妹によるスローライフRTA
ピコーン
――
妹に「土属性魔法」を付与出来るようになりました
――
ふーん……土属性ねえ……
俺は余りそのスキルに興味を持たなかった、何故なら土属性は不遇な魔法であり、空を飛ぶ魔物には効かず、威力の調節も難しいハズレ魔法だからだ。
「こんなもん貰ってどうしろというのやら……」
独りごちるが今日はミントも買い物に出て行っているので俺一人だ。
「何か使い道があるのかねえ……」
いつもだったら土属性特攻の魔物が現れるところだが、生憎そんなものが出てきそうな気配もない。持て余すの一言で済むスキルだった。ああ、そういえばゴーレムの生成とかも出来るんだっけ?
そこまで行けばそれなりに利用できる魔法だが、残念ながら魔力で作るゴーレムよりもミントの方が強いのが火を見るより明らかなのでその利用方法もボツだ。
まったく……こんなスキルでどうしろって言うのやら……
「お兄ちゃん、またスキルが手に入ったんですか?」
どうやら買い物から帰ってきたらしいミントが俺に訊く。
「ああ、そうだよ。つっても土属性魔法だけどな。さすがに使い道も何もないだろう?」
「ああ……土属性ですか……珍しく使えないスキルですね」
「そーなんだよなぁ……」
俺が『なんか使い道あるの?』と天の神に訊くがさっぱりとその返答が返ってくることはなかった。使えないスキルを押しつけられたんじゃないだろうか?
――
………………
――
さっぱり返答はなく、ミントも興味を失ったのか夕食の調理に取りかかっていた。
そりゃあこんなハズレスキルじゃしょうがないよな……
なんか使い道ないかなあ……と考えるのだが、さっぱり使い道は思いつかず時間が過ぎていくのだった。
「お兄ちゃん、晩ご飯ですよ?」
「ん、ああ今行く」
俺は夕食を食べながらミントに訊いてみる。
「なんか土属性魔法で出来そうなことって有るかな?」
「ないですね、私に付与して貰えればゴーレムくらい作れるでしょうけど、ゴーレム程度の雑魚なら私がぶっ倒すの楽勝ですし、ふつーに私がバフ貰って戦った方が効率良いですね」
まあそうだろうな。となると戦闘以外に何か役に立つのだろうか?
「お兄ちゃん?」
「なんだ?」
「明日ギルドに行ってみましょう! 多分何か良い感じに役に立つ依頼が来てるんじゃないんですか?」
「そんなご都合主義な……」
そうは言いながらもなんか使えそうな気がしてはいるのだった。
食事を済ませベッドに飛び込み魔法の使い道を考えながら、眠りにつくまで考えてもさっぱり思いつくことはないのだった……
――翌朝
「じゃあお兄ちゃん、ギルドに行きますよ!」
最近は少し金回りが良かったのでギルドに顔を出す頻度が減っていた、たまには顔を出さないと忘れられそうだな。
Fランクがいくらサボろうと降格されることは無いため、ついつい依頼を受けるのも呑気になってしまう。たまには依頼をこなさないとやる気の無い奴認定されてしまいそうだ。
「ねえお兄ちゃん?」
「ん?」
「私は意味のないものなんて無いと思ってるんですよ、だからきっと新しいスキルにも使い道がありますよ!」
ミントのどこまで本気か分からない励ましに少し気楽になってギルドへ歩いていく。きっと何か役に立つのだろう、今までそうだったのだからきっと今回も役に立つに違いない。
ギルドの前に立って、役に立ちそうな依頼について考える、出来れば血なまぐさくない依頼があるといいなあ……
「お兄ちゃん、ここまで来たんだから覚悟してください! きっと何かありますよ!」
そう言ってギルドのドアを堂々とくぐっていった。
「あら、お二人ともお久しぶりです」
セシリーさんが俺たちに挨拶する、どこか最近来ていなかったことを愚痴っているようだった。
俺たちは依頼掲示板を眺める、これといって困難な依頼は貼られていない、討伐依頼はいくつも貼られているが、どれもCランク以上で俺たちが受けられるものは無い。
「セシリーさん、私たちが受けられる討伐依頼が特注で入ってたりしません?」
ミントの問いかけにも首を振るセシリーさんだった。
「いえ、最近平和ですのでお二人が必要になるほどの依頼は来ていないですね。Cランク以上の依頼は事情が無いとお二人には受けられないのでやめてくださいね?」
「はーい……」
ミントは納得はしていないようだったが、決まりは決まりなので不承不承低ランクの依頼を眺めていた。
常設依頼の薬草採集の他には素材収集くらいしか町の外でやる依頼は貼られておらず、さすがに今回は薬草取りで諦めてくれるだろうと思っていたところでミントが一枚の依頼を剥ぎ取った。
「なんかいいのがあったか?」
「これなんてどうでしょう?」
ミントの手にある依頼は農作業の手伝いの依頼だった。
「なになに……」
『急募! 肥料をまくだけ! 報酬は低いですが危険はありません! 低ランクの方歓迎!」
なんとも微妙な依頼だった。ギルドにはこういった単純作業の依頼も結構入ってくる、低ランクにはこういった依頼も重要な収入源になっている。
最近は魔物がやや増えてきていたので、魔物の肉がそれなりに供給され野菜の需要が下がっていた。
「お前が選ぶには珍しい依頼だな?」
「お兄ちゃん、忘れたんですか?」
「え?」
「『土属性魔法』ですよ!」
そう言って受付に依頼書を持っていった、全く問題無い依頼なので順調に受領され、俺たちは依頼主のところに向かった。
――
「お二人が手伝ってくださるのですか? 助かりますなあ、最近の若者は肉ばかり食べて我々農家も困っているんですよ」
肉の過剰供給により、農家は少し苦労しているようだった。
俺たちは余り食肉に出来るような魔物を相手にすることがないので想像のつかない話だった。
「ではこちらの畑なのですが……」
依頼人が指さしたところはそこそこ大きな畑になっていた。確かに一人では手が足りない広さだ。
「ではお兄ちゃん、お願いします」
「わかった」
「??」
依頼人は分かっていないようだが俺はミントに付与した。
――
妹に『土属性魔法』を付与しました
――
「ミント、何か役に立ちそうな魔法はあるか?」
「ええっと……ちょっと待ってくださいね」
「??」
依頼人は何が起きたかも分からず疑問符を浮かべているのが手に取るように分かった。
「これでいけそうですね、依頼人さん? この畑の土壌改良をすればいいんですよね?」
「え、ええ……そのために肥料をまこうと思っていたのですが……」
「安心してください、私たちがこの畑を復活させます!」
依頼人はさっぱり何をやるのか分かっていないようだったが、ミントは構わず魔法を使う。
「インプルーブ・アース!」
畑が淡く輝いて、ところどころに乾いて出来ていたひび割れが埋まり、芳醇な土壌をよみがえらせていく。
やがて光が収まるとそこには軟らかな土で覆われ、作物もしなびていたものがすっかり元気を取り戻した姿があった。
「おお!? こんなことがあり得るのですか!?」
「私たちに不可能は無いんですよ?」
依頼人も顔をほころばせてすっかり元気になった作物を見て驚いていた。
結局、俺たちは依頼人から多少色を付けた依頼料を受け取りギルドに完了報告をした。
「随分と依頼者の満足度が高いですね? お二人ともまた何かやったんですか?」
ミントはいたずらっぽく答えた。
「ナイショです!」
そうして単純作業の依頼なりの、わずかばかりの貢献ポイントを珍しく稼ぐことが出来るのだった。
数日後、市場に野菜がたくさん出回り、肉と野菜を合わせて皆の食卓が少し豊かになるのだがそれはまた別の話。




