19話
私達は弘子の家に戻った。
恭子はまだ寝ているかもしれない。
そう思い、静かに弘子の部屋に行ったのだった。
弘子の部屋のドアをゆっくり開けようとした瞬間……。
声を押し殺すかのような、恭子の泣き声が聞こえてきたのである。
恭子は自分の事よりも私の事を1番に心配していた。
とは言え、男達にまわされ、心に大きな傷を負ってしまった。
私は涙が出て止まらなかった。
胸が苦しくて、心が痛んだのである。
他の皆も涙を流していたのだった。
きっと、皆も私と同じ心境だと思った。
このままそっとしておいたほうがいいのか?
私達は悩んだ。
だが、恭子は私達の大切な仲間。
恭子が1人で辛い思い、悔しい思い、悲しい思いを抱え込む事はあまりにも酷すぎる。
皆一緒に恭子の痛みを分かち合う事こそが、仲間だと思ったのである。
私達はドアを開け、恭子の側に行ったのだった。
恭子は手で涙を慌てて拭った。
だが、恭子の目は真っ赤になっていたのだった。
そして、私達がいない間、ずっと泣いていたのだろうか?
瞼が少し腫れていたのである。
その姿を見て痛々しくて見ていられない程だった。
だが、私は恭子に声をかけた。
「恭子、私達は仲間だ。恭子の痛みを私達にも分けてくれないか。もう我慢なんかしなくていいんだ。泣きたい時は皆一緒に泣くのが仲間だろう?」
恭子は無理をしていた。
私がそう言うと、涙をポロポロ流したのだった。
「弘子もまわせれて辛い思いをした……。心配かけたくなかったんだ……レイプされた人達の気持ちが、自分がまわされて改めてわかったんだ……あたしが辛い顔をしていたら、弘子も恵理奈も辛い事を思い出す……楓は自分を責めていたし……楓は何も悪くないのに……」
恭子は恭子なりに、私達の事を考えて心配かけたくなかったのだと思った。
「確かにあたしは男に裏切られてまわされた。でも、皆がいたから……今の自分がいると思ってる。もっとあたし達に甘えていいんだよ。恭子の痛みはあたし達の痛みでもあるんだ」
弘子が恭子の背中を優しく撫でながら言った。
「あたしだってそうだ。中2の時にレイプされた。死にたいとも思った。笑う事すら出来ずにいたんだ。でも、高校生になってから皆とマブダチになって、心から笑える日がくるなんて思ってもいなかったんだ。ここにいる皆は大切なマブダチだ。そして、恭子……恭子も大切なマブダチで、仲間なんだよ」
恵理奈は自分の心境を話した。
弘子と恵理奈と恭子……
男にレイプされ、まわされたこの3人だけしかわからない痛み……
私と加奈子と多可子には、きっとわからない痛みがあるんだと私は思った。
レイプされた人達の事を分かっていたつもりだったが、この3人しかわからない深い痛みがあるんだと、私は痛感したのだった。
「恭子、ごめんな……。あたしが自分を責めていたから……。もう我慢するなよ。泣きたい時は思いっきり泣けばいい。あたし達がいる。恭子の苦しみはあたし達の苦しみでもあるんだ」
私は恭子に声をかけたのだった。
「あたし達は仲間だ。辛い時も、悲しい時も一緒だよ」
香奈枝は恭子が寝ている布団に顔を埋めて泣いた。
そして、多可子も泣いていた。
「恭子が我慢してたなんて、辛すぎるよ。恭子……恭子……」
恭子は皆の言った事に抑えきれず、声をあげて泣き出したのだった。
「み、皆……ありがとよ……心配かけて……ほんと……ご、ごめん……」
泣いてる恭子を皆して抱きしめた。
「あたし達は強い絆で繋がった大切な仲間だ……。仲間を思う気持ちは……皆一緒だ。これからも皆で助け合って……時には一緒に泣いて……そして……皆で……皆一緒に……前に進んで行こう」
私は泣きながら言葉を詰まらせていたが、何とか言いたい事を言えたのだった。
「皆……。そうだよな……あたし達は……大切な……特別な仲間だ……あたしは絶対に今を乗り越えるよ……それは、皆がいるからだ……」
恵理奈や弘子が乗り越えたられたように、きっと恭子も今を乗り越えられる。
私はそう思ったのだった。
皆して泣いて、恭子も我慢をしてた分、思いっきり泣いたせいか、恭子は少しだがすっきりしているように見えた。
やはり、1人で溜め込む事はよくないと改めて思ったのだった。
「皆、ありがとよ……大声で泣いたら、なんかすっきりした……仲間っていいもんだな……」
恭子が私達1人1人を見ながら言ったのだった。
私達6人。
今までより深い友情を感じた。
皆に出会えて仲間になれた事に感謝したのだった。
そして、今日は弘子の家に皆して泊まったのである。




