ちいさなピタとおにーちゃん・3
年明けになったある日、ピタとおにーちゃんは雪山から村へやってきます。そこで色々なヒトにあいますが……?
雪ゾリすーっ、とよくすべる。前にすすむよ、くだり坂。
雪ゾリおすよ、おにーちゃん。さすがにむりかな? のぼり坂。
「お、おにーちゃん! ピタもおりておすかなッ!?」
「いーっていーって!! ピタは乗ってて!」
おにーちゃんにむかってワタシがいっても、ひたいの汗をふきふき、それからうんしょ、うんしょって、おすおにーちゃん。
「はぁ~、汗かいた……すっかり寒さが吹き飛んじまった!」
おにーちゃんはそういうと、きていた上着をいちまいぬいで、ワタシにわたして雪ゾリをひきながら、平らなみちに出した。
今日は山のふもとまで下りて、村のしょうやサンにごあいさつ。年があけたらかならずいって、今年もよろしくおねがいします、っていわなきゃいけないお定まり。
「あっ!! ピタちゃ~ん!!」
「レミィナさ~ん!! おはよーございますッ!!」
しょうやサンのおねーさん、レミィナさんがおでむかえしてくれた。
レミィナさんはもちろん【ニンゲン】だけど、ワタシとおにーちゃんの事をだいじにしてくれてる。う~ん? 村のみんな、ぜんいんだいじにしてくれてるけど、村のそとのヒトは【コボルト】をこわがるヒトもいるから、気をつけなさいって、おかーさんにいわれてる。
「レミィナさん、今年もよろしくおねがいします!!」
「うんうん、こちらこそ! ……あれ? ピタちゃん、また大きくなった?」
「う~ん、そうなのかなぁ~?」
ワタシはソリからおりて、つえをつきながらレミィナさんにごあいさつ。するといきなりそういわれて、ちょっぴりうれしくなっちゃった。
【コボルト】って、【ニンゲン】よりも早くオトナになっちゃうんだって。レミィナさんはワタシより三つも年上だけど、もう少しで、ワタシが追いついちゃいそう。
「それに服が少しだけきゅうくつになってない?」
「う~ん、もしかしたら、そうなのかな……?」
いっつも大きめのふくだったから、あんまりわからなかったけど……うん、ひざが少しだけ出てきちゃってるかな? (※厚手のワンピースとキュロットです)
「うんうん、だったらウチにお姉ちゃんのおさがりがまだ有るから、見てって着てみたら?」
「えっ!? そ、それはうれしいかな……でも」
「気にするなって! どーせレミィにゃ大きすぎて着られない服なんだよ!!」
おにーちゃんがそう言って混ぜっかえすと、レミィナさんはちょっぴりムッとしてる。服のことを言うの……れいでぃには失礼なんじゃないかな?
「いぃい~っだ!! お姉ちゃんと私の違うとこなんて胸だけじゃない! ポルトのエッチ!!」
ほら!! レミィナさんをおこらせちゃったよ……山の村から海の村におよめに行ったリレージュおねえさんとくらべられるの、レミィナさんはキライだからなぁ……。
タレ目なリレージュさんと、ツリ目のレミィナさん。ふたりは一才しかはなれてないけれど、お見合いでさきにオヨメさんになったのはリレージュさんだったんだ。レミィナさん、お見合いしなかったから……しかたないよね?
「レミィナさんのこと、ピタだいすきだよ? だからあんまり怒らないでほしいかな……」
「えっ!? あ、あはは……ご、ゴメンねピタちゃん……そーゆーつもりじゃないから……え、えーっと、さ、さぁ早く行こう!」
あわてて先にすすみ出したレミィナさんと、おにーちゃんとワタシの三人でおウチにいくと、レミィナさんのおとうさん、しょうやサンが出むかえてくれました。
「おお、おお!! ピタちゃんにポルト君、寒くなかったかい?」
「しょうやサン! 今年もよろしくおねがいします!」
「お、おかあさんから今年もよろしくって伝えてくださいって言われて来ましたッ!!」
おにーちゃんがカチンカチンになりながら、おかーさんから言われてた言伝すると、しょうやサンは【にんべつちょう】にワタシたちのなまえを書いて、
「……これでよし、と。そうそう、バレットさんが穴グマ(冬眠しているクマ)獲ったから毛皮剥ぎしとるぞ?」
「マジでですかっ!? ピタ、レミィ見に行こうぜ!!」
「こ、こらっポルトったら!! ……ピタちゃん、行こう!」
「う、うん!」
しょうやサンにお礼を言ってから、おにーちゃんのあとを追って、レミィナさんに手をひかれながらワタシもそこにいってみることにした。
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「うっわ!! でっけぇなぁ〜ッ!! 見てみろよピタ!!」
おにーちゃんがジタバタしながら手まねきして、ワタシたちを呼んでる。村のひろばのまん中におかれたテーブルの前で、クマの毛皮はぎしてるバレットさんがいた。
「おぅ!! ピタちゃんも来てたのか!! ポル、お前もやってみな?」
「えっ!? いいの!! ……じゃあ、やってみる!」
おにーちゃんはそう言うと、いつも持ってるカバンからナイフを取りだして、言われるとおりに毛皮のしたにナイフを入れていく。
「そうだ、毛皮の下にある脂肪の層に刃をすべらせて……」
「ぐえ……アブラで刃がすべるぜ……」
両足の先のつけねにグルッときれめを入れて、服をきるみたいにショリショリとナイフをうごかして……うええ、お肉と毛皮にわかれたよ……。
「すごいアブラなのかな……」
「おお、穴グマ狩りで獲ると、毛皮の下に脂の層が凄いからな! 胆(クマの場合珍重されるのは胆嚢)も大きいから色々といいんだよ!」
穴グマ狩りって、冬ごもりしてるクマを見つけて、穴のなかを杉の葉っぱをたいたけむりでいぶすと、くるしくなったクマが穴から出てくるから、そこをヤリで突くやり方なんだって。
「よし、出来たな!」
「うおおっ!! 外れた!!」
こうして頭のついた毛皮になったクマは、バレットさんの手で肉と骨、それとはらわたと胆にわけられて、ぶじにお肉になりました!!
「……無事に猟が終わりました、ありがとうございます」
バレットさんはテーブルに毛皮と頭、それとお肉とシンゾーをおいて、お酒をそえて山の神様においのりしました。おにーちゃんとワタシ、それにレミィナさんもいっしょにてをあわせておいのりしていると、
「ほら、これはみんなの分だぞ?」
大きなお肉を葉っぱに包んで、ワタシとおにーちゃん、それにレミィナさんに分けてくれました!
「アナグマ狩りは一人でも出来るがな、何かあったら家族を見てもらわなきゃならん。助け合いは大切なんだ!」
バレットさんはそう言って、お肉を分けてくれたので、みんなでお礼を言いました。
「おにーちゃん、山からおくりもの、もらったね!」
「うん、いつか俺もアナグマ狩りしたら、みんなに振る舞わないとな!」
そう言って、二人でおうちに帰りました。
ソリはしゅー、ってよくすべる。
二人をのせて、よくすべる。のぼり坂だけ、押さなきゃダメだけど、ね。
レミィナさん、おにーちゃんのこと、好きなのかな?
うん! ワタシには、ほんの少しだけ分かるんだ。だっておにーちゃん、かっこいいんだもん!!
今回は軽く穴クマ狩りについて。
冬眠中のクマは時期によって価値が変わります。冬眠当初は脂肪層も厚くて肉も旨い反面、クマの胆は小さいそうです。ただし雪が深くて探し出すのに技術と経験が必要とされます。
しかし、冬眠明けに近くなると、巣穴付近の雪も緩み見つけ易くなるらしいですが、その分脂肪層も消費されて肉質も落ちます。純粋な食料としては見劣りしますが、クマの胆は大きくなって価千金……さて、あなたはどちらを狙う?
ちなみにクマの胆は取り出して暖炉の前(マタギ達はコタツの中に)に吊るしてゆっくりと干し、カチカチになれば出来上がり。用いる場合は砕いて粉にして飲むそうです。何に効くのかって? 滋養強壮剤……らしいんですが、服用するのは授乳期の妊婦さんやお年寄り向けで、ドリンク剤とは違った薬効が期待出来るそうです。稲村某は飲んだことは有りません……。
しょうやサン→村の管理を国に任されている庄屋さん。年始に人別帳を作成し、税収を春に行うがピタの家族もキチンと税を納めている。恰幅の良いおじさん。
レミィナさん→しょうやサンの末娘。一才年上の姉と変わらぬ背格好だが、胸だけは……勿論それが原因で先を越された訳ではないよ? 少しだけつり目だけど可愛らしい村娘ちゃん。ほんの少しだけ気が強いけどおにーちゃんが……?
バレットさん→そろそろ引退間近な山の猟師さん。村から時々山に入ってクマやシカを獲る。愛犬のピートと共にたまに二人の家にも現れる。ちなみに銃は存在しない為、名前はバレットでも銃は使いません。おにーちゃんの師匠。
山の神様→もれなく女性。この世界では海の珍妙な生き物を捧げる習慣が有り、ナマコを献上するとテンションマックスでアゲアゲになるとか。何故かは秘密。
リアルな山の神様にはオコゼ等の醜い魚を献上して「ほら、世の中には貴女の何億倍も醜いモノがあるでしょ?」「うっわ!! マジでっ!? ……ふわああ、スッゲーぶっさいくぅ!!wwwww」となるそうです。