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ジョブ「お兄ちゃん」ってなんですか? 謎のジョブを与えられて困惑していると妹が最強になりました  作者: にとろ


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妹とクリスマス(当日)

「さあお兄ちゃん! クリスマス本番ですよ!」


 は? 昨日散々やったじゃないか? 何を言ってるんだ?


「俺まで精神改変を受けたのか? 気のせいでなければ昨日思いっきり騒いだような気がするんだが……」


 妹は肩をすくめて言う。


「昨日は『クリスマスイブ』です! 前日のお祭りなんですよ! 本番は今日! 今日なのです!」


「じゃあなんで昨日散々騒いだんだ?」


「ノリです、ノリと勢いが大事なんですよ! スキルの期限が一日じゃなく二日なのを疑問に思わなかったんですか?」


 ああ、そういえば二日くらい効果が続くんだったな。


「なので今日は本格的に家族で過ごすことにしましょう! 恋人と過ごすのもいいですが本場では家族で過ごすらしいですよ」


 本場ってなんだよ……?


「というか昨日は恋人のつもりだったのか……」


「それはそうでしょう! 一番ロマンチックなところで美味しい役をしないでいつするというのですか!」


 私利私欲のためにはどこまでも忠実なやつだなあ……


「いいけどさ……今日は何をするんだ? 昨日あれだけ大きな騒ぎをしたのにあれ以上の大騒ぎをするのか?」


 妹はため息をつく。


「お兄ちゃんは分かってないですね、当日は家族で静かにお祝いをするのが基本ですよ?」


 そういうもんなのか?


「ソレはともかく、このクリスマスって何のお祭りなんだ? あれだけ騒ぐからにはさぞかしおめでたい日なんだろう?」


「さあ?」


「さあ……って」


「私としては何でもいいですし、こういうお祭りごとは参加することに意義があるんですよ?」


 すがすがしいまでの開き直りだった。理由も無く騒ぎ立てるのか……


「ほら、お兄ちゃん! 今日は私の手料理でパーティーですよ!」


「せわしないなぁ……」


 二日もお祭りをするなんて変な世界もあったものだ。


「お兄ちゃん、今日は家族二人で過ごすんですからね? もっと気分を上げていきましょう!」


 俺は昨日の大騒ぎですっかり体力を消費していたのでグッタリだ。


「二日がかりのお祭りってやる方も大変だなあ……」


 ふふふ、と妹が笑って言う。


「お兄ちゃん、世の中の大半のものは楽じゃないんですよ? それでも楽しめるのが人間のいいところじゃないですか!」


 お祭り騒ぎが好きなんだなあ……たまには妹に徹底的に付き合ってやるのもいいかな……


「よし、じゃあ今日は何をする?」


「よろしい! 徹底的に楽しみましょう!」


 こうして俺たちの二日目が始まるのだった。


 町に出ると(当然妹と手を繋いでいる)皆楽しそうに町を歩いていた。


 店員さん達も今日は早上がりらしく、閉店時刻が早めになっていた。


「とりあえず、夕食の材料から買っておきましょうか」


 そうして俺たちは野菜を買ってから肉を買いにいったのだが、なぜか七面鳥を売っていた。


「これも『クリスマス』のせいか?」


「そうですね、本格的にいくならアレを買うらしいですが、私たちは普通に鶏を買っておきましょう。どうせ皆私たちが今日食べたものをすっかり忘れるんですから」


 そうだった……

 ――

 精神改変魔法は後十八時間効果を持ちます

 ――


 都合のいいタイミングで解説をしてくれる謎の声はさておき、効果が有限なら楽しむべきだろうな。


「いらっしゃいミントちゃん! 今日はお兄ちゃんと買いに来たのかい? いい七面鳥はいってるよ!」


「いえ、鶏で構いません、一羽まるごとさばいてるのをお願いしますね」


 肉屋のおっちゃんも少し驚いて聞き返す。


「いいのかい? 七面鳥が今日の定番だよ?」


「鶏でいいです、特にこだわりは無いですしね」


「そうかい、ほら! 鶏だ。今日は売れないと思ってたから安くしとくよ!」


 妹は俺に振り返り『安いでしょう?』と目で語っていた。


 まるごとの肉は持ちづらいので妹専用ストレージに放り込んでおく、ケーキと違って衝撃に強く時間が経過しないストレージはこういうとき非常に便利だ。


 そうしてカフェで一服した後帰宅した。


「お兄ちゃん、たまにはいいでしょう? こういうの」


 結構面倒なことやしきたりらしいことも多かったが……


「そうだな、楽しいな……」


 にこやかに俺に対して返事をする妹。


「お祭りごとに理由は要らないんですよ、楽しければそれで良し。悲しむのには理由が必要ですがね、楽しいのに理由は要らないってことです」


 楽しい……か……そうだな、兄妹二人でも世の中を楽しむのは簡単だ。楽しいと思えばなんだって楽しい、そういうことだろう。


「ね、お兄ちゃん、夕食はシチューですよ、あと鳥を焼いておきますね」


「悪いな、たのむよ」


 そうしてクツクツと鍋が煮込んでいる音を立てながらじゅうじゅうと肉の焼ける音を聞きながらのんびりと本を読んでいた。


 そうしてしばらく経ったころ。


「お兄ちゃん! できたので食べましょうか!」


 いい香りが漂ってきている、食欲をそそられるな。


「ねえお兄ちゃん……その、迷惑でしたか? やっぱり二日も続くと……」


 全部言う前に俺は答えた。


「楽しかったぞ、すごくな。二日もお祭りをすることなんて無かったからな、時々はこんな日も良いさ」


 妹も顔をほころばせて嬉しそうにした。


「そうですか! そうでしょうとも! 私チョイスのいい感じのイベントですからね!」


 調子に乗るやつだ、まあたまにはいいさ。


「じゃあ食べましょうか」


「そうだな、冷める前に食べようか」


「ふふ」


「くくく」


 そうして俺たちは満腹になるまでご馳走を食べた。


 食後に妹が俺にとんでもないことを言ってきた。


「ねえお兄ちゃん、今日は家族でお祝いをする日なんですよ?」


「そうらしいな」


「じゃあ一緒に寝ましょう! 今日が終わるまでお兄ちゃんから離れたくないです!」


「ええ……それはどうかと……」


「ダメですか?」


 目を潤ませながらしゅんとして俺にお願いをしてくる。


 だめ……ダメ……はぁ……


「今日だけだぞ」


「はい!」


 こうして俺たちは一日の始めから終わりまで二人で一緒に過ごしたのだった。


 手を繋いで寝るとなんとも言えない安心感があるのだった。


 ちなみに絆レベルとやらはこうした行動では一切上がらないらしい、謎のレベルだった。


 実際のところ絆レベルが上がることより、俺たちが平和に過ごせることがとても嬉しいのだった。

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