農機具の具合をチェックする、鉄の表面部分に赤さびが浮かんでいて、触るとさびが手につくような有様だった。


「できますか? その……あなた方は変わった魔法を使うとのことでギルドからも大丈夫だと言われたのですが」


 ふむ……少し考えて返答する。


「お兄ちゃん? これいけますか? 結構面倒な気がするんですが?」


「いけるな」


 そう答えようとすると、妹が先に宣言した。


「全く問題ありません! 私たちに任せていてください!」


「おお……ありがとうございます!」


 俺が言おうと思ってたんだけどなあ、しょうがないなあ。


 俺は人払いをお願いする。


「全部の器具をまとめて処理するのでこの農機具倉庫に誰も入れないようにしておいて貰えますか? 危ないので」


「はい! わかりました、全員近づかないように言い聞かせておきます」


 そう言うと嬉しそうに農夫さんは倉庫を離れていった。


「で、お兄ちゃんはどんな方法を考えているんですか?」


「すぐ分かるよ」


 ピコーン

 ――

 「風魔法」を妹に付与しました

 ――


「ん? 風魔法でどうするんですか?」


「ここの地面は乾いた砂だろ? これを巻き上げて思い切り鉄の部分に吹きかけてさびを削り取るんだ」


「なるほど、確かにできそうですね」


「後処理もあるんだがとりあえずさびを落とそう。頼むぞ」


「はい!」


「ウインドブラスト!」


 地面の砂を巻き上げながら強力な風が起きて農機具に砂塵をぶつけて表面を削り取っていく。


 ざーざーと砂嵐を起こした後、しばし砂でさび取りをすると農機具はすっかり綺麗になっていた。


「おお! 良い感じになりましたね? これで報告しますか?」


「いや、一手間加えておこう」


「え?」


 妹は分かっていないようなので空調魔法の使用方法を教える。


「空調魔法で酸素を鉄の表面に吹き付けながら鉄の温度を火属性魔法で熱する」


「するとどうなるんですか?」


「酸化皮膜が鉄の表面にできてさびに強くなる」


「へー……そんな方法があるんですか」


 ピコーン

 ――

 妹に「火属性魔法」を付与しました

 ――


「これで鉄を暖めればいいんですか?」


「ああ、溶けない程度にだがな、普通にそこそこの火力であぶれば良い、木の部分は……まあ大半がこのまま使えるようには見えないし焼いても変わんないだろ」


「よし! いきますよ」


「バーニングフレイム!」


「オキシジェンジェネレーション!」


 酸素を吹き付けながら炎で鉄を熱する、ドンドンとピカピカだった鉄が黒くなり、さびに強くなっていく。


 しばらく経ってから。


「ふう……大体良い感じになりましたね?」


「そうだな、これなら依頼も達成だろう」


 そうして魔力消費で疲れた俺は倉庫で休みながら依頼人を呼んでくるよう妹に頼んだ。


 しばし待っていると、依頼人がやってきた。


「おお、あれだけ赤さびが浮かんでいたのが嘘のようですな!」


「耐蝕加工もしておいたので長持ちすると思いますよ?」


「そこまでやってくださったのですか! ありがとうございます」


 大仰に感謝する農夫さん、満足いただけたようで何よりだ。


「ところで……鉄の部分しかないようですが、取っての木はどうなったのですか?」


「ああ、加工時に全部燃えてしまいました、別で木製の部分は買い集めてください」


「そうですか……」


 少し残念そうにする農夫さん、さすがの俺たちでも腐食した木を修復できる魔法はまだ無い。


「ありがとうございます、報酬はギルドを通して渡しておきます」


 そうして久しぶりに依頼が真っ当に達成できたのだった。


「お兄ちゃん! やりましたね!」


 そう言って俺の肩をポンと叩く妹、フラリと視界が揺らいでブラックアウトした。


 ――


 光が見えてくる、あれ? 何やってたんだっけ?


「お兄ちゃん!」


 妹が俺に抱きついてくる。なんだ? 一体何があったんだ?


「あの……俺は何をやってたんだ?」


 妹は少し怒ったように答えた。


「お兄ちゃんが無茶をするからですよ! 一日倒れてたんですからね! お兄ちゃんは魔力を私に流しすぎなんですよ! 無茶をしたら元も子もないんですらね!」


 そう言って俺の胸に飛び込んでくる妹、心配をかけてしまったようだ。


「まったくもう……お兄ちゃん? いいですか? 『ほどほど』という言葉をちゃんと覚えておいてくださいね?」


 自重という言葉を知らない妹には言われたくないが、心配してくれたようなのでそれは黙っておく。


「さて、お兄ちゃん! 依頼の報酬が魔力回復薬で大半を使ったんですが?」


「それについては申し訳ない。悪かったよ」


 治療に魔力回復薬まで使ってくれたのか……アレ高いもんなあ……


「お兄ちゃん! 今度からはちゃんと私の魔力を使って魔法を使ってくださいね! 約束ですよ?」


「ああ、約束するよ」


「フフ……お兄ちゃんが起きてくれただけでも良いんですけどね……ホントに心配したんですから!」


 そうして俺たちは相も変わらず報酬の大半を使ってしまったのだった。

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