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ヤンキー『処女同盟』   作者: 一葉 ミサト
25/37

25話

 明が総長を務める暴走族の名は『沙羅慢陀(さらまんだ)

 車やバイクで走るのが主で集まった暴走族だが、明は総長として掟を決めていた。

 漢の中の漢だけしか入れない、硬派だけが入れる暴走族。

 売られたケンカは買うが、ただケンカしたいだけのヤツラは相手にしない。

 今回のように、私達は逆恨みをされた。

 弱い立場の女性達に大勢で仕返しをする卑怯なやり方。

 そういう男として腐っているヤツラに対しては、根性を叩きなおすためにケンカはOKとする。

 これが、明の決めた暴走族の掟だった。

 

 私達6人は、明と浩司、誠に私達が『処女同盟』として、レイプされた人達の敵を取っている事を話した。


 明達から女だけで仕返しをするのは、今回みたいな事になりかねないからと止められらのたが、私達はレイプされる女性が意外にも多い事を知ってしまった為、辞めるつもりはないと話したのだった。


「危ない時は、俺が楓を守る。そして、処女同盟の皆も」


 明は私達の意見を尊重してくれたのだった。

 そして、浩司、誠も。

 

「とにかく、今はゆっくり休む事が先だ」


 男達に殴られ、蹴られ、皆体がボロボロだった。


「ああ、そうするよ」


 私は、そう答えたのだった。


 そして、私はやっと返事をする事が出来た明と、付き合う事になった。

 香奈枝は誠と。


 誠に、甘えん坊の香奈枝の事をよろしく頼むと、私は言った。

 照れ臭そうに


「あ、ああ」


 その姿を見て、誠は今までクールに見えていたが、やはり明の言う通り、恥ずかしがり屋で照れ屋だという事が分かったのだった。


 香奈枝は、お互いに好きだったと分かると、凄く嬉しそうだった。

 早速、甘えん坊ぶりを誠に見せていた。


「誠~。ここが痛い~。優しく撫でてくれ~」


 香奈枝が言う事に、誠は照れながら優しく撫でていた。


 恭子と浩司のカップルも見てて面白いが、香奈枝と誠のカップルも捨てたもんじゃない。

 と私は思ったのだった。


 後は、弘子、恵理奈、多可子に素敵な彼氏が出来れば……。

 この3人を守ってくれる、漢が……。

 私はそう願った。


 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


 私達は次の日、学校に行った。

 体中あざだらけだったが、加奈子先輩が心配してるだろうと思った事と、クラスの皆に昨日の男達の事を話さなければならない。

 そう思ったのだった。


 授業が終わり、皆が帰ろうとした時に、クラスの皆を引き留めた。


「皆、聞いて欲しい事があるんだ。話を聞いてくれないか」


「楓、昨日の男達の事でしょ?」


 クラスの1人が聞いてきた。


「楓達がやってる事、皆知ってるよ。レイプされた人達の敵を取ってるんでしょ? 私達は応援してる。でも、あまり危ない事はしないでね」


 私達のクラスの委員長が、そう言って来たのだった。


「知ってたのか? 何で?」


 私達は皆が知っている事が不思議だった。


 皆に聞くと、最初は噂で私達のやっている事が流れていたらしい。

 だが、昨日、大勢の男達が学校に来た事。

 学校中に噂が流れた加奈子先輩がすぐやって来た事に、私達のやっている事がただの噂ではなく、本当だという事を確信したらしい。


 そして、私達は『処女同盟』という事を皆に教えた。


 恭子と弘子が、今まで敵を取ってきた人達の名は言えないが、皆もくれぐれも気をつけて欲しいと。

 レイプされる女性が意外にも多いと事。

 明日は我が身。

 女は男の力には敵わない。

 決して他人事ではないと……。

 皆に強く言ったのだった。


 そして、恵理奈、多可子、香奈枝が続いて皆に訴えた。


 レイプされた人の気持ちを考えて欲しいと。

 今まで、ごく普通に暮らしてきて、ある日突然そういう目に遭ってしまったら……。

 誰にも言えず、泣き寝入りする女性がほとんどだという事を。

 1人で苦しんで、悩んで、辛い思いをする。

 そして、その悔しさをどこにぶつければいいのか?


 私達はクラスの皆に訴えたのだった。


 そして、皆に話した後、加奈子先輩がクラスの外で待っていた。

 やはり心配していた様子だった。


「皆、昨日は明さん達、間に合ったの? 顔中あざだらけじゃないの? 私のために……本当にごめんね……」


「先輩、明達を呼んでくれてありがとう。おかげで助かったよ。だから自分を責めないで欲しい。悪いのは金山 武史だ。でも、もう何も出来ないよ。明は暴走族の総長だ。だから先輩。安心していいよ」


 そう、金山 武史は、もうこれ以上の事は何も出来ないはず。

 暴走族にも目をつけられた。

 しかもハンパもんばかり集めて、暴走族には敵わないと思ったに違いないと。

 

「でも、先輩、昨日の事で先輩の事が……噂が本当だって事がクラスの皆にバレちまった。すまん」


 私達は先輩に頭を下げたのだった。


「そんなの気にしなくていいのよ。私、最初は勿論辛かった。でも、大切な、かけがえのないマブダチが出来たの。お互いの事を案じて思う心。これがマブダチでしょ? あなた達に出会えた事を感謝してるのよ。そうじゃなきゃ、私は今頃どうなっていたか? ずっと1人で苦しんでいたと思う。その苦しみに耐えられていたか? そう思うと、怖くなるの。あなた達がいてくれて良かったって、心からそう思うのよ」


 その時だった。

 私達のクラスの1人が先輩に笑顔で挨拶したのだった。


「先輩、さようなら」


 そして、帰る人達が1人、また1人と、先輩に声をかけた。


「先輩、元気出して。噂なんて気にする事ないですよ。じゃあ、さようなら」


「先輩、いつでもこのクラスに遊びに来て下さいね。高飛車の楓がいますけど。でも先輩のほうが綺麗ですから」

 

 笑顔で声をかける人。

 私の事を笑いで声をかける人。

 

 私は嬉しかった。


 私達がしている事に、皆は応援してくれている。

 そして、何より、明日は我が身。

 その言葉に考えさせられたのだろう。


 そう、決して他人事ではないのだ。

 私達が皆に訴えた事が通じたんだと思い、嬉しくて仕方なかった。

 そして、皆も心から気をつけて欲しいと願った。


「ありがとう。さようなら」


 先輩は皆にそう言いながら涙を流していた。


「先輩。ここのクラスの皆は人の痛みが分かる人ばかりだ。いつでも遊びにくればいいよ。皆、大歓迎だからさ」


 私がそう言うと、レイプされた美奈がやって来た。


「先輩。私は先輩の味方です。私も楓達に仕返ししてもらったんです。私もお友達になって下さい」


 美奈は私達が『処女同盟』を作ってから、最初の被害者だった。

 先輩は美奈の手を両手で優しく握ったのだった。


「あなたも辛い思いしたのね。こちらこそ、お友達になってね。ありがとう」


「そうだ。美奈、先輩の料理、すっげ~美味いんだぞ! デザートのケーキも美味かったな~。一緒に食べに行こうぜ!」


 香奈枝が急に言ったのだった。


「そうね。美奈ちゃんっていうのね。美奈ちゃん、よろしく。私は加奈子っていうの。今度は美奈ちゃんも一緒に私の家に遊びに来てね。たくさん美味しいもの作って待ってるわ」


 先輩は嬉しそうに美奈を誘ったのだった。


「はい。是非!」


 美奈もまた嬉しそうに返事をしたのだった。


「つ~か、勝手に決めやがって、先輩は受験勉強で忙しいんだぞ! 甘えん坊の香奈枝ちゃん」


 恭子が香奈枝の事を茶化したのだった。


「いいのよ。たまには息抜きしないとね。やっぱり女の子はお喋りと甘い物よね」


 先輩が笑顔で言った。


「じゃあ、お言葉に甘えて、また先輩ちに行こうぜ~! 今度は美奈も一緒にな」


 私は今度は美奈も交えて、先輩の家に行く事を楽しみに言ったのだった。

 

 クラスの皆と先輩と美奈。


 ここにまた新たな絆が出来た。

 私はそう思うと嬉しくて仕方なかった。

 そして、皆に感謝したのだった。

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