27話
私達は明達に、真奈美の事を話した。
今回はチンピラが関わっているかもしれない。
もし、チンピラなら、バックにヤクザがいるかもしれない。
今回ばかりは、女だけの私達だけでは手に負えないかもしれない。
手を貸して欲しいと頼んだのだった。
明は快く引き受けてくれた。
そして、暴走族の集会の時に、族の仲間にその事を話したのだった。
「相手はチンピラかもしんねぇ! 相手がチンピラなら、バックにヤクザが絡んでるかもしれねぇんだ。お前ら!! 俺に力を貸してくんねぇか!」
明は皆に大声で言ったのだった。
「ああ、任せとけ!」
「その男2人、必ず見つけ出してやるぜ!」
「ヤクザが怖くて暴走族やってられっかよ!」
皆が一致団結した瞬間だった。
「皆、頼む! あたしからも言わせて欲しい。今回ばかりは厄介な事になりそうだ! 女を平気でレイプするヤツラを野放しにしておけねぇ! 皆、あたし達に力を貸してくれ!」
私からも、皆にお願いしたのだった。
こうして私達は、真奈美が塾の帰りにチンピラ風の男2人組みに連れ去られたところを、誰か目撃者がいないかを聞いて回る事にした。
その塾は繁華街にあった。
私と恭子と真奈美。弘子と恵理奈、多可子と香奈枝。
そして、明達もいくつかのグループに分かれて聞き込みをした。
だが、誰に聞いても見ていない。知らない。との事だった。
これだけの繁華街の中で、誰も目撃者がいないなんて明らかにおかしい。
真奈美も一緒だったが、塾の近くにそういう男は見られなかった。
聞き込みをしていくうちに、本当は目撃者はいるが、話すと仕返しをされると思っているではないか? きっと、そう思って知らないふりをしているのではないか? と疑ってしまうようになったのだった。
「これじゃあ、いくら聞き込みをしても無駄なんじゃないか? 誰も知らない。の一点張りだ」
弘子にそう言われ、一旦皆で集まり他にいい方法がないか考える事にしたのだった。
私達と真奈美、明達、それと族の仲間達。
「皆、もういいよ。ここまでしてくれてありがとう。きっと、あの2人の男達は見つからない」
真奈美は諦めかけていた。
「あんたがよくってもまた、被害者が出るかも知んねぇだろ!」
私は中々手がかりが取れない2人組みの男の事でイラついていた。
「まぁ、落ち着け楓。何かいい方法があるはずだ。きっとその男達はヤバイやつらなのかも知んねぇ。だから誰も知らないって言ってるんじゃないか? あれだけの繁華街で誰も見てねぇなんて、明らかにおかしい。ここは慎重にしねぇとな」
明がそう言って私をなだめたのだった。
族の仲間だけでも100人はいる。
皆で、これだけ手分けして聞き込みしても、知らない。と言われたら、やはり、ヤバイやつらなのかも? そう思わずにはいられなかったのだ。
「それに、俺達がそいつらを探し回ってる事をもう知っている可能性が高い。これからは、楓達は1人で行動するな。狙うとしたら女を狙うだろうから気をつけねぇとな」
明の言う事に私達は頷いたのだった。
そして、決して1人にならないように、族の仲間に学校の行き帰りは送り迎えをしてもらう事になった。
私は明に。
恭子は浩司に。
香奈枝は誠に。
他の皆は、族の仲間に。
なるべく皆で行動を共にする事にした。
――学校の帰り、明が迎えに来た。
最近は聞き込みばかりだったので、ろくに2人だけの時間が取れていなかった。
「楓、今日は2人でドライブするか?」
「うん。そうしよう。せっかく付き合いだしたのにデートも出来ねぇな」
私は少し寂しそうに言ったのだった。
「俺はいつも楓の事を思ってるぜ。今デートしてるじゃねぇか」
明の言ったデートと言う言葉が嬉しかった。
けど、本音を言うなら映画を観に行ったり遊園地に行ったり、2人で楽しく過ごしたい。
でも、今は今回の件が終わるまでは無理な話だ。
今こうして2人っきりでいる事が大切な時間なのだ。
「俺は楓と一緒にいるだけで幸せなんだよ。楓の笑顔がたまらなく好きだ」
「な、何だよ急に……。照れるじゃねぇか」
そう言うと、明は海の見える所で車を止めたのだった。
「いきがってるくせに、そうやって照れてる楓もマブイぞ」
明はいつも自分の思ってる事をはっきりと言う。
私は、それに戸惑う事もある。
初めて好きになって、付き合った彼氏。
漢気があって、優しい。
頼もしい明に甘えてみたいけど、恥ずかしい。
でも、手くらいは繋ぎたい。
そう思った私は、勇気をだして手を差し出したのだった。
「ん!」
明はすぐ分かった様子で私の手を握ってくれた。
そして、私の手を自分の頬に持って行き、優しく頬ずりしたのだった。
「楓の手はあったけぇな」
私は恥ずかしかったが、嬉しかった。
「明の手もあったけぇぞ」
そして、2人で海を見ていた。
「2人だけの時間をもっと作ろうな、楓」
「ああ……」
明に守ってもらっている。
大切に思われている。
私は処女同盟の仲間も大切で、仲間の絆というものを知った。
小さい頃から誰からも愛されず、孤独だった事を思えば、今、この時間が幸せでいっぱいだった。
これからは、もっと仲間や明と幸せな時間を過ごしたいと思ったのだった。
そして、明は私の目を見つめ優しくキスをした。
恥ずかしい気持ちがあったが、明の優しい目に吸い込まれていく感じだった。
こうして、帰りは手を繋ぎながら家に送ってもらったのだった。
家の前まで送ってもらうと
「明日の朝、また迎えに来るから待ってろよ」
明にそう言われ、明は帰って行った。
――次の日、明が迎えに来てくれた。
そして、学校まで送ってもらった。
学校に行くと、もう皆来ていた。
香奈枝が嬉しそうにしていた。
「どうした香奈枝、やけに嬉しそうじゃねぇか」
私が聞くと、香奈枝はきのう誠に送ってもらった時、初キスをしたとの事だった。
その話で皆して盛り上がっていた。
「誠のヤツ、照れてやんの」
香奈枝が笑顔で話した。
「もしかして、香奈枝からキスしたのか?」
弘子が言った。
甘えん坊の香奈枝なら、あり得る話だ。
香奈枝は嬉しそうに
「うん。あたしからキスしてやった」
「普通さぁ。男からするもんだろ。なんか香奈枝らしいな」
恭子がそう言うと、どうやら恭子も浩司と初キスをしたらしい。
「実はあたし、きのう浩司からキスされたんだ……」
恭子が恥ずかしそうに言ったのだった。
「楓は、もう明と初キスは済ませたのか?」
恭子が聞いてきた。
私は昨日の事を思い出すと恥ずかしくなった。
そして、頷いたのだった。
「実はあたしもきのう、明から……」
皆してキャーキャー言い出したのだった。
それを聞いていた弘子、恵理奈、多可子は羨ましそうに
「いいよな~彼氏がいるって。あたし達も彼氏が欲しいよな~」
羨ましそうに私達を見ながら言った。
「明の族の中にいい人がいるかも知んねぇぞ」
私がそう言うと、3人とも目を輝かせていた。
「そうだな。皆漢気のあるヤツばかりだからよ。あれだけの数の漢がいれば、より取り見取りだよな」
「明達にいい漢、紹介してもらおうかな」
「今度の集会が楽しみになってきた~」
それぞれ彼氏を作る気満々で言ったのだった。
「いい彼氏が出来るといいな」
私は皆に彼氏が出来る事を心から願った。
皆の事を守ってくれる彼氏が……。
明や浩司、誠みたいな。
だが、真奈美をレイプしたヤツを見つけないと……。
今度の集会で、その男達を見つける手段を考えなければならない。
いい考えが見つかるといいのだが……。
どうやったら見つけ出せるか……。
そして、私達が思っている以上にヤバイやつらだったら……。
それを思うと身を引き締めて、行動しなければならない。
誰もケガ人が出ませんように。
傷つきませんように。
そう思わずにはいられなかったのである。




