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クレイヴァネアス ~始まりは玉響な微睡みの中で~  作者: 沙霧 啓
第一章 旅立ち
6/98

6話 クラスが多い

評価頂き有り難うございます!凄い励みに成ります!

目が覚めると見慣れた部屋の中に居た。


「…あれ?………此処、私の部屋?」


タウスゲーターと戦って、止めを刺した所までは覚えているが、その後の記憶が無い。

自身の身体を確認してみる、が、何処にも痛みや傷が無い事に気付く。


「んん?痛く、無い?夢…じゃないよね?」


疑問に感じながらも、ベッドから出て着替え始め、一階へ降りて簡単な朝食の準備を始めた。

出来上がった朝食を口へ運びながらまだ考え続けていた。


「痛みが消えてるって事は、誰かが治療してくれたって事だよね?治療費どうしよう、払えるくらいの額だったらいいんだけど。」


この世界では怪我や病気の治療法方が二通りある。

一つは身体の自然治癒能力の向上させて止血、傷を癒し、抵抗力を上げたり体内に抗体を作り出して、病気やウイルスに対する治療を魔法によって行う方法。

もう一つは医師の手による施術での治療方法。

前者での治療は素早く傷を治す事が出来、病気の進行を止め、ウイルスを殲滅、若しくは体外への除去が可能である。

但し、魔法による傷の治療は身体が元から持っている自然の再生能力を底上げする事で治す為、怪我をしても放置して勝手に傷口が塞がった状態と同じで変形した状態で治る事になる、病気やウイルスに対しても、進行を止める事が出来るだけで元凶を消し去る事は出来ない。

後者での治療は時間は掛るが、傷を縫う事で綺麗に塞ぐ事が出来、ウイルスも病原体からワクチンを手を入れる事で完全に取り除く事が出来る。

何方か一方の治療が良いという概念は無く、両者を使い、治療を施すのが普通である。

因みに治療魔法も施術も国家資格であり、それ相応の知識が必要となる為、人並み以上の努力をしなければならない。

施術と治癒魔法、両方を行使する事が出来るように、二つの資格を取る医師は多い。

その為か、治療費はとても高額になる事が多いのだ。


朝食を食べ終えて、仕事へ向かおうと玄関の扉を開け、外へ出ようとした時。

「にゃ~」と、猫の声が隣の家から聞こえてきたので覗いてみた、すると部屋の中で40代後半ぐらいの女性が猫と遊んでいた、女性はメルに気付いて手を振ってくる、メルはそれに答えて手を振り返した、女性は急いで家から出てきて。

「メル、おはよう、昨日は有難うね。」

「ううん、ネロを保護してから記憶飛んじゃってよく覚えてないんだ。」

「大変だったみたいね、ギルドの人達に聞いたよ、御免なさいね、今後こういう事が無いようにしないとね、今からギルドに行くの?」

「うん。」

「そう、行ってらっしゃい、気を付けてね。」

「行ってきます。」

大きく手を振ってから労働者ギルドの会館へと向かった。


ギルド会館に入ると、メルラーナに気付いた受付のお姉さんが声を掛けてきた。

「おはようメル、身体は大丈夫?痛い所は無い?」

「おはようミアさん、うん、大丈夫、その事なんだけど、ちょっと覚えてなくて、誰か治療してくれたんだよね?」

「うん、私も聞いただけなんだけど冒険者の人に治療魔法使える人が居たみたいでその人に治して貰ったみたいだよ。」

「そっか、それで、治療費なんだけど。」

「ああ、その心配をしてたんだ、大丈夫だよ、冒険者の任務中の治療行為だから治療費とかは要らないって。」

「そうなの?」

メルラーナはホッと胸を撫で下ろす。

「それより、後一時間後くらいで国から派遣された調査隊が到着する予定らしくて、急いで学者さんと一緒に冒険者ギルドへ向かって欲しいの。」

「え?もう来るの?大変、カルラさん何処に居るか知らないんだけど。」

「学者さんならもう来てるよ、メル待ちだったんだ。」

と、受付のお姉さんが説明していると。

「メルラーナさん!」

丁度二階から降りてきたカルラが話しかけてきた。

「身体は大丈夫?」

「あはは、皆に心配掛けちゃったみたいだね、うん、大丈夫だよ。」

「そうか、良かった、あの後すぐに気絶したから本当焦ったよ。」

「うう、御免なさい、それと、昨日は有難うございました。」

「いいよいいよ、それじゃあ行こうか。」

二人は急いで冒険者ギルド会館へと向かうのだった。


同日。

町長とギルド長の話を聞いてから5日後、労働者ギルド会館前ではなく冒険者ギルド会館前に40人程の人が集まっているのをメルラーナはカルラと共に呆気に取られながら見つめていた。

「あの~、何で此処に集合なんですか?」

メルラーナがヒルノースに質問する。

「うん?ああ、この件は元々冒険者ギルドの案件でね、町長が私の所へ来たのは案内人の依頼なんだよ、それで私は君が適任と考えた訳さ。」

あぁ、そういえばそんな事言ってたっけ?と納得した。

「それに、冒険者だけではないしな。」

ヒルノース会話の内容に付け加えるように、長身の筋肉質の身体をした男性が話しかけてきた。

「この中には魔術師ギルドとハンターギルドからも数名参加してもらっている、それと非戦闘員である調査隊の学者の方々もね。」

「へ~、ハンターギルドとか初めて聞きました、えっと…?」


メルラーナは長身の男性を見上げて。

「初めまして、メルラーナ=ユースファスト=ファネルです。」

「カルラ=トネルティです、ソルアーノ国で学者をしています。」

と二人は自己紹介をすると。

「おぉ、君がジルの、おっと、これは失礼をした、私はカノアの町の冒険者ギルドの長を務めています、コーリア=ウィン=テスタと言います。」

丁寧な口調で帰ってきて、右手を差し出してきた、メルラーナもそれに答えるよう右手を出し、握手をする。

カルラにも同様に握手をかわし。

「かの有名なソルアーノ国の学者殿に参加して頂けるのは光栄です、我々のチームが全力で貴方を御守りしますよ。」

「いえいえ、事態が事態なのにおれ…、私の我儘を聞いて頂き有難うございます。」

軽く挨拶を交わして、コーリアはさっきのメルラーナの疑問に答えはじめた。

「ハンターギルドは狩猟を目的としたクラスが集まるギルドだよ。」

「狩猟?狩猟って狩りをするんですか?遺跡に行くのに?」と尋ねると。

「ははは、その疑問は最もだ。」

メルラーナの疑問に声を大きく上げて笑うコーリア。

「遺跡探索には彼等の技術(スキル)は必ず必要になるんだよ、特に今回のような件ではね。」

技術(スキル)…ですか?」

(冒険者だけでも遺跡探索くらい出来るんじゃ?)

あまり立て続けに質問するのも気が引けたので心の中でそんな事を考えていたら。

「冒険者だけじゃ駄目なのか?かい?」

と言われ、ビクッと身体を震わせた。

「え…えと。」(考えてる事を読まれた??)

「冒険者ギルドはね。」

とコーリアは説明を始める。


冒険者ギルドは色々な人達や各ギルドの人々が集まって来るギルドである。

仕事の内容によってそれぞれに必要な能力を持ったメンツを集めなければならない。

その為、常に決まったメンバーではなく、その時になってみないとどんなメンツが集まるか解らない事が多い。

中には決まったチームを組んでいる人達も居るが、そんなチームでもそれぞれの生活を持っている為、四六時中一緒にいる訳ではないし、時には違う人と組んで活動していたりする。

渡りの冒険者なら話は別だが、それこそ渡りの冒険者がたまたまこの町に居た、という確率は余りにも低く。


「つまり、必要な技術や能力が欲しい場合はそれらが集まる各所属ギルドに要請した方が早いし確実、という訳だよ。」

「なるほど。」

納得した。

「しかし、結局ジルの奴は見つからなかったか。」

溜息を付くコーリアに。

「う…、ご、ごめんなさい。」

と謝るメルラーナ。

「いやいや、メルラーナ君、君が謝る事ではないよ。」

ヒルノースが賺さず弁護する。

「全くだ、彼奴は昔から…。」

ぶつぶつと二人のギルド長が文句を言っていた。


「さて、では始めるとしようか。」

「うむ。」

ギルド長同士が頷き合うと、コーリアが件の任務内容を説明し始めた。

「詳細は伝わっているとは思うが、今から数日前ガウフォルネス遺跡の扉が破壊され、侵入された形跡が発見された、事態を重く見た我々は急遽国へ調査隊の派遣を要請した、我々の要請を受けて国王陛下から直々に心して任務に当たるよう仰せつかった、調査隊の方々は非戦闘員である、我々は国王から派遣して頂けた彼ら調査隊を、一人も犠牲者を出さずに護りきらなければならない、それに合わせて遺跡の案内をしてもらう彼女、メルラーナ君も護衛の対象である、この人数で事に当たる為、皆には決して油断をして犠牲者など出す事の無いようにお願いする。」

一通りの任務内容の説明を終えると、一呼吸置いて現在の状況を語り出した。


「侵入されてからすでに5日以上が経過していると思われる、偵察部隊の話によると、内部は通路が狭いうえにモンスターが徘徊しているとの事だ、だがそのモンスターは過去に提出された報告書と同種のモンスターだと思われる、が、万が一という事もあるので部隊を3つに分ける事にする。

まず第一部隊に冒険者ギルド所属の5名、魔術師ギルド所属の3名、そしてハンターギルド所属の2名、ここに案内人であるメルラーナ君と特別に参加される学者のカルラ君にも入ってもらう。」

呼ばれた二人は頭を下げてお辞儀をし。

「宜しくお願いします。」と短く挨拶をした。

「冒険者諸君は戦闘兼護衛を、魔術師諸君は戦闘兼魔術に関係する事柄全てを任せたい、ハンターの二人には罠の発見及び解除を頼む。」


指名されたメンバーが集まって役割分担らしき話をし始めた。


「次に第二部隊、冒険者7名、魔術師2名、ハンター1名、ここに調査隊の方々が入ってもらう、大所帯になってしまうが冒険者は私のお墨付きの精鋭チームだ、そして第三部隊だが、当然残りのメンバーとなる訳だが、冒険者4名、魔術師3名、ハンター5名、君達には帰路の確保をお願いしたい。」


「最後になるが、もし侵入者を発見した場合、その確保を最優先にしていただきたい、これは本当ならば絶対条件ではあるが、残念ながら日数が立ち過ぎているため既に居ない可能性が高い、その為最優先ではあっても気に留めておくぐらいで構わないと思う。」



「私は第一部隊…と、」

メルラーナが自分の入る隊のメンバーを探してきょろきょろしていると、全身鎧を纏い、背中に大きな盾を背負っているガタイの良い小太りの男性が話しかけてきた。

「君が案内人のメルラーナ君と学者さんのカルラ君かな?」

「え?あ、はい。」

「初めまして私はディテオ、今回第一部隊を任された冒険者チームリーダーをしています、クラスはボーダーです、宜しく。」


クラスとは各ギルドで扱っている職の称号のようなものである、ボーダーは戦士ギルドが扱うクラスの一つで前衛盾職の一つである、盾職と言えば代表各が騎士(ナイト)を思い浮かべると思われるが、騎士(ナイト)は国家戦力であり、民間人からの依頼等を直接受ける事が出来ない為、例外がない限りこういう場には出て来れないのだ。

その為、戦士ギルド所属クラスの前衛盾職第5次席のボーダーが冒険者として今回の件に係わっている。

次席とはクラスのランクである、()()()には見習いの1次席から9次席まであり、各ギルドで経験と実績を積み上げ、さらに試練を突破する事で上がっていく、次席が高ければ強い、と云う訳では無いが、高ければ高い程、民間人からの信頼度は上がって行く。


「宜しくお願いします。」二人は頭を下げお辞儀をする。

「君達は我々の護衛対象なのだが、一応護身用の武器とかは持っておいてほしいのだ。」

「あ、大丈夫です、私は持ってます。」

とメルラーナは自身の両腕に付けている篭手をディテオに見せると。

「むむ?ソードガントレットかな?これは珍しい。」


篭手に内蔵された出し入れが可能な小剣が付いており、持つ必要が無いため手の負担が少なく、防御も可能という便利で扱いやすい武器なのだが、火力としても盾としても中途半端、等の理由から実戦には不向きで冒険者で使っている者は居なかった。

一部を除いては。


「父さんにこれで鍛えておけって、渡されたんです。」

「ほぅ?」(まさか、シールドブレードを見越して?いやいや、こんな少女にアレは扱えんだろう。)


ソードガントレットの上位互換にシールドブレードという武器が存在する、小剣を剣にして、篭手を盾にすれば中途半端だった火力と(防御性能)を補えるんじゃね?

という滅茶苦茶な発想から生まれた為、重量があり握る部位があって、そこを握らないとまともに持ち上げる事すら出来ない、とても扱いにくい武器になった。

当然そんな武器を扱う物好きを居らず、ソードガントレットと共に市場から消えていった。

そんな事を考えながら、顎に手を当て、難しい顔をしているディテオを。

「?」メルラーナが小首を傾げてのぞき込む

「おっと、すまんすまん、カルラ君の方はどうかね?何も持っていなければ何か武器を渡しておこう。」

「いえ、魔法の心得が少々あるので大丈夫です。」

「そうか、それは心強い、まぁ君達が戦うような事にならないようにするのが我々の役目だから、あくまで護身程度と考えてくれていいよ。」

軽く?挨拶を交わした後、チームのメンバーが次々と自己紹介し始めた。


「冒険者ギルド兼、戦士ギルド所属・カシオ、クラスはアークウォーリアー、宜しくなっ!」

ディテオとは全く異なり、スマートな感じの部分鎧を纏い、背中に大きな両手用の斧を携え、腰に小剣を差してある、少し暗めの茶髪で短髪の青年が握手を求めて来たので、メルラーナも「宜しく。」と短く返事を返して握手した。

アークウォーリアーは戦士ギルドの前衛火力職第5次席、個人によって獲物は違うが彼の場合は斧メインとし、小剣は補助のようだ。


「同じく冒険者ギルド兼、戦士ギルド所属・ルエード、クラスはソーディアンだ。」

戦士(ウォーリアー)は基本、様々な武器を使用して戦うクラスなのだが、ソーディアンは剣一択で戦うクラスである、当然、大剣、長剣、細剣、小剣、短剣等も含まれる、人によっては二刀流で戦う人物も居たりするし、長剣を両手で扱う物も居る、所謂、『剣士』という職である。

ソーディアンは6次席の為、ルエードはカシオより戦士として上級者と言える。


「同上、魔術師ギルド所属・トア、クラス、フォークゥス」

単語だけで自己紹介を終わらせたトアと名乗った魔術師、フォークゥスは魔術師ギルドで後衛火力職第5次席のクラス、このクラスまでで自身の得意分野を確立させる、同じフォークゥスでも使う魔法は人によって全く異なり、進むべき次のクラスへの道標となるクラスである。


「私も冒険者ギルドに入ってましてですね、えと、それと、あ、ハンターギルドにも入ってます、シューターのエアルです、あ、シューターはクラスです、宜しくお願いします。」

緊張でもしているのだろうか、間投詞がやけに多い喋り口調でエアルと名乗った20代前後の女性、綺麗な金色の髪を後ろで纏めたポニーテルに青い瞳、動きやすさ重視だろうか、革製の部位鎧を装備しており、背中に弓と矢筒を背負っている。

シューターはハンターギルドの後衛火力職第4次席、弓やボウガン、銃等の遠距離射撃と得意とするクラスである。


「エアル?」

其の名前を聞いた数人の冒険者達が一斉にエアルと名乗った女性を見た。

「え?え?」

視線を受けた女性はキョロキョロと首を左右に振り、狼狽えていた。

「いや、まさか、な。」


次の人の自己紹介が始まると、冒険者達は其方に耳を傾ける。

「魔術師ギルドから派遣されました、ヤシュトと言います、クラスはウィザードです、宜しくお願い致します。」


「同じく魔術師ギルドから派遣されたアークメイジのヨルメイです、宜しく。」


「メイジのコミトアーノと言います、駆け出しなのですが経験の為参加させていただきました、宜しくお願いします。」


「ハンターギルド所属、ハイレンジャーのシグルです、冒険者ギルドにも所属していますが今回はハンターギルドからの派遣で応援に来ました、宜しく。」


「最後?俺?マッシュです、レンジャーです、宜しくお願いします。」


部隊分けも終わり、いよいよ遺跡へ向かって出発を開始した。

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