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ヤンキー『処女同盟』   作者: 一葉 ミサト
16/37

16話

 弘子は徐々に元の元気な弘子に戻っていった。

 私達は弘子の家に集まり、少女漫画を読む事がほとんどだった。

 時には泊まったりして、皆と楽しく過ごした。

 

 そして、明達と一緒にドライブに行く事も多くなっていたのである。


 しばらくは平穏が続いた。

 このまま平穏が続く事を願っていた。


「そう言えば、もうすぐ花火大会じゃねえのか?」


 恭子が思い出したかのように言った。


「そう言えば、そうだな。皆で行くか」


 私は花火大会の事をすっかり忘れていた。

 夏と言えば花火大会。

 6人揃って行くのは初めてとなる。

 皆と一緒に行ったら楽しいだろうと思い誘ったのだった。


「去年までは皆、中学が違ったから別々だったけどよ。今年は6人して行ったら絶対楽しいぞ」


 恭子も私と同じ考えみたいだった。


「浴衣着てみてぇよな~。でも持ってねぇしな~」


 恵理奈が残念そうに言った。

 浴衣を持っているのは弘子だけだった。

 どうせなら、皆で浴衣を着て花火大会に行きたいが、仕方ない。


「じゃあ、皆でお洒落して行けばいいじゃん」


 香奈枝の言葉に、私達はウキウキしてきたのだった。


「そうだな! 皆でめいっぱいおしゃれして、化粧もしてさ!」


 私は皆と何を着て行こうか? 髪型はどうしようか?

 皆してはしゃぎながら、6人揃って花火大会に行くのが楽しみになってきたのだった。


 ――花火大会当日


 私達はそれぞれ服を選んで、お洒落して弘子の家で待ち合わせをした。

 そして、皆でお化粧をした。

 後、髪型を皆でこうしたほうがいいとか。

 そういう時が女の子にとって1番楽しい時間だ。

 

 そして、皆で花火大会に行ったのである。

 いろんな屋台が並んでいて、家族連れや恋人達、たくさんの人達がいて賑やかだった。

 尚更私達はワクワクした。


「あ、イカ焼き! 焼きとうもろこしもいいよな~」


 香奈枝があれもいい。これもいい。と言ってウロチョロし始めた。


「香奈枝。はぐれちまうから、大人しくしてろ」


 たくさんの人の中ではぐれてしまったら、見つけるのは大変だ。

 私は香奈枝を捕まえて、手を握ったのだった。

 それぞれ食べたいものを買って適当なところに座った。


 すると、最初の1発目の花火がド~ン! と上がったのだった。


「た~まや~!」


 皆一緒になって叫んだ。


「綺麗だな!」


 弘子が花火を見て言った。


「ああ、今年は皆で来れて嬉しいよ」


 恵理奈が次の花火を見ながら言ったである。


 私達は花火を見ながら今までの事を考えていた。

 そして、いつもバカを言って楽しく過ごせたらいいのに。

 そう願った。

 

 弘子は元気を取り戻してはいたが、心に大きな傷を負ってしまった。

 しかも、好きになった男に裏切れて……

 皆の前では元気そうにしているが、まだまだ辛い気持ちを抱えているだろう。

 忘れる事は無理だが、いつかお互いに好きになって、弘子の事を守ってくれる男が現れたら、今の傷は少しは癒えるんじゃないか? 私はそうなってくれる事を、花火を見ながら祈ったのだった。


 花火大会が終わると、多可子と香奈枝は弘子の家に泊まる事に。

 恵理奈と恭子は家に帰るとの事だった。

 あまり外泊ばかりすると親がうるさいからだ。


 恭子に誰か泊まりに来ないか? と言われ、私が泊まりに行く事になった。

 私の場合、親が心配するなんて事はなかったので、快く引き受けたのだった。


 皆と別れ、恭子と話をしながら歩いて帰っている途中……


 急に白い車が私達2人の前で止まったのだった。

 私達はナンパかと思った。

 勿論、断ってやろうと思っていた。

 

 だが、車の中から5人の男達が降りて来たのだった。


 私達はヤバイと思い、逃げようとした。

 だが、男達の力には敵わず、無理やり車に乗せられたのだった。


「あたし達をどうするつもりだ! 車から降ろせ! この野郎!」


 私は大声を出して抵抗した。


「お前ら、あたし達をまわすつもりだろ!?」


 恭子がそう言うと、男達はニヤニヤしていた。


 相手は5人。

 あたし達は武器も持っていない。

 どうしたら逃げられるか? 私は考えたが、男達は私達2人をしっかりと掴んで離さない。

 このまま、まわせれてしまうのか?

 そんなの絶対に嫌だ!!

 

 ここで暴れて体力を消耗するより、今は大人しくしてたほうがいい。

 いざとなった時のために。

 もしかしたら、逃れられるかもしれない。

 まだ諦めるのは早い。

 どうやったら逃げられるか、ずっと考えていた。


 私は希望を捨てなかった。

 

 しばらくすると、海岸の近くの駐車場で車が止まった。

 その隣には、1台の車が止まっていた。


 男達は3人降りて、恭子だけを無理やり引きずり出した。


「離せ! 離せって言ってんだろうが!!」


 恭子は必死に抵抗していた。


「恭子!! 恭子をどこに連れて行く気だ! 離しやがれ!! 恭子!!」


 私も叫んでいた。

 その間も恭子は叫んでいた。


「楓! かえでぇっ!!」


 そして、3人の男達は恭子をその車に無理やり乗せて走り去ったのだった。


 私の元には2人の男が残った。

 後部座席に私と2人の男。

 男2人は無理やり私の体を触り始めた。


 私は、このままだとレイプされると思い、必死に抵抗した。

 だが、男の力が強すぎて、抵抗しても無駄だった。


 私は大声で叫んでいた。

 そして、いつしか泣いていた。


 どうにかして、この男達を止めたいと思った。

 幸い、口を塞がれていなかった為、駄目元で思いついた事を言ったのだった。


「あんたら、あたしを誰だと思ってやがる! あたしの親父はヤクザだ!! これ以上、手ぇ出したら親父に言うからな!」


 2人の男は、それを聞いて手を止めた。


 私は嘘をついた。

 この男達が私が言う事を信じてくれれば、これ以上は何もしないと思ったからだ。

 男達は私の言った事を簡単に信じたのだった。


「あんたら運が悪かったな! 相手があたしでよ! 親父が知ったら、あんたらどうなるんだろうな!」

 

 私は嘘をつき続けた。


「悪かった。お父さんには言わないでくれ。頼む」


 男達は謝ってきたのだった。


「本当に申し訳ない事をした。許してくれ」


 流石にヤクザは怖いらしく、一生懸命に謝っていた。


「恭子をどこに連れて行ったんだよ? 恭子の所に連れて行け! このクズ共が!!」


 私は恭子の事が心配で男達に怒鳴りつけた。


「行先はわからない」


 1人の男が言った。

 私は信じられず、また怒鳴ってやったのだった。


「嘘つくんじゃねえよ!! 明らかにお前達知り合いだっただろうが! 知らないわけがねぇだろうが!!」


 私は、恭子が今どういう思いをしているのか?

 それを考えると居ても立っても居られなかった。


 だが、男達は本当に居場所がわからないとの事だった。


 この男2人は高校3年で、恭子を連れて行った男3人は今は社会人。

 つまり、恭子を連れて行った男達3人は、この男2人の1つ先輩にあたるという事だった。


 男達は元々高校が一緒で、ここにいる2人の男達はパシリにされていたらしい。

 

「先輩達にはいつもパシリにされてるけど、家に行った事がないんだ。信じてくれ」


 私の親父がヤクザだと嘘をついた事を、この男達は信じた。

 ヤクザに関わりたくないのと、何をされるか分からない恐怖からだと思うと、男達が嘘を言ってるようには思えなくなってきたのだった。

 

「あんたら、あの男達と今度はいつ会うんだ!」


 私が聞くと、明日、夕方からナンパしに行く約束をしているとの事だった。

 恭子の事が頭から離れなかったが、たぶん、もう、恭子は……

 そう思うと腹が立って悔しかった。


 だが、このまま済ますわけにはいかない。


 男達はいつもこの2人のうちの1人の家をたまり場にしているらしい。

 そこに明日も来るとの事だった。


 私はその男を住所を聞きだし、皆を集めて仕返しをしようと思った。


 そして、この男達に


「あたしの体を汚ねぇ手で触りやがって! 土下座して謝りな!! お前達の先輩は明日リンチする! 言ったら親父に言うからな!!」


 私が怒鳴り付けながら言うと、2人の男は土下座して謝ったのだった。


「申し訳ございませんでした。何でも言う通りにします」


 そして、私を弘子の家の近くまで送らせてた。


「わかってんだろうな! ヘタなマネしたらタダじゃおかねぇからな!!」


 私は最後に男達にガンつけて言った。


「は、はい」


 ビビリながら男達は帰って行った。


 私はその足で走って弘子の家に向かったのだった。 

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