表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヤンキー『処女同盟』   作者: 一葉 ミサト
36/37

36話

 ――次の日。

 浩司達が迎えに来てくれた。

 そして、集会所に向かったのだった。


「皆! 今から高下組に乗り込む。50人はバイクで高下組のビルの周りで待機しててくれ! 例のチンピラ2人が現れたら捕まえて欲しい! そして、残りの皆はあたし達が高下親分の元に行けるようにヤクザ達を止めてくれ! 簡単には中には入れてくれないだろう。そん時は殴ってでも、あたし達が中に入れるようにしてくれ! 後の責任はあたしがとる!」


「楓! 責任って、どういう事だよ!」


 恵理奈が心配そうな顔で聞いてきた。


「楓に何か遭ったら明にどう説明すればいいんだよ!」


 浩司も心配して聞いてきたのだった。


「皆、聞いてくれ! 相手はヤクザだ! 親分は義理と人情のある人だと聞いている! 親分と会うにはヤクザ達を相手にしないといけない。もしかしたら怪我人が出るかもしれない。けど、皆は漢だ! 明が認めた漢達ばかりだ! あたしは皆を信じる! けど、親分と話が出来たとしても、あたし達の話を聞き入れてくれるか分からない。そん時はあたしが皆を守る! あたしが代表として責任をとる!」


「楓! あんた1人に責任を負わせるわけにはいかねぇ! あたし達は仲間だ!」


 弘子はそう言うと、処女同盟の皆も私の側に来たのだった。


「水臭い事言うなよ! 皆一緒だ!」


 恭子が笑顔で言ってきた。

 そして、他の皆も、処女同盟は皆一緒だと……。


 浩司と誠も私達を見て声をかけて来た。

 そして、浩司が族の皆に話しかけたのだった。


「おめぇら!! 楓1人に責任を負わすわけにはいかねぇ! 明、総長のためにも!! 俺達皆が力を合わせたらヤクザなんか怖くねぇはずだ! 自分に誇りを持つんだ! 行くぞ!!」


「おおおおぉぉぉっ!!」


「皆……そして浩司、誠、ありがとよ!」


 私は同盟の皆と浩司、誠、族の皆に感謝の気持ちでいっぱいだった。

 だが、これからだ!

 明の事を思っていた。

 

(どうか、あたし達、皆の事を見守っててくれ……。明……)


 ――私達は高下組のビルに向かった。

 あたし達処女同盟は武器を手に。

 そして、族の皆は明の教え通り素手で闘う事に。


 高下組のビルの近くまで行くと、私はビルを50人で囲ませた。

 ビルは5階まである。

 きっと1番上に親分がいるはずだ。

 私は残りの皆を連れて堂々と真正面から行ったのだった。


 ビルの前には2人のヤクザが立っていた。

 多分見張り番だろう。 

 その2人に私は声をかけた。


「頼みがある。親分に大切な話があるんだ! どうか会わせてくんねぇか!」


 私は簡単には通して貰えないのは分かっていたが、一応頼んでみた。


「何だ? お前らは! 親分に何のようだ!」


 ヤクザの2人がガンつけて聞いてきた。


「だから話があるって言ってんだよ!!」


 私はそう言うと、木刀で2人を殴ったのだった。

 

「あとは頼んだ! この2人を中に入れさせないでくれ!」


 族の3人を残してビルの中に入って行った。

 すると案の定、他のヤクザ達がいた。

 私達を見ると皆して襲い掛かって来た。


 私達同盟の皆は武器を使い、浩司と誠、他の族の仲間は素手で殴っていった。


「親分はどこだ!! 話がある! 話を聞いてくれ!!」


 私は声を出しながら私達に襲いかかってくるヤクザ達をどんどん木刀で殴っていった。


「楓、いくら頼んでも無理だ! もう強行突破しかない!」


 誠の言う事に私もそうする事にした。

 いくら頼んでもやはり無理だった。

 それに、私達処女同盟の皆は武器を持っている。

 ヤクザ達が警戒するのは当然だ。


「皆! 行くぞ!!」


 私は皆に声をかけた。


 1階、2階、それぞれのヤクザ達を皆で殴り、そして、族の仲間達何人か残して見張らせた。


「大丈夫か! 皆! もう少しだ! 頑張れ!!」


 3階、4階……。

 

 各階にヤクザ達がいた。

 そして、この騒動に上から降りてくるヤツラもいた。

 私達は全力で闘った。


 ヤクザ達はチンピラ達と違って、素手で向かってきた。

 私は確信した。

 このヤクザ達は親分を守る為に漢として闘っているんだと……。

 そうなると、やはりあのチンピラ達がやっている事を親分は知らないはずだ。


 4階まで来て、族の仲間は浩司、誠を入れて15人になっていた。


「皆! もう少しだ! 頑張ってくれ!!」


 私は皆に声をかけ続けた。

 そして、皆で声を掛け合った。


 恵理奈、弘子、恭子、多可子、香奈枝。

 

「皆! 頑張れ!!」


 そして、浩司と誠も族の皆に声をかけていた。


「おめぇら!! 気合入れろぉっ!!」


「自分を信じるんだ!!」


 ヤクザ達は1階から4階までざっと40人はいた。

 上から降りて来るやつらを入れたら50人位だろうか……。


 とにかく親分の所まで行くしかない。

 皆、段々と疲れが見えてきたが、お互いに声を掛け合って気合を入れて闘ったのだった。


 4階に族の仲間を10人残らせた。


 そして、やっと5階までたどり着いた。

 5階にたどり着くと、親分の部屋なのだろうか? 

 部屋の前に見張り番らしきヤクザが2人いた。

 

 私達は5階の階段の上に残りの族、5人を見張らせた。

 もう私達と浩司と誠だけになっていた。


「さっきから騒々しいと思ったらガキじゃねぇか! よくここまで来たな! 親分に何の用だ!」


 見張り番のヤクザが聞いてきた。


「親分に大事な話があるんだ! 会わせてくれ! 頼む!」


 私はお願いした。


「俺達の仲間を痛い目に遭わせておいて、よくそんな事が言えるな!」


 どうやら、こいつらも親分に簡単に会わせてくれないらしい。


「なら力づくで中に入って見せるよ!」


 私達は武器を相手のヤクザに殴りかかった。

 だが親分の見張り番をしているだけあって、2人共強かった。

 私が木刀で殴ろうとすると、簡単に木刀を手で握ったのだった。


「くっ! てめぇっ!! いいから親分に会わせろって言ってんだろうがっ!」


 そして、弘子と多可子が鉄パイプで殴ろうとしたが、取り上げられて鉄パイプを投げ捨てたのである。


「お前らっ……!!」


 恵理奈がチェーンでムチ打ちしようとするとチェーンを奪い取り、投げ捨てたのだった。

 

 浩司と誠が2人で殴りかかっていった。

 やはり浩司と強かった。

 相手にパンチを入れたのだった。


 それを見て、私達はまた武器を持ち闘おうとした。

 その時だった。

 部屋のドアが開いたのだった。


「何だ!! さっきから騒々しい! ん? あんた達は!?」


 中から1人のお爺さんが出てきた。

 私はそのお爺さんに声をかけた。


「高下の親分に大事な話があるんだ!! 頼む! 会って話を聞いてもらいてぇんだ!!」


 私が頼むと、お爺さんは部屋の中に入れてくれた。


「皆、そこに座れ。わしが高下組の親分だ」


 意外だった。

 高下の親分がこんなお爺さんだとは思っていなかったからだ。


「わしに何の話だ。聞いてやる」


 私は親分のその言葉に、ここまで皆で力を合わせてきた事を、心の底から良かったと思ったのだった。

 だが、私の話を聞き入れてくれるか? 分からない。

 とにかく話を聞いてもらう事にした。


「親分、こんな形でしか会えなかった事をまずは謝らせてくれ! 親分の仲間達を殴ってここまで来た。ここまでしないと会えないと思ったからだ。済まなかった」


 私達は皆して頭を下げた。


「まぁ、ここまで派手にやってくれたのう。だが、それなりの覚悟があっての事じゃろう。いいから話してみなさい」


「親分、高下組のチンピラ達が好き勝手やってるのを知ってるか? 最初のきっかけは、あたし達の先輩の友達が2人のチンピラにレイプされたんだ」


 親分は静かに聞いていた。

 私はまた話を続けたのだった。


「他にも犠牲者がいるらしい。レイプされた女性たちが……。そして、あたし達は敵をとったんだ。そうしたら、今度はあたしの仲間と族の仲間が襲われた。そして、その2人に果たし状を渡した。対決の日、そいつらは50人位仲間を連れて来た。族の皆は素手で闘った。けど、チンピラ達は皆ナイフを持ってたんだ。あたし達の勝利した。でも、明が、あたしを庇って刺されちまった」


 私は明が刺された時の事を思い出して、涙がポロポロ流れてきた。


「親分、もうここでケリをつけたいんだ。そいつらを、そのチンピラ達を止めて欲しいんだ!」


 浩司が必死に頼んだんのだった。

 親分は私達の話を聞いたあと、部屋の外にいるヤクザ達を呼び寄せた。


「おめぇら、どうやら好き勝手やってるヤツラがいるらしい。その2人を今すぐ連れて来い!!」


 親分が話を聞いてくれた。

 私達は皆で顔を見合わせた。

 

「お嬢ちゃん、その明ってヤツはあんたの彼氏かい?」


「ああ、明は族の総長でもある。漢の中の漢だ……」


 私が親分にそう告げると


「その明って人は大丈夫だったのか?」


「背中を刺された。手術して今病院にいる。死ぬかと思った……どうしていいか、分からなかったんだ……それで、もうこれ以上犠牲者が出ないように、親分に話を聞いてもらおうと思ったんだ」


 私は又涙が流れてきたのだった。


「今うちの若いもんがそいつらを連れてくる。もう少し待っててくれ」


 親分はそう言って、タバコに火をつけて吸い出したのだった。

 

 すると、ヤクザ達が例のチンピラ2人を連れて来た。

 意外と近くにいたらしい。

 そして土下座をさせたのだった。


「おめぇら! この子達を知ってるな!! 高下組にドロを塗るようなマネしやがって!!」


 そう言って、杖を持って来て2人を叩いたのだった。

 チンピラの2人は動揺していた。

 明らかに高下親分の事を怖がっている様子だった。


「この子の彼氏さんを刺したのはどっちだ!? それとも他の連中にやらせたのか!!」


 親分が杖で叩きながら聞いた。


「親分、すいませんでした……」


 明を刺したのはこの中の1人だった。

 私はあの時、前を向いていた。

 そして、皆も勝利した事に頭がいっぱいだった。

 誰が刺したのか? 誰も見ていなかったのだ。


「あんたが明を……お前っ!! 明が死ぬかと思ったんだぞ!! お前なんか死んじまえ!!」


 私はその男に殴りかかっていた。


「お嬢ちゃん、後はわしに任せてくれないか。もうこれ以上こいつらを好き勝手にはさせないねぇ。約束する」


 私はそれを聞いて、やっと今回の件が終わったと安堵したのだった。

 

「他のヤツラもここに連れて来い!! そして根性を叩きなおしてやれ!! それから、人を刺す為にナイフってもんはあるんじゃねぇ!! お前、今から自主しろ!」


 親分は、明を刺したヤツに警察に自主するように言ったのだった。


「レイプの件だが、サツに自主するとレイプされた女性達が傷つく。探し出されるだろう。事情聴取も受けねばならん。もう2度とそんな事はさせねぇ。ここはわしを信じてくれねぇか」


 親分は、やはり義理と人情のある人だった。

 私達は親分に何度も何度も頭を下げてお礼を言った。

 

 そして、族の皆にこれでケリがついた事を話したのだった。 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ