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クレイヴァネアス ~始まりは玉響な微睡みの中で~  作者: 沙霧 啓
第二章 ラスティールの鼓動
15/98

15話 ゴブがいっぱい



列車に揺られて二日が経過していた、カノアの町を出発してから既に10日が経っている。

メルラーナとエアルの二人は目的の街で並んで歩いていた。

流石に首都で見た路程広くは無く、舗装はされていたが鉄の箱で出来た乗り物は数え切れる程しか見かける事しか出来なかった。


「ねぇ、エアル?」

「ん?」

「此の街も通り抜けるだけなの?」

「そうね、食料と水を確保して、馬か馬車を調達出来れば直ぐにでも出発かな?」

「そっか~。」

残念そうな表情をするメルラーナを見て。

「クスクス、仕方が無いな~、メルは。」

「ふぇ?」

エアルの言葉に間の抜けた反応を示す。

「観光とかは出来ないけど、ギルドに行って街を歩き回れる様な仕事を探そっか、ならお金も入って来るし、色々見て回れるでしょ?」

「おお!?それいいねっ!…あ、でも私、この国のギルドで登録してないよ?」


労働者ギルドや冒険者ギルドは登録制なので、仕事を受ける為には一度、各国のギルド本部で登録を行う必要がある。更に登録する為にはお金が掛る、それが自国の住人なら大した額では無いが、外国人に成ると其の金額は跳ね上がる、永住権を得た者なら兎も角、外から来た人間に、簡単に仕事を与えて住まわせない様にする為の処置である。


「ああ、大丈夫、大丈夫、私が登録してあるから、仕事を受けるのは私、メルは私のお手伝い、いい?」

「おーっ!それでいいっ!!」


そんな訳で旅を一時中断し、労働者ギルドに立ち寄り、簡単でかつ街を見回れる様な仕事を探してみる。

「お?これいいかも?」

エアルが目にした依頼書は先日の嵐の影響で人が出払っていて、物資が届け切れていない場所が有り、其れ等の場所に物資を運んで欲しい、と云う依頼だった。

「すいません、此の仕事なんですけど………。」


………

……


二人の他に数人、荷車に大量の物資を乗せて移動している、街の所々では、店の看板が落ちていたり、窓のガラスが割れていたり、酷い所では木が薙倒されていた。

「うーん、これは、予想以上に…。」

「酷い…ね。」

「飛行船が運航を休止する程の嵐だったしね。」


それにしても此れは、ソルアーノでこれ程の規模の街なら、ある程度の天災への対策は出来ている筈なのに。


まるで何者かの手によるモノかの様な。


「アハハ、まさか…ね、あり得ない、あり得ない。」

「?」

一人考え込むエアルをメルラーナは不思議そうに見つめていた。


「あり得ない事柄なんて存在しないんだよ?」


不意にそんな言葉を投げ掛けられる。

「!?」

言葉を発した主を探すと、其処には壊れた店の前でテーブルを置き、其処に商品を並べて販売している男が此方を向いて居た。


「貴方は?」

エアルが警戒しながら声を掛ける、警戒する理由は解る、何せ男はローブを纏い、顔が見えない位、フードを深く被って居たのだ。

「此の店の店主さ。」

親指を立てて自身の後ろに有る壊れた店を指差す。

「あり得ないと思っていた事柄が起こったんだよ、店は此の有様さ、何か買って行ってくれると非常に有りがたいんだけど。」

メルラーナとエアルは互いに顔を合わせた。

「そ、それは、大変でしたね。」

メルラーナは男を不憫に思い、商品を覗き込むが。

「あ、あはは。」

並んでいた商品は商品と言える物ではなく、笑って誤魔化してしまった。


ガラクタばっかりだ。


「ああ、君達、ひょっとして救援物資を届けている途中なのかな?それは足を止めてしまってすまなかった、僕にも少し分けて貰えないだろうか?」

「え?あー、一寸待ってて下さいね?聞いて来ます。」

メルラーナはエアルと物資を運んでいたメンバーに物資を分けていいかどうか相談し、困って居るのだから勿論、と、二日分程の水と食料を預かって、男の所に戻って来た。

「これ、少ないですけど。」

「ああ、有難う、君は良い娘だね。」

「申し訳ない、私達は別の場所で物資を必要としている人達の元へ急がないといけないので、此の辺で…。」

エアルが横槍を入れて来た。

「そうか、そうだね、そうだ、君。」

男は去ろうとしていたメルラーナを呼び止める。

「はい?」

「食料を分けて貰ったお礼と言ってはなんだが、一寸した警告?情報?いや、警告だな、うん、警告をしといてあげよう、…黒い男に気を付けた方がいいよ。」


「は?はぁ。」

メルラーナは何の事だか解らず、間の抜けた返事をする。


「いや、君には白い男と言った方がいいかな?」

何を言っているのか解らないまま、軽く会釈をし、振り返って歩き出そうとして、エアルを見た。


「あ…、あ………、…て、て。」

何か、見ては行けない様な物を見てしまった様な、そんな表情をし乍ら、フードの男性を指差している。

「アアテテ??何それ?エアルどうかしたの??」

「…ハッ!?」

メルラーナに呼ばれて我に返るエアル。

「…メル、他の人達と先に行っててくれる?」

「え?うん、何か買って行くの?」

「え、ええ、そうね、一寸気になる物があったから。」

「そう?解った、皆待ってるもんね、先に行っとくね。」


メルラーナは他の人達と先に行く事にした。

少し後ろを振り向くと、ローブの男とエアルが何か話していた。



避難所に到着したメルラーナ達は、避難者達に水と食料を配っていた、配りながらふと思う。

「あ、そういえば、此の街で保存食の調達するって言ってたけど、今の此の状況を考えたら無理じゃない!?」


そんな事を考えていたら、遠くの方が何か騒がしくなっていた。


「何だ?喧嘩でも始めたか?」

一緒に来ていた男性の一人が、多分そんな感じの事を呟いている。

メルラーナは気に成って、騒ぎ出した方角を確認しようとするが、遠過ぎるのか、人混みのせいかは解らないが、見る事が出来なかった。

「……よし、………様子、見てきます、此処、任せても、いいですか?」

一緒に物資を運んで来た人達に片言でそう告げる。

「え?嬢ちゃん、大丈夫か?」

親指を立てて、任せとけ、という意思表示をし、喧騒の元へと走り出して行った。


騒ぎの中心に辿り着いた時、周りは酷い有様だった、怪我人が数十人、中には重症の人も見受けられる。

「こ、これはどういう事?」


「冒険者はまだ来ないのか!」

「此処に来るまで30分程掛るって言ったろう!まだ連絡してから5分しか経ってねぇ!」

叫び合う大人達、連絡、と云う言葉を発した男性の手には、通信機が握られている。

「あの、一体何が?」

此れは只事ではないと思い、メルラーナは近くの人に尋ねてみた。

「モンスターだよ、ゴブリンが数匹、突然現れたんだ、お嬢ちゃん、危ないから下がっていた方がいい。」


ゴブリンという単語は聞き取れた、直ぐに元凶へ向かって走り出す。

「お!おい!お嬢ちゃん!!」

メルラーナを止めようと、叫ぶ大人達を無視して走る事数分。

「な!?」

辿り着いた其の場所は既に戦場と化していた、ゴブリンが視認で20匹程、街人を襲って居る、ただし、ただ襲われている訳では無く、元戦士職だったのだろうか、屈強な男の人、体力が取り柄と言わんばかりのガタイの良い人、中には仕事用の道具を武器にして、何人かの人達がゴブリンに立ち向かっていた。

数匹は倒している様子だったが、如何せん、其処はゴブリン、数が多い。

メルラーナはソードガントレットを構え、戦って居る男達の背後から襲おうとしているゴブリンに斬り掛る、呆気なく絶命した。


「あれ?」


何か、不思議な感じに気を取られたが、今は其れ所じゃないと、続いて男達の間をすり抜け、両手の刃で1匹ずつ、2匹の頭を同時に突いた、ビクンッ!と身体を痙攣させて、2匹共動かなくなる。


「んんん?」

………、メルラーナは自身の両手をマジマジと見つめて居る、例の水は出て来ては居なかった。

「フォルちゃんが力を貸してくれてる訳じゃないのかな?」

「おい、アンタ、冒険者か?」

男の一人が声を掛けて来る。

「ん?えっと、冒険者って言ったのかな?え~と、違う?」

「…そうか、だがアンタ強そうだし、戦力に成るなら大歓迎だ!」

「おっしゃー!応援が来るまで此処を死守するぞー!」

「「おー!!」」


何故か勝手に盛り上がってしまった。

メルラーナが参加してから、ゴブリンの数が目に見えて減って行く、と思っていたのだが、敵の数が増えて来たのだ。

「くそっ!増援かよ、どうなってやがる!」

此の街はカノアの町とは違い、外壁によって守られている街だ、ゴブリン如きが外から入れる訳が無い、可能性があるとすれば先日の嵐で、外壁が崩壊、其の隙間から入り込まれたか、しかし外壁には警備兵が配置されて居る筈、少しでも異常が有れば直ぐ様対応出来る筈だ。

「おい、ゴブリン共の向こう、確か下水路に入り口があったんじゃないか?」

「!?…おいおいおい、それじゃあ此の街の地下全てにゴブリン共が徘徊してるって事じゃねぇのか?」

「!!」

「直ぐギルドに連絡しろ!街が危険だ!」


その時、奥の方からゴブリンが十数匹、ゆっくりと歩いて来ていた。



「ゴブリン弱い!とっても弱い!んだけど、数が!」

メルラーナは一人、奮闘していた、本人は冒険者ギルドの仕事とは無関係だった為か、自身の実力というモノには一切興味が無かった訳だが、英雄と呼ばれている男の一人娘である、本人は英才教育されていた事等、気付く筈も無く。

しかしそれでもゴブリンの数は危険なモノだった、一瞬、ほんの一瞬だけだったのだが、大きな隙が出来た、その隙を狙って1匹のゴブリンが背後から襲い掛かってくる。


「ガ、ギャ。」

ドサッ!


「え?」

自身の直ぐ後ろで何かが倒れる音が聞こえ、視線だけ其方に目を向ける、其処には死体と成ったゴブリンが1匹倒れており、糸の様に細く成った水がくねくねと動いていた。

「フォルちゃん!?」

メルラーナは相手にしていたゴブリンをサッサと倒してしまい、フォルネスに話し掛ける。

「又助けられたね、有難う。」

当然、フォルネスは返事を返す事無く、水の先端部分がずっと何かに向いていた。

「?」

不思議に思い、先端が向いている方向を見てみる、すると其処にはゴブリンの中に一回り大きいゴブリンが数匹、普通のサイズのゴブリン達と共に此方に向かって歩いて来ていた。

「おお!?おっきいな!何だ!?アレ!?」

「ありゃあ、ホブゴブリンだ、こりゃあ本格的にやばく成ってきたな。」

そんな事を言いながら、1匹1匹を確実に仕留めて行く男達だが、流石に疲労が見て取れた。

ホブゴブリンという単語を聞いて、あれがホブゴブリンか、初めて見たな、等と呑気な事を考えながらも、ゴブリンを仕留めて行く。

「えっと、危険?ホブゴブリン?」

「ん?…ああ、いや、上位種とはいえホブゴブリン自体はそんなに危険じゃねぇよ、問題はゴブリンとホブゴブリンが一緒に居るって事だ。」

「?一緒?」

既に最初に視認したゴブリンは略倒していた筈だった、実際に転がっている死体は20を超えている、だが、まだ目の前には30匹を超えるゴブリンとホブゴブリンが居た。

対して此方は非戦闘員だけであり、数人ではあるが、死傷者も出ている。


「一緒、危ない?」

「あぁ、こりゃあ軍隊だぜ、下手すりゃあ100や200じゃ利かねぇかもな。」

「100!?200って!?数が!?」

そ、それは、本当に危険なのでは?


そんな事を考えながら戦っていると、フォルネスがメルラーナの身体の中に消えて行き、両腕のソードガントレットを覆う様に現れる、其の姿を見た男は。

「アンタ、其れ魔法か?」

「え?いや~、魔法では無いと思うんだけど。」


まだ使い方すら真面に解らないんだけど、兎に角今は。


正面のゴブリン達に斬り掛る、1匹倒すつもりで一太刀振るったのだが。


斬!


「へ?」

水の刃が伸びて、数匹を薙倒した、呆気に取られて居ると、別のゴブリンが襲い掛かって来る。

「アンタ!危ねぇ!」

咄嗟に身体が反応し、其の攻撃を防御する、ドンッと殴られた様な衝撃が有ったが、全く痛くも無く、其れ所か、防御したと同時に何かがゴブリン目掛けて飛んで行った。ドサッ、と倒れるゴブリン、其れを見て少し固まって居るメルラーナ。


「…え~と?」

其の光景を見た他のゴブリン達は、メルラーナを危険と感じたのか、集中して攻めて来る。メルラーナは其の圧倒的な力を振るって、ゴブリン、ホブゴブリン達を薙倒して行った。


残り数匹、という其の時、ドンッ!と足元が揺れた様な感覚が全身を襲う。


「な!何だ!?地震か!?」

「つ、次から次へと何!?」


振動はほんの数秒だけだったが、其の場に居た全員が動きを止めた。


「お、納まった?」


「メルッ!まだ雑魚が残って居る!さっさと殲滅してしまいなさいっ!!」


「!?」

何処からか飛んで来たエアルの声に、ハッ、として言われた通り、直ぐ行動に移す。


ガウ=フォルネスの力を借りて、あっという間にゴブリンを殲滅させたメルラーナは、下水路の入り口が有ると言っていた方角から歩いて来たエアルに。


「お疲れ様、とは言え、気を抜くのが早すぎる、最後までちゃんと警戒しとかなきゃ駄目でしょ。」

「う、御免なさい。」


注意された。


「ガウ=フォルネスは初めて見たけど、凄い能力だね。」

「でしょ?首都に着いた時なんかね………。」

メルラーナはついつい首都に着いた時の駅での出来事をエアルに話していた。


(盗まれた財布を取り戻した?そんな事出来るモノなの?宿主を護っているのかな?選ばれたんだから護るのは当然と言えば当然なんだけど、それにしても、こんなに直ぐ其れほどの能力を引き出す事なんて出来るモノだろうか?見た感じだと()()()()すら解放されてない様子なのに。)


メルラーナの小さな身体を頭の天辺から足の先まで舐め回す様に見つめ乍ら考える。

「?」

キョトンと小首を傾げるメルラーナを他所に。


(戦闘センスの問題?確かにメルのセンスは高い、多分、団長に小さい頃から英才教育でも施されていたんだろう、普通に育って来た15才の少女とは思えない程の戦闘能力、判断力、行動力、先程の戦いでは見れなかったけど、多分、洞察力も尋常ではないだろう、ガウ=フォルネスの力が無くても恐らく戦士ギルドに登録すれば五次席、いや、六次席位に飛び級出来るかもしれない、でもそれじゃあ団長が選ばれなかった理由には成らないし。

…駄目だ、私の持ってる知識だけじゃ解らない事だらけだ、後で聞いてみよ。)

そんな事を考えていると。


「そういえば、エアル何でアッチから来たの?」

と声を掛けられ、見ると下水路の方角を指差すメルラーナが居た。

「あ~、えっとね?」


………

……



怪しい店主のローブ男との話を終えて、エアルは目的の場所へと向かっていた、其の時、エアルの上空を一羽の鳥が旋回していた。

「?」

足を止めて鳥を見つめて居ると、鳥は旋回を止め、エアル目掛けて降りてくる。

「ギルドの伝書鳥?」

右腕を水平にして顔の高さまで上げると、鳥は其の腕に止まった、背中には小さな鞄が付いていて、中を探ると、無線機が出て来た。

「何?此の物凄い中途半端なアナログ感!?」


無線機を手に取ると、ピッ、ガガガ、という音を出した後。

『突然申し訳ありません、私は此の街の冒険者ギルドのマスターをしています、貴女はエアリアル殿で間違いありませんか?』

「さて?人違いではないでしょうか?」

相手はギルドマスターに間違いないであろうが、念には念を入れて誤魔化す。

『失礼を招致で申し上げて居ります、緊急を要する為、駆け引きに応じている暇はありませんので要件だけ申し上げます、少し前、各所の下水路の出入り口からゴブリン共が沸いて出て来たという内容の連絡を受けました、手の空いている者達は全て向かわせましたが、人手が足りていません、其の連絡は労働者ギルドの方からも有り、貴女様の事は其の時に聞き及びました、一人でも多くの戦力を必要としています、貴女がエアリアル殿で無かったとしても、どうか力を御貸し下さい。』

「…そうですか、各所で、つまり街の下水路全てにゴブリン共が徘徊していると見た方がいいですね。」

『はい、我々も其処は同意見です、なので現在、出入り口の封鎖を試みている次第です、貴女方が物資を届けに向かった場所の付近にも出入り口が一つ有ります、其処の封鎖をお願いしたい。』

「成程、了解しました、皆さんには引き続き出入り口の封鎖をお願いします。」

『有難う御座います!…はい、了解致しました。』

「それと、念の為、下水路の中には入らない様に伝達しておいて下さい、絶対に巻き込まないという保証は出来ませんから。」

『え?…は、………はい。』

此処で無線でのやり取りは終える。


「ゴブリン、か。」

数日前の遺跡での出来事を思い出す。

「まさか、ね。」

エアルは自身に言い聞かせる様に首を左右に振る

「さて、と、様子はどうかな?」

エアルは平然とした表情で飛び上がり、2階建ての民家の屋根の上に飛び乗り、目的の場所を確認してみる。

「意外と近かったな、…うん、メルは良くやってるみたいね。」

視認の先ではメルラーナがゴブリン相手に奮闘している姿が見えた、エアルは其のまま屋根を伝って移動する、メルラーナ達が戦って居る場所を通り過ぎると、壊された下水路の出入り口らしき扉を確認する。


「あそこか。」

エアルは弓を空へ向かって構え、放つ、ヒュン、と音を立て、真上に飛んでいく矢は、弧を描き、地面へ向かって降下し始める、と同時に、矢が光出した。

一本だった矢が、光と成って無数に弾け、ゴブリンの集団目掛けて雨の様に降り注ぐ、集団の中にポッカリと大きな隙間が出来、其処に降り立つと、出入り口の方へ向かって走り出す、向かって来るゴブリンを葬りながら。


下水路の中に入ると、其処はゴブリンの巣窟と化していた。

「うっひゃ~、気持ち悪い。」

場所の確保の為、周りに居たゴブリンを一掃すると。

「え~と、此処は街の南側だから、北はあっちか。」

方角の確認を取り。

「街の直系は大凡50キロメートル程、水路を破壊しない様に、確実で精密なコントロールと、掠っただけでもゴブリンを殺せる威力を維持して、他の生物に被害が出ない様に、且つ、街の水路全てに張り巡らせる程、広範囲に絞って。」


全神経を集中させ、弓を構え、矢を番い、放った。


『弾けろ。』


街の水路中、隅々に光が行き渡り、…弾けた。

その時、街中の全ての下水路の出入り口から目を開けたままで居る事が出来ない程、眩しい光が漏れ出したと云う。


ドンッ


地響きが起こり、少しの間、街全体を揺らす、そして、光は消え、数え切れない程居たゴブリンは消滅していた。


集中して周りの気配を探る、すると、何処からか何か恐らく四足歩行の何かが歩く音がする、ふと音の方へ振り向くと。


「にゃ?」


猫が一匹、トコトコ歩いていた、猫はエアルを見ると、猛ダッシュで走り去る。


「うん、何とかゴブリンだけに絞れたみたいね。」

一人呟いて、踵を返して下水路の出口へ向かって歩き出した。



………。


「つまり?あの地震はエアルの仕業って事?」

「あ~、うん、一寸揺れたかもね。」


一寸じゃねぇ!?


メルラーナは思った、街を一つ地震の様に揺らす事が出来る此の女性を、決して怒らせてはいけない、と。

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