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ジョブ「お兄ちゃん」ってなんですか? 謎のジョブを与えられて困惑していると妹が最強になりました  作者: にとろ


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妹と短期高報酬なお仕事

「お兄ちゃん! 今日は私が依頼を受ける番ですね!」


 困ったことに今日はミント外来を選ぶ番だった。


 ローテーション制にしたのは間違いだったかな……などと言ってもしょうがないので俺も不承不承ギルドへと向かう。


「ミント……」


「なんですか?」


「討伐依頼は……やめような?」


「いやです」


 俺の頼みをすっぱり切り捨ててミントは進んでいく、コイツは死にたがっているんじゃないかというくらい危険な依頼が大好きだ。巻き込まれる方の身にもなって欲しい……


 とはいえ、悲しいかな今日の主導権は妹にある、Fランクで受けられる厳戒の依頼を受ける気なのだろう、そんなに死に急ぎたいのだろうか? 俺にはコイツが死に向けて突進しているようにしか見えない、幸い今のところ生と死の壁は厚く、ちょっとやそっとじゃ『あっち側』にはいかないがいつかぴょんと跳んでいってしまうんじゃないかと不安でしょうがない。


「さあて……ギルドにつきましたねえ……今日の獲物はなんでしょうか……?」


 ああ……コイツは自分が死ぬなんて欠片も思っていないのだろう、俺の方が死ぬ可能性があることさえも完全に無視して戦い続けるのだろう。きっといつか来る終わりまで。


 バタン!


 ギルドのドアを勢いよく開けてクエストボードを眺める。羨ましそうにSランクより上の依頼を見ているが、そんなものは絶対に受けないぞ。


 上から下へと目線を流している妹を放っておいて、俺はFランクとして妥当なクエストを眺めていた。


『野良ゴブリン討伐』


『大型害虫駆除』


『野犬の保護』


 ……etc


 平和な依頼がならんでいた、是非ミントもこう言った平和な依頼か常設の薬草採集を選んでほしいものだ。


「お兄ちゃん! これこれ! これにしましょう!」


「なになに……」


『急募! 魔導実験の立会人! 高報酬保証!』


 いかにも怪しいですと言った依頼だった。しかもご丁寧にDランクで出されている、ギリギリで受けられるラインをくぐってきている。


 ミントはそれを俺に見せた後受付にダッシュしていた、何か感じ入るものが有るらしい、妹というのはよく分からないものだ……


 受付のセシリーさんも一応ルール上は問題がないので渋い顔をしながらも受理していた、多分何かきな臭いものを感じたのだろう、俺も感じた。


 依頼主は町外れの茅葺き屋根のいかにも旧世代の魔道士、いや、魔女が住んでいそうな家に居た。その家を外から眺めるだけでも入りたくないのは明らかだ。


「なあミント……この依頼は……」


「じゃあお兄ちゃんいきますよ!」


 恐怖のねじがどこかへ飛んでいった妹にはこの家がお菓子の家にでも見えているのだろうか? 何故かワクワクしながらドアをノックした。


 コンコン


「はいよ……何の用じゃな……このような老いぼれのところへ……」


「おばあさんの依頼、私たちが受けました!」


 良い笑顔で言うミントに対し俺はいかにも怪しい依頼者を訝しんでいた。


「ほっほう……なるほど、死ぬまで放置されるかと思っとったが受けてくれたのじゃな……」


 そう言って不気味に笑うばあさんだが、身構える俺と違ってミントは平気な顔をして依頼内容を聞いていた。


 曰く、寄る年波に勝てず魔道士を引退したこと、全盛期の魔力が如何にスゴく、八面六臂の大活躍をしたという自慢話から始まり、魔導一筋で人間らしい生活をしてこなかったことへの後悔について語ってくれた。


「で、俺たちにどうすれば良いんですか? 特に俺たちの関わる理由が見当たらないんですが?」


 俺の疑問に低く笑う老婆。


「ふぉっふぉっふぉ……なあに、ちょっとした魔術をしようと思っての……安全のために実力者が必要なのじゃ……安心しとくれ……あんたらはただ立ち会ってくれるだけでいいんじゃよ」


「一体なんの魔術を使うつもりなんですか? 普通魔道士は自分の魔法を秘密にするはずですけど?」


 ミントの疑問にばあさんは答えた。


「なに、ちょっと精霊と契約をするだけじゃよ、荒ぶる奴が出てくる可能性もあるんじゃな……もしそうなった時の保険がそなたがたというわけじゃ……」


 精霊……人間が精霊と契約! 正気か!? 精霊はまともな意志を持たずただ荒れ狂うだけと聞いたことがあるが……魔族以外で精霊を使役できる種族なんて聞いたことがない。


「なんのためですか? あなたはそれなりに魔法が使えるんじゃないですか? 精霊を召喚できるほどの魔力があるなら良いところに就職できるでしょう?」


 俺の疑問にばあさんは悲しそうに答える。


「おぬしたちはまだ若いからのう……年をとるということがわからんのじゃろう……若さとは素晴らしいのじゃよ、そしてわたしゃそれを取り戻したいのさね」


 石灰石で部屋の中に魔方陣を描いていくばあさん、それから出てくるものがおぞましいであろうことは使う前から予想がついた。


「一応言っときますよ? やめた方が良いです」


「私はこのためだけにおいさばらえた身体に鞭を打って材料を集めたんだよ、今更引き下がれるもんかね」


 俺は隣のミントに小声で話しかける。


「バフを盛っておくぞ」


「大丈夫じゃないですか?」


「もしものためだよ」


 ――

 力「S」

 体力「S+」

 魔力「SS」

 精神力「SS」

 素早さ「A」

 スキル「神聖魔法」

 ――


 呼び出すものの特性上、魔力関係を多めに強化しておいて、ヤバイものが出てきた時のために神聖魔法を付与しておいた。


 カタ


 床に魔方陣が完成し、石灰石をそこらに放り投げる、ばあさんは言葉にならない呪文を唱えだした。


『^&@#$(*)^$^$)(*$^#@)+@#&*(@#*@#$*(」


 言葉にならない呪文は床を揺らし、魔方陣を光らせながらその内から黒ずくめの男が召喚された。


「我を呼んだのは貴様か?」


 悪魔さん(仮)はばあさんに向けてそう言う。ばあさんは恍惚とした表情で肯定する。


「そうじゃよ……私に若さをおくれ……他の全ては捧げてきた……お願いじゃ……」


「なるほどなるほど、その望みを叶えてやろう」


 ばあさんは笑顔になってからすぐに苦悶に表情を歪めた。


 悪魔の手がばあさんの身体を貫いていた、そこからばあさんは悪魔に吸収されていった、血液一つ、肉片一つ残さずにその場には悪魔と俺たち兄妹だけが残された。


「お前……なんてことを」


「我の中で永遠の若さを得たのだ、望みは叶えたぞ! 悪魔に年齢はないからな! あの老婆は永遠の若さを確かに手に入れたのだ!」


 ミントがナイフを構える。


「ほぅ……戦う気か? 我は気分が良い、貴様らが逃げればこの町を滅ぼす程度で済ませるのだがな」


「悪いがこの町を滅ぼさせるわけにもいかなくってな」


「ジャッジメント!」


「ぴぎぃ!!!!!」


 悪魔は神聖魔法を受けて悶絶する。


「あなたはやってはいけないことをやりました」


 倒れている悪魔を蹴り飛ばして告げる。


「私たちの依頼を台なしにしました、お兄ちゃんとの思い出溢れるこの町を破壊すると言いました、到底許されることではあり得ません」


 ミントは目が据わって、汚物を見るような目で悪魔を見ている。


「ひぃ……」


 悪魔も恐怖という感情はあるのか、先ほどの一撃がよほど効いたのか、這いずりながら逃げようとする。


 その手をグシャリと踏み潰してからゴミを見るような目で悪魔を見下して神聖魔法を唱える。


「ホーリーキャノン」


 小声で小さな砲撃が悪魔の頬を思い切りぶん殴った。


「ひい! 助けて……」


「ホーリープリズム」


「ぎゃああああああああああああああ」


 悪魔はようやく苦悶の表情を浮かべながら蒸発していった。


 ――


 帰り道にて


「あーあ……ただ働きでしたねえ……」


「そうだな」


 依頼者死亡ということで、結局この依頼にて何かを得ることはなかった。くれ微レ存という奴だ。


 俺は一つの疑問をミントにぶつけてみる。


「なあミント? お前も年をとったらあそこまで若さにこだわるものなのか?」


 ミントの答えはとてもシンプルなものだった。


「私はお兄ちゃんと一緒に歳を重ねるのは悪いことだと思いませんよ、お兄ちゃんが年をとってるのに私だけ若いとか罰ゲームですよ?」


 そういってクスクス笑いながら、俺たちはことの顛末をギルドへ報告しにいくのだった。

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