13話 いたぞ賞金首
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「さ、早いところこいつらを縛り上げてしまいましょ」
ミリアが言った。
「あんた、よくそんな格好してるわね。いつまでそんな格好してるつもり?気は確かなの?」
「さっきの戦いの中、俺にはお前が敵に見えてたよ。ちなみに今もだ」
「はぁ。つまらない事言ってないでさっさと着替えてしまいなさいよ。それともその服が気に入ったの?」
「お前、ドSの最終形態みたいなヤツだな!!逆に清々しいよ!」
「何よ?褒めてるの?気持ち悪い。いいからレジにあなたの洋服があるからそれを着替えてらっしゃい!」
「褒めてねぇよ!!クソ!なんでもう俺の服を売りに行こうとしてたんだよ!あの服で出てこれると思ったのかよ!!せめて俺の服を隠すくらいの冗談に留めておけよ!」
俺はグチを言いながらレジに向かった。
俺の洋服はレジの上にあった。洋服を着ようとしたら試着室の方に向かって歩いてるミリアが言った。
「ちなみにあんたの洋服、もう売ったあとだからちゃんと買い取ってから着なさいよ。もし泥棒でもしようものなら痴漢で訴えてやるわ!」
「ちょ!まっ!!なんでもう売ってんだよ!!しかもなんで泥棒した俺を痴漢で訴えようとすんだよ!罪の重さとかより社会的ダメージがデカい方で訴えんじゃねぇ!」
ミリアなんかと買い物なんて来るんじゃなかった。なんで洋服屋に行って自分が着てきた服に金を払って帰らなきゃ行けないんだ?どんなシステムの店だよ。
自分の洋服を触るとビチャビチャに濡れていた。さっきの水弾の飛沫がもろにかかっていた。だが今のレオタードよりは絶対にマシだ。びしょ濡れの洋服で街を歩ける事がなんて誇らしいんだろう?
財布は試着室にあるので、ひとまずレジで気絶している強盗団の男の財布から拝借した。
俺は喜んで自分の服の代金をレジに置いた。いくらかわからないので、近くにあった商品と同じ額を払う事にした。
ミリアが試着室から顔を覗かせながら言った。
「あとそのレオタード、もう着てしまったんだから買い取りなさいよ!」
俺はヤケクソでさらに同額をレジに置いた。
レオタードはピチピチ過ぎて脱げないので、一端レオタードの上から洋服を着ておくことにした。洋服が濡れているというのもあり、風邪をひかずにすみそうだ。唯一役に立ったな、レオタードよ。だが、宿に帰った瞬間に破り捨ててやる。それまでの命だ。
試着室から出てきたミリアは、手に赤い縄を持っていた。
「ほら、これでこいつらを縛り上げるわよ!あんたも手伝いなさい!」
手際だけはいいのが悔しい。
「私は足元のこいつと、奥にいるやつらを縛るから、あんたはそのレジのやつとバートンをお願いね」
そう言ってミリアらニッコリと笑った。
たまにそういう屈託の無い笑顔を見せてくるのは止めてくれ。お前への憎しみが一気に愛情にかき消されそうになる。
俺は言われるがまま、レジの男を縛り上げた。
入口のバートンを縛り上げ終わったと思った瞬間だった。下を向いていた足元に店の入口側から影ができた。
俺は影の出所を見上げると、そこには男2人と女1人が立っていた。
「悪いが今店は閉店中だよ。賞金首だ。さぁ、帰った帰った」
俺が面倒くさそうに手をシッシッとふりながら客を追っ払おうとした。
「あぁ、間違いない。賞金首だな」
先頭にいた男が言った。
なんだこいつら……さては俺の賞金首を横取りしようとしてくるハイエナ賞金稼ぎか?最近はあまり見ないがたまにこういう奴らがいるのだ。
今度はその隣りの女が言った。
「えぇ、こいつね賞金首は。早く捕まえましょう!見てられないわ」
なんだなんだ?こいつらやたらと好戦的だな。
「おいおい、ちょっと待てよ。こいつは俺が捕まえた賞金首だぞ?さすがに証言者も多いからハイエナがバレたら、お前ら冒険者クビになるぞ?」
俺が説得しようとしたが、何故か一同が顔を見合わせた。
「お前何を言ってるんだ?別に俺達はそこの男達に興味は無い。お前を捕まえにきたんだよ!」
「はぁ??何言ってんだ?俺は賞金稼ぎで、この強盗団を捕まえてんだよ。わかる?俺とお前は同業者なの!!」
「お前こそ何を言ってるんだ?お前とそこの強盗団が同業者で、俺はお前を捕まえるんだよ!お前の正体はバレてるんだぞ!変態アレン!!」
なんで見ず知らずの奴に変態と、しかも名前まで呼ばれなきゃなんねーんだ?
「さっきこの店から逃げ出してきた人達から聞いたんだ!店内に気持ち悪い格好をした変態射精魔導士がいて、女性にいかがわしい事をしようとしているってな!」
先頭の男に続いて隣りの女が喋った。
「私達は賞金首リストに載っていたアレンという卑劣極まりない人類至上最低のセクハラ変態賞金首の事を目にしたのよ。そんな奴をのさばらせてはいけないと思ってこの街までやってきたわ!」
「あぁ、そしたら早速貴様の噂が飛び込んできてな。店に駆けつけたのさ!!」
あの客達、助けられたくせにボロクソ言った挙げ句テキトーに事実をねじ曲げやがったのかよ。しかもよりによってこいつら、別に賞金額も少ない学園長をわざわざ追ってたってのか。ご苦労なこった。
にしても聞く限りでは服装の特徴は聞いていたようだが、別に俺の顔などの情報は聞いてないのだろう?俺はもう洋服を着て元の格好だ。俺と断定する意味がわからない。
面倒だからもうその変態はどこかへ逃げたということにして、こいつらをとっとと帰らせよう。
「おいおい、早合点の人違いじゃねーのか?その気持ち悪い格好をしたやつはここにいねーだろ?さぁ、俺は仕事中なんだ、とっとと帰んな!」
「いや、だからお前が気持ち悪い格好をしてる変態射精魔導士だろ」
はぁ?こいつ本気で病院送りにしてやろうか?
これまで限定強化を発動させるためにやむを得ず変な格好をした過去があるのは認めよう。あぁ、あるさ、あるとも。ミリアに着せられずとも、自ら着た事はあるよ。そりゃあものすごい威力の魔法が出たさ。この店くらいなら消し飛ばしただろうな。
だが、今は違う。冒険者になってこの方、普段着を悪く言われた事など無いし、むしろ気を使っている方だ。
俺は限定強化の条件のせいで変態扱いされる事はあっても、それ以外の部分は普通だという自覚がある。
なのにこいつときたらどうだ?下手したらミリアよりたちが悪いぞ?
俺はフツフツと怒りがこみ上げてきたので立ち上がった。
「キャッ!」
女が悲鳴を上げ、顔を手で覆った。
「お、おい!動くな!やっぱり変態じゃないか!なんだ、その格好!」
「なんだとはなんだ!お前、洋服が濡れた程度でそんな叫ぶなんて頭おかしいんじゃないのか?!」
「頭がおかしいのはお前の方だろう!自分の姿をよく見てみろ!」
男が指差した方に姿見の鏡があり、そこに俺が映し出されていた。
水に濡れた洋服は透け、その下に着た緑のレオタード、そして乳首のところだけはっきりと透けていた。
はい、すみません。誤解を招きましたが言い逃れの余地はございますか?ございませんよね?
「お前!それを見て自分が変態じゃないとでも言うのか!!」
いえ、返す言葉もございません。
クソ、元はといえばミリアのせいだ!
お前、ちゃんと責任持って代わりに弁解しろよ!
俺が後ろを振り向くと何故か自分の手を縛ってもぞもぞしているミリアがいた。
「その男は人を縛り上げて喜ぶ変態よ!あなた達も見たでしょう?!ププッ」
ミリアはそう言った後、笑いを堪えきれず少し噴き出したがすぐに下を向いて咳払いをしてごまかした。
ク、クッソ、あの女ぁぁあ!
完全に遊んでやがる!!やはりお前も強盗団と一緒に自警団に突き出してやるからちょっと待ってろ!




