表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヤンキー『処女同盟』   作者: 一葉 ミサト
19/37

19話

 私達は弘子の家に戻った。


 恭子はまだ寝ているかもしれない。

 そう思い、静かに弘子の部屋に行ったのだった。


 弘子の部屋のドアをゆっくり開けようとした瞬間……。

 声を押し殺すかのような、恭子の泣き声が聞こえてきたのである。

 

 恭子は自分の事よりも私の事を1番に心配していた。

 とは言え、男達にまわされ、心に大きな傷を負ってしまった。


 私は涙が出て止まらなかった。

 胸が苦しくて、心が痛んだのである。

 他の皆も涙を流していたのだった。

 きっと、皆も私と同じ心境だと思った。


 このままそっとしておいたほうがいいのか?

 私達は悩んだ。

 だが、恭子は私達の大切な仲間。


 恭子が1人で辛い思い、悔しい思い、悲しい思いを抱え込む事はあまりにも(こく)すぎる。

 皆一緒に恭子の痛みを分かち合う事こそが、仲間だと思ったのである。 


 私達はドアを開け、恭子の側に行ったのだった。


 恭子は手で涙を慌てて拭った。

 だが、恭子の目は真っ赤になっていたのだった。

 

 そして、私達がいない間、ずっと泣いていたのだろうか?

 瞼が少し腫れていたのである。

 その姿を見て痛々しくて見ていられない程だった。

 

 だが、私は恭子に声をかけた。


「恭子、私達は仲間だ。恭子の痛みを私達にも分けてくれないか。もう我慢なんかしなくていいんだ。泣きたい時は皆一緒に泣くのが仲間だろう?」


 恭子は無理をしていた。

 私がそう言うと、涙をポロポロ流したのだった。


「弘子もまわせれて辛い思いをした……。心配かけたくなかったんだ……レイプされた人達の気持ちが、自分がまわされて改めてわかったんだ……あたしが辛い顔をしていたら、弘子も恵理奈も辛い事を思い出す……楓は自分を責めていたし……楓は何も悪くないのに……」


 恭子は恭子なりに、私達の事を考えて心配かけたくなかったのだと思った。


「確かにあたしは男に裏切られてまわされた。でも、皆がいたから……今の自分がいると思ってる。もっとあたし達に甘えていいんだよ。恭子の痛みはあたし達の痛みでもあるんだ」


 弘子が恭子の背中を優しく撫でながら言った。


「あたしだってそうだ。中2の時にレイプされた。死にたいとも思った。笑う事すら出来ずにいたんだ。でも、高校生になってから皆とマブダチになって、心から笑える日がくるなんて思ってもいなかったんだ。ここにいる皆は大切なマブダチだ。そして、恭子……恭子も大切なマブダチで、仲間なんだよ」


 恵理奈は自分の心境を話した。

 

 弘子と恵理奈と恭子……

 男にレイプされ、まわされたこの3人だけしかわからない痛み……

 私と加奈子と多可子には、きっとわからない痛みがあるんだと私は思った。


 レイプされた人達の事を分かっていたつもりだったが、この3人しかわからない深い痛みがあるんだと、私は痛感したのだった。


「恭子、ごめんな……。あたしが自分を責めていたから……。もう我慢するなよ。泣きたい時は思いっきり泣けばいい。あたし達がいる。恭子の苦しみはあたし達の苦しみでもあるんだ」


 私は恭子に声をかけたのだった。


「あたし達は仲間だ。辛い時も、悲しい時も一緒だよ」


 香奈枝は恭子が寝ている布団に顔を埋めて泣いた。

 そして、多可子も泣いていた。


「恭子が我慢してたなんて、辛すぎるよ。恭子……恭子……」


 恭子は皆の言った事に抑えきれず、声をあげて泣き出したのだった。


「み、皆……ありがとよ……心配かけて……ほんと……ご、ごめん……」


 泣いてる恭子を皆して抱きしめた。


「あたし達は強い絆で繋がった大切な仲間だ……。仲間を思う気持ちは……皆一緒だ。これからも皆で助け合って……時には一緒に泣いて……そして……皆で……皆一緒に……前に進んで行こう」


 私は泣きながら言葉を詰まらせていたが、何とか言いたい事を言えたのだった。


「皆……。そうだよな……あたし達は……大切な……特別な仲間だ……あたしは絶対に今を乗り越えるよ……それは、皆がいるからだ……」


 恵理奈や弘子が乗り越えたられたように、きっと恭子も今を乗り越えられる。

 私はそう思ったのだった。


 皆して泣いて、恭子も我慢をしてた分、思いっきり泣いたせいか、恭子は少しだがすっきりしているように見えた。

 

 やはり、1人で溜め込む事はよくないと改めて思ったのだった。


「皆、ありがとよ……大声で泣いたら、なんかすっきりした……仲間っていいもんだな……」


 恭子が私達1人1人を見ながら言ったのだった。

 

 私達6人。

 今までより深い友情を感じた。

 皆に出会えて仲間になれた事に感謝したのだった。 


 そして、今日は弘子の家に皆して泊まったのである。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ