86話 サイファー&騎士vsゼノディス
騎士2人は騎士鎧を着ていなかった、身軽に動ける軽鎧を身に纏い、腰に剣を差している、騎士と云うよりはまるで冒険者の風貌に近かった。
「えっと、カルラさん、ですよね?其の黒い鎧はなんですか?趣味が悪いですよ?其れに其の剣、長さ的にショートソードですか?偉く変わった形をしていますが?其れより、お二人が戦っていた様に見えたのですが?」
「やれやれ、君達か、矢継ぎ早に質問しないでくれるか?此の鎧と剣は先導者より承ったモノだ、君達が一生を掛けても手にする事の出来ない霊装だ、名前もちゃんとある、趣味が悪いだって?少しは発言に気を付けた方がいい、にしてもとんだ邪魔が入ってしまった。」
云うや否や、ゼノディスは矛先をメルラーナから只の顔見知り程度の関係だった騎士2人に向けた。
「!?カルラさん?何を…?」
「ああ、カルラ=トネルティと云う名前は偽名だ、俺はゼノディス、レシャーティン八鬼将が一人、ゼノディス=ブロウバルだ。」
ショートソードの刃がマオに向かって突き出される、マオは既にゼノディスに対して警戒していたのか、直ぐ様迎撃体制を取り、剣を抜いたのだが。
メルラーナには確信があった、マオの剣はゼノディスの剣に確実に折られると、エクスレットブレードの刃に警戒してはいたものの、実際にあの剣と何度か打ち合っているし鍔迫り合いもした、つまりあの剣もエクスレットブレードと同等の硬度を誇っていると云っても過言では無い。
「危ない!?」
メルラーナの身体は咄嗟に動いていた、ゼノディスの剣を受け止めようとマオの前に立ち、防御態勢を取った、しかしゼノディスの目の前に立った筈なのに、其処にゼノディスの姿が無かった。
「!?」
目に見える範囲から突然消えたのだ、メルラーナは咄嗟に周囲を警戒する、だが見えていないのはメルラーナだけであった、ゼノディスはメルラーナの真後ろに居た。
「メルラーナさん!!後ろっ!!」
ズッ…!
其れは一秒にも満たない刹那の時間だった、何が起きたのか解らなかった、其の場に居た全員が眼を疑う様な光景を目の当たりにしていた。
「!?」
「メルラーナさん!!」
メルラーナの胸をゼノディスの剣が貫いたのだ。
「…かはっ!」
口から血を吐き出すメルラーナ。
ゼノディスはマオを狙って動いた筈だった、全員がそう思い込んでいた、一体何時メルラーナの後に回ったのか、誰の目にも捕える事が出来なかった、其れは速度が早いとかそう云うレベルの問題では無かった、速度云々の話であればハンターギルドの八次席アレルタや九次席のエクスプローラなら眼で捕えられなくても気配で追う事が出来る、どのようにして移動したのかまで把握する事が可能であろう、しかし先程のゼノディスの動きはまるで時が止まったかの様な感覚だった、例え超が付く程の凄腕のハンターであったとしても眼で捕える事も気配で追う事も出来なかっただろう。
「メルラーナ様っ!?」
ミューレィは緊急を要する治療が必要な人物の優先度をある程度は見極める事が可能だ、此は経験を積んだ医師が自然と得る能力の一つだが、ミューレィは自信にも何故か解らなかったが小さい頃から其の判断が出来たのだ、一刻も早くメルラーナの元へ向いたかった、だからミューレィはサイファーの状態を確認する。
「残念だ、俺は始めからメルラーナ、君を狙っていた、君ならば必ずこう動くと予想出来た。」
「き、…気安く名前で呼ばないで…。」
胸を貫かれた状態でメルラーナはゼノディスに名前で呼ばれる事を拒否する。
「おっと、確か《《心臓が二つ有る》》んだったな?」
ゼノディスは剣を引き抜き、狙いを定める。
「あっけない終わりだったが残念だ、君を我がモノにしたかったよメルラーナ…、さようなら。」
そう云ってもう一つの心臓の音がする場所を特定し、剣を深々と突き刺した。
「いっ!?いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
ミューレィは悲鳴を上げサイファーの傍を離れ、メルラーナの元へと駆け寄った。
其の声が耳元で叫ばれたお陰か、其の声でサイファーの意識が戻る。
「「…っ貴様ぁっ!!」」
シグとマオがゼノディスに向かって走り出す、間合いを詰めてゼノディスの左右に回り、両サイドから攻める2人、息の合った其の攻撃はまるで芸術の様だったが、ゼノディスは刃渡り50センチ程のショートソードを用いて騎士2人の連携攻撃を軽々といなしている。
シグは右手に持った剣を身体毎腰から捻り自身の背中に刃が隠れる様に振りかぶる、左足を前へ踏み込んで全身を使って思い切り振り切った。
ガキンッ!
シグの持つ剣は一直線に薙ぎ払われるが、見え見えの大振りを其の場から一歩も動く事無くショートソードで防ぎ、衝撃を逃す為に斜めに逸らす。
余裕で受け流した様に見せかけた其の隙に、シグの左脇からマオが屈み乍ら姿を現す、ゼノディスが其の姿を視認した時には細長い槍の突きが腹部目掛けて繰り出されていた。
しかしゼノディスは其れにも全く動じた様子も無く最小限の動きで身体を反らして躱す。
シグは剣を振り回した勢いをそのまま利用して右足を地面に蹴りつけ、其れを軸に更に半回転周りして左足をゼノディスの頭上高く掲げ、脳天目掛けて蹴り下ろした。
ドンッ!
と云う音が砦内部に響き渡るが、其れはゼノディスの頭を捕えた音では無く、地面に叩き付けた音であった。
そんな連撃を何十、何百繰り返すも、一度も攻撃を入れる事が出来ずにいた。
「くそっ!?当たらない!何だ此奴、巫山戯やがって!」
「気持ちは解るし冷静になれなんて云わないけれど!怒りに身を任せないで!?」
自分で言っていて笑ってしまいそうになる、自分自身も目の前でメルラーナが刺された事で頭に血が上っているからだ。
ゼノディスのあの一撃は間違いなく、マオを確実に仕留める事が可能だった一撃だったのだろう、メルラーナは其れに気付いたからこそ、マオの前に出て自らが刺されたのだ。
元だけど、騎士だった者として最低な気分だわ、狙いが始めからメルラーナさんだったとしても、護らなければならない筈の人に庇われて、挙句に其の庇ってくれた人は生死を彷徨う程の重傷を負った…。
「…え?」
生死を彷徨う?私、何をおかしな事を思ったの?メルラーナさんは心臓を貫かれたのに、…生死を彷徨う?即死の筈でしょう?其れが何故そんな事を?
「邪魔だよ、お二人さん、君達に俺を止められると本気で思っているのか?」
ゼノディスは2人の激しい攻めを悠々と捌き乍ら元騎士2人に声を掛けて来る。
「随分と余裕じゃないか!カルラ!いや、ゼノディスだったか!?よく平然と恩人を手に掛けれるな!?」
メルラーナはシグにとって命の恩人である、其れはカルラ…、ゼノディスにとっても同じだと思っていた、初めてカルラを見たのはモアムダンの町だった、其処で霧の魔物、欠片のモンスターと呼ばれているモンスター2頭に追いかけられていた、少なくともシグには只の学者にしか見えなかったが。
「恩人?別に俺は誰に助けられる必要等一切無いが?何処をどうすればメルラーナが恩人になるんだ?」
「そうかよ!学者ってのは嘘だったのか!?」
「前にも言ったと思うが学者を目指す学生で、其れは本当の事だ、但し、学者を目指して学生に成った訳ではないがな。」
「何を言っているのか解らないが!貴様が俺達の目の前でメルラーナさんを傷付けた事に変わりは無い!其れに対して怒るなと言われても怒りを抑えれる程俺は人間が出来ていない!!だったら、貴様を敵と見なして排除するしかないだろう!?」
「彼女は君達を庇って傷付いたんだが?」
庇う?此奴?何を言っているの?さっき此奴はメルラーナさんを狙ったと言った、自分でそう言ったのだ。
「…最低ね!貴方は屑だわ!よくもそんな出任せをベラベラと話せるわね、私を利用してメルラーナさんを刺したくせに!」
再び怒りが込み上げて来た、胸の二ヶ所から大量の血を流して意識を失っているメルラーナ、其の傍には御嬢様風の血で真っ赤に染まったドレスを着た少女がメルラーナの名前を連呼し乍ら次から次へと流れ出てくる大量の血を止めようとしている、治療魔法を施しているのだろうか、少女の手には薄らと光っていた、少年は意識を失っていたのか、立ち上がろうとして少し朦朧としている、更には霧の魔物と化したと思われる人物の遺体が床に転がっている。
「此の状態で状況把握に努めるか?流石は騎士と云った処だが、余裕が無さそうに見えるぞ?」
ゼノディスは口の端をつり上げ、嗤い乍ら、しかし表情を変える事無くシグとマオを挑発する。
「此の男の言葉は毒でしかありません、耳を傾けないで。」
広間中に通る様な声が、シグとマオの耳に入って来た、と同時にゼノディスの右側面に一つの影が動く。
ガキッ!
精神攻撃から復活を果たしたサイファーが、槍を持って突撃を噛まして来たのだ、しかし其の一撃も見切っていたかの如くショートソードで槍の速度を少しだけ減速させ、左足を右足の後ろへ回し其れに続く様に身体を捻り、余裕を持って躱す、躱した先を狙ってマオが首を落とそうと薙ぎ払うが、膝を軽く落として首の高さを身体毎低くして躱し、そのまま右肘でマオの鳩尾目掛けて叩き付ける。
ゴッ!
「…う…ぐっ!ゲホッ!ゲホッ!」
騎士の鎧を脱ぎ捨てて軽鎧にした事がアダとなった、マオは激しく咳き込み、片膝を床に落とした。
ゼノディスが隙だらけになったマオの後頭部を狙ってショートソードを頭上に掲げる。
「させるかよ!!」
短く叫んで其れを止めに入るシグ。
ガキンッ!
シグの剣とゼノディスのショートソードが鍔迫り合い。
「マオ!?」
「大丈夫ですか!?」
「へ、平気、其れより、貴方は?」
「僕はサイファー=ロドゥキルト、カレーパゴ村で馬の調教師をしています。」
自己紹介をしている場合では無いのだが、彼等の正体を知りたかったので必死にゼノディスの攻撃を捌き乍ら会話を続ける。
「偉く余裕ではないか!?鬼の少年!?」
余裕な筈が無い、此方は常に死と隣り合わせの戦いを強いられていると云うのに、正直黙っていて欲しい。
3人の中で唯一サイファーだけがゼノディスの強烈な一撃一撃に対応している、対応出来ている…様に見えるが鬼の力を持つサイファーの攻撃は一切当たらない。
そんな状況の中で…。
「俺はシグドウェル=ハーマイン、クトリヤ国の元騎士だった者だ。」
「私はマオ=カーステル、同じくクトリヤ国の元騎士よ。」
サイファーは自分で元を付けている2人に不思議に思ったが。
「クトリヤの騎士…ですか、では貴方々も貴族ですか?」
話を続ける事にした、此のままゼノディスと正面切って戦い続けたとしても突破口が見つからないのと少し時間を置いて
「一応な。」
「そうですか、こんな時に言うタイミングでも無いとは思いますけど、僕は貴族が大嫌いです、其れに準ずる騎士も同様です。」
ハッキリ云って会話をしている余裕など一切無い、今此の現状にも徐々に追い詰められているのだ。
「…、プッ!君は面白い奴だな、サイファー君だったか?確かに俺には貴族の血が流れているし、其れに対してどう足掻こうと一生付きまとわれてしまうが、実は俺も貴族が嫌いだ。」
「…え?」
「だから俺は貴族制度を廃止したリースロート王国で永住権を得て其処で騎士に成りたいんだ。」
廃止された訳では無く、貴族に権力を持たす制度を見直したと云うのが正解なのだが…。
「………へぇ?リースロート王国には貴族制度が無いんですか?…其れは良い事を聞きました。」
「だがシグ君、お前がリースロート王国へ辿り着く事は出来ない、何故なら此処で俺が殺すからな。」
ボキゴキ!
何かが折れる音が聞こえて来た。
「ぐっ!?あああああっ!?」
シグの右腕に急激に激痛が走る、折れた音はシグの右腕の骨だった、全く気配を感じなかった、何時移動したのか、其れ以前に動いた気配すら感じられなかった。
折れた腕の手から、握っていた剣が滑り、ガランッ!と云う音がして何度も床でバウンドして落ちた。
眼の前に居たから気付かなかったし、気付けなかった、…此の男、気配そのものが感じられない!?
「シグっ!?」
マオが叫び、近付こうとするが腕を掴んだままのゼノディスを何とかしないと近付いたとしても何も出来い、だが無闇に近付けば今度はマオ自身が危険な目に遭うのは目に見えていた。
気配を消せる人間は知っている、義兄のツァイがそう云う技術を持ち合わしていた人だったから、けど其の技術は長い時間を保てない欠点がある、気配を消すために脅威的な集中力が必要になるから…、『其の集中力を途切れさせないまま戦い続けるのは不可能だ…、此の技術は奇襲に特化しているもので姿が見えていれば意味の無い技術だから消し続ける必要も無いしな…。』義兄がそんな事を言っていた、今はそんな事よりもシグを助けなきゃ…。
「…ば、…化け物が。」
腕を折られ、其の場に膝を付き、ゼノディスを見上げてそう呟く。
「有り難う、良い褒め言葉だ。」
ドゴッ!!
シグの右腕を放して腹に蹴りを入れる、身体が宙に浮いて4~5メートルは飛ばされ、身体が床に叩き付けられた、ゴロゴロと床を転がって壁にぶつかり漸く止まる。
マオは一瞬躊躇した、ゼノディスに隙が出来た、攻撃を入れる好機と見るか、シグの傍へ行く冪か…、前者は罠の可能性が高い、寧ろ罠なのだろう、後者は騎士として………。
ああ、私はもう騎士では無かった。
そう思った時にはもうシグの元へ走っていた。
そして其れが切っ掛けになったのか、此まで堪えてきたゼノディスの攻めに耐えられなくなり、形勢が一気に崩壊する。
「シグさん!」
サイファーがゼノディスに向かって突っ込む、槍を水平構えて突くが命中しそうな処で左に躱される、躱された処へ目掛けて槍を薙ぎ払うが、剣で弾かれた、サイファーは弾かれた槍に抵抗を入れずにそのまま逆方向に旋回して右側から再び薙ぎ払うも、槍の柄を掴まれて防がれた。
「やれやれ、いい加減抵抗するのは止めて欲しいものだな。」
「僕の友人をあんな化け物にした人に、止めてくれと頼まれても止める訳ないでしょう!」
「フッ、化け物…か、サイファー君、君は鬼の定義を知っているか?」
「はあっ!?知る訳が無い!」
「鬼とは、人が恐怖し、畏怖し、そして絶望するモノの存在だ、…そして。」
「!?」
ゼノディスがサイファーの目の前から突然消える。
「!?何処へ!?」
周囲を見渡すサイファー、目に見えない背中にも気配を感じ取ろうと集中する。
ゴッ!
後頭部に強い痛みと衝撃を受け、サイファーは倒れ込んだ。
「さあ、絶望するがいい。」
ゼノディスはうつ伏せで倒れたサイファーの左脚を踏みつける。
ギリギリ…ミシミシミシ。
「ぐっ!!あああっ!!」
只単に踏みつけられているだけの痛みでは無い、気を失ってしまいそうな程の激痛が左脚を襲う。
ミシミシミシ………ブチンッ!!
何かが千切れた様な音がした…。
痛みを堪えてゼノディスを見ると、手の中に何かを持っていた。
「…あれは、脚…?僕の…左脚…か?」
ゼノディスの自分の左脚首を手に持っている、だが、其の脚は、膝から上、つまり自身の身体に繋がっていなかった、脚が途切れている部分からは大量の血がボタボタと地面に滝の様に流れ落ちている。
「サイファー様っ!?」
遠くでミューレィの声が聞こえる、貴族は嫌いだがあの人は嫌いじゃない、むしろ好きかもしれない、其れとは別に、彼女を護らなければ…、そう思った、思っているのに…。
「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!」
脚が無い!?僕の左脚が…!?彼女の処まで辿り着く為に必要な…脚が…。
引き千切られた…。
其れも、まるで紙を破るかの様に、力を入れた様子も無く、一瞬で…。
鋭利な刃物で骨毎腕や脚を切り落とす事等、ある程度訓練した者であれば容易い事だ、無論、素人が刃物で叩き切ったとしても早々切り落とせるものでは無いが、少なくともカレーパゴ村で鬼に襲われて喰われた騎士達程度であれば余裕で斬り落とす事が可能だろう、だがゼノディスはサイファーの脚を斬り落としたのでは無く引き千切った、肉と神経と皮に守られた脚を、骨毎何の道具も使わず素手で、力技で引き千切ったのだ、それもサイファーが足首を握られた感覚を感じる間も無い程一瞬で、此はもう人間技では無い、もぎ取ったり捻り切ったりするなら兎も角、引っ張って千切るのを一瞬で行う事等、亜人間であれば不可能では無いだろうが、力自慢のドワーフでも相当な時間を掛けなければ無理だ、オーガやトロルの様な巨大な肉体と筋肉から生まれる力であれば、それなりの時間を掛ければ出来なくは無い…、時間を掛ければ…だ、見た目からは想像出来ない特異な身体能力を持つ巨人や魔人でもやはり一瞬で引き千切ると云うのは出来ないであろう。
サイファーの友人であったあの…。
鬼以外には…。
「サイファー様っ!?」
今すぐにでもサイファーの元へ行きたかった、しかし現状、メルラーナの治療が最優先なのに変わりは無い、其れに、今ミューレィがサイファーの元へ辿り着いたとしても、確実にゼノディスに捕らわれるか殺される。
どうしようっ!?どうしようっ!?このままじゃあサイファー様が出血多量で死んでしまう…!
其の時、ミューレィの肩にそっと誰かの手が触れた。
「!?」
振り返ると、メルラーナが起き上がっていた。
「メル…ラーナ様?」
傷付いた二つの心臓はミューレィの治癒魔法で辛うじて動いている様だ。
ミューレィは必ず助ける事が出来ると信じていた、だから余り驚かなかった、いや、驚いていた…今までのメルラーナとは雰囲気が違う、まるで…別人の様に…。
「何…だ…と?」
そして其れ以上にゼノディスも驚いていた、二つの心臓を自身の持つ剣で貫いたのだ、先導者から譲り受けた霊装・グリムダラサウトで、二度も刺した、死なない筈が無い。
「…ひ、…め、…ねぇ、…さ、…ま?」