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クレイヴァネアス ~始まりは玉響な微睡みの中で~  作者: 沙霧 啓
第二章 ラスティールの鼓動
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21話 鉱山窟


その日は客室と食事も用意して貰った、ドワーフの食事のせいか、酒に会いそうな味の濃いものばかりではあったが、美味しく頂いた。

「エアル、食事も取らないで行っちゃったな、お腹空いてないかな?」

等と考えつつ、テーブルに出された食事を平らげた。


翌日、デューテに連れられ、店を出て外側の鉄製の階段を下りて行く、数回下りたり登ったりした後、辿り着いた扉に辿り着くと、デューテは。

「バルゴ、居るかの?入るよ?」

と一言だけ発し、扉を開けて一つの工場に案内された。

あの空洞に繋がっているのだろう通路を歩いていると、奥から数人の声が聞こえて来る。

あれ?此の声、何処かで聞いた事が有る様な、無い様な?


「ほ?客人かの?」


扉の前まで来ると、はっきりと数人の話声が聞こえて来る。

「バルゴ、入るよ。」

デューテ爺は二回扉を軽く叩き、返事を待つ前に扉を開けた。


中に入ると昨日見たあの大空洞の中腹辺りに出て来た。

「あー、親方―、すいませんー、客が来ていて気付かなかったっすわー。」

そう言って立ち上がり、身長が140センチ位、鋭い目に太い眉毛、灰色の方まで伸びた縮れた髪の毛、耳が人よりも少し尖っていて顔に皺等は無く、髭の生やして居ない、全身筋肉質のドワーフが歩み寄って来た。


ドワーフって、皆こんな軽い感じなんだろうか?


「いいよいいよ、それよりお客さん、何かあったのかの?」

客の方を見ると、其処には冒険者風の4人組の男女が何か話し合っていた。


「いや-、彼等がー、ミスリル製の武器の製作の注文をしに来たんですけどねー、全員分の装備品を作る為の費用が足らんかった様なんですわー、それで誰のを作るか相談しとるんっすわー。」

「ふむ。」

4人の男女が、其々に意見を出し合い、譲り合いをしているのかと思いきや、軽い衝突めいた言い合いに成ったりしていたやり取りを見たメルラーナは。


はて?此の光景、何処かで見た事が有る様な…。

「あ。」

思い出して思わず声に出してしまった。

「ん?メルちゃん、あの客と知り合いかの?」


昨晩の食事の時にデューテ爺と其の奥さんと仲が深まり、いつの間にかメルちゃんと呼ばれていた。


「いえ、知り合いでは無いです、前の町で見た事があるだけで。」

そうだ、三日前に昼間の酒場で、移動手段を意見し合っていた四人組の冒険者だ、そっか、此処が目的地だったんだ、無事に着いたのか。


「ほっ?成程のぅ、ふむふむ、そうか。」

デューテ爺が長い髭を左手で弄り乍ら考え込み始めた。

「?デューテ御爺ちゃん?」

「ええ事考えたわい、おーい、君達、一寸いい?」

何かを閃いていきなり冒険者達に声を掛けるデューテ爺。


………

……


「と、云う訳で、一緒に希少鉱物の採掘の手伝い兼、貴方達の護衛をする事に成った冒険者のクルタスって言います、宜しく。」

腰に小剣を二本差している剣士風の青年がメルラーナに話し掛けて来た。

「…は、はぁ。」

何が、と云う訳なんだ?

突然過ぎて意味が解らなかったが、話を聞くと、どうやら自分達で鉱物を取りに行く事で材料費を割り引き、全員分の装備品を作れる様に取り計らって貰えた様だ。


「いやぁ、実は人手が足らなくて如何しようか迷ってたんじゃよ、丁度良かったわい。

儂はメルちゃんの武器の修理をしなきゃいけないから、後は宜しくね。」

そう言い残してデューテ爺は自分の作業場へ戻って行った。


「俺はオール、偵察は任せ解いてくれ。」

ハンター風の男が名乗る。

「私はノアウィフ、主に火力担当だけど、色々な魔法使えるから、何かあったら何時でも頼ってくれていいからね。」

魔術師風の女性が片目を閉じてウインクをして来た。

「最後は吾輩か!吾輩はゴルテスク!宜しくな!ガッハッハ!」

戦士風の男が全身鎧を身に纏い、豪快に笑って居る。

「はあ、メルラーナ=ユースファスト=ファネルです、宜しく御願いします。」

簡単に自己紹介を終わらせて、一行はドワーフのバルゴさんも案内で大空洞の底まで降りて暫く歩くと、向かう先に横穴が見えて来た、横穴には一人ずつしか通れない程の、小さいが頑丈そうな鉄の扉で閉じられている。


「此の扉の先がー、オイラ達が鉱山窟って呼んでいる採掘場だー、採掘所湯とは名ばかりで普通の洞窟だけどなー。」

そう言ってバルゴは、重たい扉を鍵を使って開錠し、中へと入って行く。

狭い扉を潜ると、全高150センチ程しかない狭くゴツゴツとした岩肌全体を覆っている通路に出た。

中は冷たい空気が流れていて、大空洞とは違い少し肌寒かった、両脇の壁には小さなランプが掛けられており、暗い洞窟の内部を淡い橙色に染め上げていた、ランプは5メートル間隔で設置されている、地面には線路が敷かれており、運搬用のトロッコが2台、設置されている。

「此れ乗りたいっ!」

瞳を輝かせてバルゴに訴えかけるメルラーナだったが。

「トロッコかー?残念だが今回は駄目だぞー、皆が色んな所に乗って行ったから至る所に散らばっているんだー、鉱山のルールとして残り10台切ったら使わない様に決めてる筈なんだけどなー。」

即答で断られた、そう云う理由ならしかたないが、残念そうな表情で項垂れるメルラーナは、冒険者達の方へ目線を送ると、彼等も又、メルラーナ同様、残念そうに項垂れていた、皆乗りたかったんだ。


低い天井を物ともせずに、優々と歩いて行くドワーフのバルゴの後を、メルラーナと冒険者達は、少し屈みながら必死に付いて行く。

進むに連れ、通路は広く成り、枝分かれをし始めて来た、バルゴは分かれ道を迷う事なく進んで行く、所々で徘徊しているモンスターを駆除しながら進む。

「モンスターとか普通に居るんですね。」

メルラーナがバルゴに問いかける。

「居るよー、最初にも言ったけどなー、元々有った洞窟を掘ってるだけの鉱山だからなー。」

会話を弾ませ乍ら進む事、凡そ一時間、メルラーナ達には既に帰り道等解らない位に入り組んだ所まで来た頃、広い場所に出て来た。

其処は此れまでの人工で掘られた通路とは違い、自然の洞窟の様な場所だった、広い空間の中央付近には、高い天井と地面から数え切れない位の鍾乳石が伸び合っていて、其れをライトを照らして幻想的に見える様に設置されていた。


「わぁ、凄いっ!」

メルラーナは其の風景に思わず深い溜息と感動を感じながら思わず言葉を発していた。

「へっへー、凄ぇだろー?真ん中の鍾乳石はなー、綺麗だから光だけ当てて手を加えない様に保存してあるんだー、周りは至る所を掘りまくってるけどなー。」

バルゴに言われて周りを見ると、確かに削られた箇所がある。

と云うか、結構な範囲で掘られている感じだ、真ん中の鍾乳石に見取れて周りが良く見えて居なかった。

空洞の壁には黒っぽい岩が一面を覆っており、鍾乳石に当てられた光が反射をして岩を薄っすらと輝かせていた。

「?何か、他の岩とは違うっぽい。」

メルラーナが呟くと。

「そりゃそうだー、其れ鉄鉱石だからなー。」

バルゴの放った一言に。

「な!?こ、此れ全部鉄鉱石なのか!?」

冒険者の一人、ゴルテスクが大きな声を上げる、其の声は空洞内に響き渡った。

「そうだよー、でもアンター、声デカいぞー、一寸静かにしてくれー、此処にはモンスターも生息してんだからー。」

言われてゴルテスクは咄嗟に手で口を塞ぐが、既に遅かった。


何かの気配を感じて、周りを見渡すが何も居ない。

「おいおいー、マジかよー?6人居るのに出てきやがったぞー。」

バルゴは天井を見ながら呟いた。

「?」

6人?どう云う意味だろう?等と考えながら、メルラーナはバルゴの見ている方角を確認すると。

「んん?………!?」

其処には大人の3倍位の大きさの楕円形の胴に其処から生える細く長さの違う8本の足で天井に張り付き、頭には2本の巨大な牙を生やし赤く光る6つの目で此方をじっと見つめていた。

「く、蜘蛛ぉぉぉっ!?」

メルラーナの叫び声が洞窟の中に響き渡る。

蜘蛛ではあるのだが、大蜘蛛、と呼んだ方がいいのかもしれない程の巨大な蜘蛛は天井から此方の様子を伺っている。


ギャー!何か全身に毛みたいの生えてるし!毛の間の肌の部分は光に照らされて黒光りしてるし!目っぽいのがいっぱいあるし!気持ち悪い!物凄く気持ち悪い!!」


「蜘蛛だな。」

「蜘蛛だね。」

「雲?」

「うん、間違いなく蜘蛛ね。」

もう解ったから繰り返さなくていいよっ!一人間違えてるしっ!?

心の中で、蜘蛛と繰り返して言う冒険者達に抗議する。


「まあ、大した事無いでしょ?あんなの。」

クルタスは腰に差していた二本の小剣を抜き、臨戦態勢に入り乍ら感想を述べている。

おお?何か頼もしい!

冒険者達は其々が思い思いの場所に配置に付く、相手や場所によって其の位置は違ってくるのだが、彼等は仲間同士で言葉を交わす事無く、仲間にとっても自分にとっても最も効率の良い臨戦態勢を取ったのだ。

「大した事は無いんだけどなー、あの蜘蛛―、体勢が悪いと感じりゃ直ぐ退散するんだよー、だから5人以上で入ると出て来る事すら無い筈だったんだけどなー?」

おかしいな?と言わんばかりにバルゴは首を傾げて不思議そうに考え込んでいた。

こらこら、考えてる暇無くない?もう皆準備万端だよ?当然、此方が動いて居ないのを見て、大蜘蛛が襲い掛かってきた。

メルラーナは慣れない小剣を鞘から抜き戦闘態勢に入る。冒険者達目掛けて口から糸を飛ばして来る大蜘蛛に対し、其れを躱し乍ら迎撃をする。

オールが弓を射て、ノアウィフが魔法を放ち乍ら牽制した。

「ガッハッハッ!蜘蛛だし、足ぶった切りゃ動けなくなるであろう?なぁ!?」

ゴルテスクが叫びながら蜘蛛に向かって正面から突っ込み、右手に持っていた槍を後ろで構え、左手で持つ盾を前に出して飛ばしてくる糸を防ぎ乍ら、大蜘蛛近付いて行く。

「いいな、足切ってみるかっ!」

其の間に右翼へ回ったクルタスが足の生えている根元を目掛けて二本ある内の一本の小剣を投げた。


えええええっ!?

なっ!?投げたよ!?何で!?


投げられた小剣は見事、蜘蛛の足の生え際に突き刺さる、クルタスは一気に蜘蛛との間合いを詰め、手の中に残っていたもう片方の小剣を刺さっている小剣の逆側に突き刺し、刺さっていた方の小剣の柄を逆手で握って挟む様に動かすと。


ギアアアアアアッ!

蜘蛛は断末魔の如き叫び声を上げ、黄色い体液を吹き出し乍ら、足の一本が斬り落とされた。


「す、凄い。」

素直に連携の凄さをとクルタスの足を斬り落とした攻撃に感動し乍ら。

剣士が剣を投げてもいいのだろうか?等と考えていると。


「言っとくけど、僕は剣士(フェンサー)じゃなくてアームズだからな、剣に執着心なんてないんだ。」

何故か考えていた事がばれた、顔に出てたかな?

て云うかフェンサー?アームズ?職業の名前か何かな?


会話をする余裕を見せ乍ら、冒険者達は二本目の足を斬り落とし大蜘蛛を確実に追い詰めて行く。

「あの冒険者共―、やるなぁー、オイラ達出る幕ないなー。」

「うんうん。」

バルゴの言葉に頷くメルラーナ。

「…オイラ達ドワーフはさー、戦闘にも長けているんだけどなー、いかんせん足が遅くてさー、あの巨大な癖に素早い蜘蛛を追い詰めても捕らえる事が出来なかったんだー、其れでも一発の破壊力が有るオイラ達を怖がってよー、複数人で此処に入ると警戒して出て来る事は無かったんだけどなー、何で出て来たんだー?」

バルゴは又考え込んでいる。

「…いや、多分ドワーフじゃない初めて見る人が入って来たからじゃ?」

メルラーナはバルゴの疑問に突っ込む様に答えると。


「!?」

それだ!と言わんばかりの表情でメルラーナを見つめて来た。

え?其処悩む所?等と考えて居ると。


「危ないっ!!」

ノアウィフが叫ぶ声が聞こえて来た。

その声に振り返ったメルラーナの目前に、糸が飛び込んで来る。

糸はメルラーナの身体に巻き付き、身体毎引っ張られた。

「ひいっ、ぬるぬるして気持ち悪いっ!」

粘り気のある生暖かい糸に縛られ乍ら、物凄い速度で蜘蛛に引き寄せられて行く。


いやぁぁぁぁっ!?気持ち悪いのが凄い勢いで近付いて来るっ!?

巨大な蜘蛛が目の前に居れば、見慣れて居ない人にとっては当然の反応だろう、特にメルラーナはまだ少女である、年端も行かない頃から、冒険者業を生業としている少女なら兎も角、メルラーナは只の、普通に生活してきた少女なのだ、蜘蛛が気持ち悪くて当たり前であった。

しかし、其れでもメルラーナは。

…おや?此れって、此のまま突っ込めば?

冷静な判断力を失っては居なかった、遺跡での死闘を経験した賜物だろうか。

小剣を握ったままで縛られた為か剣を水平に構える事が出来た、其れを見た冒険者とバルゴは。

「「「あ」」」

其の場に居た全員が思った、あの蜘蛛終わったな、と、しかし。


ペチン!

突き出された剣は、メルラーナの行動を察知したのか、大蜘蛛の前足で叩き落とされた。

「あああ!?」

残念乍ら考えが甘かった様だ。

「バルゴさん!ゴメン!火を使わせて貰うっ!」

そう言ってノアウィフは手に握っていた杖を前に出して、魔法の発動準備に入った。


『イグニス=グロブス』


行使された魔法は、爆炎系第漆階級弐位、発射型魔法、此の魔法は発動までの時間が短く、着弾までの射速が爆炎系の中で1,2を争う程の魔法である。

扱い易い上、威力も高い為、魔術師達の間では好んで使われる事が多い。


着弾し、蜘蛛の全身を炎が覆う、それと同時にメルラーナを捕らえていた糸も、其の炎で焼き斬れ。


「ぎゃっ!?」


地面にお尻から落下するメルラーナ。


「痛い!熱っ!」

燃え易い材質なのか、糸に着いた火が瞬く間にメルラーナに纏わりついていた糸にも燃え移る。

が、其れは一瞬で燃え尽きた、と云うより、ノアウィフに消化された様だ。

一方、蜘蛛の方は炎に覆われたままの状態で此の空洞から繋がる狭い通路へ逃げ込もうとしていた。

「逃がすかよっ!」

オールが持っていた弓を捨て、背中からボウガンを取り出す、手に持ったボウガンは、短い矢を射る為の物だが、横に広い形状をしていた、オールは矢を3本、横に並べてセットし、発射させた。

弦が震える音と同時に、放たれた3本の矢に付いて居る羽が空を切る音が、複雑に混ざり合い、更にその音が洞窟内で乱反射して奇妙な効果音を響かせる。

図体の大きい蜘蛛は恰好の的だった、矢は3本共、蜘蛛の背中に突き刺さり、蜘蛛は一瞬怯む、しかし逃げるのを優先したのか、足を引きずる様に歩き、通路の奥へと消えて行った。


「…逃げたか。」

クルタスは刃に着いた蜘蛛の体液を払う様に剣を振り、布で拭って鞘に納める。

「逃げ足の速い奴め!男らしく無い!」

ゴルテスクは、悔しそうな表情をし、蜘蛛を罵っている、雄かどうかすら微妙だが。


そんな中、メルラーナと云うと。

な、何も出来なかった、只糸に捕らわれて燃えて尻もちを突いただけとか。

…あ、……あの蜘蛛!許さんっ!

復讐心に瞳を燃やして居た。

「メルラーナちゃん、大丈夫?」

ノアウィフが尻もちを突いているメルラーナに、手を差し伸べて来た。

「あ、はい、大丈夫です、有難う御座いました。」

女性の手を取りつつ、助けて貰ったお礼を伝え乍ら立ち上がるメルラーナ。


「まー、あの炎じゃ長くは持たんだろー。けどなー、火炎系の魔法以外で何とかして欲しかったなー。」

「うっ。」

バルゴの言葉にノアウィフがたじろく。

「?」

そう言えばこの人、魔法を使う前に謝ってたな?何で?

「火を燃やすには酸素が必要だろー?洞窟って云う限られた空間の中ではなー、酸素は貴重なんだー、だから光には火じゃなくてライトを使ってるんだぞー、あれ位の炎でどうこう成るとは思わないけどなー、自重はして欲しいぞー。」

「…は、はい、御免なさい。」

バルゴに怒られて肩身を狭くするノアウィフ。

喋り方がアレなので余り怒っている感じがしないが。


はー、そう云う事だったのか。

あれ?じゃあ大空洞の真ん中の大きな溶鉱炉はずっと燃え続けてたけど、大丈夫なのか?

尋ねてみたら、あの大空洞には酸素を循環させる装置が設置されていて、溶鉱炉には直接空気を送る機械が取り付けられているらしい。


一行は周辺の警戒をし、小休憩をした後、先程戦った蜘蛛からの待ち伏せを想定し、何時でも戦闘態勢を取れる様にし、更に奥へと進み始める。


小一時間程歩いた所で、周りの風景が変わり始めて来る。

其れまで黒や茶色、灰色等の暗い色の岩壁に白い岩が見え始めて来る。

「白い、石?白?何か、薄っすらと透き通ってる様な?」

白い岩に顔を近づけてじっくり見つめるメルラーナ。

「おー、良く気付いたなー、其れがミスリル鉱石の原石だぞー。」

「「「「何っ!?」」」」

冒険者達の驚いた声が重な(ハモ)る。

「こ、此れがミスリル!?」

ゴルテスクが両手をプルプル震わせ乍ら原石に触ろうとする。

「まー、待て待てー、後数十メートル程進んだら空洞に出るんだー、其処がミスリル鉱山だぞー、原石を愛でるのは其れからにしろー、採取した後もまだ帰りが有るからなー、メルラーナちゃんの目的の石も其処で取れるぞー。」

バルゴがゴルテスクを宥める様に語る。

「ガッハッハッ、少し意識が何処かに飛んで行ってしまってたわ、そう言えば、メルラーナちゃんは何を掘りに来たのだ?」

冷静を取り戻したゴルテスクに聞かれ。

「え?えっと、アダマンタイト?」

メルラーナから発せられた名前に。


「「「「………えええええええええええええええっ!?」」」」


「あ?あ?あだま?ああ?ああだま?」

「アダ、アダ、アダマン。」

「…マジでか。」

「アダマンタイトだとぉぉぉっ!?」

伝説級の金属の名前を現実に聞いた冒険者達は、頭の理解が追い付いてないのだろうか、真面に名前すら言えない者と、言えても興奮している者に分かれて、洞窟内で思わず叫び散らす。

「こらこらー、静かにしろー、まだ蜘蛛がその辺に居るかもしれないんだからなー。」

当然、バルゴに怒られた。


気を取り直して、一行はミスリル鉱山に向けて足を運ぶ。

歩き出して直ぐの事だった、オールが先頭を歩くバルゴに声を掛ける。

「バルゴさん、止まれ。」

「んー、どしたー?」

オールはバルゴの前に出て、此方を振り向き、人差し指を自身の口に当てて静かにする様、全員に促す。


「何か居やがる、薄っすらとだが焦げた臭いもするから、多分さっきの蜘蛛だ、其れに別の何かの気配もするぜ。」

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