表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヤンキー『処女同盟』   作者: 一葉 ミサト
10/37

10話

 私達は美鈴と一緒に美鈴の家に向かった。


 その男達がまた来る可能性が高いからだ。


 美鈴の家に行くと、私達は美鈴の部屋でその男2人を待つ事にした。


 美鈴は震えていた。

 その間、恵理奈はずっと美鈴の手を握っていたのだった。


「美鈴、何も心配いらねぇからよ。安心してあたし達に任せな!」


 恵理奈が優しく言うと、美鈴は頷いたのだった。


「きのうの今日で来んのかなぁ?」


 香奈枝が言った。

 確かに昨日の今日で来る馬鹿はいないだろう。

 だが、お兄さんが留守なのをいい事に又やって来る可能性は否定できない。


「それはわかんねぇけど、来る可能性は高いんじゃねぇの?」


 私がそう言うと、恵理奈がそれに答えるように話始めたのである。


「今日来なかったとしても必ず来るよ! 女はレイプされたら誰にも言えず泣き寝入りすんのがほとんどだ。きっと、美鈴の事も泣き寝入りすると思ってるはずだよ。あたし達は待つしかねぇよ」


「確かに泣き寝入りする女がほとんどだろうな」

 

 私達は、それを思うと悔しさを隠しきれなかった。

 女は男と比べて明らかに力の差がある。

 抵抗しても敵わない。

 私達の知らないどこかでレイプされ、泣き寝入りする女達はどのくらいいるのだろうか?


 今までも私達の周りでレイプされた女達がいた。

 もっといるのではないか?

 そう思うと他人事ではない。という事に改めて気付くのであった。


 明日は我が身。

 だが、今は美鈴の事を考えるのが1番だ!

 美鈴がこれから先、自分の足でしっかり生きて行こうと、そう思ってくれる事を祈るしかない。

 今は美鈴の敵をとる事が、唯一私達に出来る事だと思ったのである。


 その時だった。


「こんちわ~」


 男の声がした。

 美鈴はその声を聞いて、尚更震えだし、怯えだしたのだった。


「来たな」


 私が言うと、皆と目を合わせて頷き合った。


「美鈴はここにいな! あたし達は行くよ! それと、恵理奈、美鈴の側にいてやってくれねえか」


 私は美鈴の怯える姿を見て、恵理奈に言ったのだった。


「わかった。美鈴がこんなに震えて怯えてるとこ見ちまったら、1人にしておけねぇからな」


 私達は美鈴から、予めお兄さんの部屋を教えてもらっていた。

 

 そして、恵理奈と美鈴を残し、5人で木刀や鉄パイプを持ってお兄さんの部屋に向かったのである。


 私が先頭になってお兄さんの部屋に入って行った。

 男2人はいきなり私達が部屋に入って来たのを見て、ビックリしている様子だった。


「あんたら何事もなかったようによくここに来れたな! 美鈴の事レイプしただろ?」


 私はその男2人に声をかけた。

 明らかに動揺している様子だ。


「あいつ、チクったのかよ?」


 その発言に、こいつらは美鈴が誰にも言えず泣き寝入りすると思ってた事を確信した。


「あああぁぁ!? 女が皆泣き寝入りすると思ってたのかよ? 美鈴はな、学校の屋上から飛び降り自殺しようとしてたんだ!! お前ら! 美鈴の兄ちゃんのダチだろうが!! そんなのダチとは言えねぇんだよ!! お前らみたいな腐った人間はこのあたし達が許さねぇっ!! 覚悟しな!!」


 私がガンつけながら怒鳴って言うと、男達は逃げようとしたが、木刀や鉄パイプを使って皆で腹や背中を殴ってやったのである。

 私達は何度か殴ってから1人1人男達に向かって怒鳴りつけた。


「いい根性してやがるよな!? レイプした次の日に堂々とここに来やがって!!」


 最初に怒鳴ったのは恭子だった。


「何事もなかったようによく来れたな!! このクソ野郎が!!」


 次に弘子が鉄パイプを男達に向けて怒鳴った。


「男として最低なヤツだな!! クズが!! お前ら頭ん中腐ってんじゃねぇの!?」


 多可子がガンつけながら小馬鹿にして言ったのだった。


「女を舐めんじゃねえよ!!」


 最後に香奈枝がそう言うと、私は最後の1撃を男達に喰らわしてやった。


「皆、このくらいにしておこう!! あんた達! 美鈴の乙女の純情を汚しやがって!! 2度とここに来んじゃねえよ!! 美鈴に近づいたらタダじゃおかねぇからな!!」


 その時だった。

 美鈴のお兄さんが帰って来たのだった。


 この状況を見て、しばらくは何が起こっているのか? わからない様子だった。


 私はお兄さんに声をかけた。


「あんた、美鈴の兄ちゃんか? あたし達は美鈴のダチだ! 美鈴はな!! こいつら2人にレイプされたんだよ! 誰にも言えねぇで自殺しようとしたんだ!! あんた、美鈴の兄ちゃんならちゃんと守ってやりなよ!! 何でこんなのとダチなんだよ!!」


 美鈴のお兄さんは、私の話を聞いて驚きを隠せない様子だった。


「美鈴は? 俺の妹は?」


「美鈴はあたしのマブダチと一緒に部屋にいるよ!!」


 私がそう言うと、お兄さんはすぐ美鈴の部屋に行ったのだった。


 その時だった。

 男達がこっそりと帰ろうとしていたのである。


 私は、私の話を聞いたお兄さんが真っ先に美鈴の部屋に行くのを見て、絶対に黙って帰すわけがないだろうと思ったのだった。

 

「まだ話は終わってねぇんだよ!! 美鈴の兄ちゃんがこのまま帰すわけねぇだろうが!! 逃げんじゃねえよ!!」


 私はその男達に怒鳴りつけてやった。


 お兄さんは美鈴の部屋に行くと、美鈴の顔を見て何度も何度も謝ったのである。


「美鈴……ごめん……俺が悪かった。本当にごめん」


「お兄ちゃん……私、汚させてしまった……私、怖かった!!」


 美鈴はそう言って声を大にして泣いたのだった。

 お兄さんはその姿を見て、美鈴をそっと抱きしめたのである。


「お前の事はこの俺が守るから! ほんと、ごめんな……」


 そう言って、お兄さんは私が持っていた木刀を取り、自分の部屋に戻ったのだった。

 そして、その男達を何度も何度も殴り始めた。


「よくも俺の妹に!! 酷い事を!! お前らなんか友達じゃねえ!! この家から出て行け!! 2度と来んな! また妹に手を出して見ろ!! 今度は警察に訴えてやるからな!!」


 お兄さんは無我夢中で木刀で殴っていた。

 これ以上殴らせると、相手の男達がヤバイと思った私は、皆と一緒に止めに入ったのだった。


「これ以上殴ったらヤバイって、あたし達も殴ってやったんだ。後遺症とか残っちまったら、あんたが年少行きになっちまう!! 妹を守るんだろ?」


 私がそう言うと、お兄さんはふらふらしながら木刀を投げ捨てた。


「お前ら、今すぐここを出て行け!! 出ていけって言ってんだろ!!」


 お兄さんは手の拳を震わせながら怒鳴ったのだった。

 そして、2人の男は体中殴られた体を重たそうにして静かに帰って行った。


 すると、美鈴がお兄さんの所にやって来たのだった。


「お兄ちゃん……」


 お兄さんは美鈴を顔を見て


「ほんとごめん……これからは友達はちゃんと選ぶよ。あいつらの事、俺は何もわかってなかった」


「そうだな。ダチはちゃんと選ばねぇとな!! 美鈴の事、ちゃんと守れよ!」


 恵理奈がお兄さんに向かって言ったのだった。


「皆さん、美鈴のためにありがとう。皆さんがいなかったら、美鈴は自殺していたと思う。本当に心から純粋な子なんだ。本当に、本当にありがとう」


 お兄さんはそう言って私達に土下座までしてお礼を言ったのだった。

 そして、美鈴も一緒になって頭を下げた。


「ありがとう。あの時、皆が屋上に来なかったから、私は今頃はもう……」


 あの時、私達が屋上に行かなければどうなっていたんだろう?

 美鈴は死ぬ覚悟をしていた。

 それを思えば恐ろしくなる。

 私達は、1つの命を助けられた事に安堵するのであった。


「頭をあげてくれよ。お礼なんていいのさ! あたし達はか弱い女を平気でレイプするヤツらに仕返ししただけだ。同じ女として許せねぇからな! それより、妹を大事にしてやってくれよ!」


 私は心からそう願った。

 お兄さんは大きく頷いたのだった。

 そして、美鈴が恵理奈の手を握ってきたのである。


「恵理奈さん、ずっと手を握っててくれてありがとう。私も恵理奈さんみたいに、笑って毎日が過ごせるようになりたい」


 それを聞いた恵理奈は笑顔で美鈴に話しかけた。


「そういう日がきっと来るさ! 美鈴なら大丈夫だよ。」


「さあ、皆そろそろ帰ろうか」


 私は、皆と一緒に美鈴の家を後にしたのだった。 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ