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目眩く刹那  作者: AKIYUZURI
5/6

卯月の息吹【5】

5【文芸部にて】


『多目的室2』


確かにそう書かれている。ここが文芸部の説明会場で間違いない。

小鳥遊が扉を開くと、既に数人の生徒が席に着いていた。黒板の前には男女一名ずつ立っている。恐らく彼らが文芸部員だろう。

ひとまず、俺らも手近な席に座った。


「それでは、時間になったので文芸部の説明会を始めます。」


女子の方が話し始めた。


「文芸部長の佐々木です。文芸部は今、私たち三年生の二人のみで活動しています。」


えらく零細なようだ。


「二年生はいないため、今年どなたかが入部してくれないと部員がいなくなります。是非、検討してみてください。以上です。何か質問はありますか?」


これで終わりか?活動内容や実績については話さないのか?それとも部活動説明会とは、こんなものなのだろうか。

横を見ると案の定、小鳥遊は質問をしたいようで、手を挙げようと試みているが勇気が出ない…といった挙動をしている。

「代わりに訊いてやろうか?」と言おうとしたところで、前の方に座っていた男子が手を挙げた。


「はい、どうぞ。」


「あの…普段はその、どういった活動をしているんですか?」


小鳥遊が少なからずほっとしたような表情を見せる。


「普段…ですか。特にこれといったことは何も。けやき祭の前には文集づくりのために何度か集まりますが、それ以外ではないですね。」


正直なところ、文芸部なんてそんなものだろうと思っていた。本を読んだり、書いたり。それを目的として入る者より、もともと部活動に熱意のない者が「暇そうだから…。」みたいな理由で入るような部、という印象がある。

しかしこれは、全国に幾つかは存在するであろう、文の道を志し、活字を愛する誠の文芸部らに失礼なのだろう。


この一つの質疑応答で全てを察したのか、その後質問をする者はおらず、説明会は終了した。結局、もう一人の男子部員は名乗りもせず沈黙を貫いていた。彼は何のためにあの場にいたのだろうか。


「短かったな。」


教室を出て、小鳥遊に話しかける。


「そうだね…。」


「どう思った?文芸部。」


「普段からの活動とかはないみたいだったよね。私は折角入るんだったら、ちゃんと活動したいかな…。」


正直、俺は悪くないと思っていた。普段の活動がないのであれば、それはそれで楽である。しかし、難点が一つ。「二年生はいないため、今年どなたかが入部してくれないと部員がいなくなります。」と佐々木は言っていた。即ち、俺が入部し、他に誰も入らなければ必然的に俺が部長になるのだ。あの説明会の様子を見る限り、誰も入部しそうにない。責任ある立場というのは、得てして面倒事が多いものだ。避けるのが賢明だろう。


「そうだな。俺は取り敢えず、残り二つを見てから考える。」


「次は演劇部だね。」


「そういえば、お前……失礼。小鳥遊の先輩とやらはどんな人なんだ?」


先輩のことを訊かれたからか、小鳥遊の肩が僅かに動いた気がした。


「……うん。先輩はかなり…その、奇妙な…というか、不思議なというか…。」


「要するに変人か。」


「わ、悪い人じゃないよ!明るいし…。」


『明るい変人』か。

俺が最も関係を持ちたくない人種だ。まあ構わない。説明会を受けるだけだ。それに、演劇部だから劇の一つでも披露するかもしれない。途中で眠らないように、くれぐれも気を付けるとしよう。

実は私、生粋のメガネストでして眼鏡をこよなく愛しています。正確には「眼鏡を掛けた女性」を。

性癖やフェチズムといったものを告白するのには、多少の勇気が必要かもしれませんが眼鏡は「太もも」や「鎖骨」などと比べると、幾分か健全な印象を与えると思っているので、身近な人間には臆することなく言いふらしています。


俗に言う「布教」というやつです。

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