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クレイヴァネアス ~始まりは玉響な微睡みの中で~  作者: 沙霧 啓
第三章 魔人の血統
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39話 動く台座

建物の中に入ると、外観とは打って変わってまるで聖堂の様な造りに成っていた、両脇の壁にはステンドグラスが埋め込まれ、其の間の壁には煌びやかな装飾が施された幾つもの模様と銀の器で作られた蝋燭台が有り、数え切れない程の蝋燭と其れに灯された火が建物一面を柔らかな灯りで照らしている、天井は吹き抜けに成っており、まるで違う世界に引き込まれたのではないか?と思わせる程の美しい光景に。


「おお、凄く綺麗。」

「きれー。」

思わず見とれてしまい、呟くメルラーナとリゼ、リゼの言葉にメルラーナはふと思う。

リゼは此の場所を見た事が無いのだろうか?連れ去られた時に此処を通る筈なのに、…気を失っていたのだろうか?煌びやかな建物の内装を見て燥ぐリゼを見てそんな事を思っていた。



聖堂の様な大きな吹き抜けの部屋の奥には、此れも又、煌びやかな装飾を施された大きな扉が有り、其の扉を先頭を歩いていた冒険者達が開くと、ゴゴゴッ!と重苦しい音を立てて開かれた扉の向こう側は、足元も見えない程の暗闇で覆われていた。

冒険者達は慣れた手付きで灯りを灯して行く、メルラーナは詳しく聞かされて居なかったが、60人以上の大部隊に成る今回の任務では一部隊5,6人の十の部隊に別けられているらしい、状況に応じて部隊分けの変更もされるとか、其の各部隊の1、2人が灯りを灯す役目を担っている様だ。


先頭の部隊が扉の中へと入って行き、他の部隊が其れに続く、此処はまだ地下に降りる為の通路に過ぎず、魔物に襲われたりする心配は無いそうだ。

メルラーナ達は全部隊の中央付近に配置されていて、いよいよ扉の向こう側へと進む時がやって来た。

リゼと離れる事の無い様に手を強く握り締める。


ごくん。


灯りを灯しているとはいえ、自ら暗闇の中へと進んで行くのは少し抵抗があった、恐怖から来たのか、生唾を喉の奥へと呑み込むと、繋いだ手を確認し、先へ進む為の一歩を踏み出す。


『アルカシオン・リトゥス・エレメンタル ウィル=オー=ウィスプ。』


メルラーナの傍に居た部隊の一つが何かの魔法を唱える。

精霊魔法(エレメンタルマジック)と呼ばれる自然界に住む精霊と契約を交わし、其の力を借りる事が可能と成る魔法で、人種で云うなら、エルフやホビット(小さな人、と呼ばれるドワーフよりも小さい小人族で、別称・グラスランナー、とも呼ばれたりする種族。)の様な自然と共に生きる種族が得意とする魔法である。

通常の招喚魔法は、自身の魔力を使い、魔法生物を生み出す様な感覚で招喚するのに対し、精霊魔法(エレメンタルマジック)は精霊と対話する事で、自然の力を得る事が出来る魔法と云える。

招喚された、ウィル=オー=ウィスプは火に属する精霊で主に暗闇を照らす灯りとして、力を借りる事が有る精霊だ、灯りは自在に操る事が出来、強烈な灯りを照らす程、強くすると其の灯りを直視すれば下手をすると失明する事も有る程の灯りと成る。

火で出来た玉ではあるが実際に火の様な揺らめきは無く真円の形状で光りを放っていた。


ふよふよと宙に浮く火の玉をじっと見つめていると、有る事に気付いた。

「目がある?」

火の玉の丁度中央付近に小さな点が二つ点いていた。

「か、可愛い。」

「かわいいの!」

メルラーナとリゼに見詰められている事に気付いたのか、ウィル=オー=ウィスプは発光されている自身の灯りを少し緩め、淡い光に変わる。

不思議に思い、ウィル=ウォー=ウィスプを招喚したエレメンタリストと呼ばれるクラスの術者に尋ねると、直視する事で目に与える影響を考えて弱めてくれたのだそうだ。

つまり自身で考えて私達に配慮してくれたと云う事?何それ!?スゲー!?そして凄く可愛い!!

一頻りウィル=オー=ウィスプを堪能すると、移動はしていたつもりだったのだが速度が遅かった様で先に進んでいた部隊が待ってくれていた、流石に申し訳なく思い、集中して先へと進む事にした。


ウィル=オー=ウィスプによって照らされた灯りによって暗闇だった其の場所が通路である事がはっきりと証明された、先程の場所とは打って変わって装飾等は一切無く、只々石で出来た床や壁、天井と其れを支える柱が並んでいる、別段、変わった所の無い至って普通の通路だ、何故灯りが一つも無いんだろう?等と疑問に思う程であった。普通に考えれば当然の疑問だろう、奥に行けば行く程、暗くなって行くなら兎も角、建物に入って最初の部屋に閉ざされた扉が有り、其の扉を開けて直ぐに先が全く見えない程の暗闇が広がっていたのだ、暗闇にするのは何か理由が有るのだろうか?


「俺も詳しくは知らないのだ、前に聞いた時の話だが、確か外の光、日の光だったかな?其の光を入れるとが駄目らしいのだが、正直よく解らん。」

アンバーに尋ねてみたが、そんな答えが返って来た。

先へ進むと直ぐに下へ降る階段が現れた、先頭にいた部隊は既に階段を降りて行っている様だ、下の方に灯りが見える、階段は螺旋を描いていて建物があった場所から真下へと向かっているのが解る。


どれ位下っただろうか、降りて行くにつれ、周りの気温が下がっていく、最初は涼しいと感じる位だったのが、徐々に肌寒くなり、最終的には防寒の羽織を着たいと思わせる程、寒くなっていた。

地下に潜る程気温が下がるのは理解出来るが、これ程寒く成るのは想定外だった、寒さと戦い乍ら螺旋階段を下り切ると道幅の広い通路に出る、其の広さは60人が間隔を空けて移動しても一切苦に成らない位に余裕の隙間が出来る程だ、周辺には相変わらず灯りが無く、冒険者達が灯した光が静かに周りを温かく照らしていた。


通路を歩いていると行き止まりに突き当たる、突き当りには見上げても天辺が見えない程の鉄製の巨大な扉が行く手を阻む様に聳え立っている、気の所為か、巨大な扉は不可思議な威圧感を放っている様に感じた。

「…こんな扉、どうやって開けるんですか?」

見える事の無い扉の先を眺め様と上を見上げ乍らアンバー達に尋ねると。

「其れは開かないぞ、人間用(・・・)は此方の扉だ。」

アンバーがそう答えると同時に。


ゴゴゴゴゴ!!


鉄製の頑丈そうな扉が石畳の床を引きずり、重苦しい音を立てて開いていく、開いた扉は巨大な扉と一体化しており、まるで只の模様の様に見えた、装飾を勘違いしたので気付かなかったのは無理も無いが、其れ以前に人間用と言っていた割には其の小さな扉でも裕に3メートルは超えている。

一体何が出入りしている扉なのだろう?扉を潜ると、真っ赤な光が怪しく壁を照らしている部屋に出た、赤く光る灯りは四方八方を照らし、部屋の全体像がある程度は把握出来た、其の部屋は表現のしようが無い程の巨大な空洞で、其の広さはクロムウェルハイド工房の大空洞の其れを遥かに凌駕するモノだった。

巨大な空洞の中央には、大きな台座の様なモノが置かれていて、台座には魔法陣の様な紋様が隙間無く埋め尽くされており、台座の中央には何かを操作する為の装置が置かれていた、ガノフォーレの支持で全員が其の台座の上に乗ると。

ガノフォーレは装置に手を触れて、操作をする。


ブゥゥゥン。


聞いた事の無い変わった機械音が聞こえて来ると同時に。


ガゴンッ!!ゴゴゴゴゴッ!!


突然台座が坂を下る様に斜め下に向かって動き出す。

「え!?」

唐突の出来事に驚くメルラーナ、此処に来るまで大人しくしていたリゼは、驚いたのか、メルラーナに力一杯しがみ付く。

台座が動き出して皆が落ち着く頃を見計らったのか、ガノフォーレが全員に聞こえる様に演説をするかの様に説明を始める。

「さて、此の中には常闇の森に入った事の無い者も居るだろう、だから簡単にだが説明しておく、先程の此の台座が有った場所は、今から向かう地下大神殿への入り口に行く為の装置が設置されている場所だ、地表からざっと計算して300メートル程、地下に潜った場所に位置している、そして此の台座は今、大神殿の入り口に向かって下っている。」

地下大神殿は、約1000メートル付近まで降りた所に有る、先程の場所から700メートル下った場所になる。


「此処までは俺達にとっては比較的安全な場所を只移動していただけだったが、此処からは違う、大神殿からが本番だと思っていて頂きたい、徘徊しているモンスターは上位の魔族が大半を占めている、他にも大型の魔法生物や巨人族、俺は見た事が無いが神殿の何処かに竜種も居るという話を聞いた事がある。」

静かに話を聞いていた冒険者達が急に騒がしくなる。

「きょ、巨人?」

「そ、其れに竜種だって?」

「飛竜種の間違いではないのか?」


竜種と飛竜種では天と地程の差が有る、極稀に竜種の討伐依頼が冒険者ギルドに飛び込んで来る事はあるが、例えるなら飛竜種を2~3頭討伐するのに6次席なら一人居れば苦戦は強いられるだろうが十分討伐可能だろう、7次席にも成れば普通に1人で討伐可能に成る、8次席なら余裕だろう。

対して、竜種一頭の討伐に編成される冒険者は、竜種の種類や年齢、つまり幼竜か青竜(大人)

にもよるが最低でも8次席以上が10人以上で編成される、上位の竜種とも成れば数百人と云う規模で討伐部隊が組まれる事になり、戦闘部隊だけで無く、遊撃部隊や迎撃部隊等に別けられて編成される、つまり戦術では無く、戦略を駆使して戦わなければならないと云う事だ。

竜一頭が街を襲う行為は天災として扱われる程の驚異的な存在なのである。

其の中でも特に、古竜(エンシェントドラゴン)と呼ばれる竜種は元々神々の戦いの時代よりも昔から存在している種族で所謂、神と呼ばれている存在である、四竜とは全く異なる生態系を持ち、神々の戦いの織りには神々と共に四竜に立ち向かったと云う。


巨人族は其の名の通り、所謂、大きい人、と呼ばれる種族である。

其の大きさは、小さくても3メートル弱、大きければ10メートル近くにまで至ると云う、殆どの巨人は筋肉質の塊の様な肉体をしており、見た目以上の力を持っていたりする。

巨人は、其の圧倒的な力で岩を砕き、大地を割り、敵をねじ伏せるのだ、個体差にもよるが、中には巨体に見合わない、素早い動きをする巨人も居るし、魔法を行使する巨人も居たりする。

更に上位の存在に巨神と呼ばれる種族も居るが…其れは別の機会に語る事にしよう。


そんな話を聞かされ、背筋に悪寒が走るのを覚えたメルラーナは。

…私、生きて地上に帰る事が出来るのだろうか?

そんな事を考えていた。


暫くすると、稼働中の台座が停止した。

停止した場所は部屋と呼ぶには広すぎる場所で辛うじて光る灯りの御蔭で何とか認識出来る壁は台座から100以上離れている、天井は真っ暗で何も見えず、天井を支えているで在ろう、何十本も有る巨大な柱は、大人10人位が手を繋いでやっと一周出来る程の大きさを誇っていた。

「さて、此処からは死地だ、総員!気を引き締めて行くぞ!」


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