表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヤンキー『処女同盟』   作者: 一葉 ミサト
28/37

28話

 次の集会の日がやって来た。

 明が1つ考えがあると言ってきたのだった。


 塾は繁華街だが、ホームレスもいる。

 そのホームレス達に金を払って情報を聞き出そうという事だった。


「おめぇら! 聞いてくれ! ホームレスの人達に聞き込みをしてみる! 今回は大勢で行くと目立つからよ。俺と浩司と誠で聞き込みをする事にした! 結果は今度の集会で話す! いいな!!」


 私達は明の言う通りにする事にした。


「楓達も今回は俺達に任せて、家で待機しててくれ。これまでどおり送り迎えはする。決して1人で外出するな。わかったな」


「わかった。皆、明の言う通りにしよう」


 私からも皆に言ったのだった。


 すると、恵理奈、弘子、多可子が突然明に声をかけた。


「明、あたし達も彼氏が欲しいんだ。誰かいいヤツを紹介してくれよ。楓達を見てると羨ましくて仕方ねぇんだよ。あたし達も彼氏に守られてみたいんだ」


「馬鹿! 今大事な話をしてるのに何言ってんだよ!」


 私は、恵理奈達の言った事に恥ずかしくなったのだった。

 彼氏が欲しい気持ちはわかるが、今そんな事を言わなくてもいいのに……。

 そう思ったのである。


「ああ、いいぜ! だが今回の件が終わったらな! その前にこの中から好きな人が出来れば別だけどよ」

 

 やっぱり明は優しい。

 友達を大切にする人なんだ。

 どんな時も動じない。

 私は惚れ直したのだった。


 ――そして、明達は私達の送り迎えをしながら、ホームレス達に聞き込みを始めたのだった。


 何人か聞き込みをしたが、知らないと言われた。

 やはり今までと同じ返事が返ってきた。

 何日か粘って行くうちに、1人のホームレスの男が如何(いか)にも金をくれと言わんばかりに、足元に置いてあった空き缶を拾い上げ、指先でコンコンと鳴らした。

 明はその空き缶に金を入れた。


 すると、ホームレスの男が口を開いたのだった。


「あいつらは、ここら辺じゃ有名なチンピラだ。皆、何も言わないのも何をされるか分からないからだ。時々現れては女を無理やり車に押し込んで連れ去って行く。きっと、レイプしてるんだろうな。女達には悪いが、俺らが口出し出来るヤツラじゃねぇ。女を連れ去るところを、もう何度も見てる」


「どんなヤツラなんだよ。そいつら」


 明達が聞くと、そのホームレスは又空き缶を鳴らした。

 お金をまた入れると話を続けた。


「あいつらは、高下組のヤクザのチンピラだ。チンピラは沢山いる。その中でもあいつらは好き勝手やっているみたいだ。高下組の親分は義理と人情のある人だ。あいつらの事を知ったら怒るだろうが、簡単に会える人じゃねぇ」


 ホームレスの男は話を続けた。


「あんたらは、あいつらに何する気だ」


「そいつらにレイプされた女がいるんだ。仕返しをしてぇんだよ!」


 明がそう言うと、ホームレスの男は空き缶をちらつかせた。

 明はまた金を入れた。


「そうか。なら今度はいつ来るか分かんねぇけど、ここにいれば必ず姿を現す。あんたら怖くねぇのか? あいつらは人じゃねぇ、何するか分からん」


「ああ、怖くなんかねぇよ。ありがとよ、おじさん。恩に着るぜ!」


 明がお礼を言うと


「十分気をつけねぇとケガをする。頑張れよ」


「ああ、大丈夫だ。また来る。そん時はおっさん、そいつらを俺達に教えてくれねぇか。金はまた渡す」


 明がそう言うとホームレスの男は頷いたのだった。


 ――次の日、明が私を学校まで迎えに来た。

 そして、昨日、ホームレスの男から話が聞けた事を話してくれた。


「やっぱりチンピラだったのかよ。しかも高下組って言ったら有名なヤクザじゃねぇか」

 

 私は少し心配になっていた。

 明達を巻き込んでしまった事に……。


「ああ、だけど高下組の親分は義理と人情のある人らしい。直接話が出来ればいいが、中々会える人じゃないみてぇだ。そのチンピラが顔を出すまで、そのホームレスの男のところで張り込むしかねぇな」


「あたし達がリンチするよ!」


 私は明達をもうこれ以上、巻き込みたくないと思った。

 だが、明は私達、女だけでは心配だと言った。


「今度の集会で皆に話す。そして、皆でケリをつける。楓、心配すんな。俺達は大丈夫だ」


「じゃあ、あたし達も行くよ。一緒にやる。あたし達は処女同盟だ。敵を取るって約束したんだ。一緒に敵を取ろう。明、元々はあたし達が引き受けた事だ。厄介な事に巻き込んじまってごめんよ」


 私は明に謝った。

 そして、一緒に行く事を頼んだのだった。

 やる時は一緒に……。

 そう思った。


「分かった。けどケガすんじゃねぇぞ! まぁ、俺が楓を守るけどな」


 明は笑顔で言った。

 けど、胸騒ぎがして仕方なかった。

 いくら大勢いる暴走族でも、相手はチンピラ。

 どう出てくるかわからない。


「明……」


「心配すんなって! 俺も漢だ。やる時はやる。それより又少しドライブして帰るか」


 明はいつもの明だった。

 頼もしさもあったが、やはり私は嫌な予感がして不安になっていた。

 明を信じるしかない。


 そして、また海が見える所まで行き、そこで車を止めた。

 

「楓、そんな顔してねぇで、いつものマブイ笑顔を見せてくれよ」


「明……。そうだな。あたし達は仲間がいる。皆でそいつらをやっつけよう」


 私はそう言って、明に笑顔を見せたのだった。


「やっぱ楓はマブイなぁ~。いくらでも見ていられるぜ! 俺の大切な女だからな」


 私は明に寄り添った。

 どうか、明がケガをしませんように……。

 そう願った。


 すると、明は私を優しく抱きしめたのだった。


「楓、一緒にチーク踊った時の事、覚えてるか?」


「ああ」


「楓は恥ずかしそうに下ばっかり向いてたよな。可愛くて可愛くて、ほんとはあん時、ぎゅ~って抱きしめたかったんだ。けどよ。急にそんな事したら嫌われるのが怖くて出来なかったんだ。楓はマブイしよ。俺の自慢の女だ。愛してるぜ」


 私は明とチークを踊った時の事を思い出していた。

 あの時は恥ずかしくて、どうしていいか分からなかった。

 あんなに心臓がドキドキしたのは生まれて初めてだったからだ。

 

 いつの間にか、明の事を好きになっていた事に気付いて、やっと返事が出来た。

 明と出会えて、こうして今一緒にいる時間を大切にしたいと思ったのである。

 これからも……。

 ずっと一緒に……。


「楓、これからも俺の側にずっといてくれ」


 明は私と同じ事を考えていた。

 それが凄く嬉しかった。


「ああ、ずっと側にいるよ。浮気したら殺すぞ!」


 私は沈んでた気持ちを吹き飛ばすかのように、明に向かって言ったのだった。


「浮気なんかするもんか。楓みたいないい女は他にはいねぇ。俺は幸せもんだぜ」


「だろ? この楓様が明の女なんだぞ! 有り難く思えよ。この幸せ者め~」


 私はふざけて言った。

 すると、明がキスをしてきたのだった。


 私達は何度も何度もキスをした。

 

「誰にも渡さない。俺だけの楓だ」


「うん。明も……あたしだけの明だ」


 私達は最後に、おでこをコツンとつけたまま、しばらく見つめ合っていた。


 そして、2人で吹き出したのだった。


「にらめっこじゃねぇんだからさ~」


 2人で腹を抱えて笑った。

 

「確かに! さぁ、そろそろ帰るか。 ホントはもっとずっと一緒にいたいけどよ。お姫様をきちんと送らねぇとな」


「うむ。苦しゅうない」


 私がふざけて言うと明は笑っていた。


 こうして家まで送ってもらったのだった。


「じゃあ、また明日の朝迎えに来るからよ。家から出んじゃねぇぞ! 愛してるぜ! 楓!」


「分かってるよ! 大きな声で言うんじゃねぇよ! 恥ずかしいだろうが! ば~か! じゃあな」


 こうして、明は帰って行ったのだった。 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ