32話
私達は学校が終わると、明や族の皆が迎えに来るのを待っていた。
皆バラバラで集会所に行くより、一緒のほうがいいと思ったからだ。
――集会所に着くと、多可子や多可子についていた族の仲間も来ていた。
「多可子、大丈夫なのかよ? ゆっくり休んでろって言っただろ」
私達が心配そうに言うと多可子は平気な顔をしていた。
というより、今回の事で怒りでいっぱいだった。
「楓、あたしは大丈夫だ! だが、あんな卑怯なやり方をされて黙っちゃいられねぇ。あたしも闘うよ!」
そして、多可子を守ってくれた隼人と他の族の仲間達も多可子と同じ意見だった。
「多可子。分かった。皆で闘おう。そして、隼人、皆、多可子を守ってくれてありがとよ! やっぱ、明が認めた漢だ!」
――そして明が皆を集めた。
「お前ら!! もう聞いているだろうが、多可子と護衛についていた仲間達があいつらにやられた! また同じ事をしてくる可能性が高い! その前に今度はこっちから”果たし状”を渡す!! 相手はナイフを持って来るだろう! 俺達は漢だ! 武器は使わねぇ!! 武器を使っていいのは、処女同盟だけ事とする。皆の力が必要だ! 皆!! 俺に着いてきてくれ!!」
「おおおぉぉっ!!」
明の言う事に、族の仲間達は皆威勢良く叫んだのだった。
そして、”果たし状”を渡すには、例のホームレスの男のいた場所で待ち伏せをする。
ヤツラが現れたところで果たし状を渡す。
明達に着いて行くのは、今度は人数を増やして10人。
族の皆はバイクで50人、あいつらが以前車を止めた場所の近くで待機。
相手もこっちがどう出てくるか? 警戒しているだろうから、何人一緒にいるか分からない。
それをこっちも警戒して、人数を増やしたのだった。
残りの40人は私達と集会所で待機。
これが明が考えた事だった。
「あいつらが現れて果たし状を渡すまで充分に警戒してくれ! 護衛も今まで以上に増やす!」
明が私達に声をかけてきた。
「ああ、わかった。けど汚ねぇまねしやがって! 絶対にタダじゃおかねぇ!」
私は怒りでいっぱいだった。
明達は漢だ。
だが、同じ男としてこうも違うのかと。
多可子や多可子を守ってくれた族の仲間達の為にも、絶対に懲らしめてやる!
そう思ったのだった。
そして、明がまた皆に声をかけた。
「早速、明日から張り込む!! これ以上あいつらの好きにはさせられねぇ! お前ら!! いいな!!」
「おおおおおぉぉぉっ!!」
「仲間がやられてんだ! 黙っていられるか!」
「今度は皆で決闘だ!!」
族の皆が1人1人声を上げた。
皆、仲間思いをいいヤツラばかりだ。
明の族の皆は、明が見込んだだけあって、漢の中の漢だった。
そして、多可子はいつもバイクで送り迎えしてくれていた隼人に、声をかけていた。
「隼人。昨日はありがとよ。あたしのために何度も殴られて……。悔しかっただろ?」
多可子が隼人の事を心配して言うと
「これくらい大丈夫さ! けど、多可子さんも結局は殴られちまった。すまん」
隼人は多可子の事を気遣って謝っていた。
「隼人。さんづけはやめてくれねぇか。多可子でいいよ……」
「じゃあ、多可子……。守ってあげられなくてごめんな。もう2度と、多可子に手を出させねぇからよ」
多可子は隼人の言った事に嬉しそうな顔をしていた。
「明、あの2人いい雰囲気だな」
私が明にそう言うと、明に叱られた。
「楓、何見てんだよ。今は2人っきりにさせてあげようぜ!」
「は~い。分かりました。総長!!」
私は頬を膨らませてた。
すると、膨らませた頬を明が指で押したのだった。
「むくれてる楓もマブイな。キスしたくなるぜ!」
「ちょっ! 待った。皆の前でやめてくれよ。恥ずかしいじゃねぇか」
私が恥ずかしながらそう言うと、明は笑っていた。
私は皆が見ていないスキに明の頬にキスをしたのだった。
「お! 不意打ちかよ!」
「あっかんべぇ~!! 明がからかうからだぞ!」
私は明に向かって、子供みたいにあっかんべぇ~をして見せたのだった。
「楓~。ほんとお前ってヤツは、キスしてやる。こっちに来い!」
私は逃げ回った。
それと同時に、明とこうやってふざけている事に幸せを感じていた。
「ほら捕まえたぞ。さぁどうしようか? 皆の前で堂々とキスするか?」
「悪かったよ。皆の前でキスするのは止めてくれよ~」
明は私を捕まえて、そう言ってからかったのだった。
「ホントはキスしたくてたまらねぇんだ」
明が小声で言った。
「明……。今回の事が終わったら、たくさんキスしような。それまでお預けだ」
「俺は犬かよ?」
明の一言に2人で爆笑したのだった。
――そして、明が皆をまた集めた。
「明日から毎日張り込みをする! お前ら!! 気合入れて行こうぜ! 今日はこれで解散だ! 帰りは十分気をつけてくれ! それから護衛を6人から20人に増やす!! お前ら!! 頼んだぞ!」
そう言って、私達の送り迎えの人数を増やした。
「じゃあ、明日、学校でな。気をつけろよ」
私は仲間の皆を送り出してから、明達と護衛の皆に送ってもらった。
――次の日から明達の張り込みが始まった。
いつ、姿を現すか分からない相手を待ち伏せするのは大変だ。
明達は例のホームレスの男の所で隠れて待ち伏せした。
「また、来たのか? あいつらは相変わらず、好き勝手やってる。あんたらが止めてくれたら、ここも安心出来るんだが……」
ホームレスの男が声をかけてきたのだった。
「ああ、あいつらは男じゃねぇ、汚ねぇやり方で俺達の仲間に仕返ししたんだ。今度こそケリをつけてやるぜ!」
明はそう言うとまた張り込みを続けた。
今日はいくら待ってもあいつらは姿を現さなかった。
きっと警戒しているに違いない。
明はホームレスの男の空き缶に金を入れた。
「おっさん、あいつらが他によく現れる所とか知ってるか? 知ってたら教えてくんねぇか!」
「俺はいつもここにいる。だから、あいつらがここ以外の場所で姿を現す場所は知らねぇんだ。わりぃな。まぁ、気長にここで待つんだな。きっとまた姿を現す。ここら辺はあいつらの縄張りみたいなもんだからな」
明はホームレスの男の話を聞いて、やはりここで待つしかないと思った。
そして、毎日張り込みは続いた。
――1週間位してから、やっと例のチンピラが姿を現したのだった。
「行くぞ! 周りに仲間がいるかもしれねぇ! 気をつけてな!」
明はそう言うと、族の仲間を連れて、そのチンピラ達に近づいて行った。
「よう! 久しぶりじゃねぇか。俺の仲間に汚いやり方で仕返ししやがって!! それでもお前ら男かよ!」
「またお前達か! しつこいヤツラだな!! また仲間を襲ってもいいんだぜ!」
その一言に明は殴ってやった。
チンピラの2人以外にも、仲間が何人かいた。
だが、周りにいた族の仲間達がバイクで囲ったのだった。
「”果たし状”だ! 明日、お前達と仲間のチンピラも連れて来い!! 逃げんじゃねぇぞ!! 今度こそ決着をつけてやる! いいな!!」
明は果たし状を渡して、族の皆と一緒に集会所に帰って来たのだった。
「お前ら!! よく聞け!! ”果たし状”を渡した! 明日ここにあいつらがやって来る!! 今度こそケリをつけようぜ!!」
「おおおぉぉぉっ!!」
皆、気合が入っていた。
そして、私達も……。
「多可子、もう体のほうは大丈夫か? 明日は体を張って闘う事になる」
「ああ、もう全然平気だ。あいつらに思い知らせてやろうぜ!」
多可子の顔のアザも消えかけていた。
「きっと、あいつらはナイフとか、刃物を持ってやってくるだろう。あたし達は自分達の武器で闘う。明達や族の皆は武器は持たないで喧嘩する。木刀や鉄パイプ、チェーンでヤツラの刃物を持っている手を狙うんだ。刃物を取りあげたら、明達も喧嘩しやすくなると思うんだ」
私は自分の考えた方法を仲間に告げたのだった。
「そうだな。ナイフを持っている手を狙えば、ナイフが地面に落ちる。そこを一気に叩きのめす。族の皆も闘いやすいはずだ。さすが楓。いい考えだ。あたし達はあたし達の出来る事をするぞ」
恭子や皆も賛同してくれた。
「いよいよだな。皆で処女同盟の名に恥じないように闘おうぜ!!」
私達は6人で手を合わせ、必ず勝つと誓いを立てたのだった。




