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ヤンキー『処女同盟』   作者: 一葉 ミサト
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17話

 私は弘子の家に着くと、弘子と多可子、香奈枝に皆と別れた後の事を事細かに話した。


「じゃあ、恭子は……今頃……」


 弘子が自分がまわせれた時の事を思い出したのか、動揺していた。


「何でこうなるんだよ! 女を物みたいに!! そいつら許せねぇ!!」


 多可子が怒りをあらわにする。


「恭子、今頃……辛い目に遭ってると思うと……辛えよ」


 香奈枝が悲しそうに言ったのだった。


「居所がわからねぇんじゃ、どうしようもねぇ……悔しいけどよ……。明日は必ず仕返ししてやる!!」


 私は辛かった。

 私がついた嘘をもっと早く思いついていれば、恭子は助かったかもしれないと……

 自分を責めていた。


「あたしは、恭子と離されたあと、思いつきであたしの親父はヤクザだって嘘をついたんだ……あたしがもっと早く、嘘を思いついていれば、恭子は……」


 私は涙が止まらなかった。

 そんな私に対して、皆は慰めてくれた。


「楓。自分を責めるなよ。悪いのは恭子の事を連れ去った男達だ! 楓は悪くない」


 恵理奈が優しく言ってくれたのだった。

 そして、皆も私を励ましてくれた。


「だけど、やっぱり自分を責めちまうよ。自分だけ助かって……恭子……」


 私はやはり自分を責めてしまっていた。

 そして、弘子の事も考えていた。


「弘子、大丈夫か? 今回は抜けてもいいんだ。弘子も辛い目に遭ったし……」


 私は弘子の事を思うと、胸が痛かった。

 だが、弘子は恭子の事を考えると同時に、そういう男達に対して怒りでいっぱいだった。


「楓、女を物みたいに扱うヤツラをあたしは許せねぇ! あたしがまわされた時、皆はあたしの敵を取ってくれた。恭子はあたし達の大切なマブダチだ! 黙って見過ごす事なんてできねぇよ! あたしも行くよ!!」


 弘子は心を固めた様子だった。

 そして、唇を噛みしめていた。

 きっと、弘子自身も男達にまわされた事を、許せない気持ちでいっぱいだからだと私は思ったのだった。


「明日の朝には恵理奈もここに来る事になってる。恵理奈にも話して、皆でやるよ!!」


 弘子は皆に言った。


「ああ、そうだな! 皆で仕返ししに行こう!!」


 ここで悔やんでも仕方ない。

 恭子を無理やり連れて行った男達を、私は絶対に許さない!

 私自身ももっと強くならなければいけないと思ったのだった。


「恭子は解放されたら家に帰んのかな? こっちに来ればいいけど……」


 香奈枝が心配そうな顔で言った。


「たぶんだけど、家には帰れねえんじゃねえか? もし殴られたりとかしてれば……こっちに来る可能性のほうが高い気がする」


 私は恭子の事を考えると、皆が集まるここに来る可能性が高いと思った。


「朝までに恭子がここに来なければ、恭子の家に行ってみよう」


 ――そして、時間だけが過ぎて行った。

 静かな部屋に時計の音だけが聞こえていた。


 私達は恭子の事を考えると、一睡も出来なかった。

 仲間が酷い目に遭っていると思うと居ても立っても居られなかったが、待つしかない悔しさに苛立ちさえ覚えていたのだった。


 朝になり、恭子はまだ姿を現さなかった。

 

 その時、インターフォンが鳴った。

 急いで玄関に行くと、恵理奈だった。


 私達は恵理奈に事情を話した。


 恵理奈は私達の話を聞いて、怒りを隠せなかった。

 今までレイプされた女性達……。

 そして、弘子にまで被害に遭い、今度は恭子……。


 明や誠、浩司みたいないいヤツもいる中で、女性を獲物のように扱う男達。

 私達はそういう男達を心の底から軽蔑し、憎しみでいっぱいだった。


 そして、私達が作った『処女同盟』

 自分達の乙女の純情を守るために作ったのがきっかけだったが、レイプされた女性達の敵を取る事。

 改めて『処女同盟』にふさわしいと思ったのだった。


 私達は『処女同盟』として、大切な友達、恭子の敵を取る事を固く誓ったのだった。


 ――その時だった。

 インターフォンが鳴ったのである。

 皆で玄関に行くと、恭子が立っていた。


「恭子! 恭子!!」


 私は恭子を抱きしめていた。


 そして、弘子の部屋に恭子を連れて行き、話を聞く事にした。


「楓! あの後、楓はどうなったんだよ?」


 恭子は自分の事よりも私の事を心配していた。

 それを聞いた私は涙が止まらなかった。


「恭子、あたしは大丈夫だ。親父がヤクザだって嘘ついたら、ヤツラは信じて、レイプされずに済んだんだ……。あたしがもっと早く嘘を思いついていれば……恭子に辛い思いをさせずに済んだのに……ほんとごめん……」


 私は恭子に心から謝ったのだった。


「楓が無事なら良かった……あたしはまわされちまった……」


 それを聞いて、私は尚更辛かった。

 恭子は男達にまわされたのに、私の事を心配していたからだ。


「恭子……何で、あたしの心配なんか……」


 私は泣きながら恭子に聞いたのだった。


「楓……あたしはどうなってもいい。だけどよ、大切なマブダチが酷い目に遭ったら、そのほうが辛いんだよ」


 恭子の言葉に、皆は泣いていた。


「あたしなんかのために、自分の事を1番に考えろよ! 馬鹿野郎!」


「ああ、あたしは馬鹿だ……でも、楓が無事で良かった。本当に良かった」


 恭子はそう言うと……


「何だか疲れたんだ……少し休ませてくれないか」


 弘子が自分のベッドに恭子を寝かせてあげたのだった。

 

「今はゆっくり休め!! 今日、夕方、恭子の敵を取りに行く。恭子はここで休んでてくれ」


 私は恭子に敵をとる事を伝えると、恭子は相当疲れていたのか、いつの間にか寝ていたのだった。


 恭子を見る限り、顔とか体に殴られた痕がなかった。

 きっと、抵抗しても無駄だと思ったに違いない。

 それを考えると、尚更涙が出てくるのであった。 

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