25話
明が総長を務める暴走族の名は『沙羅慢陀』
車やバイクで走るのが主で集まった暴走族だが、明は総長として掟を決めていた。
漢の中の漢だけしか入れない、硬派だけが入れる暴走族。
売られたケンカは買うが、ただケンカしたいだけのヤツラは相手にしない。
今回のように、私達は逆恨みをされた。
弱い立場の女性達に大勢で仕返しをする卑怯なやり方。
そういう男として腐っているヤツラに対しては、根性を叩きなおすためにケンカはOKとする。
これが、明の決めた暴走族の掟だった。
私達6人は、明と浩司、誠に私達が『処女同盟』として、レイプされた人達の敵を取っている事を話した。
明達から女だけで仕返しをするのは、今回みたいな事になりかねないからと止められらのたが、私達はレイプされる女性が意外にも多い事を知ってしまった為、辞めるつもりはないと話したのだった。
「危ない時は、俺が楓を守る。そして、処女同盟の皆も」
明は私達の意見を尊重してくれたのだった。
そして、浩司、誠も。
「とにかく、今はゆっくり休む事が先だ」
男達に殴られ、蹴られ、皆体がボロボロだった。
「ああ、そうするよ」
私は、そう答えたのだった。
そして、私はやっと返事をする事が出来た明と、付き合う事になった。
香奈枝は誠と。
誠に、甘えん坊の香奈枝の事をよろしく頼むと、私は言った。
照れ臭そうに
「あ、ああ」
その姿を見て、誠は今までクールに見えていたが、やはり明の言う通り、恥ずかしがり屋で照れ屋だという事が分かったのだった。
香奈枝は、お互いに好きだったと分かると、凄く嬉しそうだった。
早速、甘えん坊ぶりを誠に見せていた。
「誠~。ここが痛い~。優しく撫でてくれ~」
香奈枝が言う事に、誠は照れながら優しく撫でていた。
恭子と浩司のカップルも見てて面白いが、香奈枝と誠のカップルも捨てたもんじゃない。
と私は思ったのだった。
後は、弘子、恵理奈、多可子に素敵な彼氏が出来れば……。
この3人を守ってくれる、漢が……。
私はそう願った。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
私達は次の日、学校に行った。
体中あざだらけだったが、加奈子先輩が心配してるだろうと思った事と、クラスの皆に昨日の男達の事を話さなければならない。
そう思ったのだった。
授業が終わり、皆が帰ろうとした時に、クラスの皆を引き留めた。
「皆、聞いて欲しい事があるんだ。話を聞いてくれないか」
「楓、昨日の男達の事でしょ?」
クラスの1人が聞いてきた。
「楓達がやってる事、皆知ってるよ。レイプされた人達の敵を取ってるんでしょ? 私達は応援してる。でも、あまり危ない事はしないでね」
私達のクラスの委員長が、そう言って来たのだった。
「知ってたのか? 何で?」
私達は皆が知っている事が不思議だった。
皆に聞くと、最初は噂で私達のやっている事が流れていたらしい。
だが、昨日、大勢の男達が学校に来た事。
学校中に噂が流れた加奈子先輩がすぐやって来た事に、私達のやっている事がただの噂ではなく、本当だという事を確信したらしい。
そして、私達は『処女同盟』という事を皆に教えた。
恭子と弘子が、今まで敵を取ってきた人達の名は言えないが、皆もくれぐれも気をつけて欲しいと。
レイプされる女性が意外にも多いと事。
明日は我が身。
女は男の力には敵わない。
決して他人事ではないと……。
皆に強く言ったのだった。
そして、恵理奈、多可子、香奈枝が続いて皆に訴えた。
レイプされた人の気持ちを考えて欲しいと。
今まで、ごく普通に暮らしてきて、ある日突然そういう目に遭ってしまったら……。
誰にも言えず、泣き寝入りする女性がほとんどだという事を。
1人で苦しんで、悩んで、辛い思いをする。
そして、その悔しさをどこにぶつければいいのか?
私達はクラスの皆に訴えたのだった。
そして、皆に話した後、加奈子先輩がクラスの外で待っていた。
やはり心配していた様子だった。
「皆、昨日は明さん達、間に合ったの? 顔中あざだらけじゃないの? 私のために……本当にごめんね……」
「先輩、明達を呼んでくれてありがとう。おかげで助かったよ。だから自分を責めないで欲しい。悪いのは金山 武史だ。でも、もう何も出来ないよ。明は暴走族の総長だ。だから先輩。安心していいよ」
そう、金山 武史は、もうこれ以上の事は何も出来ないはず。
暴走族にも目をつけられた。
しかもハンパもんばかり集めて、暴走族には敵わないと思ったに違いないと。
「でも、先輩、昨日の事で先輩の事が……噂が本当だって事がクラスの皆にバレちまった。すまん」
私達は先輩に頭を下げたのだった。
「そんなの気にしなくていいのよ。私、最初は勿論辛かった。でも、大切な、かけがえのないマブダチが出来たの。お互いの事を案じて思う心。これがマブダチでしょ? あなた達に出会えた事を感謝してるのよ。そうじゃなきゃ、私は今頃どうなっていたか? ずっと1人で苦しんでいたと思う。その苦しみに耐えられていたか? そう思うと、怖くなるの。あなた達がいてくれて良かったって、心からそう思うのよ」
その時だった。
私達のクラスの1人が先輩に笑顔で挨拶したのだった。
「先輩、さようなら」
そして、帰る人達が1人、また1人と、先輩に声をかけた。
「先輩、元気出して。噂なんて気にする事ないですよ。じゃあ、さようなら」
「先輩、いつでもこのクラスに遊びに来て下さいね。高飛車の楓がいますけど。でも先輩のほうが綺麗ですから」
笑顔で声をかける人。
私の事を笑いで声をかける人。
私は嬉しかった。
私達がしている事に、皆は応援してくれている。
そして、何より、明日は我が身。
その言葉に考えさせられたのだろう。
そう、決して他人事ではないのだ。
私達が皆に訴えた事が通じたんだと思い、嬉しくて仕方なかった。
そして、皆も心から気をつけて欲しいと願った。
「ありがとう。さようなら」
先輩は皆にそう言いながら涙を流していた。
「先輩。ここのクラスの皆は人の痛みが分かる人ばかりだ。いつでも遊びにくればいいよ。皆、大歓迎だからさ」
私がそう言うと、レイプされた美奈がやって来た。
「先輩。私は先輩の味方です。私も楓達に仕返ししてもらったんです。私もお友達になって下さい」
美奈は私達が『処女同盟』を作ってから、最初の被害者だった。
先輩は美奈の手を両手で優しく握ったのだった。
「あなたも辛い思いしたのね。こちらこそ、お友達になってね。ありがとう」
「そうだ。美奈、先輩の料理、すっげ~美味いんだぞ! デザートのケーキも美味かったな~。一緒に食べに行こうぜ!」
香奈枝が急に言ったのだった。
「そうね。美奈ちゃんっていうのね。美奈ちゃん、よろしく。私は加奈子っていうの。今度は美奈ちゃんも一緒に私の家に遊びに来てね。たくさん美味しいもの作って待ってるわ」
先輩は嬉しそうに美奈を誘ったのだった。
「はい。是非!」
美奈もまた嬉しそうに返事をしたのだった。
「つ~か、勝手に決めやがって、先輩は受験勉強で忙しいんだぞ! 甘えん坊の香奈枝ちゃん」
恭子が香奈枝の事を茶化したのだった。
「いいのよ。たまには息抜きしないとね。やっぱり女の子はお喋りと甘い物よね」
先輩が笑顔で言った。
「じゃあ、お言葉に甘えて、また先輩ちに行こうぜ~! 今度は美奈も一緒にな」
私は今度は美奈も交えて、先輩の家に行く事を楽しみに言ったのだった。
クラスの皆と先輩と美奈。
ここにまた新たな絆が出来た。
私はそう思うと嬉しくて仕方なかった。
そして、皆に感謝したのだった。




