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ヤンキー『処女同盟』   作者: 一葉 ミサト
30/37

30話

 今日から明達はホームレスの男の所に行って、張り込む事になった。

 そして、族の皆は塾の近くでそれぞれバラバラに待機していた。


 私達はいつも族の集会のある場所で待つ事になった。

 勿論、族の仲間が私達を見守る為、数十名残っていたのだ。


 ――明達はホームレスの男の所で張り込みをしていた。

 

 「おっさん、ヤツラを見かけたら教えてくれよ」


 明はそう言ってホームレスの愛用の空き缶に金を入れた。


 「ああ、わかってるよ」


 張り込みをしてから1時間、2時間経っても男達は姿を現さなかった。


 「今日は無理かも知れんなぁ」


 だが、明達は諦めなかった。

 真奈美が塾の終わりに連れ去られたのだとしたら、塾が終わる時間帯も張り込んでおいたほうがいい。

 そう思ったのだった。

 

 塾が終わってもその男達は姿を見せなかったのである。


 「今日は無理みたいだ。また明日張り込もう」


 明の一言で皆は引き上げたのだった。


「今日が無理でも明日がある。明日が無理なら明後日も。必ず捕まえて見せる」


 明はそう言っていた。


 そして次の日、また次の日と張り込みを続けた。

 だが、男達は中々姿を現さなかった。

 

 ――毎日張り込みを続けて1週間位してからだった。


 ホームレスの男が指を指したのだった。


「あ、あそこに。白い車だ」


 明は空き缶に金を入れ


「おっさん、ありがとよ。じゃあな」


 そう言って、その車に近づいた。

 周りには族の仲間達が目を光らせている。


 その時だった。

 チンピラ風の男2人が車を降りた。

 明達は、その男の所へ走って行った。

 

 そして、皆で力づくで男達が乗っていた車に2人の男を乗せ、明の運転で集会の場所に向かったのだった。

 その間、族の皆はその車の周りを囲むように走っていた。


 男達は抵抗してた様子だったが、明を抜いた5人で押さえつけられていたため、身動きが取れなかった。


「おまえら何者だ! 俺達をどうする気だ! 後で痛い目に遭うからな!」


 そう言っている男達を浩司や誠は殴って黙らせた。


 そして、私達のいる集会場所に連れて来たのだった。


 明達はその男2人を車から放り出した。


「何だ!? お前らは! 族か? 族が俺達に何の用だ! 俺達の後ろにはヤクザがついてる事を知ってんのかよ?」


 私と明がその男達の前に立った。


「俺達の族の名は『沙羅慢陀(さらまんだ)』、俺は総長の明だ!」


「あたしは『処女同盟』の頭、楓だ!」


 周りには私の仲間や族の皆がいる。


「おめぇ達がした事、上のヤクザの連中は知ってんのか!? お前たちが勝手に好き放題やってんじゃねぇのかよ!! それに高下親分は義理人情のある人だって聞いてるぜ!!」


 明が2人の男にガンつけながら怒鳴ったのだった。


「あんたらにレイプされた女がいるんだよ! しかも他にもレイプした女がいるとか!? お前らみたいなのを野放しにしておけねぇんだよ! 女を物みたいに扱いやがって! 今日は思い知るんだな!!」


 私は愛用の木刀を手にしていた。

 明は素手でやるみたいだった。


「お、お前ら、後で後悔するからな!」


「ああ、上等だ!!」


 私と明は口を揃えて言ったのだった。


 そして、男2人を私と明でリンチした。

 周りの皆は応援してくれていた。


 明は素手で男達をどんどん殴っていった。

 私は木刀で男達の腹や横っ腹、太ももを狙って殴っていったのだった。


 男達も必死に抵抗してきた。

 だが、明はケンカが強かった。

 まるで、次に相手がどこを狙ってくるか? わかっているようだった。


「このクソ野郎共がぁっ!! 女を舐めんじゃねぇっ!!」


 私は思いっきり殴ってやった。

 

「お前らみたいな男はなぁっ!! 根性が腐ってんだよ!!」


 明も殴っていく。


 そして、男達は倒れ込んだのだった。

 その男の髪を掴み、私は土下座を要求した。


「土下座して謝れ! 今まで何人、女をレイプしてきたんだよ!! 謝れって言ってんだろうが!!」


「土下座して謝らねぇと、このお姫様は怖いぞ! それともまだ痛い目に遭いたいか? あああぁぁぁ!?」


 明がその男達に向かって怒鳴ったのだった。


 相手は2人、族の仲間や、私達の仲間もいる。

 抵抗しても無理だと思ったのだろう。

 体中殴られた重い体を起こし、土下座をしたのだった。


「すまなかった」


「ふん! その場しのぎで言ってんのが見え見えなんだよ! チンピラの仲間を連れて俺達に仕返しをする気満々だろう! 俺はそこまで馬鹿じゃねぇんだよ! お前らのする事はちゃんと分かってる。そん時は族の皆も一緒に戦う。覚えとけ! クズが!」


 明がそう言うと、男達は帰って行ったのだった。


「さぁ、おめぇら!! 仕返しは出来た! だが、ここからが本番だ! ヤツラは必ず仕返しに来る!! 十分気をつけてくれ! 今まで集会は週1回だったが毎日する! 今回の件が終わるまでだ! 皆一緒にいたほうが安全だ! そして、ヤツラは今度は大勢のチンピラを連れて来るだろう。おめぇら!! ここに漢として近いを立てよう! 必ず勝利すると!!」


 明の言葉に皆気合が入っていた。


「おおっ!!」


「楓、ケガはないか? 楓、カッコ良かったぞ!」


 私は明が私の事を心配してくれていた事が嬉しかった。


「明は殴られなかったか? 大丈夫か? でも、明もカッコ良かったじゃねぇか」


 お互いを心配して思いやる気持ち、私は嬉しかった。

 でも、今度は仕返しに来るだろう。

 明はケンカが強いのは分かったが相手はチンピラ。

 どんな手を使ってくるか分からない。

 どうか、無事でありますように……。

 私はそう願っていた。


「今度は仕返しにくるだろうから、楓、気をつけねぇとな」


 明も、私の事を心配してくれていた。

 

「ああ、大丈夫だよ。あたしには明がついてる」


「そうだな。俺が楓を守る! 命に代えても!」


 私は、明の今言った事に不安を覚えた。


「命に代えても、なんて言い方するなよ。明の身に何か遭ったら、あたしは……」


 明がそっと私を抱きしめた。


「ごめん。言い方が悪かったな。それだけ楓の事を守りたいって事だよ。心配すんな。必ず勝つって言っただろう?」


 私は涙が出そうだったが我慢した。

 明に心配かけたらいけないと思ったからだ。

 

「ああ、必ず勝とうな! あたしらには仲間がいる」


「あたりめぇだ! 自分や仲間を信じろ! 俺の事も」


 そうだ、信じる気持ちが大切だ。

 今まで私は、心配しては皆を信じようと思ってきた。

 でも、やはり心配する気持ちのほうが強くなっていた。


「ああ、信じてるよ」


 明が私の会話を聞いて、仲間や族の皆が声をかけてきた。


「楓! 皆で力を合わすんだ! 心配なんていらねぇよ!」


 弘子が私を励ますように言ってきたのだった。

 

「あたしも浩司の事が心配だよ。でも、浩司はあたしの事を心配して……お互いを思う気持ち、なんかあったけぇよな」


 恭子も浩司の事を、浩司は恭子の事を。

 お互いに心配している。


「あたしも誠の事が心配だよ。でも、あたしは信じてる。皆して一緒に勝つって」


 香奈枝もまた誠の事を心配している。


「楓さん、何も心配する事はないですよ。総長はケンカ強いですから。総長の戦う姿、やっぱりカッコ良かったっス!」


 族の1人が声をかけて来た。


 そして、浩司や誠。私達処女同盟の皆も。

 励ましの言葉もあれば、絶対に負けない必ず勝利しようという言葉。

 そうだ。明が必ず勝利すると誓いを立てたばかりだ。

 私が信じなくてどうする。


 心配な気持ち、不安な気持ちは恭子達も一緒だ。

 でも、私は処女同盟の頭だ。

 私自身が強い気持ちを持たないと、返って心配させてしまう。


 もっと強くならないと。

 私はそう思ったのだった。


「皆、必ず勝とう!! 自分達を信じて! ありがとよ」


 もう後には引けない。

 皆で力を合わせて勝つ!


「楓、そうだ。その意気だ! 俺達は必ず勝つ! あんなヤツラなんかに負けるわけねぇだろ!」


「それは分かってる。必ず勝つさ! でも、明がケガしないか? それが心配だったんだ。でも、もう大丈夫だ。あたし達は勝利に向けて強い気持ちをもたねぇと」


 私は思った。

 負の感情ばかり考えてたら、勝てる喧嘩も勝てない。

 私や明、上に立つものが強い気持ちを持たないといけない。

 皆はそれをちゃんと見ている。


 明は総長であり、私は処女同盟の頭だ。

 気持ちを強くもって、それを皆に見せなければいけないと……。

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