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ヤンキー『処女同盟』   作者: 一葉 ミサト
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23話

 私達は明達に弘子の家まで送ってもらった。


 恭子は浩司の気持ちが嬉しくて幸せそうな顔をしていた。

 その姿を見て、私達も嬉しい気持ちでいっぱいだった。

 きっと、これから浩司と付き合っていくうちに、嫌な事は少しずつだが、薄れていくだろう。

 

「良かったな。恭子。幸せそうな顔しやがって。でも、そんな恭子を見てるとこっちまで幸せな気分になるよ」


 私は心からそう思った。


 そして、私は明とチークダンスを踊っている時に、明から告られた事を皆に話したのだった。


「あ? 何で返事をしなかったんだよ」


 弘子が納得がいかない様子で言った。


「なんか、恥ずかしくてよ……。でも、告られた時、心臓がドキドキしちまって。どうしていいか分からなかったんだよ。今までいろんな男達に告られた事はあったけど、こんな気持ちは初めてで……自分でもわかんねぇんだよ」


 私は今の自分の気持ちを正直に皆に話した。


「楓、それは好きって事だよ。じゃなきゃ、ドキドキするわけねえじゃね~か」


 恭子の言葉に、私はいつの間にか明の事を好きになっていたのかもしれないと思った。


「これが、好きって事か?」


「そうだよ。明にきちんと自分の気持ちを伝えねえと。明と楓、お似合いじゃねぇか。あたしは浩司といると嫌な事を忘れられる。一緒にいて楽しかったんだ。浩司の気持ちを聞いて、凄く嬉しかった。それと同時に、あたしも浩司の事をいつの間にか好きになっていた事に気付いたんだよ。だからこそ、レイプされた事を話した。好きな漢には、ありのままの自分を好きでいてもらいたいからだよ」


 私は恭子がレイプされた事を浩司に話そうとした時、恵理奈が止めた。


「恵理奈。あん時、あたしを止めただろ? 恭子の考えが分かっていたのか?」


 私は恵理奈に聞いた。


「ああ、あたしもレイプされた。本当なら隠したいさ。けど、浩司なら恭子の事を受け止めてくれると思ったんだ。浩司は漢だ。あたしは確信してたよ。そして、浩司はちゃんと受け止めてくれた。それがほんとの漢ってもんじゃないのかな」


 私は恵理奈の事を凄いと思った。

 やはり、人の事をちゃんと見ている。

 浩司の事を漢として認めていたからこそ、あの時、私を止めたんだと。

 

 そして、恭子は自分の過去を包み隠さずに受け入れてもらい、付き合いたかった。

 私は改めて、そう思ったのだった。

 それを浩司は受け入れた。

 恭子の事を本気で好きだからこそ、受け入れたのだ。


 私は恥ずかしくて、明にどう返事していいか分からなかった。

 明の事が頭から離れない。

 明の事を思うと、また心臓がドキドキする。

 恭子の話を聞いて、冷静になって考えてみると、私は明の事が好きだという事に気付いたのだった。


「今までさ~。沢山の男達に告られて平然と断ってた楓がだぞ。恥ずかしくてドキドキしたって事は、それはもう好きって事じゃねぇか」


 恵理奈が確信したように言った。


「楓、明の事が好きなんだろ? ちゃんと返事しねぇとな。明も漢だ。明なら楓を大切にしてくれる」


「ああ、そうだな……。頑張ってみるよ」


 私は自分から返事が出来るか、わからなかった。

 恥ずかしくてたまらなかったからだ。


「楓も恭子もいいよな~」


 香奈枝が羨ましそうに言ったのだった。


「香奈枝、まだ付き合ってねぇし……」


 私が照れながら言うと、皆して私と恭子をからかいだした。

 皆でふざけていると、思い出したかのように弘子が口を開いたのだった。


「そう言えば、誠はチークタイムの時、誰も誘わなったな」


 弘子にそう言われて、恭子と私は目を合わせ、皆に聞いた。


「そうだったのか? じゃあ、この中に好きなヤツはいないって事だな。きっと」


「何だよ。誠のヤツ……」

 

 香奈枝が寂しそうに口を開いたのだった。

 それを聞いた私達は、香奈枝が誠の事を好きだった事に気付いたのだった。


「香奈枝。もしかして誠の事、好きだったのかよ?」


 私が香奈枝に聞くと、香奈枝は恥ずかしそうに大きなクッションで顔を隠したのだった。

 私達は今まで全く気付かなかった。


「何で早く言わねえんだよ~」

 

 皆して香奈枝に向かって、クッションとか枕を投げつけてやったのである。


「香奈枝、皆で応援すっから。頑張れよ。それと、楓の気持ちがわかった以上、きちんと明に返事しねぇとな」


 弘子の言った事に私と香奈枝は頷いたのだった。


 それから何度か明達とドライブに行ったが、私は恥ずかしくて返事を出来ずにいた。

 明はいつも通りだった。

 皆からは早く返事をしろ! と言われ続けていたが、自分から言うのは勇気のいる事だった。

 私は、明から言ってくるのを待つ事にしたのである。

 

 香奈枝はというと、私達はなるべく誠と香奈枝が2人で話せる状況を作ったりして様子をみる事にした。


 ――そして、もうすぐ夏休みも終わろうとしていた。


 まだまだ残暑が厳しく、外は太陽が眩しいくらいに強い日差しが照り付けていた。

 高校初めての夏休みは、私達にとっていろんな事を考えさせられる夏休みとなった。

 楽しい事もあったが、辛くて悲しい事もあった。

 何より、仲間の絆が強くなった。

 私達は夏休みの間、ほとんど弘子の家に泊まり、ずっと一緒だったが、それぞれ家に帰って行ったのだった。 

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