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クレイヴァネアス ~始まりは玉響な微睡みの中で~  作者: 沙霧 啓
第二章 ラスティールの鼓動
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18話 クロムウェルハイド工房


エアルが飛竜を手懐けてから3日後の明け方。

外はまだ暗く、薄っすらと朝日が昇り始め、此れから段々明るく成って行く、そんな時間。

メルラーナ達は町の外れの拓けた場所で件の飛竜に跨っていた。

「それでは、トーテルをお預かりします。」

エアルは飛竜の上から運送屋の若社長に挨拶する。

「何卒、宜しく御願い致します、トーテル、皆様に御迷惑を御掛けするんじゃないぞ。」

若社長は別れを惜しむ様に、飛竜の顔を優しく手で愛でる、そんな気持ちを察したのかどうかはメルラーナには解らなかったが。

「グアァ。」

と小さく鳴いた飛竜の声は、少し寂しそうだった気がした。


「さぁ、準備はいい?メル?」

エアルが自身の腰の辺りを後ろから両腕でしっかりと抱えている状態のメルラーナに声を掛けて来た。

「う、うん、だ、大丈夫。」

緊張しているメルラーナを見て。

「クス。」

微笑むエアルは、次に飛竜に話し掛ける。

「宜しくね、トーテル。」

そう言って飛竜の首を撫でると、飛竜は両翼を目一杯広げ、ゆっくりと翼を持ち上げ、力一杯振り下ろす、一度大きく羽撃くと、周囲に突風と間違う程の風が、地面の砂を巻き上げ、周りの木々が騒ついた、飛竜はもう一度、両翼を上に広げ、再び力一杯羽撃かせた、今度は舞い上がった砂が渦を巻く様に舞い上がった、旋風が発生する程の、紛う方無き突風が発生する、騒ついていた周りの木々の枝は圧し折れ、葉は千切れ、大空へと舞い上がる、そして、たった2度の羽撃きで飛竜の両足が地面から離れた。


「え?うそ?浮いた?二回で?」

エアルは驚いた様な顔をした直後、飛竜は三度目を羽撃く。

「いっ!いやあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

刹那の間、メルラーナの叫び声と同時に、飛竜は天高く舞い上がっていた。

「あははっ!凄いじゃないっ!トーテル!うちの団の子達でも三度の羽撃きで此処まで飛翔出来る子は居ないよ!?」

エアルはどれ位上空まで来たかの確認をする為に下を見ると、町を全て見渡せる程の上空まで飛んで来ている、運送屋の人達は周りが暗く、確認する事が出来なかったが、只彼等の持っていた灯りが数個、空に輝く星の様に、地上で小さく輝いていた。




「さて、じゃあ行こうか、霊峰ラスタールへ。」

エアルの引く手綱を感じ取り、トーテルは大きな翼を羽撃かせ、大空を舞う。

「ひえぇ…。」

恐怖からか、目を瞑ってしまうメルラーナに。

「あ?ほら、メル、見て御覧、朝日が綺麗だよ。」

恐る恐る目を開ける。

「…!?わぁ!………凄い!」

地平線の彼方から昇る太陽が空と大地を薄っすらと朱く染めていた。

空には薄暗い青と不規則に形作る雲と其処に出来る影、地上にはまだ真っ暗な大地と凹凸のある丘や森の木々の影が朝日で染まる朱色と絶妙なコントラストを生み、川の水面は光を反射して、まるで此の絶景を完成させる為の仕上げだと言わんばかりに光輝いていた。

高い所を飛んでいるせいだろう、肌を包み込んで来る風は冷たく、少し肌寒い位だが、其れが気に成らない程、メルラーナは自身の目に飛び込んで来た美しい景色の壮大さに、胸いっぱいの感動を覚えていた。


空を飛び始めて、一時間程経った頃、雲を抜け何も無い真っ青な空が目の前に広がっていた、筈だったのだが。

メルラーナを自身の居る上空より更に上を見上げていた。

「…ねぇ、エアル?」

自分の前で飛竜を操っている友人に訪ねてみる。

「ん、どした?」

「さっき私達、確か雲の上に抜けたよね?」

上を見上げたまま確認してみた。

「うん、抜けたけど?」

後ろに居るメルラーナの其の様子を見て。

「ああ、大きいよねー?」

「…いや!大っきい所じゃないよねっ!?雲の上に居るのにまだ頂上が見えないんですけど!?何コレッ!?怖いっ!圧迫感凄い!」

メルラーナ達の目前にまるで先端の見えない壁の様に見える巨大な山が、往く手を阻む様に聳え立っていた。


【霊峰ラスタール。】

嘗て神々の戦いの最中、四竜の力によって引き裂かれた大地が再びぶつかり合う事で生まれた巨大な山脈の最も高い山である。

神々の住まう山、等とも言われているが、四竜の内の一頭との決戦の地だった、と云う説が一番有力視されている。


「こんな大きい山、何で家から見えないんだろ?」

そんな疑問を小さく呟くと、密着しているエアルには当然聞こえる訳で。

「そりゃあ、世界は丸いから?かな?」

「え?そんな問題なん!?」

噛んでしまった。

「あと寒い!滅茶苦茶寒い!」

恥ずかしいので誤魔化してみた。

絶壁と言っていい山脈は、雪と岩だけしか見ることが出来ない、酸素が薄いせいで植物が育ち難いそうだ。

そんなゴツゴツした岩山の周辺を、距離が有る為、小さい影が飛んで居る様にしか見えないが、何か黒い影が飛び回っていた。

「エアル、あそこ何か飛んでるよ?それも結構な数で。」

メルラーナは其の飛んでいる集団を指差す方を、エアルが確認すると。

「ああ、野生のワイバーンだね。」

とあっさりと答が返ってきた。

「ワイバーン!?」

丁度3日前に、今現在、跨っている子と戦って全く歯が立たなかった事を思い出す。

「だ、大丈夫なの?滅茶苦茶いっぱい居るけど?」

恐る恐る聞いてみる。

「多分大丈夫じゃないかな?此の子あそこで飛んでるワイバーンより上位種だし、其れにワイバーンってそんなに強くないしね。」

「へ、へ~、そ、そうなんだ?」

そんな事を言われても、実際に戦った飛竜が強かったせいで、中々納得出来なかった。

「う~ん、そうね、例えばほら、馬車に乗ってた時に見た冒険者達が戦ってた熊みたいな魔獣居たでしょ?あれ同じ位じゃないかな?」

何ですと?あの熊と同じ?ていうか、あの熊そんなに強いの?

あの時、私エアルに足手纏に成るって言われて。ふと気に成った。

「私、あのワイバーン倒せるかな?」

「はい?」

唐突に意味の解らない事を言いだした友人に。

「急にどうしたの?戦ってみたいの?」

ワイバーンは個々としては確かに左程強くはないが、あの数を相手にするのは無謀過ぎる、それに、相手は空を自由に飛び回れるのだ、相性が悪すぎる。

「ううん、そう云うんじゃなくて、私ってどれ位の力があるのかなって、一寸思っただけ。」

ああ成程、そう言う事か。

メルラーナは此れまで戦闘と云う戦闘を経験した事が無かった、害獣駆除程度は戦闘と呼べるモノでは無い、それが唐突に何の前触れも無く、生死を分ける戦いに身を投じる事に成ったのだ、しかも其れが世界の頂点に立つ者達の戦いなら自分の実力の無さに打ちのめされて当然と言えば当然かもしれない。

そもそも戦士でも冒険者でも無いメルラーナが気にする事では無いのだが。

「ワイバーンが相手だと厳しいかもね、空飛んでるし。」

「…う、そっか。」

普段は明るく振る舞っているが、やはりあの時の事をまだ引きずって居るのだろう。

「そんなに気にする事は無いと思うよ?メルは実戦経験が殆ど無い訳だし。」

と云うか、メルラーナは父親の英才教育の影響を受けていたせいか、戦闘センスは尋常ではなく、少し実戦経験を積むか、条件さえ揃えさえすればワイバーン位なら余裕で倒せる筈なのだが、なんて事を考えながらそれとなくフォローをしておく。

「…そっか、うん、有難う。」


そんなやり取りをしている間に、ワイバーンの集団の間を雄々と通り抜けると、山の中腹?辺りに大きな建物が見えてきた。

「あ、ひょっとしてあれがギアナスの村?ん?…むら?村なの?」

メルラーナの目に映った其の場所には、鉄で出来た何十もの建物が連なって、建物の上に更に建物が山肌に張り付く様に横は勿論、上へ上へと積み上がる様に繋がっている、その周りには無数の階段や梯子、何本ものパイプが建物を覆う様に縦横無尽に広がっていた、中には煙突が有る所もあり、其処から黒い煙がモクモクと立ち上っている。

「なんか、工場みたい。」

ゴチャゴチャした鉄の塊を見たメルラーナが感想を口に出すと。

「まぁ、名義上、村って呼んでいるだけだからね。」

「名義上で村なの?じゃああの建物は何??」


世界中の冒険者や各国の騎士、戦士、果ては魔術師まで、喉から手が出る程其の手にしたいと思わせる程の業物の装備品や、王族や貴族、大富豪や商人等が己のステータスの為だけに欲しがる、様々な用途に用いられる魔法具等、其の全てが超が付くほどの最高級品等、その大凡8割の製品が此の場所で作られている、其の工房の名を。


「クロムウェルハイド工房。」


聞いた事が有る名前だ、確か魔法具を組み込んだ高級家具にその名前があったのを覚えてる、鬼の様に馬鹿高かったのも覚えてる。

そうか、あの御高い子達は全部此処で作られていたのか。

エアルは飛竜で降りれる場所を探す、前は此処に行き来していたと言っていた、なら竜舎に似た建物が近くに有る筈、そしてそれは呆気なく見つかった、工房の、文字通り目と鼻の先に竜舎が建てられていた。

飛竜を其処に繋ぐと、メルラーナ達は工房へと向かう、其処は全てがと言っていい程、金属が繋ぎ合わさって出来た建物だった、外から入れる扉が幾つもあり、一番上の部屋?の屋根には大きな煙突が有り、其処からもくもくと黒い煙が立ち上っている、至る所から鉄で鉄を打つ様な騒音と、鼻を突く様な鉄の焼ける臭いに燃料である木の燃える臭いが交じりあい、異臭が辺りに漂っていた。

「さあ、行くよ。」

エアルは先行して建物の外側に設置されている金属製の階段や通路、梯子を登り、メルラーナは追い掛ける様に付いて行った。


程なくして建物の頂上にある此処に来るまでより一回り大きな扉の前に到着すると、エアルはノックする事無く重むろに扉を開け中に入る。

「デューテ様、いらっしゃいますか?エアリアルです。」

中に居る人に聞こえる様な、叫ぶ訳ででは無く、部屋の隅々にまで通る様な声を発すると。

返事は無かったが、奥の方からカンカンと鉄を叩く音が聞こえて来る、エアルに続きメルラーナも中に入ると、部屋の中は広く、辺り一面をライトで照らされて明るく、綺麗に並べられた台と四方の壁一面は、全てに硝子張りで出来たショーケースに成っていて、其の中には武器や防具が敷き詰められていた。

其の装備品は、素人のメルラーナにでも、此れはきっと凄い物だと解る程、一切の無駄が無く、それでいて美しく輝いている様に見えた、只其れ等全てにゴツゴツとした豪華な装飾は付いておらず、至る所に何かの文字の様な物が彫られていた、どうやら紋様の様だが其れに何となく見覚えがある。

(お父さんが来ていた赤い鎧にあったのと同じだ。)

「エアル、此の紋様って?」

「嘗て大魔導士テイルラッド=クリムゾンが提唱した仮設に。」

メルラーナの疑問に答えたのは男性の声だった。


【魔法陣とは魔法を発動させる為の陣では無く、魔法陣其の物が魔法である。】


「と云うのを立てた事があり、其の仮設が立証された時、魔法陣は其の姿形を変え、只一つの魔法を込めて一つの目的だけの為に生み出された魔法具とは違う、持ち主によって其の性能が変化すると言われる魔装具と呼ばれる物が誕生した瞬間じゃったと言われとる。」


そう説明をしながら部屋の奥から出て来た人物は。

(…え?小っさ!?)

身長が130センチ程の大分背の低い老人だった、見えているのか?と思ってしまう程、太く白い眉毛に目が隠れてしまっている、大きな鼻、顔の肌には皺が多く、真っ白な髪に胸の辺りまで伸びる立派な白い髭を生やし、服装は至って普通だが、老人とは思えない程の尋常ではない位に鍛え抜かれた様な強靭な筋肉をしている其の肉体は、まるで歴戦の戦士を思わせる程だった。

(此の背格好、そう云えばドワーフって言ってたっけ?お父さん。)


「ほっほっ、エアルちゃん、久しぶりじゃのう、滅茶苦茶別嬪さんに成ったじゃない!どう?儂と不倫しない?」

(で、出て来ていきなりエアルをナンパしたっ!?)

片目を瞑り、ウインクをしてエアルを誘惑する老人に。

「しません、そんな事言ってると奥様に殺されますよ?」

速攻で振られた。

「ほっほっ、冗談じゃよ、冗談。」

「全く。」


気を取り直してエアルは老人を紹介してくれた。

「メル、此の方がデューテ=クロムウェルハイド様、解ると思うけど見ての通りドワーフよ。」

見ての通りなんだ?

「は、はぁ。」

超一級品の装備を作れるのはやはりドワーフと云う種族の専売特許なのだろうか?

て云うか、何かイメージが違う、もっとこう、頑固で厳つい感じの職人肌の性格を想像していたのに、何かチャラい。

「ほっほっ、初めましてじゃの、お嬢ちゃんはひょっとして、ジルの娘さんかの?」

「は、はい、初めまして、メルラーナ=ユースファスト=ファネルです、宜しくお願いします。って、お父さんの事を知っているんですか?…あれ?何で私が娘って分かったんですか??」

背筋を正してきっちりとした挨拶をしようとしたメルラーナだったが、次々と湧き上がる疑問を思わずぶつけてしまった。

「ほっほっ、ジルの事は良く知っとるよ、若い頃から色々注文の多い奴じゃったのう。

お嬢ちゃんの事は奴が、毎度の如く写真を見せて来て自慢しよるから直ぐ分かっちゃったわい。」

成程、…って、何やってるんだ!あの父親は!

はっ!?ま、まさか、行く先々で同じ事をしているんじゃ?

チラリとエアルの方を見ると、目が泳いでそっぽを向いてしまった。

あ、あの親父ぃっ!!

「それにしても、自慢して来るだけはあるのう、本当に可愛いわい。」

言われて恥ずかしく成り、頬を真っ赤に染めて俯いてしまった。

(こんな少女が神器に認められるとはのう、運命とは酷な事をするものじゃのう。)



「所でその紋様じゃがの、それは魔法陣じゃよ。」

余り弄るのも可哀想だと思ったのか、デューテは話題を戻す。

「え!?こ、此れが魔法陣なんですか?」

魔法の事は良く知らないが、魔法陣って円形のイメージが。

「あぁ、成程、姿形が変わったってそう云う事なんだ。」

「…。」

エアルとデューテは目を大きく見開き、瞼をパチパチさせて。

「エアルちゃん、何此の子?理解力滅茶苦茶高くない?」

「…わ、私も彼女と出会ってからまだ半月程しか経ってないですけど、驚かされる事が多々ありますね。」

何か褒められているけど、凄く恥ずかしい。

「あ、魔法に関しては、儂さっぱりじゃから聞かないでね?」

「え?さ、さっぱり、なんですか?」

こんな凄い複雑な紋様を刻み込んでいるのに?

「儂等はただ、こう云う紋様を寸分も違える事無く刻む様、奴に言われただけじゃよ。」

其処でエアルが横から入って来て。

「あの、デューテ様、話が反れて来てるのでそろそろ本題に。」

話を戻した。

「ほっ?そうじゃったそうじゃった、どれ、奥の作業場で見せて貰おうかの。」

奥へと案内されようとした時。


エアルの頭の中に念話が飛んで来た、立ち止まって、手を耳に当てる。

「あ、デューテ様、先に行ってて貰えますか?副長から念話が、それと此れ。」

副長?ああ、前に話してた人か、確かエアルのお兄さん。

エアルはデューテ爺に何かを渡し。

「メル、御免ね、直ぐ行くから。」

「うん、解った。」

そう言って外へ向かうエアルを見送って、メルラーナ達は奥へと進む。


奥からは相変わらず鉄を叩く音が鳴り続いているが、良く聞くと其の音は一つでは無く複数の様だ。

「奥に誰か居るんですか?」

デューテ爺に尋ねると。

「んん?此処から行く部屋には居らんよ?」

「此処から?」

意味が解らんと、首を傾げるメルラーナに。

「ほっほっ、行けば解るよ。」

鉄を叩く音は段々大きく成って行く、それに、奥に行けば行くほど温度が上昇している様だった。

やがて通路の奥の扉に辿り着き、デューテ爺は其の扉のノブを手に取り、開くと。

「…え?…な、なんじゃこりゃー!」

「ほっほっ、儂はそう云う反応を見るのが好きなんじゃよ。」


招かれた部屋は、途轍もなく巨大な空洞だった、山を刳り貫かれて作られた洞窟である、其の洞窟は、下へ下へと吹き抜けていて、至る所に作業場の様な場所が数十個有り、其々に鍛冶道具が揃えられていて、一つの作業場に一人、鉄を叩く者、溶かしている者、鋳物の型を作っている者、出来上がった物に装飾を施している者、お客さんと商談をしている者達等、様々なドワーフ達が居た、そして巨大な空洞の中央には、大きな溶鉱炉が設置されており、其々の作業場に向かって太いパイプで繋がっている、熱の正体は多分此の溶鉱炉だろう。

今メルラーナが居る作業場は一番高い場所にあり、全ての作業場を見渡せる様に成っている、他と比べて広く、更に他の場所には無い道具が有ったりした。


「さて、お嬢ちゃんの身に着けている其れを見せてくれるかの?」

デューテは作業台の横に置かれている椅子に腰を掛ける、篭手を外して台に置く様に促されると、其れに従って両腕の篭手を外して台の上に置いた。


「ほっほっ~!コイツは懐かしいのう、ジルが20年程前に儂が作ってやったヤツじゃないの?」

メルラーナから渡されたソードガントレットをマジマジと凝視しながら語る。

「ええ!?こ、これ、デューテさんが作った物なんですか!?」

「ほっほっ、まあね、お嬢ちゃん、儂の事はデューテ爺とでも呼んでくれる?御爺ちゃんでも良いよ?」

親指を立てて笑みを浮かべるディーテ爺。

「は、はぁ。」

自分があの有名なクロムウェルハイド製の武具を持っていた驚きと、其れを作った凄い筈の人のユルさのギャップに戸惑うメルラーナだった。


「にしても、コイツは酷いのう。」

ソードガントレットを隅々まで見ながら呟く。

「そんなに酷い状態ですか?」

「んん?状態は左程酷くはないよ?んん?折れてるから酷い?いや、作りがね?儂こんなの作って満足してたのかと思うと、此の刃を出す為の構造(ギミック)が酷い、指入れて引っ張るとか、戦闘中に指入らなかったらどうすんのコレ?後皮の部分が多い、篭手なんじゃからしっかり守れなきゃ駄目じゃろうに、当時の儂は何を作りたかったんじゃ?」

自問自答を繰り返しているデューテ爺は、ソードガントレットを台の上に置き。

「刃をもっと出しやすいギミックに変えて、前のは此のまま別のを付けちゃおう、皮は全部取り外して、甲冑部位を増やして、皮は必要最低限な部分だけするかのう、元の手甲部分は一度溶かして鍛えなおすかの、一寸重く成るけど新しく打ち直しちゃおう、刃はどうしようかのう?此れはもう使えんから一から作り直したら、ありゃ?…お嬢ちゃん、此れ、もう殆ど別物に変わっちゃうけどいい?」

「え?…うーん。」

唐突に許可を求められ、少し考えるメルラーナ。

「少し、名残惜しい気はしますけど、元を作ってくれた人に作り直して貰えるなら、うん、いいですよ、お願いします。」


「よし!ならやはり刃に用いる原料の鉱物はアダマンタイトじゃ!」

は?アダマンタイト?

「アダマンタイトを原料にオリハルコンを作る!」

は?オリハルコン?


何を言っているのか意味が解らなかった。

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