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妹専用ストレージ

 ピコーン

 ――

 絆が深まったことにより、スキル「妹ストレージ」を獲得しました

 ――


 突っ込みたいところは山ほどある、そもそも絆が深まってるのか謎だし、「妹ストレージ」ってなんやねん。

 収納魔法としてのストレージが存在していることは知っている、だがしかし、頭に妹は付いていなかったはずだ。


 大体妹用のスキルを俺が獲得していることも十分によく分かっていない。


「使ってみる……かなぁ……」


 ガタッガラガラ


 空間の裂け目から「妹が」出てきた。本人は寝起きらしく「ふぇ?」などと状況がよく分かっていないご様子だ。


「へ? お兄ちゃん!? なぜ私の部屋に?」


「ここは俺の部屋だ」


 周囲を見てからミントも俺の部屋にいることに気がつく。


「まさかお兄ちゃん……けだものになってしまったんですか! いくら私が可愛いからって!」


「ちがうちがう!」


 俺は突然降ってわいたスキルについてミントに説明した。


「ふむ、私を保存しておけるって事ですね」


「人を保存するストレージってなんかやだなぁ……」


 突然人間が出てくるストレージって怖くね?


「他にも何か出せないんですか?」


 やってみる価値はあるか。


 ――

 「妹ストレージ」を使用します

 取り出すものを選択してください

 ・妹の日記

 ・妹の服

 ・妹の下着

 ・妹のおやつ

 ・妹の秘蔵の写真

 (以下略)

 ――


「なにが取り出せそうでしたか?」


「お前の日記とか」


「えっ!」


「服やら下着やら秘蔵の写真やら……」


「分かりました! 分かりましたからここまでにしておきましょう!」


 それから調べた結果、「妹のものであれば」何でも収納可能と言うことが分かった。


 大容量の収納魔法はあるけれど、一個人の私物限定というのは初めてだろう。


「これ、なんに使えるんですかね?」


「俺に聞かれても……」


 さっぱり使い道が思いつかない、妹とその私物を出し入れできるからって……あれ?


「なあ、これ使えば空間移動ができるんじゃないか?」


「??」


 よく分かっていないようなので試してみよう。


「お前はここから動かないでくれよ?」


「はあ……」


 俺は家を出て近所の丘までやってくる、そして。


「妹ストレージ使用」


 ミントがその場に出てきた。


「え? どうなってるんですかこれ?」


「どうやらこのスキルはお前を召喚するのにも使えるらしい」


 少なくともこの距離であればスキル効果でワープさせることができるらしい。


「まあ、それはいいんですけど……さっきから足が痛いんですが」


 家の中にいるのを召喚したせいで裸足だった、そこまで考えてなかった……


「お兄ちゃん? 責任採っておぶって帰ってくださいね?」


「普通に俺が家に着いたらもっぺんよびだせば……」


「は? 妹とのイベントを取り逃す気ですか? こんなチャンスそうそう無いですよ? ほらほら、おんぶおんぶ!」


 はぁ……どうやらこのスキルは使いどころを考えないといけないようだな……


 なぜ神様とやらはこんなどこで使うのかわけの分からないスキルばかりよこしてくるんだろうな?


 俺は妹を背中におんぶして家までの道を歩いた。


 そして家のドアを開けミントを背中から下ろしてふと思いついた。


「なあ、もしかしてお前が食べ物とか水とかを持っていれば遠出してもこのストレージから取り出せるんじゃないか?」


 妹も少し考えてから言った。


「その可能性はありますね、ちょっと待っててください」


 そう言って家を出て行くと……


「お兄ちゃん、試してみましょう!」


 そう言って食材を買い込んできたのだった。


 とりあえず入るかどうかが肝心だ。


 妹ストレージを開くとそれらはポンポンと入っていった。


「いけそうですね?」


「ああ」


「じゃあお兄ちゃん、ちょっとさっきの食材を料理するので出してもらえますか?」


「できるかな?」


 空間の裂け目からさっき入れた食材がちゃんと出てきた。


「いける感じですね」


 どうやら妹が「自分のもの」と認識しているものは収納可能らしい。


「じゃあちゃちゃっと料理しちゃいますね」


 そうしてコトコトトントンと規則的なリズムで包丁を使ってからグツグツと煮てどうやら完成したらしい。


「シチューか」


「そうですよ! 妹の愛情のたっぷりこもったやつです! で、これを収納してもらえますか?」


「え? 食べるんじゃないの?」


「これは夕ご飯ですよ?」


 ちなみに現在は真っ昼間だ。


 そうして日が落ちる頃、俺達は食卓に着いていた。


「じゃあお兄ちゃん、さっきのシチューを出してもらえますか」


「わかった」


 俺が空間の裂け目から取り出したシチューは「湯気が出るほど熱々だった」


「食べてみましょう」


 スプーンですくい口に運ぶと熱いものが口に入ってくる」


「やはりそうですか……」


「え? どうした?」


「お兄ちゃんは他の人の収納魔法をご存じですか?」


「ああ、なんか何でも入って何でも取り出せるとか……収納量は魔力依存らしいが」


「で、このシチューなんですけど、作ったのお昼ですよね?」


「?」


 俺がよく分からないでいると、じれったそうに結論を話すミント。


「つまり、お兄ちゃんのその収納魔法では時間が進まないということです!」


 なるほど。


「でもそれってすごいことなのか?」


 妹は机をバンとたたき熱弁する。


「時間経過がないって事は依頼がダンジョン探査みたいなものでも事前に作り置きしておいた食事が自由に使えるって事ですよ? 知ってます? ダンジョンって食料はないんですよ?」


 なるほど、どうやら食料を現地調達できない場合、傷むことのない食事を常に確保できるというのは信じられないことらしい。


「なにせお父さんも「母さんの温かいご飯がやっと食べられる」って泣いてましたからね、食糧問題は重要ですよ」


 父さん、あなたは地味に情けないですね……


「後はこれでどう儲けるかですね、ダンジョン内部でお弁当を売るとかいけそうじゃないですか? みんな暖かい味が恋しいでしょうし」


 よく商売事を考えつくものだと俺は感心する。


 どんなスキルも使い道次第って事か。


「今日の実験はこれくらいでいいでしょう、いいですかお兄ちゃん! 決して! 私の私物をそのストレージから引っ張り出さないでくださいね?」


「しないって」


 そんなことをすれば後が怖すぎるじゃないか……


「まあ今日はお兄ちゃんにおんぶしてもらったしいいでしょう……」


「ん? どした?」


 何か小声で言っていたようだが。


「いえいえ、今後の商売のプランを考えていただけですよ?」


「そ、そうか……」


 そうして俺達はその日はそれっきりとなったが実験が続いたことは言うまでもなかった。

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