2話 言葉の暴力
前作の
誰も俺の事をサイコパスとは呼ばせない~呼んだ奴らを片っ端からを消せば俺はサイコパスにはならないのでは?~
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「あ、あのっ!ありがとうございます!!」
チンピラ共から助けたってのをすっかり忘れていた。
俺達の本来の目的は、チンピラからボスの情報を聞き出す事だったので、この子の身の安全とかについては、というか、もはや存在すら忘れていた。
半分見に覚えの無い感謝に戸惑った。
「お、おう……気にしなく…………」
女の子に、そんなにお礼を言われる理由もなかったので、フォローでもしてあげようと振り向いた時だった。
目の前の女の子は完全に俺のドストライクなタイプだった。
ドストライクなんて幅広いもんじゃない。まさにこれ!他の選択肢なんて考えつかない!なんだか声も可愛く思えてきた。
リッチーの方を見ると特に普通という感じの反応だった。まぁ、確かにリッチーのタイプの顔ではないな。
逆にリッチーも俺の方を見て、俺のタイプだと気づいてるようで、どうぞと手を差し出すジェスチャーをしてくれた。
さすがリッチー!出来る男!
俺は女の子に近づいて行った。
「怖かったよね、もう大丈夫だよ」
俺は安心させるために女の子の肩に手をふれようとした。
「いやっ!!」
女の子は俺の手を慌てて払いのけた。
あ、あれ……??
先ほどまでチンピラ共に襲われていたんだ。一時的に男性恐怖症みたいな状態なのかもしれない。
それに俺の方こそいきなりボディータッチなんて、良くなかったよな。距離感って大切だよな。
自分にそう言い聞かせた。
すると女の子はリッチーの方へかけより、リッチーの手を取った。
「助けてくださって本当にありがとうございました!命の恩人です!私はミリア!!あなたのお名前をお聞かせください!」
名前も言うぅ!
名前も聞くぅ!
ボディータッチもするぅ!
距離感も近いぃ!
俺の自分自身へのフォローが全て否定された。
どういう事……??
「俺はリッチーだよ。んで、そっちの魔導士は俺の親友のアレンだよ」
リッチーが俺の分の紹介まで片付けた。
「リッチー様とおっしゃるんですね!」
ミリアはそう答えた。完全に俺の存在が消されている。
何かミリアに呪いでもかかってるのか?
「あ、あの……ミリアちゃん?俺の事見えてるかな?」
「あ、ちゃん付けで呼ばないでもらえますか?ムリです」
さっきまで笑顔でリッチーと話していたミリアの表情が完全に死んでいた。
いや、むしろ軽蔑してる目だった。
仮にも俺、命の恩人なんだけど、その点忘れてんのかな?
俺は涙目でリッチーの方を見た。
「と、とりあえず、ここは物騒だから人通りが多いところまで送るよ」
表通りまでの路地裏を横並びで歩こうとしたらミリアが
「肩とか触れたらマジで腐りそうなので離れて歩いてくれませんか」
と言われた。
二人の後ろを歩いているとまたミリアが振り向いて
「後ろを歩かれると身の危険を感じるので離れて歩いてください」
とも言われた。
ちなみにいずれも完全に俺に対して冷ややかな口調だった。
俺は二人から距離を置いて歩かされた。
無傷で勝利したはずなのに、既に満身創痍という言葉が脳裏をこだましていた。
やっと表通りまでたどり着いた。
「よし、ここまでくれば安全っしょ!これからは気をつけてね!」
リッチーは俺を察してミリアと別れようとしてくれた。
「ありがとうございます、リッチー様。救っていただいたこの命、大切にいたします」
ミリアが一礼をし、去っていく。
俺を励ますようにリッチーが言った。
リッチーは肩をポンポンしてくれた。
「アレン、飯でも行こうぜ?」
「う……うん……ご飯……いぐぅぅ……」
俺はこの場を一刻も早く立ち去りたかった。
俺達はミリアと逆の方向へ行こうとすると、後ろから声が聞こえた。
「リッチー様、お食事に行かれるのですか?私、ここらへんのお店には詳しいんです!ご案内させてください!!」
終わったかに思えた地獄の時間が再び始まった。
ミリアがオススメという飯屋まで、先ほどと同じような構図で歩かされた。
途中、俺は寂しすぎて下を向いて歩いていたらちょっと迷子になるというハプニングまでおきた。
「ついて来たくないのならどこかにいけばいいのに」
と追い討ちの一言をかけられた。
いや、俺とリッチーのチームなんだけど……
ツッコむ気力も無くなったので飯屋までの辛抱だと自分に言い聞かせた。
迷子にならないよう気をつけつつ、気を紛らわせるために、すれ違う人の中に何人ハゲがいるのかを数えながら歩いた。
飯屋に着いた。
最大3人が座れる長椅子が両方にある6人席のテーブル席に通された。
俺は角の席に座り、その隣りにリッチーが座った。
そしてミリアが俺と対角線上に座った。
……何故だ??
俺はリッチーに救助の視線を送った。
リッチーも無言で頷いて、それからミリアに話しかけた。
「道案内してくれたのは助かったよ!でも俺はアレンと二人で仕事をしたいんだよね。食事代は俺達が払うから、別のところで食べてもらえないかな?」
ナイスリッチー!
お前でかしたよ!!
軽く好きになりそうだ!!
「賞金首のワンチャイをお探ししてるんですよね?実は私、潜伏先の目星がついてるんです。私も同行させてください!」
ミリアが突然そんな事を言い出した。
俺とリッチーは驚いてお互いを見た。
「ちょっと二人で話したい事があるから、席を外すねぇ~」
リッチーはそう言って俺と店のトイレへと行った。
「どうする?」
「無理無理無理無理!!絶対、無理!俺もう死ぬ!死んじまう!」
「あの子の情報が欲しいのは確かだけど……」
「ここは地道に下から叩いて行こう!な?」
「ただ、そうやってる途中で何度もヤツには逃げられていると、他の賞金首が言ってるらしいしなぁ」
「頼むよリッチー。もう俺、本当に死ぬ。なんなのあの温度差?エグない??」
「まずはあの子にその部分について聞いてみよう。あの子がどうしても着いてきたいならチームワークが必要だしね。これからもこのままじゃたまったもんじゃない」
「おうよ!ちゃんと立場ってもんをわからせてやろうぜ!」
「ドキッ!男同士の作戦会議」が終わった。
トイレから出てくるとミリアが笑顔で待っていた。
「ミリア、まず最初に単刀直入に聞いておきたいんだけど、キミの目的はなんなの?」
リッチーがミリアに尋ねた。
それを聞いたミリアはおもむろにバッグの中から1枚の写真を出した。
「この子はサーシャ。私の親友よ」
可愛い。いや、そんな事はどうでもよかった。
「サーシャは先週、この街に仕事で来ていたの。そこでワンチャイの組織に捕まった……。私はサーシャを助けるためにここに来たの」
ミリアはサーシャの写真を手にとり、大事そうに見つめた。
「でも私は弱いから、さっきの男達に襲われかけたの。お願い!力を貸して!!あなたは強いんでしょう?リッチー!!」
ミリアは立ち上がり、斜め前に座ったリッチーの手をとった。
「私は昔、少しだけ冒険者を目指していたの。家庭の事情で学校は中退したんだけど……。私はアサシンの適性があるの!」
アサシンか。
潜入操作に向いた補助スキルが多い。攻撃力はさほどないが戦闘では相手の隙を付いた攻撃スキルも持ち合わせてるんだったかな?
「あなたが守ってくれたら私もサポートするから……お願い!!」
頭を下げて俺達からいい返事が返ってくるのを待っているようだった。
リッチーは俺の方を見て少し考えた。
「うーん、事情はわかったよ。返事はもう少し保留にさせておくれ」
「そんなっ!!お願いよ!!」
ミリアは是が非でも、という構えを崩さない。
「まだキミとチームを組むかの判断は出来ないってだけだよ。焦らないで。キミのスキルは僕らにとっても有用になると思うんだ。でもね、一緒にチームを組む上で一番肝心な事を聞いておきたいんだ。」
「何!?なんでも聞いて!!」
ミリアは食い気味に返事をした。
「キミは何でアレンの事を避けてるんだい?」
「え、だってこの人突然下ネタ叫んだりしてる変態なんだもんマジムリ近寄らないでください」
一言で4回分くらい死んだ気分です。
リッチーは苦笑いをしながら俺の方を見た後、真剣な表情になりミリアの方を向いた。
「なるほど。まずはミリアに俺達の『限定強化』について話しておいた方がいいのかもね」
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8話からヒロインが本領発揮いたします