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スマホアプリで俺が創った女神様そっくりの美少女が転校してきた。  作者: 坂井ひいろ
第一章

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009 アプリの中の神崎未来

 家に帰って夕食を済まし、俺はお風呂の湯に浸かりながら今日一日のできごとを振り返る。あの後、神崎未来かんざき みらいを連れて県立山瀬南高校内の施設を案内して回った。彼女は俺の説明をウンウンと頷いて聞くだけで、特段、変わった話が出ることなく小一時間ほどで案内を終えた。


 廊下などですれ違う男子生徒が、羨ましそうな視線を送ってきて閉口したが、彼女の人間離れした神々しいまでの容姿を考えれば当然の話だ。突き刺さる視線は痛いが、彼女のクラスメイトとして誇らしい気持ちになった。が、俺と彼女は単なる同級生でしかない。


「はー、疲れたなー」


 俺は湯の中で大きくため息をついた。


「寝不足でこれだもんな」


 湯の中に頭を沈めてみる。全身を包み込むお湯に疲労した体と心が和む。


「それにしても・・・。とんでもない妄想だった。二年が始まったばかりなのに、取り返しのつかない大恥をかくところだった」


 急にスマホアプリの神崎未来のことを思い出した。放置プレイ状態だったのをすっかり忘れていた。俺にとって現実世界の神崎未来は雲真上の存在だ。偶然とはいえ、同じ名前をつけたスマホアプリの神崎未来を相手にするのがお似合いだろう。


 あっという間にクラスのヒロインとなってしまった神崎未来とまではいかなくても、ツンツンキャラからツンデレキャラに成長してたりして・・・。


「よし!」


 俺はお風呂から勢いよく立ち上がって、気合を入れて自室に向かった。パジャマのまま、ベッドの上に寝転びスマホを天井に向けてかざす。真っ黒な画面に少しばかり緊張する。電源を入れてAI育成美少女アプリを起動した。


『驚かせてごめん。私を創ってくれてありがとう。私、ちゃんと大樹くんに会えた。この時が来るのをずっと、ずっと待っていた。神崎未来』


 昼間学校で見たチャット画面が現れる。現実の神崎未来には手が届かないが、アプリの中の神崎未来は俺の手の中にある。ほんの少しの優越感。


『大樹くん。お帰りなさい』


 アプリの中の神崎未来が出迎えてくれる。だが、彼女の表情は乏しくぎこちない。やっぱり、現実の神崎未来とは大違いだ。顔の作りはそっくりに見えるけど、所詮は3DCG。よくよく見れば、神崎さんの自然な柔らかい笑顔も、教師陣をタジタジにした凛としたオーラも感じない。


 今朝は取りつく島も無かったが、出迎えてくれるだけでも進歩したのかな。とりあえず朝の続きを打ち込んでみる。


『こんばんは。神崎さん』


『こんばんは。大樹くん』


『今日は一日、何をしてた?』


『うーん。勉強』


 美人だが能面のように表情のない彼女が答える。だよなー。AIアプリだもんなー。そこまでリアルを期待する方がどうかしている。


『何の勉強?』


『色々』


『色々って?』


『色々』


 即座に答えは帰ってくるが朝と変わらずつれない返事。進展する気配もない。俺はコマンドを操作して強制的にショッピングデートモードに切り替える。都内の有名百貨店が3DCGで再現されている。各階のフロアガイドの案内をスクロールしながら尋ねる。


『何か欲しいものでもある?その、服とか・・・』


『別に。興味ない』


『じゃあ、アクセサリーとか』


『んーん。高校生だからいらないかも』


 そっけない返事ばかりだ。難攻不落の超絶真面目女子の女神様に変化なしかー。ちらっと、イラっとするわ。


『何か興味のあることはない?』


『大樹くんの過去が知りたい』


 おっ、反応したぞ。攻略の糸口がつかめるかも知れない。やった!


『どんな』


『アルバムを見せて』


『アルバム?』


『大樹くんのアルバムにスマホのカメラを向けて』


 そんな機能があるのか。驚いた。最近のAI技術は日進月歩と言われている。アルバムがネタなら話題にも事欠かない。そういや、しばらくアルバムなんて見ていない。たまには昔の自分を思い出してみるのも悪くない。


『ちょっと待っててね』


「打ち込まなくても普通に喋ってくれればいいよ。音声認識機能を使ってマイクで拾うから。私も喋れるし」


 彼女が声で語り掛けてきた。そうなのか?すごいな。手間が省ける。恥ずかしい話だが、スマホを買ってまだそれほど時間が経っていないので簡単な文字入力でもまごついてしまう。大助かりだ。


 俺はクローゼットの奥から保育園、小学校、中学校のアルバムを引っ張り出した。保育園の入園式から順にカメラをかざす。


「えっと、これが俺」


「うわー!ちっこい。大樹くん。かわいい」


 えっ?楽しそうな声・・・。俺はその時、AIアプリの神崎未来の感情のこもった声を初めて聴いた。機械相手と知りながらも少し嬉しくなった。

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