妹とデートをしよう!
――
「お兄ちゃんが欲しい……」
そうつぶやいた声はどこへともなく霧散していった
――
「朝ですよー!」
妹のやかましい声で目が覚めてくる、朝は冷えるので起きるのが辛い。
しかしその日の妹はひと味違った。
「お兄ちゃん……目が覚めたらデートしましょうね?」
そんな発言をして俺を置いてキッチンへ戻っていくのだった。
デートねえ……なにをするんだろうか? さっぱりそういったことには詳しくないんだが。
とりあえず身だしなみを整えて朝食を食べにキッチンへ行く。
そこにはいつもより少し豪華な肉や卵焼きとトーストにコーヒーというメニューで、いつもと違って肉があった。
「なんか良いことでもあったか?」
ミントはニコニコしながら言った。
「それはもう! お兄ちゃんとデートですからね!」
妹の期待が重い……
「ああ、お兄ちゃんが気負う必要は無いですよ? こういうのに無縁なのは知ってますから、今日は全部私に任せてください!」
プランは完璧のようだな……
「しかし、こうして朝ご飯を一緒に食べていると恋人を通り越して夫婦って感じもしますね……フフ」
コイツの中には兄妹という概念がないんじゃないだろうか?
プランは完璧とのことなので今日は楽ができるかなあ……
「ごちそうさま」
「はい、それじゃあ出かけましょうか」
「いきなりだな?」
「おうちでまったりもよいのですが、今日はなんと劇団がこの町を訪れているらしく、これはデートにぴったりだと思ったのです!」
さすがに今回は面倒なことになる要素もなさそうだな。
ピコン
――
「妹への敵意感知」を習得しました
当スキルはパッシブスキルであり明示的に発動させる必要はありません
――
またか……またなのか……
「どうかしました?」
「いや、何でもない」
どうやらウチの妹はどこまでも最強を目指すらしい、またスキルを習得したのを悟られると面倒なので、できるだけ顔に出さないようにする。
「じゃあ、行こうか」
「はいっ!」
こうして俺達は町に出てきたわけだが……
「なあ、腕を組む必要はあるのか?」
俺の片腕にミントが自分の腕を絡めている、重いわけではないがさすがに恥ずかしい。
「恋人はこうするらしいですよ?」
「いや、兄妹だろ」
「それでもいいじゃないですか!」
こうして押し切られてしまった。
そうして少し歩くと大きなテントの移動式劇場にやってきた。
「ここかあ」
「そうです! なんでも熱いラブストーリーを上演しているらしいですよ?」
俺達は入場料を払って中に入る、結構な人数がいたが多くがカップルだった。
「正直少し恥ずかしい……」
「お兄ちゃんが私といることのどこが恥ずかしいと言うんですか!」
怒られてしまった、ここまで来た以上開き直って楽しむか。
――
妹への敵意を検出しました
テントへの爆発物を検出しました
――
え? なに? 爆発?
「みんな! 逃げろ! 爆発物があるぞ!」
俺の言葉にみんな半信半疑というか怪しいものを見る目だった。
「逃げてください! お兄ちゃんの言っていることは本当です!」
ミントの言葉に少し驚く人も出たがそれでも動く人の方が少ない。
「ああもう! 吹っ飛ばされたくなかったらここから逃げてください!」
その言葉にテント内はパニックになり出口へ人が殺到した。
この町で爆発系魔法を使えるミントが言うんだからそりゃあパニックにもなる。
そうして全員が出ていった後俺達も出て行くとテント内で爆発が起きた。
大きなものではなく客席の一部が吹き飛ぶ程度だったが、中に人がいれば死者が出たであろう事は推測できた。
その時、大声が上がった。
「ちくしょう! 余計なことをしやがって! どさくさに紛れて劇団の入場料を奪おうとしたのに! お前らのせいで……」
その男の言葉が最後まで続く前に俺の頭に警告が響いた。
――
妹の意志により「火属性魔法」が強制付与されます
――
えっ!?
そう思ったのもつかの間、男が火だるまになっていた、そしてそれが消えて火傷でもだえる男に対しているのはミントだった。
「良い根性ですねえ……私とお兄ちゃんのデートを邪魔するとか、神にたてつくような行為です、全身を持って後悔させてあげましょう」
――
「爆発系魔法」「冷却系魔法」が強制付与されました
――
「フリージング!」
ギエエエ!!!!!!
男は火傷の跡に氷をあてられて悶絶している。
「後悔は住みましたか? あの世に移住する準備はできましたか? じゃあ死になさ……」
「ストップ! もう相手ヤバいから! それ以上やると死んじゃうって!」
俺が思わずストップをかけた。
しかしコイツの怒りは収まらないらしく、戦闘不能になった男を足蹴にしていた。
どんだけ切れてんだよ!? スキルを強制付与とか今までなかったぞ!
「お兄ちゃんはこれをかばうんですか!? 私とお兄ちゃんのデートを邪魔したんですよ?」
「だからって殺すのは不味いって!」
そうしたやりとりを少しした後にようやく少し冷静になったのか治安維持を担当している衛兵がやってきて「犯人はどこだ!」と言うなかで、地面に転がって半死半生の男を指さしたのだった。
悪いことばかりだったかと言えばそうでもなく、ギルドから治安維持の報奨金が出た、それで豪華な夕食を食べてようやく機嫌を直したらしく落ち着いてくれた。
「あの犯人も運がなかったなあ……」
「私とお兄ちゃんの邪魔をしたなら天罰ですよ」
「お前は神かよ!?」
「冗談はさておき、ギルドはどう言ってましたか?」
「犯人逮捕への協力は感謝するってさ、ただ犯人が動機も計画も喋れないほど怪我をしているので報奨金だけで我慢してくれってさ」
「ギルドもしょうがないですねえ……」
「まあ、運が悪い日だってあるだろうし、俺達は別に離れて暮らしてるわけじゃないさ、いずれまた付き合ってやるよ」
妹の目がキラリと光った。
「マジですか!? お兄ちゃん! 男に二言はないですからね! 撤回は無しですよ!」
めっちゃ食い気味に反応するミント、そんなに今日の事根に持ってたのか……
「また落ち着いた日にな、最近はいろいろありすぎて忙しい」
「しょうがないですね、でも約束しましたからね!」
そう言ってミントは自室へ帰っていった、機嫌が直ったならいいことなんじゃないだろうか?
俺は今日、強制的にスキル付与をさせられたことで、できるだけあいつを怒らせない方がいいなと確信していたのだった。




