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君と戦場のレクイエム  作者: 黒菊
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第1章 1話

 この世界は魔法で成り立っている。料理をするとき、物を運ぶとき、人を殺すとき─────、様々な用途で魔法と言うのは使われるが、主に魔物に対しての対抗手段として使われる。


 昔はは化学というもので生活が成り立っていたが、エネルギーを埋蔵資源に依存したものは埋蔵資源がつきてしまえば崩壊する。


 エネルギーショックが起こり、人は再び戦争を始めた。国際連合を率いていたがわの先進国が我先にと平和条約を破り、第三次世界対戦となる...はずだった。


 戦争の火蓋が落とされた直後だった。世界各地に流星群のように隕石が降り注いだ。至るところで地震があり、津波が発生した。


 しかし、天変地異はそれだけでは終わらなかった。その隕石は孵化するように割れていき、中から異形な生物が生み出されたのだ。


 その生物達は魔物と名付けられた。

 

 魔物は他の動物と同じで言語を持たず、餌を求めて戦場を徘徊した。化学兵器では奴らに傷をつけることができなかった。

 

 次々と侵略、いや、生息地域が広がっていき、ユーラシア大陸を中心にインド、中国、エジプト、フランス、ドイツ、ブラジル、オーストラリアと地図上からその名を消していった。


 有力国家としてアメリカ、ロシア、イギリス、日本が残ったが、時間の問題と思われたが、生き物は種の生存が危ぶまれたときに自分が持っている潜在能力が引き出されるのだ。先天的に持ってはいたが、形質として表れなかった魔力が初めて発現したのだ。


 魔力は魔物に対して唯一の攻撃手段となり、主要4か国を中心に防衛ラインを引き、近くの国々の領土の奪還を名目に傘下に納めていき、4つの人間の大国と魔物の生息域で世界は分断した。


 人の技術力は凄まじいものがあり、化学と魔法を組み合わせ、魔法工学と言われる学問にまで達したが、人の数に比べて、魔物の数が圧倒的に多く、男と女関係なく、苗床として使われ知性の持った魔物、いわゆる、魔族の出現で人と魔物の戦いは互角となっていた。


 人々はこの終わりの見えない戦争を「ラグナロク」と言った。



+++++



「逃げろ!!いいから、早く逃げろ!!」


 後ろにいる少女は目の前に危機が迫っているというのに、恐怖で怯えているせいか、一向に立ち上がり逃げようとする気配を見せない。


 少年は同年代の中ではかなり秀でており、何かあっても自分がいれば対処できるとたかをくくっていたが、現実の厳しさを目の当たりにする。


 今も相対する魔族から発せられているオーラで少年の身体が小刻みに震えている。


 魔族はこの状況が楽しいのか顔を歪め笑い、1歩ずつゆっくりと詰め寄って来る。

 

「逃げろって言ってるんだよ!」


 少年はそれでも動かない少女を魔法で風を起こし、吹き飛ばす。そのことで正気に戻ったのか森の入り口に走り逃げていく。


 少年が少女の方をを見ていたのは1秒くらいだったのだが、魔族の方を見ようとした時には身体が木に打ち付けられ鈍い痛みが全身を駆けめぐった。


 魔族が狙っていたのは少女の方らしく、逃げていった方向に向かっていく。 


 今、少女の方に行ってくれれば助かるな...


 そんな考えが少年の頭の中を巡るが、身体が勝手に魔族に向かって魔法を放っていた。


 その行動が魔族の逆鱗に触れたのか、木でうなだれている少年の胸に深々と鋭く長い爪を深々と突き刺しながら、何かを言った。


「……………!!」


「…きなさいって言ってんの!!」


「起きなさい!!」


 誰かの声が聞こえ、俺は目を覚ます。今日は天気が良かったから講座をサボって寝ていたんだった。


 目を開ければ葉っぱの間から青空が見えなかった。その代わりに黒くて布面積の少ないパンツと眉間にシワを寄せた整った綺麗な顔が見えた。


 俺は自分からアクティブに行動を起こし友達付き合いをしていくタイプでは無いが、流石にクラスメイトの顔くらいは覚えている。


 ブロンドの艶がかった髪に瞳、薄めの唇、肩につくかつかないくらいの髪を内側に巻いている。端的に言えば美人である彼女を俺はどこかで見たことがあるのだが思い出せない。


 彼女がどこのクラスだろうと関係は無いが、今、話かけてきたと言うことは俺の苦手な真面目ちゃんタイプなんだろう。


「講座中よね?早く戻りなさい」

「そういう、お前こそ」

「私は編入手続きが今さっき終わったところ」


 今さっきこの学園の編入手続きが終わったやつが何でわざわざ話しかけに来たんだよ。


 こういうお嬢様タイプの女子は自分が正しいと思って、価値観を押し付けてくる。


 これ以上会話をしても意味がないので再び目を閉じ、午後の暖かな日向ひなたとたまに吹き抜けるそよ風を感じることに意識を向ける。


「世界がこんな状況なのによくそんなにぬけぬけと昼寝ができるね」

「世界がこんな状況だからだろ」


 正義感だけで人が動いていると思ったら大間違いだ。自分のことを1番に考えておかないといずれ後悔する。


 ここで寝ていたら、また色々言われそうなので、芝生の感触を惜しみつつ、隣に置いてあった刀を取り、立ち上がる。


 寝る気が削がれたので校舎にでも戻ろうかな。


「君のその刀って古代兵器アーティファクトだよね、宝の持ち腐れだね」


 古代兵器アーティファクト、それはラグナロク以前に作られた武器で何故かは解らないが魔力を通すことが可能である武器のことを言う。


 ラグナロク以前に作られた武器に魔力を通さず、魔物には通用しない。


 ラグナロク以後は魔力を通すことが可能なアダマンタイトという鉱石で武器は作られていた。

 

 古代兵器アーティファクトは魔力伝導が圧倒的に効率が良く、ラグナロク以後に作られた武器よりも強力でとても珍しい物だ。


「言っとけ」


 俺は言い放ち、話しかけられる前に逃げた。

 


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