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17話 オヤスミ

「おーい、リッチー!!起きろーー」


肩をトントンと叩かれて目が覚めた。

周りを見るとアルバドが賞金首を縛り上げ、こちらに引き連れてきていたよ。


「やぁ、アルバド。眠気を我慢してたんだけどね、限界だったよ。ごめんね」


「いや、いいよ。リッチーのおかげで助かったさ。あんなスキルもあったんだな」


「あぁ、眠気を我慢してる時限定だからあんまり使った事はないけどね」


「リッチーはやっぱ強ぇな!クラスでも上位だったもんな!3位だっけか?」


「そうだね。懐かしいなぁ……アハハ」



その後、アルバドが賞金首の髪の毛を掴んで顔を覗き込んだんだ。



「おい貴様、育毛剤と称してただの水を売りつけやがって。お前を信じたピュアな人達の怒りを……悲しみを……お前の体にしっかりと教え込んでやらねぇとな」


「ひっ……すみません!ハゲのヤツらが藁を持つかむ勢いで買い求めてくるんでつい調子に乗ってしまいました!」


「おい!気安く『ハ』の付く言葉を口にするんじゃねぇ!てめぇもそうなりてぇのか!!」


ブチブチって音がしてたから何本か抜けちゃったのかも。


「ひぃぃ!ハゲは!ハゲだけは許してください!そのくらいならもういっそ、殺してください!!」


「お前、これ以上『ハ』の付く言葉を口にしたら頭皮を焼け野原にしてやるぞ!もうしゃべるな!」


「うぐっ!むぐぐ……」


口を手で抑えた賞金首はそれから黙った。


「リッチー、ありがとな。俺はこいつを連れていくよ。リッチーはどこを目指してんだい?」


「僕達は学園長を探してるんだよ」


「なんだ?リッチー、お前もあのクソ学園長になんかされたのか?」


「え?何も無い……わけではないけど、『お前も』って何の事なの?」


「ピートって覚えてるだろ?同級生の。ピートがあの学園長のせいでつい最近色々あったって言ってたぜ。でもまぁ、あいつもすごくなったよな。知ってるか?あいつ、この先の街で宗教初めて教祖と崇められてるって話だぜ?」


「こっちの地方には来たことがなかったこら知らなかったけど、みんな色々と変わっていくんだね」


「ピートなら学園長の事知ってるかもしれないから、聞いてみたらどうだ?」


「ああ、ありがとう。アレンに相談してみるよ」


「アレンによろしく伝えててくれ!」



アルバドは賞金首の髪の毛を掴んで引っ張りながら自警団に向かったよ。



それで、僕は宿でアレンを待ってたんだけどね。

なかなか帰ってこないから探しに行ったら人が山に向けてぶっ飛んでいったのが見えたよ。あんな事出来るのはアレンだけだろうからすぐ見つけられたんだ。



「アルバドもこの街にいるのか!自警団に着いたのも入れ違いってのは残念だなぁ」


「どうする?アルバドを探すかい?」


「いや、誰かさんのせいでこの街には居辛くなったからな。今夜はもう宿でゆっくりして、明日の朝にはピートのいる街で行こう」


俺がジロリとミリアを睨んだが涼しい顔をされた。


「あら?自分の事を誰かさんなんて言う人、初めてみたわ」


「お前な……」


ダメだ、全く反省の色は無さそうだ。といっても、ミリアが引き金にはなったものの俺自身のせいでこの街に居辛いというのは否めない。


「そういえばアレン、あなた今夜暇かしら?」


「予定は無いが暇だと言いたくは無いな」


「ちょうどよかったわ。私のヤミウチっていうスキルの実験台になってちょうだい」


「名前が物騒過ぎるんだよ。許可もらってやるような名前でもないだろ」


「つまり許可はいらないって事かしら?」


「ん?そ……そうだよ」


「わかったわ。わざわざそんな野暮な事聞いてしまって悪かったわね」





俺はその日、晩飯を食べた後部屋に戻る途中何かが起き、翌朝廊下で目が覚めた。



「なんで俺、こんなところで寝てんだ?」


周りをキョロキョロと見た。見覚えの無い作りに困惑した。

とりあえず部屋に戻って着替えを済ませた。酒でも飲み過ぎたんだろうか?二日酔いにしては後頭部辺りがズキズキした。というか物理的にズキズキしているから倒れた時にぶつけたなか?


準備を済ませみんなと馬車の前で待ち合わせしていたところ、最初に来たミリアが話しかけてきた。


「昨日はありがとう。あなたで成功したわ」


「俺で……セイコウ……した??」


やべぇ!全っっ然覚えてねえ!!!


やっぱり俺は昨日酒を飲んだのか?んで、その後流れでミリアとワンワンにゃんにゃんして、部屋にたどり着けなくなるまで頑張って、疲れ果てて廊下で?

それとも廊下で?


マジか!?


「お前!思い出すんだ!」


俺は思わず自分の下半身に話しかけた。


「でも、確かにそう言えば、昨日俺、廊下でミリアを見た気がするわ」


ミリアめ、なんだかんだ言って俺の事好きなんじゃねーか!


俺がミリアに近づき、さり気なく手を繋ごうとすると思い切り手を弾かれた。


「突然何するんですか、セクハラで賞金かけますよ、マジでキモいです無理です死んでください」


「ちょ……えぇ……ぇぇ……」


これがツンデレってやつなのか?

アップダウンが激し過ぎてとてもついていけそうにない。全くミリアとの距離感がわからない。



「えぇっと……昨夜俺とお前は……どうなの……かな?ちょっと記憶が無いみたいなんだよ……ハハ」


ミリアは少し考えた後、納得した表情を見せ、説明してくれた。


「あなた、一瞬だったわよ?もう1回くらいしたかったのにあなたったらすぐ寝ちゃったのよ。残念だったわ」



俺の頭の中でミリアの言葉がこだました。


……もう1回くらいしたかった……


…………すぐ寝ちゃった…………


………………残念だったわ………………



「やっぱヤッてるじゃん!!!なんなら今から宿に戻ろう !何回でもいいぜ!!」


「本当に?昨日やったばっかりなのに大丈夫なの?」


「バカ野郎!!やれるに決まってんだろ!!俺は今、フェニックスの化身になったと言っても過言じゃない!何発でもいけそうだ!」


「え!そんなに?死なないかしら?」


「完璧なコンディションなんだ!!もう、したくてしたくて仕方ねぇよ!!!」


「そんなに?!だって昨日はあまりノリ気じゃなさそうだったし……」


「ノリ気じゃないわけねーよ!多分それ、俺が酔っぱらってたとかじゃねぇか?」


「そうだったかしら?」


「そーだよ!さぁ!!しようぜ!!宿に戻ろう!」


「宿まで行っちゃったら戻ってくるのも大変だろうし……ここじゃダメ……かしら?」


ミリアが出会った今までで一番可愛い。ヤバい。すごい。もう語彙力が崩壊しそうだ。


「こ、ここって……おまっ……えぇ~~…………アリ!!」


動揺したが全然アリだ。ミリアとならもうどこででも構わない。ミリアも、宿まで戻る時間すら惜しいほどに俺を求めていやがるのか。そうか、そうきたか。さっきまであんな態度だったのに突然スイッチ入っちゃった系ね?はいはい。わかります。


「ここでしよう!」


欲望に身を任せて、俺がそう言ったところで宿から出てきたリッチーが見えた。


「リッチー!すまないがちょっと察してくれ!!」


リッチーが首を傾げているが、その場で足を止めた。よし、それでいい。すまないが待っててくれ。


「さぁ!いつでもオーケーだぜ!」


「ありがと!」


ものすごい笑顔のミリア……が、一瞬で俺の視界から消え、そのあと耳元でミリアが囁く声が聞こえた。


「ヤミウチ」


俺は後頭部の辺りに強い衝撃を受けた。今朝痛かったところと同じ箇所だ。



「何度もさせてくれるなんて心強いわ。練度も上がってきたのよ♪」


遠のく意識の中でミリアの声が聞こえた。





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