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クレイヴァネアス ~始まりは玉響な微睡みの中で~  作者: 沙霧 啓
第三章 魔人の血統
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50話 魔人の血統


巨人に連れられて、メルラーナ達が辿り着いた場所は、途轍もなく巨大な狼?の様な姿をした生物が魔人や巨人達との戦場だった。

大勢の魔神や巨人が倒されているのを視ると、かなり劣勢である事が解る。

巨人が言うには、此処でリゼの父親が魔人や巨人の指揮を取っているらしい。

「でも、こんな戦場でリゼを引き渡すんですか?危なくないですか?」

いくら父親が此処に居たとしても、今此処でリゼを帰して自分達が去る事が、リゼにとって本当に良い事なのかどうかが疑問だった。

あの巨大なモンスター、明らかに此までとは違う存在である事は、素人のメルラーナにも解る、アレが、冒険者達が苦戦し、ビスパイヤが命と引き換えにして倒した、あの地竜の比ではない事位は…。

《あの方がローゼス王だ。》

………え?えええ!?あのでっかいモンスターが巨神!?

巨神って人の姿をしてるんじゃないんだ!?


巨神族とは巨大な身体を持った神の事であり、巨人の神と云う訳では無い、故に様々な姿形をしている、中には人の姿をした巨神も居るが、其れが巨人の神かと問われれば、必ずしもそうでは無いのだ。

種族としても統一されている訳では無く、只【巨神】と云う呼ばれ方をしているだけに過ぎない。


此の場所に連れて来てくれた巨人の側に、1人の魔人が近付いて来て、魔人が時折、冒険者達を横目にし乍ら、何か解らない言語を使い話し込んでいる、少しして、魔人が案内をしてくれる事になり、指揮官の、つまり、リゼの父親の居る部隊が配置されている場所へ連れて来られた。


流石に戦場の真っ只中にまでは行かず、巨神から大分離れた場所で待機する様に言われ、冒険者達は警戒を怠る事なく、巨神を凝視している、其の巨大な身体と存在感に唯々圧倒されてしまっていた

その時、メルラーナは誰かの視線を感じる。


「?」


視線のする方を視ると、其処には黒い髪の身長が2メートル以上はある魔人の男が居た、其の魔人は隣に居る青年?と話をしている様だ。

自身を視ていた長身の魔人も気になったが、其れ以上にメルラーナは隣に居た青年を訝しげに見つめていた。

魔人や巨人達の中で、其の青年が1人だけ明らかに毛色が違ったからだ。

青年は金色の髪に紺色のロングコートを着ており、腰には街でベノバが使っていた様な銃が差してある、何より特徴的だったのが、耳が先が尖っていて長かったのだ。

「…?あの人、ひょっとして…エルフ?初めて見た!…けど、何で此処に居るんだろ?と云うか、…初めて見た?筈なんだけど?本当に?……何処かで会った事が有る様な…無い様な?」

エルフの青年は、此方を見る事無く、踵を返して巨神へと向かって行った。


其の直ぐ後、エルフの青年と話しでいた魔人が此方に向かって歩いて来て、メルラーナをじっと見つめてきた。


(??…えっと??何だろう??何で私を見てるの?)

その時。

「おとーさん!!」

隣で私の手を握っていたリゼが叫んだ。


「リシェラーゼ?」

感動?の親娘の再会だ、リゼの嬉しそうな表情を見たメルラーナは、心の底からホッとした。

一頻りリゼを愛で終えると、リゼの父親は、メルラーナを見下ろし。

「我はギュレイゾル=アークレー=ラスタウォレスザンバードである、我が娘を保護してくれて感謝する、娘、名は何と云う?」

近くに寄られると、ギュレイゾルの身体の大きさが際立つ、メルラーナはギュレイゾルを見上げて。

「え?えと、メルラーナです、メルラーナ=ユースファスト=ファネル。」

メルラーナの名前を聞いたギュレイゾルは、黄色い瞳を大きく見開いて驚いている。

「??」

「ファネルッ!?ファネルだと!?」

え…と?何で私の真名(ファネル)が気になったの?…そう云えば出発前にリゼも何か言ってたっけ?

ギュレイゾルが自身の真名(ファネル)に食い付いたのを見たメルラーナは、其の名前が何か意味が有って付けられたものなのだろうか?と云う疑問が生まれる。


ああ…又だ、只でさえ此までに想った疑問は何も解決してないのに…、フォルちゃんから始まって、何故か何度も遭遇して戦ってる霧の魔物といい。

赤い鎧を着てたお父さんといい…。

掘り返すと段々肚が立ってきた…。


あーっ!!もぉーっ!!考えるの止め止めっ!!


そんな事を考えていると。


「………、そうか、お主が、ティレーナの…。」

「!?」

突然出て来たメルラーナ自身が良く知っている名前に驚き、ドクン!周りにも聞こえるのではないか?と思える程の心音が鳴る。

えええっ!?何で此処で()()()()の名前が出てくるの!?魔人と一体どう云う関係!?

「…え?お母さん?お母さんの事を知っているんですか?」

「ふむ、やはりアレの娘であったか、…うむ、知っていて当然だ、ティレーナは()()()()()()()である。」

メルラーナはギュレイゾルの言葉に暫く頭の中で真っ白になり、理解が追い付かないでいた。


「………………え?………………えっと?………………はい?」

今ついさっき、考えない様にしようと思った矢先に、再び新たな謎を突きつけられた。

え?いもうと?妹って言ったの?聞き違いかな?うん、聞き違いだよね!?そうだよ!聞き間違えただけだ!!

聞こえて来た単語を聞き違いである様に自身に言い聞かせるが…。

「ふむ?何も聞いておらぬのか?…つまり、お主には我と同じ、魔人の血が流れていると云う事だ。」

追い打ちを掛けられてしまった。


う…あっ!?あああああっ!?聞き違いじゃ無かったあぁぁぁぁぁっ!?

地面に四つん馬になって、本当なら大声を上げて叫びたい所を、心の中で行っていた。


お!?お母さんが…魔人!?


「正確にはティレーナの母親、お主の祖母は人間であった、故にティレーナは人間と魔人の混血(ハーフ)になるがな。」

ギュレイゾルは淡々とメルラーナの母親の出生を語る。

「…混血!?…じゃ、じゃあ、お父さんは?」

「ジルラードか?奴はユースファストの末裔ではあるが、列記とした人間だ、つまりお主は四分の一(クォーター)と云う事になるな。」


余りの衝撃的な真実を突き付けられ、頭の中が真っ白に成る…。


「………う、うあああああああああああああああああああっ!?」

我慢が出来ずに四つん馬から起き上がって、頭を抱えて叫び出すメルラーナ。

突然の出来事に吃驚したリゼが瞳を丸くしてメルラーナを視ている。

「めるらーな??」


受け止め切れないヤツ来たあああああああああああああっ!?

次から次へと、もぉーやぁーだぁーっ!!解らない事だらけで頭がもう一杯一杯で、考えるの止めて行こうって割り切ったばかりなのに!今度は、私に魔人の血が流れてるって!?何だそりゃっ!?

…よし、今度お父さんが帰って来た時、洗い浚い吐かせよう。


…って、あ、あれ?其れってつまり?

余りにも衝撃的な事実を突き付けられ、頭のネジが数本ぶっ飛びそうになったが、ふと頭の中を何かが過ぎる…。


「リゼって私の従姉妹??」

そうだ、リゼの父親が今、眼の前にいるギュレイゾルと云う魔人で、其の妹が私のお母さんなら…。


チラッと、横目でリゼを見ると、リゼは心配そうな表情でオロオロしながらメルラーナを見つめていた。


…むぅ、其れは其れで、悪く無い…かな?


「ふむ、まぁそう云う事だな、中々理解するのが早い娘だ。」

理解って!?そんな事少し考えれば誰でも解ると思うけど!?って云うか!?理解した訳じゃないんですけど!?無理矢理納得させただけなんですけど!?何の解決にもなってないよね!?コレッ!?


ううう、此は、今までで一番キツイかも…。

…駄目だ、考えるのは後でしよう、今は戦場の真っ只中にいるんだし…。


ズドォォォォォォォォォォォォンッ!!!


「「「!?」」」

今先程まで、闘いの音は聞こえて来てはいたが、いきなり耳を塞ぎたくなる様な激しい轟音が周囲に響き渡った。

音の原因となった方を見ると、金髪の青年が巨神の巨大な身体を地面に叩き付けている光景が眼に移る。

魔人と巨人の連合部隊を劣勢に追いやっていた巨神を1人で相手にし、尚且つ、圧倒しているあのエルフは一体何者なのだろう?


こうしてもう一つ、新たな疑問が生まれるメルラーナであった。


「そ、それじゃあ、ファネルって何なんですか?何故私の真名を聞いて…、驚いた?んですか?」

流石に此は聞いておかなければならない様な気がしたメルラーナは、恐る恐る尋ねてみる。

「ふむ、…ファネル…か、ファネルとは、嘗て神々の戦いにおいて、女神シルヴィアナと共に四竜の一頭に立ち向かった魔人の戦士の1人である。

ファネルの血族と我が血族は別である、此まで名付けられた魔人は後の世に名を残す程の偉人となっている、だが彼等の殆どは元のファネルの血族とは違う者達であったとされておる。

其の名が与えられるのは特別な意味が有り、滅多な事がない限り、ファネルの名を付ける事はしないのだ、つまりお主は其の特別な存在、と云う事になるが、其れが魔人にとってなのか、人間にとってなのか、其れとも親にとってなのかは我の知り得ぬ所では有るがな…。」


えっと?神々の戦い?女神様??…私が特別???…うん、聞いてみたものの、さっぱり解らん。


「しかしまさか、ジルラードが手にする筈であったガウ=フォルネスを、ファネルを名付けられた娘が手にするとは…。」

ギュレイゾルはメルラーナに聞こえないような小声で呟いていた。


ギュレイゾルの考えている時間はほんの数秒間だった、先程気になった音がメルラーナから聞こえたのだ。

「それよりも、お主、いや、メルラーナよ、心臓を何処かで傷付けたのか?」

「へ!?」

再び、ドキン!と心臓が高鳴る。

え?何で??あの襲撃の時に傷付けられた?筈の心臓の事を何故知っているんだ?正直、私自身、本当に心臓を刺されたのかすら疑問なのに。

「ふむ、やはり心音が僅かにずれておる。」

音?音が聞こえているの!?何て耳だ。

正直言って、襲撃の時の事は余り覚えていない、微睡みの中で見た記憶と、胸を刺された時の記憶が曖昧になっている、だが、治療を受けた経緯を考えると。

「え…と、余り記憶に無いんですけど、多分、刺された?かも?」

と一応答えておいた。

「成程な、命の危険を察した魔人の血が無意識に治したのか。」

「え!?血が治したんですか?…でもあの時?」

何か、夢を見ていた様な気がする、思い出せないけど、あの後直ぐに、フォルちゃんの使い方を理解して…。

「ふむ?ガウ=フォルネス自体にそんな力は無いが…。」

「ええ!?」

じゃあ本当に私の中に流れている魔人の血が、胸を貫通する程の傷を治したって云う事!?


「まあ、ガウ=フォルネスの事は我の管轄外だ、ジルラードにでも聞いてみる事だ。」

「そ、その事は、サーラさんって人に聞くようにって、お父さんから言われてます。」

「…そうか、シルヴィアナの末裔に…な、確かに、彼奴は中々捕まらんからな、其れも詮無き事…か。」

おおう!?又とんでもない事を聞いてしまった様なきがする、サーラさんって、女神様の末裔なのか!?うーん、何だか私、とんでもない事に巻き込まれてしまった様な…?アレ?コレ前にも言ったっけ?

「其の心臓はきちんと治した方がいい、先程我は治した、と言ってしまったが、正確には治ってはおらぬ、其れ処かまだ傷は開いたままだ。」

「な!?」

開いたままって!?其れって普通に考えて私、何時死んでもおかしくないって事じゃ!?それ以前に、何で動けてるの!?胸に痛みも感じた事は無いし、傷が開いてるって事は今でも血が流れ出しているんじゃ!?


メルラーナは1人、慌てふためいている。


「落ち着き賜え、魔人は体内に心臓が最低でも二つ以上は有る、一つが止まってももう一つが動いていれば生きていられる、まあ、こんな話を聞かされれば不安であろう、だが安心するが良い、お主の心臓は間違いなく二つ存在しておる、傷付いている心臓は出血はしておらぬ様だし、正常に機能しているとは言えないが一応動いてもいる、血液の流れに些か不安はあるが、其れはもう一つの心臓が正常に循環させている筈だ、だが、今のままでは危険な事に変わりは無い、出来うる限り早く治療をして貰う事だな、ちゃんとした治療を施せば元に戻るであろう、だが治す前にもう一つが止まる様な事態になれば、死んでしまう可能性が無いとは言い切れぬ、故に気を付けた方がいいだろう、キッチリ治しておくのに越した事は無い、だが我には治療が出来ぬのだ、人間の医師ならば治す事も可能ではあろう、だが任せるのは信用出来る者がいい、下手をすれば実験材料にされるやも知れんからな、其れに医師による治療には完治するまでに時間が掛る、確実なのは話を聞くついでにシルヴィアナの末裔に治して貰うのがいいだろう。」


「…はい?」

長々と語って貰って申し訳ないのだけど…さっき、何て言ったの?心臓が二つ…って言った?あはは、あはははは、いやいや、いやいやいや、其れは無いでしょ、流石に、無い無い、聞き間違いだよね?うん、聞き間違いだよ!

「えっ…と、ごめんなさい、さっき何て…?」

聞き間違いである事を信じて、恐る恐る訪ねてみる。

「ん?シルヴィアナの末裔に治療を…。」

「いえ、もっと前、最初の方です、心臓が…その、二つ…とか。」

「ああ、我ら魔人は心臓が最低でも二つ以上存在している…か?」


聞き間違いじゃ無かったぁぁぁぁぁぁぁっ!?心臓が二つ!?心臓がふた…!?心臓が…!?心…臓………!?


…ああ、駄目だ、衝撃的な情報量が多すぎて頭がパンクしそう、今此の場で意識を失って眠りたい、…寝てもいいかしら?駄目だよね?其れより、私の身体、危険な状態って云う事か。


正直言って、理解が追い付いていなかったが、今は状況が状況なので取り敢えず心の奥底にしまう、何せテイルラッドが1人で巨神を相手にしているのだ、今此処で其の話を詳しく聞いている時間は無い。

「は、はい、解りました、色々教えてくれて、有り難うございます。」

頬を引きつらせ乍らも無理矢理笑顔を作り、礼を言うメルラーナ。

「フッ、直ぐに理解せよとは言わぬ、だが孰れは己と向き合う時が来るであろう、其れまでは自身の事を大事に扱う事だな。」

「…はい。」

意外と優しい人?だな…等と考えていると。

「フン、人間の血が流れているとはいえ、我の姪である事に変わりは無いからな、其れに、リゼの事もある、当然の事だ、気にするな。」

考えている事が顔に出ていた様だ。

人間の事は嫌いなのかな?…まあ仕方ないか、リゼを攫ったのも巨神をこんなにしたのも人間が原因な訳だし…?


「君達!」

話が終わるのを見計らったのか、巨神と交戦中のエルフの青年が声を掛けて来た。

「家族会議は終わったかな?終わったのならギュレイ、それとメルラーナ、君達にコレの討伐を少し手伝って貰いたいのだけど、いいかな?」

「ふぇ!」

わ、私にアノ巨神と戦えと!?

「フンッ!1人で戦うのでは無かったのか?ローゼスを雑魚とほざいておったではないか?」

ギュレイゾルがエルフの青年の援護の要求に釘を刺す。

「言ったね、でも意味が違うよ、僕が言ったのは、僕達の敵と比べて雑魚だと言ったのさ、決してアレその物が雑魚だとは言っていないよ其れに、1人で足止めをしておくと言ったのさだから、ローゼスを倒す為にメル、ギュレイ、君達の力を借りるよ其れと、他の人達は来なくていいからね、巻き込まれるだけだからね。」

「フン!物は言い様だな。」

反発している様に語っているが、既に彼の手には見た事も無い変わった形の巨大な武器を持っていた。


…んん?此の武器、見た事無い?本当に?…アレ?


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