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クレイヴァネアス ~始まりは玉響な微睡みの中で~  作者: 沙霧 啓
第三章 魔人の血統
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31話 襲撃

此処まで旅をしてきて、冒険者と呼ばれる人達がどう云う人達か何となく解ってきたかも知れない、彼等は人の生命に係わる問題に為ると優先順位が其の人の命の安全に切り替わる様だ、勿論助ける人はある程度決められているのだろう、同業者が護る対象に為る事は無いし、一般的に犯罪者と云う括りに入る人達は其れに当て填まらないのだろう、今回の場合、彼等から見れば私は只の協力者で一般人に当たる、更にリゼの事を保護対象と呼んでいた事を考えると、冒険者ギルド側からすれば私達は護衛対象に為る訳だ、其処に管轄外と云う制限を掛けられたとしても護衛対象の生命に係わるならば、其れは優先順位は変更されて制限と云う枠を無視して執行する事に為る。


但し。


「其れは容認出来ない事案だな。」

当たり前の事ではあるが基本的にそう云った依頼事態が却下されてしまう。

「とは言え、現状の状況が状況だ、良い提案ではある、しかし其の方法でいくと為ると君の身に危険が生じる事に為るが?」

ギルドマスターはメルラーナの身を心配してくれている様だ。

「其れは大丈夫です、こう見えても私、此の都市に来るまでに色々と危ない目に会ってきたもので。」

胸を張って言ってしまったが、自慢する様な事では無かった。


「よし分かった、但し其の依頼は君からのものでは無く、我々ギルド側からの依頼とさせて貰おう、君は保護対象、リゼの保護者として同行して貰う事としよう。」

ギルドマスターの言葉に頷くと。

「ケアリー!依頼書を発行しろ!此れは冒険者ギルド本部からの特別依頼である!任務内容はリゼとメルラーナの護衛!向かう場所は常闇の森だ!非常に危険な任務と為る!任務ランクは9等級とする!人数に制限は設けない!但し8次席以上である事を条件である!指揮官はガノフォーレ!スルトを参謀とするがお前は此処!作戦会議室にて念話での進行ルートの立案!戦略と立てろ!護衛対象の最終防衛線はアンバー!お前が二人を護る盾と成れ!此の依頼書を都市全域の冒険者ギルド支部!及び戦士ギルド!ハンターギルド!魔術師ギルドに配布しろ!以上!」

ケアリーはギルドマスターの言葉をメモに取り、終わった事を確認すると部屋から飛び出して行った、ガノフォーレとスルトも後に続く。


因みに8次席以上限定にしても大丈夫なのか?と云う疑問を投げかけてみると。

「此の都市はシルスファーナ大陸内で3本の指に入る程の大都市だ、此処は冒険者ギルドの本部だが支部の数は100を超える、一日に入って来る依頼や熟される依頼は数え切れん程だ、そう云う場所には腕試しでもしたいのか各地の強者共が自然と集まってくるものなのさ、少なくとも此の都市に居る8次席は40人以上、9次席ですら5人居る、其の内の2人は其処のガノフォーレとアンバーだ。」

と云う答えが返って来た。

40人!?9次席が5人も!?此の2人があの遺跡で戦ったグレイグって人と同格の強さって事?次席ってよく解って無いんだけど、遺跡で一緒だった人達は確か4から6?位だったっけ?デューテ御爺ちゃんの所でお世話になった人達は7次席って言ってたな。

ギルドマスターが言うんだ、問題は無いのだろう、もう一つの疑問に思った事を聞いてみる。

「冒険者だけじゃなく他のギルドにも配布するんですか?」

「ふむ?ああ、君は冒険者では無かったな?」

メルラーナは顎を引き、頷くと、ギルドマスターはメルラーナの全身を見渡し。

「ならどうだ?此れを機に冒険者に成ってみると云うのは?」

今度は大きく首を左右に振って断る。

「…そうか、残念だ、君には才能が有りそうだったんだが、…他のギルドに配布する理由だったな?単純だよ、他のギルドと此処は常に情報を交換し合っている、先程私は8次席を40人と言ったが、其の内冒険者として登録している8次席は役半数だ、つまり冒険者以外の8次席が半数は此の都市に在中していると云う事さ、因みに9次席5人の内2人は冒険者では無い、要するにだ、冒険者以外にも強者は居て、そいつ等の力を借りたい時にこう云う手段を取るって訳さ。」

成程。

…はて?じゃあ冒険者って何だ?他のギルドで仕事を受けれるなら冒険者ギルドって必要無いのでは?と云う疑問が新たに生まれる。

「いや、其れは出来ない、他のギルドに配布する依頼書には冒険者ギルドに立ち寄る様に記してある、勿論、冒険者で無い者でも可、とね。」

色々と柵みたいなのがあるんだな、と感心していた時。


下の階が急に騒がしく成った。

「何だ!?…此処に居て!私が出たら扉を閉めて絶対に開けない様に、解ったね?」

ギルドマスターが急に険しい表情になり、メルラーナは其の言葉に頷くと、扉を開けてアンバーと共に出て行ってしまった。

「めるらーな?」

不安そうな表情で見つめて来るリゼを力強く抱きしめる。

時間が経つにつれ、段々と騒がしくなって来た、と当時に。


ガシャン!


近くで硝子の割れる音が聞こえて来た。

「何!?窓から!?」

「何だ貴様等!!」

扉の直ぐ近くで聞こえる、が、それは少しして収まった、次に扉がガタガタと揺れる、誰かが無理矢理開けようとしている様だ。

「結界が張ってある、解除出来るか?」

男の声が聞こえる。

「リゼ、隠れててくれる?」

確実にリゼを取り返しに来たのだろうと判断したメルラーナはリゼに隠れる様に要求するが、リゼは目を瞑って首を左右に大きく振って其れを拒否した。


「よし解除したぞ。」

外から別の男の声が聞こえる、駄目だ、今から隠れても間に合わない。

扉が開き、薄汚れた衣装を纏った男が二人、部屋に入って来た。

「居たぜぇ、魔人のガキだ。」

そう言ったのは薄汚い恰好をした胸の辺りまで伸ばした立派な無精髭の男だ、腰だけでなく腕や足に複数本のナイフを差している、他にも腰にはショートソード程の短めの剣が1本だけ差さっていた。

「もう一人は侵入者の小娘か?」

此方も薄汚い恰好をしていて、長剣が1本、腰に差してある。

メルラーナは肚を括って戦闘態勢を取る、だがリゼが左足にしがみ付いている為、真面に戦う事が出来無さそうだ、兎に角ソードガントレット改めエクスレットブレードを構え、同時に刃を出す。

「お?可愛い顔して俺等とやろうってのかい?お嬢ちゃん?」

「気を付けろ、此の娘、出来るやも知れん。」

挑発する様な態度を取って来た男にメルラーナの武器を見て即座に警戒する様に助言をするもう一人の男。

「へぇ?其の理由は?」

「あの刃、アダマンタイトだ。」

「な!?…マジかよ、良い戦利品に成りそうだなおい。」

嘘?一目見ただけで解るものなの?


少し気に成ったものの、頭の中から振り払い男達の向こう側、開いた扉の先を見ると、護衛に就いて貰っていた冒険者3人が倒れている。

(状況的にかなり拙いな、リゼが足を放してくれれば、駄目だ、怖がっている子を突き放す様な事出来ないし。)

男の一人がナイフを取り出し襲い掛かって来る、メルラーナは其れを刃で受け止めた。

「安心しな嬢ちゃん、男なら其の細腕を斬り落として奪う所だがそんな事をすればアンタの様な美人が台無しになっちまうからな、ヘッヘッヘッ。」

男は嫌な笑みを浮かべてメルラーナの全身を舐め回す様に見つめる。

男の言葉と気味の悪い微笑みに悪寒が走るが今はリゼの身を護る事に専念する。

もう一人の男は何かの魔法を発動させようとしている様子だ、魔術師の様な格好をしていなかったが魔術師なのだろうか?回避する事が敵わない此の状況で今は打ち合いを選ぶ、同時にもう一人の男の動向を探りつつ数回打ち合う、

其の時男のナイフに異常が発生した、ピシィッ!と云う音を立てて罅が入ったのだ。


「あ?」

男は間の抜けた声を出す、次に打ち合った時、パキン、と音を立ててナイフが真っ二つに折れた。

「なっ!」

メルラーナと男は其の光景に驚く、折れた刃は回転し乍ら宙を舞い、床に突き刺さった。

「ひっ!?」

其れを見たリゼは吃驚してメルラーナの足から手を放しベッドの下へ隠れた。

「リゼ!?駄目!」

例え自身の動きが鈍る事になっても傍に居れば守れると思っていた、しかし離れたとなれば攫われる危険性が跳ね上がる、最初に隠れている様に促したのは隠れている所が解らなければ無差別に攻撃しないだろうと判断した為だったのだが、しめたと言わんばかりに魔法を行使しようとしていた男が其の魔法を発動させる。

部屋が崩壊する事を恐れたのか、行使された魔法は光で構築された複数本の矢だった、メルラーナは其れを篭手を盾を開いて防いだ、魔法を放った男に向かってフックショットを放つが、もう一人の男が折れたナイフを捨て別のナイフを抜いて其の鉤爪を叩き落とす、男はナイフの頭上に振り上げて振り下ろして来る、ナイフは両刃を交差して受け止める、刃でナイフをまるで鋏の様に挟み力を入れると、其の刀身は折れる。

「はっ!嬢ちゃんやるな!いや、アダマンタイトが凄えのか?どっちでもいいや!どうせ攫う事に変わりはないんだからよ!!」

男は更に別のナイフを2本、両手で抜き取り構え追撃の用意をする、其れを見たメルラーナは一度フックショットを巻き戻して迎え撃つ体勢を整えた、まだ状況は悪いままだ、リゼの事も心配だし早く此の2人の侵入者を撃退しないと、幸いにもリゼがベッドの下に隠れた事で足は自由になった、襲撃者の目の前で隠れたので居場所がバレバレなのだが。

再び男との打ち合いが始まる、激しい剣戟が行われるが、同時に魔法を使う男を警戒する、今相手にしているのはナイフの男一人だけだが、何方か一人を相手にしていたらリゼが攫われる可能性が有る、何とかして此のナイフの男を仕留めないと。

その時、魔法の男が動いたのをメルラーナは見逃さなかった、ナイフの男との打ち合いの中、再びフックショットを魔法の男目掛けて放つ。

「何回やっても結果は一緒だ!!」

ナイフの男は先程同様、ナイフで鉤爪を叩き落とした。

「知ってるよ、だからもう一回落としてくれると思ってた。」

傍から見れば只の良い訳だろう、魔装具ならそう云う武器もあるかも知れない、若しくは誰かがメルラーナの装備しているエクスレットブレードに何かしらの魔法を付与していれば、こう云う事も出来ただろう。

「はあ?落とされるのが計算の内に入ってるって言いたいのか?」

ナイフの男は鼻で嗤い、蔑む態度を取ってメルラーナに詰め寄ろうとする。

「おい!後ろ!」

「あ?」


ドンッ!


男に叩き落とされた筈のワイヤーが男の心臓を貫いていた。

「ゴフッ。」

男はその場に倒れ込み、絶命する。貫いたワイヤーは男の身体から引き抜かれ、まるで蛇が其の胴体をうねる様に捩じらせて立つ姿勢と似た姿で、今度は魔法を使える男を狙っていた。

「い、いったい何が?…お、お前!?何をした!?」

男は気付いていなかった、其のワイヤーに、薄っすらと水の膜が張られていた事に。

メルラーナはワイヤーを巻き戻し魔法に備える、とは言え魔法と云うモノに全くの無知な為どうすればいいか解らない、此の男は光の矢を放っていた、確かカルラさんは氷の矢を使ってたしノアウィフさんは炎の矢を使ってた、全て同系統の魔法なのだろうか?氷と炎と光、どれも違うけど、どれも同じ矢だ、あの魔法は能力が高い魔法なのだろうか?色々な疑問が浮かぶが今は其れを詮索している余裕は無い、兎に角此の男をリゼの傍に近寄らせない様にしないと。


「…止めだ止め。」

男は唐突に戦闘態勢と解いた。

「え?」

何を言ってるんだ?此奴?言っている事に理解が追い付かないが、警戒を解く事はしない、すると男は言葉を続ける。

「形勢が逆転したからな、退散させて貰おう。」

「な!?そんな勝手な!」

リゼを攫う為にこんな所に襲撃して来て、護衛の人達を殺しておいて、形勢が不利になったから退散?

「巫山戯ないで!」

男の言葉にメルラーナは怒りの感情を露わにする、そんなメルラーナの態度を鼻で嗤い。

「ハッ!巫山戯る?ああ巫山戯てるさ、巫山戯てなどいなければ盗賊ギルドなんてギルドに所属なんてしていない。」

盗賊ギルド!?…又だ、盗賊ギルド!グレイグと云う男と同じギルド!

「どうせ又何処かで会うだろう、覚えておきな、俺はシラズ、盗賊ギルド所属ラバード(略奪者)の7次席だ。」

其れだけを言い残し、シラズと名乗った男は姿を消した。


………

……


「なーんてなぁっ!!」

「めるらーな!!」

「!?」

後ろから声が聞こえた、振り向くと先程シラズと名乗った男がリゼの細い腕を握りしめ、首にナイフを押し当てていた。

「リゼ!?」

油断した!去ったと思わせておいて背後に回っていたのか?どう云う能力なのかは解らないが、今は其れを詮索している場合では無い、想像していた一倍最悪の事態、つまりリゼを人質に取られる状況に陥ってしまったのだ。

「めるらーな!いたいよっ!いたい!たすけて!」

リゼは腕と首に痛みと恐怖から頬にまるで滝の様な大粒の涙を流し乍らメルラーナに助けを求めて来る。メルラーナはリゼと助けようと行動に出ようとするが。

「おっと!動くなよ!?ガキの喉を掻っ斬るぞ!?」

「くっ!」

人質を取られて動く事が出来なくなってしまった。

「くっくっくっ、先に言っておくが俺はあの馬鹿と違って美女やら美少女なんてものに興味が無いんだ、だからお前の肘から先を切り取って其のアダマンタイトを奪わせて頂くぜ?当然!ちゃんと殺してからなぁ!!」


ドンッ!


「………………………え?」

突然、胸の辺りに痛みが走る、何が起きたのか、其れを理解するまでにどれだけの時間が掛ったのだろう、何だか、とても長く感じたし、とても短くも感じた、其れに、熱い、体温が急激に上がった様な感じだ、兎に角熱い、物凄く熱い。


「…………な!」


…何?


「……らーな!!」


誰かが、呼んでる?


「め…らーな!!」


リ…ゼ?…どう、したの?リゼ?泣いてるの?


「めるらーな!!めるらーな!!めるらーな!!やああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」


…あぁ、そうだ、リゼを助けなきゃ。


「ゴフッ。」

口の中に鉄の味が広がる。

「ゴホッ!ゴホッ!ゴホッ!」

口の中から大量の血が吐き出された。胸が痛い、ふと自身の胸に視線を移すと、其処には自分の血で真っ赤に染まった刃が背中から貫かれていた。

「…っ!?」

後ろを振り向くと、其処には先程ガウ=フォルネスの力を借りてワイヤーの鉤爪で心臓を貫いた筈の男が剣を持ちメルラーナの身体を突き刺していた。

どう…云う事?此奴はさっき倒した筈なのに?何故立ち上がっているの?思考が追い付かない、急激に上昇した体温と痛みが考える事の邪魔をする。


熱い、痛い、熱い、痛い。


二つの感覚が全身から脳へと駆け巡る。


痛い、痛い、痛い、痛い!

やがて感覚は一つと成り。


痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!

痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!


「ああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

貫かれた剣が引き抜かれ、更に大量の血が噴き出し、床一面を真っ赤に染め上げた。


メルラーナは膝を落とし、床に倒れ込むと、意識を失った。


ブックマーク登録有り難う御座います!

もの凄く励みになります!

完結までまだまだ先は長いですが、今後とも宜しく御願いします!

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