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目眩く刹那  作者: AKIYUZURI
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卯月の息吹【4】

4【さとるくん】


「それで、どの部を回るつもりだ?」


「今考えてるのは、文芸部と演劇部と文化研究会かな…。」


どうやら俺と同じ様に、運動部に入る気は無いようだ。そこが一致しているから誘ったのだろうか。

文芸部といえば、恐らく本を読んだり、文集を書いたりするのだろう。これでも俺は、読書を暇つぶしの一環として好んでいる。

文化研究会はまぁ…………文化を研究するのだろう。民俗学のようなものかもしれない。

だが一つ、意外な点がある。


「演劇部か…。演劇、好きなのか?」


小鳥遊は少し遠慮がちに首を横に振った。


「そういう訳じゃなくて、演劇部には中学の時の先輩がいて……。強く誘われてるから。説明会だけでも…って」


なるほど。確かにこの女、頼まれたら断れないような雰囲気はあるな…。


小鳥遊沙奈枝。黒い長髪で清楚な雰囲気を漂わせる、いかにも「か弱い」という形容詞が似合う女子だ。眼鏡を掛けていること以外、これといった特徴のある容姿ではないが、美人と言って差し支えは無い。第一声からずっと感じていたのは声の細さ。高いが、耳に響かない。催眠作用のありそうな声だ。背丈は俺の肩くらい。俺が高一男子としては平均程度だから、彼女も平均ほどか、それより少し低めぐらいだろう。


「あっ…あの…どうかした?」


俺の目線に気付いたか、彼女は僅かに赤面しつつ訊いてきた。

情報追加。小鳥遊沙奈枝は、やや恥ずかしがりだ。


「いや、何でもない。そろそろ行こう。」


彼女は少し不満げにこちらを見つめている。それもそのはず。自分で聞いていても、明らかに取り繕った声色だった。俺に演劇は向いてないな。


見取り図によると、文芸部は多目的室2、演劇部は生物講義室、文化研究会は社会科講義室で行っているようだった。取り敢えず、この順で回ることにしたため、今は文芸部の会場へと向かっている。


「小鳥遊は読書が好きなのか?」


「うん。小学生の頃から、図書室でよく本を借りてた…。聡くんは?」


ほう…。悪くない響きだ。


予測通り、小鳥遊の顔はみるみる赤みを帯びていく。


「あっ……ご、ごめんなさい…!えっと……えーっと……あぁぁぁ…!!」


事態に気付いた小鳥遊は、慌てて訂正を図るが、上手くいかない。おおかた名字を忘れているのだろう。まだ初めての会話から30分だ。無理もない。


「いいさ、呼び方なんて気にしない。寧ろ気に入った。」


「えっ?」


「とにかく、俺の呼び方なんてどうでもいい。俺はお前のこと小鳥遊って呼んでいたが、構わないか?」


小鳥遊の肩がぴくりと動いた気がしたが、その後小さく頷くのが見えた。


俺のフルネームは永瀬聡だが、俺の事は名字に敬称か、下の名前を呼び捨てで呼ぶ者がほとんどで「聡くん」などと呼ばれることは産まれてこのかた、同年代では男女問わず無かったのだ。原因は、恐らく某有名怪談だろう。故にその響きは俺にとって、未知の甘美だった……というのは誇張だな。


そう、それは至極単純に新鮮だったのだ。

インターネットで怪談を検索すると、怪談そのものよりも、それに付随してくる画像に恐怖してしまいます。


後半、主人公の名前から連想した怪談をテーマに思いつくまま書いていたら思いの外、印象深い章になりました。

何かが始まりそうだと思ったそこの貴方、まだ始まりませんよ。

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