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ヤンキー『処女同盟』   作者: 一葉 ミサト
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20話

 私達は、しばらくは皆揃って弘子の家に泊まる事にした。


 恭子は瞼が腫れていたため、家に帰ると親に見られる。

 しつこく聞かれるのが目に見えて分かっていたからだ。


 せめて瞼の腫れが引くまでは、皆で恭子の側にいようと思ったのだった。


 私達は弘子の部屋で少女漫画を読んだり、アイドルの話やテレビドラマの話などをしながら過ごした。


 次第に恭子の瞼は引いてきて、皆がずっと側にいたせいか、少しずつではあるが笑顔が見られるようになってきたのである。


「なあ、そろそろ外に出て遊ばねえか? そうだ! ケンメリで箱乗りしようじゃないか!!」


 私達はずっと家の中ばかりだったので、弘子が提案してきたのだった。

 弘子の時もそうだったが、恭子の瞼の腫れも引いてきた事だし、そろそろ外に連れ出してぱ~っと遊ぶのがいいと思ったのである。


「そうだ、明達にしばらく会ってねえけど、やっぱファミレスにいんのかな?」

 

 私の言った事に皆が笑ったのだった。


「何だよ? 何か可笑しかったか?」


「楓! 明は楓にぞっこんだ。楓が来るまでいるよ。今日も待ってんじゃねえのか?」


 恵理奈が笑みをこぼしながら言った。


「あ? そんな素振り、今まで見せた事なんてなかったぞ?」


 私は明がそういう素振りを見せていなかったのに、何で皆が笑っているのか? わからなかったのだ。


「明は会うたびに、楓、楓って言ってたじゃないか。だけどよ。明みたいな硬派なヤツが楓の彼氏だったら、あたしらは安心だよな」


 弘子の言った事に、そんなに私の名前を呼んでたかな? と思ったが、明みたいなヤツが彼氏だったら、守ってくれるかも……と、ちょっとだけ思ったのである。

 やはり女は男から守られたい。

 それが乙女心だったりする。


 それに、今までたくさんの男達に告白されてきたが、明は今まで出会った男達とは明らかに違う。

 出会った日、ナンパでもなかったし、ケンメリの話はしたが、挨拶程度だった。

 明が硬派なのは分かっていた。


「楓はどうなんだよ? 明の事、どう思ってんだよ?」


 恭子が聞いてきた。


「正直、わからねえんだよ。男を好きになった事もねえし。明がいいヤツなのは分かってるけど……」


 私は恋というものをまだした事がなかった。

 恋愛には憧れがあるが、本当に自分の気持ちがわからなかったのである。


「浩司は恭子の事を好きだと思うんだけど、皆、そう思わねえか?」


 恵理奈が今度は浩司の事を話し始めた。


「浩司って、いつも恭子と楽しそうにしてたよな? あれは恭子に惚れてるぞ」


 恵理奈の言った事に恭子は顔が曇ってきたのだった。


「正直、浩司と一緒にいる時は楽しいよ。でも、あたしは……」


 恭子は自分がまわされた事を気にしているのだろうか?

 悲しそうな顔をしていた。


「恭子、もし浩司が恭子の事を好きだとしたら、過去の事を気にするような、ちっぽけなヤツじゃないと思うんだ。あいつら3人はそういうヤツじゃねえ!」


 私は思った事を口にした。


「そうだよ! あいつらはそういうヤツラじゃねえよ。過去の事を気にするようなヤツラは(おとこ)じゃねえよ。心から好きな気持ちがあれば、守ってやりたいって思うのが漢だろ?」


 弘子が言った事に、私達は納得したのだった。


「確かにそうだよな。女は男から守ってもらいたい。あたしもそういう男が出て来ねえかな~?」


 香奈枝が私達の話を聞いて、羨ましそうに言った。


「まだ、あたしの事を好きかどうかも分かんねえじゃねぇか。香奈枝、勝手に妄想すんなよ」


 恭子の言った事に皆で笑った。

 そして、恭子も香奈枝を見て笑みをこぼしていた。

 その姿を見て、私達は安堵したのだった。


「誠はどうなんだろうね。この中に好きな人がいたりして……」


 恵理奈が今度は誠の事を話し始めた。

 今までの誠の事を考えると、そういう素振りも見せなかったし、正直わからなかった。

 だが、私達は明らかに3人とも大切な友達だという事だけは確かだ。


「今日は皆でファミレスに行ってみようか?」


 多可子が皆を誘った。


「そうだな。ケンメリにも乗せてもらいて~し! そんでもって、また皆で踊りたいよな。」


 私達は久しぶりに外に出て遊ぶ事にしたのだった。


 ――私達がファミレスに行くと、明達3人がいた。


 それを見て、恵理奈が吹いたのだった。


「恵理奈、どうしたんだよ。急に1人で吹いて」


 私は恵理奈に聞いた。


「楓が来るのを待ってたとしか言いようがないだろ? しばらく会ってなかったし。それに、浩司だって恭子の事を見たら、絶対嬉しそうな顔するって!」


 恵理奈は確信しているかのように言ったのだった。


 私達は明達の元に行った。

 

 すると、明が1番に声をかけてきたのだった。


「よう。楓! 元気だったか?」


 明の言葉に皆が一斉に笑い出した。

 そして、恵理奈が小声で


「ほらね」


 と、言ったのだった。

 私は今まで意識していなかったが、恵理奈は噂話が好きなだけあって、人を観察するのも好きなんじゃないか? そう思ったのだった。


「何か可笑しかったか?」


 明は皆が笑っているのを見て、不思議そうにしていた。

 だからと言って、私の事を明が好きだとは限らない。

 私は、そう思ったのだった。


「恭子! 久しぶりじゃねえか。俺に会いに来たのか?」


 浩司が恭子に言ったその時だった。

 

「あ? 誰がお前なんか」


 恭子が浩司に向かって、頭をバシっと叩いたのだった。


「恭子、お前、この野郎!」


 浩司も負けじと恭子の頭をクシャクシャにしたのだった。

 

 それを見ていた私達は爆笑した。

 そして、恵理奈がまた私の側で小声で言ったのだった。


「浩司も恭子の事、好きなの見え見えだよな」


 私は恭子と浩司を見て、確かに。と思った。

 それより恭子が浩司とふざけている姿を見て、何だか嬉しかったのである。

 

 浩司なら、恭子の事をいつも笑わせてくれるだろうし、守ってくれるだろう。

 この2人が付き合う事になったら、素敵だろうな。

 そう思ったのだった。 


 それに比べて誠はクールだった。


「よう!! 久しぶり。元気だったか?」

 

 私達の中に好きな人がいるとは思えなかった。

 それとも、わからないようにしているのか?

 照れ屋なのか?


 私達の他に好きな人がいるのか?


「う~ん。誠はどちらかと言えば無口が多いからわからねえな」


 恵理奈が誠の事を見ながら言った。

 

「ケンメリでドライブに行くか? また皆で楽しく遊ぼうぜ!」


 私達からドライブに連れて行って。と言おうと思っていたが、明から言い出したのだった。


「よ~し!! 今夜は遊ぶぞ~!!」


 私は久しぶりに思いっきり皆と遊ぼうと思ったのだった。 

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