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ジョブ「お兄ちゃん」ってなんですか? 謎のジョブを与えられて困惑していると妹が最強になりました  作者: にとろ


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妹とあるゴブリンの兄妹

「お兄ちゃん! この依頼にしましょう! 今の私たちなら楽勝ですよ!」


 そう言ってミントが差し出してきた依頼書は「ゴブリン討伐」だった。


「それこの前断られたじゃん、やめとかない?」


 そう言うとミントは肩をすくめる。


「お兄ちゃん! 今日の私たちはあの頃とは違うのです! 全然実力が違うじゃないですか? ゴブリンなんてちぎっては投げを余裕でできるんですよ?」


 いやまあそこまでする必要は無いんだろうけどさ……


 止めてくれないかなあと思ってセシリーさんの方を見てみると笑みを浮かべていた、どうやら俺達が受けても問題ないと判断したのだろう。


 受けるべきか……? 危険がつきものの依頼ではあるが、最悪適当な魔法で辺り一面を更地にできるだけの力がある。


 はぁ……やるしかないか。


「分かったよ、受領してこい」


「はい! いよいよ私とお兄ちゃんの伝説の始まりですね!」


 なんか重大な依頼っぽい雰囲気を出してるがゴブリンの討伐だぞ?


 ドラゴンの討伐に比べれば雑魚みたいなもんだが、本人が満足ならそれは言うまい。


 俺はミントがセシリーさんににっこにこで依頼を受ける手続きをしているのを眺めながら、どうせまた面倒なことになるんだろうなあ……などと考える。


 そもそも今まで大事にならなかったことがないんだ、どうせゴブリンロードとかがいるんだろうなあ……と見えない敵のことを想像しながら憂鬱になっていた。


 と、承認されたらしく俺の方へ駆け寄ってきた。


「お兄ちゃん! それじゃ行きますよ! パーっとドカンと潰してやりましょう!」


「お前は血気盛んにもほどがあるぞ……」


 そんな会話をしつつも俺達は準備を進めるのだった。


「しかし今回は簡単に受けられたなあ」


 そう言うとミントは依頼の概要を説明してくれた。


 曰く、町の近所でゴブリンの目撃例があること、被害はないがもしも増えると困るので巣を作っていたら早めに潰しておいて欲しいとのこと。


 要するにいるかどうかも分からない、実質調査ついでにいたら潰しておいてくれという依頼だった。


 その分報酬は低めだが危険度を考えたら妥当だろう。


「お兄ちゃん! ここで華々しい戦果を上げれば私たちの評価は爆上げですよ!」


 コイツはもうすでにゴブリンがいる前提で話をしていた。目撃例もかなり曖昧でいるかどうかも怪しいのによくここまで熱心になれるよな……


「じゃあ行くか?」


「そうですね」


 目的地はこの町近辺の山のふもと、緊急時には吹っ飛ばしても問題ない程度には町から離れている。ドカンと吹っ飛ばしてくれと言わんばかりだ。


 ――


 しばらくの徒歩の後で山のふもとに着いた、辺りには野生動物の生息していた跡は見えるがゴブリンはいるとは思えなかった。


「本当にゴブリンがいるのかねえ……」


「さあ? とりあえずこの辺を吹っ飛ばしておきますか?」


 物騒な提案をするミント。


「もうちょっと考えてから行動しろよ、辺り一面を消すとまたなにも残らないぞ? もうちょっと過去に学べよ」


「私だって成長してるんですよ! 討伐の証拠程度は残しますよ?」


「それにしたってやり方が大雑把すぎるんだよ、一応ここも私有地だぞ、安直に資源ごと吹き飛ばすのがいいことかくらい分かるだろう?」


 ピコーン

 ――

 妹に「気配探知」を付与することができるようになりました

 ――


 わかりやすいタイミングでスキルが手に入る。使えって事だろう。


 ――

 妹に「気配探知」を付与しました

 ――


「お! いい感じですねえ、お兄ちゃんなんかやりました?」


「ああ、気配探知魔法を付与した。多分大体この辺りのことが分かるんじゃないか?」


「ちょっとやってみますね」


 ――

 「気配探知」が発動されました

 ――


 ミントはすぐに気配を見つけたのかニヤリとした、その後で怪訝な顔をする。


「どうした?」


「いえ、一応ゴブリンらしき気配はあるんですが……なんか少ないんですよね、弱々しいですし」


 群れとは書いていなかったから、数匹のはぐれゴブリンの可能性はある。


「危険は無さそうか?」


「ええ、この反応から思うところたいした強敵ではないでしょう、私へのバフをお願いします。それだけで十分すぎるでしょう」


 ――

 妹バフを使用します

 ――――

 力「A+]

 体力「A+」

 魔力「B+」

 精神力「B+]

 素早さ「A」

 スキル「なし」

 ――――


 スキルは危険なので無し、ゴブリンは魔法を使わないので魔力と精神力は控えめ、その分物理的な力をアップしておいた。


「いい感じに力が湧いてきますね! ゴブリンごときぶっ飛ばせそうですね!」


 元気いっぱいに答えるミントだが少々オーバースペックな気はしないでもない。ゴブリンと戦うならCでも十分戦える力だ。


「じゃあ気配のある場所に行こうか。武器の用意はいいか?」


「ナイフを持っています、盾は必要ないでしょう。ゴブリン討伐に問題ない程度には身軽ですよ」


「よし、じゃあ行くか」


 そうして俺達は歩いて行き、小さな洞窟の前にたどり着いた。


「ここか?」


「そうですね、中にとても弱い気配を感じます」


「俺達二人で問題ない程度か?」


「余裕でしょうね、今の私なら軽々叩き潰せるでしょう」


 よし、コンディションは問題なし、敵も危険の無い程度。突入しても問題ないだろう。


「よし、突っ込むぞ!」


 俺達は突入した、その洞窟の中はなんの問題も無く進んでいけた。問題がなさ過ぎることが不気味なくらい何の障害もなかった。


 そうしてたどり着いた洞窟の最深部、そこにゴブリンたちは確かに居た。


「だれ? にんげん? こわい!」

「たしゅけて! わたしたち、わるいことしてない」


「「……」」


 その二匹の小さなゴブリンは俺達を心底恐怖していた。


 洞窟には小さな湧き水の泉があり、キノコが生えていた。


 その二匹は湧き水とわずかばかりの植物で生活しているのだろう、貧相な体つきだった。


「どうやらこの二匹以外居ないようだな」


「そうですね、おそらくはぐれでしょう」


「これを叩き潰すのか?」


「……」


 ミントは無言だった。


「きみたちはどうしてここにいるのかな?」


 ミントは子供に諭すように話しかける。


「とうさんもかあさんもいなくなった……わたしたち、ふたりだけ」


「討伐かハンターから逃げ切れた個体みたいだな」


 討伐するにはあまりにも弱々しい二体だった。


「なあ……俺は無理してギルドランクを上げる必要は無いと思うんだが」


 ミントは分かっているように答えた。


「いいですか、お兄ちゃん? 私たちはなにも見なかった、だからこの依頼はそもそも不成立ということになりますね」


 俺もミントも微笑み会ってそのゴブリン二匹に言っておいた。


「いい、ここからでちゃだめよ? ばれないようにひとのいないところにいきなさい? いいね」


 二匹はコクンとミントの言葉に頷いた。できれば俺はその二匹が静かに生きていけることを願った。


 帰り道に、ミントが俺に話しかけてきた。


「お兄ちゃん、あの二匹、兄妹みたいですよね?」


「かもな」


 俺達は帰途についた。そうしてギルドに帰り報告をした。


「ゴブリンは居ませんでした、報酬は調査料のみで構いません」


「はい、分かりました。その通りに報告しておきますね」


 俺達の依頼は一応成功にカウントされた。多少の後ろめたさはあったがあの二体は逃げてくれるだろうし、調査に引っかかることもないだろう。


 しかし、討伐をしなかったと言うことでギルドへの貢献度はほとんど無く、ランクもFに据え置きだった。


「ねえお兄ちゃん? 私たちもあんな風に生まれてたかもしれないんですね?」


「かもな、助けたのはあの二匹が兄妹みたいだったからか?」


「それもありますね。やはり家族とはいいものだと思いますよ? 私はそれを守りたい、ただそれだけです」


 そうして支給されたわずかばかりの報酬で俺達はすこしだけいい暮らしができたのだった。

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