1話 第一印象
前作の
誰も俺の事をサイコパスとは呼ばせない~呼んだ奴らを片っ端からを消せば俺はサイコパスにはならないのでは?~
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「適性検査の結果ーーアレンの適性職業は魔導士だ」
「うぉーー!魔導士カッケーーー!!」
「あとーーー」
「……あと?」
「限定強化の検査の結果ーー恥ずかしさを感じる時だけ魔法が使えるようだ」
「何だソレ?!おい!!誰か教えてくれーー!!」
「アレーン、おーい。大丈夫か??」
リッチーの声で起きた。またいつもの悪夢か。
「あぁ、悪い悪い。このところ調子悪くてね……夢まで最悪だったぜ」
俺はため息をついた。
最近少しスランプ気味で気持ちが焦ってるんだろうか。思い出したくもない夢まで見ちまった。
「まぁ、そう落ち込むなよ!」
「おう、ありがとな!そろそろ交代の時間だろ?代わるぜ?」
馬の手綱を握るリッチーに向かって、荷台にいる俺は言った。
俺達が馬車で向かっている街はまぁまぁデカいらしい。
俺達は賞金稼ぎをしている。
今追ってる賞金首がこの街に身を隠しているというタレコミがあった。
「しっかしコイツの犯罪歴、エグいな。なんだこれ?めちゃくちゃすごい数の女の子達を奴隷売買してるじゃねーか」
「ひでぇ奴だよなぁ。組織的に動いてて、その組織のボスがこいつらしい。さっさと捕まえようぜ」
俺達は街に着き、宿を取った。
賞金首を探す間、長期間泊まれるところだ。
馬車を宿屋の裏に預け、とりあえず情報収集ついでに飯を食べる事にした。
テキトーな店を探していると、路地の隙間から女の悲鳴が聞こえたような気がした。
俺とリッチーは顔を見合わせて頷いた。
賞金首のカンってやつだ。
声の方へ向かった。
路地裏を進んだ先は袋小路で、男達3人が女の子1人を囲んでいるようだった。男達がデカいおかげで女の子がよく見えなかった。
「なんだ?てめぇら!殺されたくなかったら消えな!」
男の一人がすごんでくる。
「あぁ、すまない!すぐ立ち去るよ!ただ、ちょっと聞きたいんだけど……その、キミ達が今やってるのは、誘拐かな?それともただのお楽しみかい?」
マイペースなリッチーがあけすけに質問した。
「うるせぇぞ!!とっとと消えな!!」
だよな。このチンピラの反応は正しい。
「あいつら賞金稼ぎじゃねーのか?絡まれると面倒だぞ?始末しちまおうぜ?」
「そうだな」
チンピラ達の興味が俺達に向いた。
「お願いします!助けてください!!誘拐なんです!!」
チンピラに隠れて見えないが、後ろの女の子が必死に声を張り上げた。
「「ビンゴだ!!」」
俺とリッチーはお互いを指差していった。
そうと決まれば話は早い。
リッチーはチンピラ共に向けて歩いて行った。
俺はこの位置から援護の姿勢をとる。まぁこの人数だと今回は出番は無さそうだな。
「こいつらは賞金首に繋がる糸口なるかもしれねーからな!リッチー!手加減してやれよ!気絶されたら起こすのも大変だ!」
「オッケー!じゃあいくぞぉ~」
リッチーはチンピラの手前で一旦止まって深呼吸を始めた。
俺達のナメた発言で臨戦態勢に入ったチンピラ達はリッチーを取り囲もうとお互いが適度に距離をとりながらリッチーに近づいた。
「スゥーーハァーーーー……スゥーーーーーー」
息を止めた瞬間、リッチーは左にいたチンピラに一瞬で距離を詰めた。例えではない、本当に一瞬だ。
リッチーに近づいていたチンピラの一人が、突然自分の前まで一気に距離を詰めてきたリッチーに驚いた。
「いてっ!……って……おまっ!!いつの……」
話している最中にリッチーはそいつの土手っ腹に連撃をお見舞いした。
他の二人が、目の前にいたはずのリッチーが仲間の懐にいるのを必死で目で追っていた頃には、仲間は立ったまま気を失っていた。
リッチーは次に自分から近い真ん中にいたチンピラを見た。
一気に距離を詰めるが、チンピラも間一髪ガードが間に合ったものの、連撃まで見切る事は出来ず、隙だらけのわき腹に2発喰らって膝から崩れ落ちた。
リッチーは後ろに飛んで三人目から距離をとった。
「ぷふぅーーーーー、はぁはぁはぁ」
息継ぎをした。
「すな……はぁはぁ、おに、ぜひぃぃ……話……」
「リッチー、代わろうか?」
コクコクと頷くリッチー。息絶え絶えの中、無理に話そうとするからそうなったのだ。
深呼吸するリッチーの代わりに俺は残りのチンピラに言った。
「俺達は賞金稼ぎだ。お前らのボスに用があってな。素直に話せば痛い目を見ずに帰れるぞ。どうする?」
チンピラは俺とリッチーを見た。
どう見ても弱そうな俺と息が上がっているリッチー、なんか勝てる気がしてきたようだ。
確かに俺もそう思う。なんかうまく説得出来なかった気がする。
「うるせぇ!もうそいつヘロヘロじゃねぇーか!」
リッチーに猛ダッシュしてきた。
リッチー大丈夫?いける?
心配なので俺がいくことにした。
「ちんこ!!!」
俺は思いっきり叫んだ。
チンピラは俺の方を見て止まった。
完全にリッチーに標準を合わせていて、ノーマークだった俺がいきなり大きな声にびっくりしたのだろう。さらに耳に飛び込んできた言葉がこの場にそぐわなかったのだ。
「はぁ?」
チンピラが少しイラついている。
いや、なんかスンマセン。恥ずかしくなってきた。
チンピラに向けた掌に突然、拳くらいの大きさの火の玉が発生し、チンピラへ向けて飛んで行った。
「うわっーー!!熱ぃぃ!!」
威力は小さかったが火は火だ。燃えたら熱いに決まっていた。必死に手で振り払っている様子を近づきながら眺めた。
「さあぁて、もう一発……」
俺がまた魔法を使う素振りを見せるとチンピラは叫んだ。
「ま、待て待て!謝る!謝るからもう止めてくれ!!」
少し呼吸を整えたリッチーと二人、洋服が一部焼け落ち、腹に軽い火傷を負ったチンピラを見た。
「俺らは組織の末端だ。さらった女は一カ所に集められ、そこから出荷されるって話だ」
「その場所は?」
「そこまでは知らねぇ」
俺はまた掌をそいつに向けた。
「ほ、本当だ!俺ら末端は一度自分のエリアのアジトに女を連れて行くんだ。リーダーがその後どっかに連れて行ってるが、それは俺らには聞かされてねぇ」
「じゃあ、アジトは?」
「それを言っちまったら俺らこの街じゃ生きていけねぇよ!!」
「なら早く引っ越しの準備を始めろ。それとも引っ越し先は病院にしとくか?」
俺は掌を向けて、もう一度確認した。
「わ、わかった……出て行く。アジトはここから3ブロック先にある廃工場だ。周りになんもねぇからすぐわかるだろう」
俺はリッチーを見た。
リッチーが頷いたので俺はチンピラ共を解放する事にした。
「もう行っていいぞ。西の方の街、あそこは今産業が盛んだ。仕事もあるんじゃないか?」
チンピラは俺の話を聞いていたのかわからないが、身悶えしているチンピラと気絶したチンピラを起こして逃げて行った。
「3ブロック先の廃工場か……リッチー、行ってみるか」
「あぁ、そうだな」
目的も決まったので二人で立ち去ろうとした時だった。
「あ、あのっ!ありがとうございます!!」
背中の方から声がした。
すっかり忘れてた。女の子を助けたんだった。
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8話からヒロインが本領発揮いたします。