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ヤンキー『処女同盟』   作者: 一葉 ミサト
31/37

31話

 私達は、今までより一層、注意深く行動をとる事にした。

 なるべく多くの仲間で一緒にいる事。


 相手がどんな手を使ってくるか分からないからだ。


 学校の送り迎えも、1人につき今まで族の1人がついていたが、あと5人はつける事にした。

 

 そして、毎日集会場所に皆で集まり、なるべく皆一緒にいる事にした。

 向こうがどんな手を使って仕返しに来るか?

 それとも、ここに大勢のチンピラ達と一緒にやって来るのか?

 分からないからだ。


 私達、処女同盟もここに武器を隠しておく事にした。

 

「おめぇら!! 警戒を決して怠るな! いつどんなふうに仕返しして来るか分からねぇ! 気を引き締めていろ!」


 明の言う事に、皆気合を入れていた。

 

 そして私達も……。


「皆、充分気をつけてくれ! 相手はどんな手を使ってくるか分かんねぇ! 弱い立場の女。あたし達を狙って来る可能性が高い。族の皆がついてくれてるが、注意する事に越した事はねぇからな」


 私は、チンピラならどう出てくるか? 考えていた。

 卑怯な手を使ってくる可能性が高いと思ったからだ。

 そうなると、女である私達を狙う可能性があるのではないか?

 そう思ったのだった。


「ああ、気をつけるよ。皆も気をつけてな。けど、学校が終わったらここに集まるのが1番安全だよな」


 弘子が言った。


「弘子、確かにここなら皆いるから安全かもしれねぇ。けど、油断は禁物だ。その油断が致命傷になる場合もある」


 私は今までにない緊張を覚えていた。

 誰も怪我人を出したくない。というのが本音だが、相手がチンピラなら、多少の怪我人が出るかもしれない。

 そこは覚悟しておかなければならない。

 だが、命に係わる事だけは絶対に避けなければならない。

 そして勝利すること。


 それはきっと、明も同じ考えのはずだ。

 大事な族の仲間達。

 多少のケガ人は覚悟してても、命だけは誰1人失う事があってはならない。


「まさか、ここまで大事になるなんて最初は思ってなかったな」


 恵理奈が言った。


「そうだな。レイプされた女性達のために敵を討つ。それが処女同盟だ。だが、ここまで大事になるなんて思ってなかったな。処女同盟を作った時の覚悟が足りなかったのかもしれねぇな」


 私は人1倍正義感が強い。

 最初はここまで大事になるなんて誰が予測してただろうか?

 誰もそんな事、思ってなかったはずだ。


 私達、処女同盟だけでは到底無理があっただろう。

 明や族の皆がいてくれるからこそ今回は勝利出来る。

 そう思ったのだった。


「何を話してんだ?」


 明と浩司、誠がやって来て聞いてきたのだった。


「いや、あたし達、処女同盟を作った時の事を考えてたんだ。今回みたいに大事になるなんて思ってもみなかったからさ。最初、同盟を作った時の覚悟が足りなかったんじゃないかって……。明や浩司、誠がいて、族の皆がいてくれるからこそ今回は勝利出来るんじゃないかと思ってさ」


 私達は感謝していた。

 危ない橋を渡らせてしまったが、明や族の皆の力は大きい。


「そんな事考えてたのかよ。俺達はもう仲間だ。一緒に戦うのはあたりめぇだ! それに、俺達族の皆も漢気のあるヤツラばかりだ。ああいう根の腐ったヤツラは嫌いだ! 同じ男としてな。根性を叩きなおすのが漢ってもんよ」


 明はやはり漢だ。

 漢の中の漢。

 私は、そういう明が誇らしかった。


「明の言う通りだ! 俺達はああいう男は嫌いだ! やっぱ、漢ってもんはだな……」


 浩司が話をしていると、恭子がちょっかいを出したのだった。


「何カッコつけてんだよ! ば~か!」


「お、俺はカッコつけなんかしてねぇぞ! これが俺だ!」


 浩司が言い返した。


「カッコつけてるじゃねぇか! 何が、これが俺だ! だよ」


 恭子はそう言って、浩司の頭をポカッと叩いて笑ったのだった。


「恭子、てめぇ! 笑いやがったな」


 相変わらずの2人を見て皆で笑った。


「相変わらず仲いいな! まるで漫才してるみてぇだ」


 私達は2人を見てて和やかな雰囲気になった。

 

「早くケリをつけて、また皆でディスコ行ったりドライブ行ったりしような! ぱ~っと遊ぼうぜ!」


 明が言った。

 ここのところ皆と遊んでない。

 今回の事が終わったら皆で思いっきり遊ぼうと思ったのだった。

 

「今度はあたし達も彼氏を連れて行ければいいなぁ~」


 弘子が何だか嬉しそうに言った。


「そう言えば3人共、バイクで送り迎えしてもらってる族の仲間達の事、気になって仕方ねぇんだろ?」


 私がちょっとからかった様子で聞いた。


「楓があんな事言うから、なんか妙に意識しちゃうんだよな」


 恵理奈が少し照れながら言ったのだった。


「そうだよ。楓のおかげで意識しまくりだよ。バイクに乗せてもらう時も、なんかドキドキしちゃってさ。参っちゃうよ」


 多可子も何だか嬉しそうだ。


「もう恋しちゃってんじゃねぇの? 3人とも頑張れよ。皆彼氏が出来たら最高だよな。6人共さ」


 私は3人の恋が上手くいくように願った。

 そして、皆、彼氏を連れて走りに行ったり、ディスコに行ったり出来たら最高だと思った。


「やっぱ、これが恋なのかなぁ~。は~」


 弘子がため息をついたのだった。


「もう自分の世界に入っちゃってるぞ。やっぱ恋してるな」


 私がそう言うと、3人共またキャーキャー言っていた。

 

 6人してファミレスで少女漫画を読んでは、はしゃいでいた。

 何だか、遠い昔のように感じた。

 あの頃が懐かしく思えたのだった。

 

「さぁ、今日はもう帰るか。皆気をつけて帰れよ」


 明の一言で帰る事になった。

 朝同様、私以外はバイクで、あと5人位護衛をつけて。

 私が乗る明のケンメリにも護衛を5人つけた。


「じゃあ、明日。学校でな。皆」


 そう言って、皆は帰って行ったのだった。


「俺達も帰るか。しばらく2人っきりになれねぇな。今回の事が終わったら楓を1人占めしてやる」


「あ? もう明の女なんだぞ。1人占めしてるじゃねぇか」


 私も2りっきりになりたい気持ちはあったが、今は我慢しないといけないのは分かっていた。

 

「ああ、楓は俺の女だ」


 私は明の車に乗り、5人のバイクの護衛つきで家まで送ってもらった。

 今日は何事もなかった。

 安堵はしたが、早くケリをつけたい気持ちもあった。

 そして、自由に外に出たい。

 皆とまたファミレスに行って、少女漫画を読んでバカをいったりして、楽しく過ごしたい。

 何より、明と2りっきりでデートをしたい。

 そう思ったのだった。


 ――次の日


 それぞれ、護衛をつけて登校して来た。

 多可子だけがまだ来ていなかった。


「皆、多可子はまだか?」


 私が聞くと


「多可子はいつも早いほうなのにな。信号待ちかなんかで遅れてんじゃねぇか?」


 恭子がそう言ったが、何だか妙に胸騒ぎがした。

 そして、朝のホームルームが始まった。

 多可子が来ない。

 とうとう相手が動き出したと思った。

 

 私達はホームルームが終わると、教室を抜け出し、多可子の家に電話した。

 すると、多可子が電話に出たのだった。


「多可子! 何か遭ったのか? 大丈夫か!」


 私が電話越しに聞くと、昨日、帰りに例のチンピラ2人と、あと20人位のチンピラ達が待ち伏せしていたらしい。

 だが、ヤツラはナイフを持っていたとの事。

 明は族の中でもケンカの強いやつらを護衛につけていた。

 相手が20人位じゃ、負けるわけがない。


 多可子に話の続きを聞いた。

 

 やつらは、どうやら多可子をターゲットにして多可子を人質に取ったらしい。

 しかもナイフをチラつかせて、多可子の顔にナイフを向けていたとの事だった。

 そのせいで族の仲間達は手を出せなかった。

 多可子を庇おうとして、殴る蹴るの暴行を受けた。

 族の皆が立てなくなるまで。

 そして、多可子も殴る蹴るの暴行を受けた。

 最後に

「これは見せしめだ! 今度は誰を狙おうか!」 

 そう言って笑いながら帰って行ったとの事だった。


「多可子。とにかく今日はゆっくり休め」

 

 私はそう言って電話を切った。


「多可子は大丈夫だったのか?」


 仲間達が聞いてきた。

 私は多可子から聞いた事を全部、仲間達に話したのだった。


「あいつら、やっぱり汚ねぇやり方で出てきやがった! 許せねぇ!」


 恵理奈が怒りをあらわにして言った。

 そして、他の仲間達も怒りでいっぱいだった。


 明のところには、この情報は入っているのだろうか?

 族の仲間が教えてるに違いない。


「とにかく多可子は無事だ。ゆっくり休めば大丈夫だろう。だが、あいつら! 思い知らせてやる!!」


 今夜、集会で明が自分の考えを言うだろう。

 とにかく、やはり汚いやり方で仕返しをしてきた。

 あいつら達を絶対に許さない!

 私は強い怒りを覚えたのだった。

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